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第4章5つの中間目的で5Sを完遂

第4章5つの中間目的で5Sを完遂さて、意気揚々と5Sを始めて、しばらくするとなんだか失速、最終的には誰もやらなくなってしまった……なんてことは、往々にして起こることです。

第4章では、5Sを続けるために知っておいたほうがいいこと、続けるための工夫についてお話しします。成果が出るまでやり続けないと、せっかくの取り組みも台無しですよ!

目次

◎5Sを継続するための中間目的

○……1回綺麗にして満足、で終わらないために

ここまでで、なぜ5Sを推進するのか、そしていざ5Sを進めると思いのほかうまくいかない理由、に関して十分にご理解いただけたのではないでしょうか。

さて、4章では、5Sを実際に進める上で特に意識してもらいたいことについて、ご説明します。

5Sは、組織が一体となって動かなければ効果の出ない活動であり、しかもゴールとしてイメージしている「儲かる」に到達するまでには継続力が不可欠です。

これまでの事例でも何度か触れてきたことですが、この継続力に関しては「言うは易し行なうは難し」で、なかなか一筋縄ではいきません。

なぜならば、人は誰でも「努力している労力に応じて、あるいは、かけている時間に応じて、少しずつでも成果が出ることを望んでいる」からです。

ところが、5S活動を推進する過程で、「儲かる」というゴールに向けて成果が実感できるタイミングは、すぐにはやってきません。

もちろん、「整理・整頓が進んですっきりした」、「オフィスが綺麗になった」、といった目に見える短期的な成果はあるでしょう。しかし、それは本来の目的ではありません。

短期的な成果で満足してしまい、「ここまでやったんだからしばらくはもういいんじゃない」といった心理状態に陥ってしまっては何の意味もありません。

第2章でもお伝えしましたが、組織だからこそ陥りがちな失敗を十分に頭に入れながら、5S活動を推進・継続していくことが、ゴールに向かうには必要不可欠です。よって本章では、5Sの“中間目的”を是非理解してもらいたいと思います。

○……中間目的の延長線上に「儲かる」がある

まず、“中間目的”という言葉の定義について説明しましょう。

「5Sを徹底できる会社はすべからく儲かる」という話の中では、最終のゴールは「儲かる」ということになりますが、“中間目的”は、そのゴールを達成するまでの過程として意識しなければならない重要な目的です。

最終のゴールと思っていただきたくないので、あえて、“中間目的”という言葉を使っていますが、この“中間目的”に到達できるだけでも素晴らしいことであり、“中間目的”に到達できれば、きっとゴールである「儲かる」を実現するイメージが持てるはずです。“中間目的”とはそのような定義だと考えておくとよいでしょう。

○……外部環境をもはね返す強い組織の条件

5S活動の“中間目的”として押さえておくべき項目には以下のようなものがあります。

  • ①決断力の向上
  • ②円滑なコミュニケーション
  • ③価値観の共有
  • ④組織的なパフォーマンス向上
  • ⑤基本レベル向上サイクルの定着

5つの項目の詳細は、このあと詳しく説明しますが、これらの要素を兼ね備えた組織であれば、「儲かる」を実現できると思いませんか。「5Sを徹底できる会社はすべからく儲かる」の本質は、実はここにあります。

誤解を恐れずに言ってしまうと、そもそも会社における売上や利益はコントロールできるものではありません。なぜならば、売上や利益の前提には、内部要因だけではなく外部要因も含まれるからです。

たとえば2009年のリーマンショックをきっかけとした需要の激減などに見舞われて、多くの会社が甚大なダメージを被ってしまったことを思い出していただければ、理解しやすいでしょうか。自社内のがんばりだけではどうにもならないもの、それが売上や利益です。

では、なぜ私が「5Sを徹底できる会社はすべからく儲かる」と主張するのかというと、その理由は、“中間目的”に挙げた5つの項目を併せ持つ会社であれば、外部環境からの機会を最大限かつ最速に成果に変換できるとともに、外部環境からの脅威に対しては最小限にとどめる力を有していると考えるからです。

○……内部改革で生まれ変わった日本航空

2010年1月19日に会社更生法を申請し、実質的には経営破綻した日本航空が、無事に再生を果たしているのは皆さんもご存知の通りです。

再生初年度の2010年度には、1900億円近い営業利益を上げて黒字転換し(前年は1200億円の赤字)、2011年度には東日本大震災の影響を受けながらも約2000億円の営業利益を上げるところまで経営を立て直しました。決して、外部環境が劇的に好転したわけではありません。

むしろ、厳しい状況が続く中で、これだけの回復を見せたのですから、一体何をしたのか、気になるところですよね。

実際は、皆さんもご存知のことかと思いますが、会社更生法をきっかけに経営トップが京セラの創業者・稲盛氏に交代し、稲盛流の経営手法を導入、展開した、つまり内部改革によって再生を果たしたわけです。

「日本航空が5Sを徹底して組織改革を実現した」といった話ではないので、なぜこの話を取り上げるのか混乱する方もいるかもしれません。

確かに、「社員の意識を変える」という“中間目的”に対して、日本航空は「JALフィロソフィ」を全社員に浸透させるという手法を取っており、5Sとは違うと言われればその通りです。

しかしながら、組織をよい方向に向けて変化をもたらすという“中間目的”を達成するための方法として見た場合、JALフィロソフィを浸透させることも5Sを徹底することも、本質的には大きな違いはないように思うのです。

ただ、JALフィロソフィといった類いの活動になると、企業としての理念をつくり、その理念を社員に浸透させながら、各自がどう行動すべきかについて考えるという流れをつくるというイメージで、トップ主導で進めるべきものになってしまいます。

そう考えると、5Sのほうは、そこまで実行に向けたハードルが高いわけではないため、会社のトップに限らずとも、現場リーダーの方々が自らの意思で取り組んでもらいやすい手法だと言えるでしょう。それでは、次からは具体的に、5Sの中間目的について解説してまいります。

中間目的①決断力の向上

○……判断基準の統一で社員全員の意思決定力が上がる

まずは、1つめの「決断力の向上」からです。決断力という言葉を聞くと、リーダーが持つべきスキルだと考える方が多いかもしれません。しかし、ここで言う決断力とは、そういった重要事項の意思決定についての話ではありません。

日々の仕事の中においては、リーダーであろうがなかろうが、たとえ新入社員であっても、自らの考えで意思決定し、行動しなければならない場面に遭遇するはずです。

その際に、組織に属する社員として、より正しく意思決定できる力が、決断力です。では、なぜ5S活動で決断力が向上するのでしょうか。それは、決断力を向上するために必要不可欠な要件と関係があります。

その要件とは、行動する際の判断基準を組織内の共通認識にする、つまり可能な限り統一することです。

○……組織としての判断基準が培われる

5S活動を進めていくに当たっては、様々な場面で判断基準を決定する必要性に気づかされることになります。整理、整頓を例に、説明しましょう。

まず、整理とは「不要なものを捨てる」ことです。その言葉だけを聞くと、「確かに使いもしないものがオフィスにあふれているのは、見た目もよくないし仕事の効率も悪くなりそうだ。不要なものは捨ててしまおう」と簡単に合意形成は図れそうです。

しかし、いざ作業に入るとどうでしょう。

「この書類は捨ててもいい書類なのかどうかわからない」「この備品は捨ててもいい備品なのかどうかわからない」このような場面に多々直面することになります。

よって、その都度「これは捨ててもいい(捨ててはいけない)ものです。なぜならば……」といった流れで判断基準を共有しなければなりません。

そうして繰り返し共有することによって、整理の判断基準は統一化され、その職場での共通認識となっていきます。

次に、整頓とは定物定置、つまり「必要なものをいつでも・誰でも取り出せるように配置する」ことです。

これも、言葉をそのまま受け止めると「確かに、一々必要なものを探す時間がかかるようではもったいない。収納場所を決めて、誰もがわかるように並べておこう」という話になるはずです。

ところが、いざ整頓作業を始めるとどうなるでしょうか。

「どのぐらいの頻度で必要になるものなのか」「それぞれをどこに配置することがベストなのか」このような問いかけに対して、答えを明確にすることが必要になります。

整頓に関しても、その都度その都度、周囲に問いかけを行ない、職場での共通認識をつくり上げる必要があるでしょう。

整理、整頓という言葉だけを捉えると、ともすると「どんどんやればいいじゃない」と安易に考えてしまいがちです。

しかしながら、組織である以上、個々人の判断で勝手に進められるものではありません。どう考えても、組織としての判断基準が必要なのです。

このように、5Sの判断基準を共有するプロセスを通じて、「判断基準を確立し、個々の社員が自ら正しく意思決定して実行できる」ことを組織は経験的に学習していくわけです。

そして、この経験が5S活動を超えて、日々の仕事の中でも行なわれるようになったとき、決断力の向上が目に見える形で表れるようになるのです。

○……自分の考えで動ける人が育つディズニーランド

ここまで述べてきた判断基準の確立・共有を、高いレベルで定着させているのがディズニーランドです。

ディズニーランドでは、「キャスト」と呼ばれる約2万人ものスタッフが働いており、そのうち約8割が準社員(アルバイト)であるにも関わらず、クオリティの高い接客サービスを実現しています。

教育プログラムが充実していることはもちろんですが、“SCSE”というキーワードで判断基準を浸透させていることも大きな要因の1つです。

そのSCSEについて説明しましょう。

  • S:Safety=安全
  • C:Courtesy=礼儀正しさ
  • S:Show=ショー
  • E:Efficiency=効率

それぞれの言葉の定義に関しては割愛しますが、例えばShow1つとっても、「キャストの身だしなみや立ち居振る舞い、施設の点検、清掃等、あらゆるものがテーマパークのショーの一部であり、毎日が初演の気持ちを忘れずに、ショーを演じ、ゲストをお迎えすること」といった意味が込められています。

SCSEは、この順序がそのまま優先順位になっており、優先順位に照らし合わせて確信が持てれば、キャストは自分の考えで行動できるのです。

たとえば、路上にこぼれているジュースの清掃を行なうキャストは、しゃがんで清掃を行なうことはありません。

キャストがしゃがんだ状態でいると、周囲に気を取られているゲスト(お客さま)が気づかずにぶつかってしまったり、転んでしまったりするかもしれないという安全性への配慮から、立ったまま足で拭くことを決めています。

立ったまま足で拭くという行為は、常識的にはとても礼儀正しいとは言えないものかもしれませんが、ディズニーランドでは安全が最優先されるのです。また、お土産ショップには、買い物カゴが設置されていません。

たくさんのお土産を購入されるゲストも多々いらっしゃるようですし、そういったゲストに少しでも多くの商品を買ってもらうためにも、買い物カゴがあったほうが購買点数アップ、つまり収益向上につながるはずです。

しかし、これも「買い物カゴが万が一でもお子様に当たってしまうと危ない」という安全面を最優先した結果、設置が見送られているのです。

○……行動指針は非常時でも役に立つ

これらの取り組みは、決してリーダークラスだけで考えたものではありません。現場のキャスト達が、SCSEという判断基準に基づいて意思決定し、実行に移しているものの1例です。

SCSEの徹底度合いは、あの東日本大震災の際にも際立っていました。

偶然、テレビのニュースで震災直後の映像を見たのですが、大きな揺れがあった直後から、「これで頭を守りながら避難してください」とショップの商品であるキャラクターのぬいぐるみをお客さまに手渡ししているキャストの方。

とある建物の中では、「照明器具が落下してくるおそれがありますから、ここは通らないように避難してください」と叫びながら、まさにその落下地点となり得る場所で体を張って誘導に当たっている人も。

「お客さまに万が一のことがあってはならない」という必死かつ冷静なキャストの姿勢が、大きな混乱をきたすことなくお客さまを誘導できた要因だろうと感じました。

いきなりここまで徹底することは難しいかもしれませんが、小さなことから少しずつ、実行できることはあるはずです。

「決断力を向上させるために、組織で判断基準を共有すること」を、5S活動の“中間目的”の1つとして是非意識してもらいたいと思います。

中間目的②円滑なコミュニケーション

○……組織として1つにまとまること、本音を言えること

単に「円滑なコミュニケーション」と書いてしまうと、何か通り一遍の話のように伝わってしまうかもしれませんが、とても重要なことですので、注意していただきたいところです。

ここで“中間目的”としてあげた円滑なコミュニケーションという言葉に込めた意味は2つあります。

1つは、上司と部下の縦のコミュニケーション、部門の壁を超えた横のコミュニケーションを通じた組織の一体化。

もう1つは、「本当はこうすればいいのに」という意見が当たり前に言える本音のコミュニケーションができる組織への成長です。

まず、組織の一体化から考えてみましょう。

そもそも、野球やサッカーといったチームスポーツが「勝たなければ一体化しない」ように、ビジネスにおいても「成果を上げなければ一体化しない」傾向はあります。

よって、組織の一体化のためには、成果を上げることがもっとも重要な要件であるわけですが、その成果を上げるためには、当然、縦横のコミュニケーションが円滑に行なわれていなければならないでしょう。

縦横のコミュニケーションが、必ずしも成果を上げるための条件を全て満たしているとは言えませんが、必要条件の1つであることに異論を挟む余地はないと思います。

もう少しわかりやすく説明しましょう。

会社の戦略を考える上で、「組織を一体化しよう」、「成果を上げよう」といったかけ声が上がることがあるかもしれません。

しかし、「ではそのために何をすべきか」を具体化しようとすると、直接的に効果がある行動案はなかなか出てこないものです。

「やったほうがよいこと」はいくつも出てくるかもしれませんが、組織の一体化や成果に直結するとは言いきれないことが多いのではないでしょうか。

それと比べると、「縦横のコミュニケーションを円滑にする」ために、何をすべきかという問いかけのほうが、より直接的に効果が出る行動をイメージしやすいのではないでしょうか。

縦のコミュニケーションを円滑にするために必要な行動は、上司と部下が会話をする時間を増やす(確保する)ことですし、横のコミュニケーションを円滑にするために必要な行動は、部門を超えたメンバーが会話をする時間を増やす(確保する)ことですね。このように整理すると、極めてシンプルな話です。

○……シンプルかつ重要なことができない現実

しかしながら、この極めてシンプルな話が、多くの会社でなかなかできていないという現実もあります。

上司と部下の縦のコミュニケーションにおいて、よく出てくるテーマとして、仕事をうまく進めていくためには「報連相を徹底すること」があります。

これは、報告、連絡、相談を適切なタイミングで実施することですが、よくよく考えてみると極めて当たり前の話です。

ところが、この当たり前のことが徹底できない組織が意外に多いこともあり、「どうやって報連相を徹底するのか」といったテーマで書かれているビジネス書が数多く出版されていたりするわけです。

部門間の横のコミュニケーションについても同様です。

コンサルタントが新たにお付き合いを始めるクライアントに対しては、現状を把握するために各部門のインタビューを実施します。

すると、たとえば開発系の部門が「営業がだらしないから業績が上がらない」と言う一方で、営業系の部門は「競争力の高い製品がないから業績が上がらない」というように、業績低迷の要因はほかの部門にあるという話が多くなる傾向にあります。

他部門に責任を転嫁してしまって、自部門は責任逃れしようというスタンスに受け取れるかもしれませんが、決してその限りではありません。

多くの企業で一定の社員教育が展開されている現状を踏まえると、「他責ではなく自責で考えることが大切である」ことぐらいは、多くの方が理解しています。

そう考えると、先のコメントは言わば本音として発言されていることが多いのではないかと思うのです。

同じ会社に所属しているとはいえ、ほかの部門がどうやって業務を進めているかまでは把握できていないケースのほうが圧倒的に多いかと思います。

それゆえに「自分たちの部門はがんばって仕事しているのに、会社の業績は上がらない=その原因はほかの部門にあるとしか答えられない」となる、つまり決して責任逃れをしている認識はないわけです。さらに言うと、当事者もなぜこのような思考になるのか、その理由をわかっています。

なぜならば、「あなたの会社における問題点は何ですか」という質問に対して、「部門間の壁が高くてコミュニケーションが取れていない」という返答が、多くの方々の声として上がってくるからです。

読者の皆さんにも思い当たる節があるかもしれませんが、これは多くの会社において見られる傾向です。

つまり、部門間のコミュニケーションは大切なことだと、誰もがわかっていながらも多くの組織ができていないという現実があるわけです。

これらの事象を踏まえると、上司と部下の縦のコミュニケーションにしろ、部門間の横のコミュニケーションにしろ、実はそう簡単に解決できる課題ではないと認識したほうがいいと言えるでしょう。

○……「会話の時間をつくる」だけでも心理的障害が発生する!?

とはいえ、奇妙な話だと思いませんか。「コミュニケーションを取る」という行動自体、特に難易度の高い話ではありません。

縦のコミュニケーションであれば上司と部下が、横のコミュニケーションであれば異なる部門のメンバーが、まずは「会話をする時間をつくる」というだけの話です。

ところが、組織として動くという前提の中で、その単純な行動を阻む心理的障害がたくさん出てくるのでしょう。

目標を達成するために、仕事上の問題を共に解決すべき上司と部下が、「できる上司(部下)」「できない上司(部下)」と個々の能力を評価してしまうことで協力関係を築くことができなかったり。

仕事をうまく回していくためには、ほかの部門ともコミュニケーションを図るべきだと頭ではわかっていながらも、「まずは自部門で与えられた役割を全うすべきだろう」という正論っぽい意見でその場がつくられなかったり。

「忙しい中で時間を取るのなら、お互いに有意義な時間にしなければならないが、どんなテーマで議論するんだ」といった主張が出てきて、「それが決まらないなら集まる意味もないだろう」と、結局その場をつくる前に雲散霧消してしまったり。

単純に「会話をする時間をつくる」という話が、なかなか前に進められない、これは組織が抱える課題であり、把握しておくべき特性かもしれません。

○……フラットな関係で行なうからこそ得られるもの

ここまでのことを踏まえても、5S活動は、このような組織でこそ効果をもたらすものだと言えるでしょう。5Sは、上司や部下といった立場は全く関係ありません。それぞれの部門の目標や役割とも全く関係ありません。

要するに、極めてフラットな関係の中で進められるということです。なおかつ、個々人でがんばったところで全体の5Sレベルは上がらないので、協力しながら進めていかざるを得ません。

また5S活動自体、本来の業務とは少し離れたところでの活動と言えるので、上司と部下の縦の関係や、部門間の横の関係のような組織特有の緊張・警戒感にとらわれない状態をつくりやすいのではないかと思います。

その結果、5S活動を通じて「会話をする時間が増える」ことが大切であると言えるでしょう。

「会話をする時間が増える」ことによってクセづけられる「会話をする習慣」は、5S活動だけにとどまらず、必ず本来の業務においても徐々に活かされます。

その蓄積が、かつては「こうすればいいのに」と思っていても口に出せなかった環境から脱却して、当たり前に本音を言い合える組織への成長につながるのです。

冒頭で「円滑なコミュニケーション」が重要だと申し上げたのは、こうした理由があるからです。

○……企業の回復に特効薬などない

企業再生やV字回復という言葉が一般的なものとして認知されるようになって久しいですが、実際にこれらを成し遂げた企業において、ウルトラCと呼べるような特効薬があったわけではありません。

かつて成功事例として取り上げられた日産自動車、最近では日本航空なども、そもそも社内に眠っていた「本当はこうすればいいのに」があったのではないでしょうか。

確かに、再生スキームの中で着々と行なわれる負債圧縮や資金注入が不可欠だったことは間違いのない事実ですが、それが全てではありません。

当時の自動車業界にしても、最近の航空業界にしても、外部環境が大きく好転したという事実はなく、再生を果たした要因は社内の改革にこそあるのです。

だからこそ、「縦横のコミュニケーション」と、それを通じて「本当はこうすればいいのに」が当たり前に出てくる環境づくりを“中間目的”とした5S活動、このロジックを念頭に置いて取り組んでもらいたいと思うのです。

中間目的③価値観の共有

○……パフォーマンスが上がる魔法の言葉

価値観という言葉は、人によって様々な定義があるかと思います。たとえば、男女間の結婚の理由で「同じ価値観を持っているから結婚した」ということもあれば、離婚の理由としても「価値観が合わなかった」という話を聞いたりします。

この場合の価値観とは、物事を評価する基準、何にどういう価値を認めるかという判断基準、といった定義で、もちろん人によって異なるわけです。

そう考えてしまうと、会社という様々な人間で構成されている組織においては、価値観の共有などそもそも難しいということになってしまいます。

決してそのような難しい話としてではなく、ここで定義したい価値観とは、組織における普遍的価値観として、どんな会社にも持っておいてもらいたいものです。

  • 「ありがとう」という感謝の気持ち
  • 「ForYou」思いやりの心

この2つが、組織において極めて大切なことだと認識し、行動で示すことにこそ価値があるという考え方に異論を唱える方は恐らくいないでしょう。

ただし、大切なことだと認識してはいるものの、行動で示すのはなかなか難しいという状況に、多くの会社が陥っているように感じます。これは大変もったいない話ですね。

たとえば「ありがとう」という日本語は「魔法の言葉」などと言われたりもします。

なぜならば、「ありがとう」と言われた人は当然気分がよくなりますが、一方で「ありがとう」と言った人も気分がよくなるという効果があるからです。

なぜ気分がよくなることが大切なのか、おわかりでしょうか。そのほうが行動の質、つまりパフォーマンスが上がるからにほかなりません。

○……プロスポーツ選手も実感する「ありがとう」のパワー

現在、イタリアのインテルというクラブに所属し、日本代表にも選出されている長友選手をご存知でしょうか。

インテルは、サッカー選手であれば誰もが憧れるビッグクラブであることから、長友選手が活躍すれば、すぐにニュースでその情報が伝えられます。

ところが、入団当初はそのプレッシャーからなのか、長友選手いわく「周りが全く見えない」状況に陥ってしまったそうです。

当然、プレーの質が落ちてしまい、地元のスポーツ紙等でかなり酷評されました。

メンタル面の強化が必要だと考えた長友選手は、常に訓練できるメンタルトレーニングの手法として「感謝する」ことが重要だと知り、日々の生活の中で常に「ありがとう」や「ありがたい」と「感謝する」姿勢を持ち続けることを実践したそうです。

それは、特別難しいことではありません。

日々の食事をするとき、今日も元気だと思ったとき、声をかけられたとき、つまり日常の些細な瞬間に「ありがとう」や「ありがたい」を考えるだけの話です。

これを繰り返すことで、ある試合から「冷静に周りを見ることのできる」自分を実感し、その時点から飛躍的にプレーの質が上がったそうです。

「え~、本当にそんなことでいいプレーができるようになったの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、これは長友選手自身が語っていることであり、彼のプレーが明らかに変わったことは事実です。

ただ1点、勘違いしていただきたくないのは、メンタルを鍛えて突然サッカーがうまくなったという話ではありません。

もともと持っているはずなのに出せなかった力を、100%発揮できるようになったと理解するのが正しいでしょう。メンタル面が行動に与える影響は、私たちが考える以上に大きいということです。

常に結果を求められ、プレッシャーにさらされるプロスポーツの世界においては、かなり以前からメンタル強化の必要性が認識されています。そのためのコーチを雇う人もいるぐらいです。

そう考えると、「ありがとう」や「ありがたい」という感謝の気持ちがメンタル面にもたらす効果、そしてそれが実際のプレーにも影響することを理解できる方々がプロスポーツの世界には数多くいらっしゃるということでしょう。

だからこそ、インテル入団当初のパフォーマンスに思い悩んだ長友選手は、メンタルを鍛える必要性に気づくことができたと言えます。

そして、本気で「ありがとう」の感謝の気持ちを日々鍛えることに努め、「ありがとう」という感謝の気持ちを心の底から持てるようになり、本来の力を発揮できるメンタルを持てるようになったのです。

○……感謝の気持ちを持つと行動が変わる

このように、「ありがとう」の感謝の気持ちによるメンタル面への効果は、自らの行動面のパフォーマンス向上に確実につながりますが、それだけではありません。

「ありがとう」の感謝の気持ちは、先ほど示した「Foryou」、思いやりの心を鍛えることにもつながるのです。

“清掃”でよく話題に上るトイレ掃除ですが、実際にトイレ掃除をしている人に対する「ありがとう」の感謝の気持ち、皆さんは心の底から持てていますか?

あえてこの質問を投げかける理由は、誰もが口先では「もちろん、ありがたいと思っていますよ」と言うような話だからです。

実際、心の底から「ありがとう」の感謝の気持ちを持っている人は、決してトイレを汚すような使い方をしません。

「仮に汚してしまったときは、すぐに自分で掃除する」ぐらいの気構えは持っており、だからこそ、そもそもそうならないような使い方をするのです。

なぜならば、「汚してしまったら、イヤな気持ちになるだろうな」とトイレ掃除をする人の気持ちを考えられるし、「掃除にも時間がかかるだろうな」と作業が大変になることにも思いを寄せられるからです。

○……朝、ちゃんと挨拶していますか?

筆者が講演等の場でよく出す事例として、オフィスビルの朝の出勤風景があります。

複数の会社が同居する大型オフィスビルの場合、ビル運営会社に雇われている警備員が常駐しており、出勤してくる入居会社の社員に対して「おはようございます」と挨拶しているのを見かけますが、警備員に挨拶を返している方はほとんどいません。

同様の光景が色々なオフィスビルで見られるわけですが、この挨拶すら返さない方々に「ありがとう」の感謝の気持ちはないだろうと思ってしまいますし、ましてや「Foryou」の思いやりの心があるようには思えないのは、筆者だけでしょうか。

試しに、ビデオカメラ等で撮って見てみるとより客観的に捉えられますが、挨拶をする警備員を無視して通り過ぎる社員の映像は、ある種異様な光景のようにも思えます。

「別に自分の会社が頼んでる警備会社じゃないし」「警備員の挨拶もやや機械的で気持ちが込もっているわけじゃないし」このような異論反論の声もたくさん聞いてきましたが、そんなことを言うようでは、“本気の”“心の底からの”「ありがとう」の感謝の気持ちには到達できません。

「挨拶をされたら返すのは当たり前」。

これは、私たちが子どもの頃、両親や周囲の大人から教わったことであり、大人になった今、子どもたちに当然のこととして教えている、人としての基本ですよね。

機械的な挨拶は、誰からも挨拶を返してもらえなくても仕事として挨拶しなければならない警備員の憤りだとは考えられないでしょうか。

常日頃から「ありがとう」の感謝の気持ちを持ち、行動に示すことを実践できている人は、当然「Foryou」の思いやりの心が鍛えられていますので、たとえ仕事であろうとも挨拶をしている警備員に対して、いつもご苦労様の気持ちを込めて「おはようございます」と挨拶を返すでしょう。

1人でも多くの方々から挨拶を返してもらえれば、当然警備員も気分がよくなるでしょうから、気持ちを込めた挨拶に変わるという効果をもたらすはずです。

単に挨拶の話をしているに過ぎないわけですが、「ありがとう」の感謝の気持ちを持って実践するだけで、実は挨拶をする側もされる側も気分がいいわけです。

ということは、この単なる挨拶という行動が、その後の仕事のパフォーマンス向上にも十分つながるものであることを、私たちは認識しなければなりません。

5Sの最後に“躾”というキーワードがありますが、これは、5S活動を通じて鍛えられる「ありがとう」の感謝の気持ちと、「Foryou」の思いやりの心によって組織に浸透していくものだと思います。

“躾”けられた社員が集まっている会社は、自分自身はもちろん、他人のパフォーマンスさえも上げられる環境が整っている、だからこそ「5Sを徹底できる会社はすべからく儲かる」が成立するのではないでしょうか。

中間目的④組織的なパフォーマンス向上

○……100%の力を出すフロー化

前項で触れた「組織的なパフォーマンス向上」について、もう少し説明しておきたいと思います。

5S活動によって鍛えられる「ありがとう」の感謝の気持ちと「Foryou」の思いやりの心は、それを実践する自分自身をフロー化します。

“フロー”というのは、筆者がスポーツドクターの辻秀一先生に教えていただいた概念で、「揺らがず・とらわれず・気分のいい状態」を指します。

プレッシャーで心が揺らいだり、結果にとらわれてしまうあまり、力を出し切れないことが多いスポーツの世界では、多くの選手が常にフロー化できるように努力しているそうです。

先ほど例にあげた長友選手も、“フロー”という言葉は出していませんでしたが、取り組んでいたのはまさに自分の心の状態をフロー化することだと言えるでしょう。

また、かつて米国挑戦の際、長期のスランプに陥っていたプロゴルファーの宮里藍選手も、スランプを脱出するきっかけはメンタルトレーニングによるフロー化でした。

○……いざというときに力を出せるか

“フロー”の中で筆者がもっとも気に入っているのは、「結果を出すためには、結果にこだわらず勝負の瞬間に最大のパフォーマンスを出せる心の状態をつくる」という考え方です。

ビジネスにおいても全く同じ理屈が通用すると思いませんか。

何かしらのミスをしてしまい、あまり気分が乗らないまま営業先に訪問する場合と、上司に褒められて上機嫌で営業先に訪問する場合を比較すると、当然後者のほうが面談時に高いパフォーマンスを発揮できる、つまり受注できる可能性が高いわけです。

このこと自体は、考えてみると当たり前の話ですが、では何か対応策を打てているかというと、なかなか難しいのではないでしょうか。

気分が乗らないから訪問しないという選択肢も取りづらいし、急に上機嫌のときの心の状態をつくることもできないからです。

だからこそ、“フロー”という考え方を理解し、5S活動を通じて鍛えられる「ありがとう」の感謝の気持ちと「Foryou」の思いやりの心が、フロー化につながることを理解してもらいたいのです。

○……挨拶ができる上司の元なら、部下も実力を発揮できる

先ほど、オフィスビルの朝の出勤風景と題して挨拶の事例を出しましたが、これは社内の話に置き換えても十分当てはまると思われた方も多いのではないでしょうか。

たとえば、容易に想像できるのは、若手社員が挨拶しているにも関わらず、うなずく程度で挨拶を返さない上司、あるいは暗い(怖そうな感じの)挨拶を返している上司です。

まさか、そうしたほうがより上司としての威厳が保てるなどと考えているわけではないと思いますが、このような対応をしていて、若手社員のパフォーマンスは上がるでしょうか。

たかが挨拶だと思われるかもしれませんが、若手社員のフロー化を考えるのであれば、当然挨拶は返すべきですし、ただ返すのではなく、今日もがんばろうという気持ちの入った挨拶をしたほうがいいことは明らかです。

挨拶がよければ成果が上がるとは言いませんが、上司が部下の心の状態を気遣いながら、パフォーマンスを上げやすい状況をつくる意識がある組織のほうが、成果を上げやすいことに疑いの余地はありません。

その気遣いが、挨拶1つにも表れてくるということです。

よって、挨拶がしっかりしている上司は、当然ながら、部下を叱らなければならない場面でも、その気遣いが感じられるはずです。

部下の性格、もともと信頼関係を築けているか否かなどを見極めながら、叱り飛ばすのか注意を促す程度にとどめるかを決めるでしょうし、叱った後にすぐフォローするのかしばらく放っておくのかを決めるでしょう。

感情にまかせて叱った結果、部下のパフォーマンスが低下してしまい、さらに結果が出なくなるようでは全く意味がないことを認識しているからです。

○……パフォーマンスにこだわるわけ

何度もパフォーマンスという言葉をくり返していますが、なぜパフォーマンスに着目するのか、おわかりでしょうか。パフォーマンスをわかりやすく表現すると、「行動の質」ということになります。

「行動の質」を上げるために必要な要件を考えると、どんな心の状態で行動するのかが極めて重要であることはご理解いただけたことと思います。

そもそもビジネスにおいては、成果を出すことがもっとも重要であることに異論を挟む余地はありませんが、成果が必ず出せるものかというと決してそうではない、つまりコントロールできるものではありません。

もちろん、成果を出すために最大限努力するわけですが、景気の動向や競合企業との競争など、影響を受ける因子が数多く存在します。

一方、心の状態は、過去の経験から考えるとコントロールできないもののように感じるかもしれませんが、「揺らがず・とらわれず・気分のいい状態」をキープすることに関しては、十分コントロールできるものです。だからこそ、パフォーマンスにこだわるわけです。

このパフォーマンスが、5S活動を通じて高められることを、ぜひ頭に入れておいてください。

そして、そのパフォーマンスを支えるメンタルのフロー化は、「ありがたい」の感謝の気持ちと、それによって芽生える「Foryou」の思いやりの心がベースになるのです。

中間目的⑤基本レベル向上サイクルの定着

○……レベルの高いことまで「当たり前」にしてしまう

これまで説明してきた、5S活動の中間目的である4要素は、突然ハイレベルな状態に到達できるわけではありません。

当たり前の話ですが、日々の積み重ねで力をつけていくしかないのです。そこで必要になるのが、これから説明する中間目的、「基本レベル向上サイクルの定着」です。

基本中の基本と言われるようなことを当たり前にできるようになれば、さらにレベルの高いことに挑戦でき、そのレベルの高いことをも当たり前にしてしまうことが、基本レベル向上サイクルの意味するところです。

これを5S活動の中で定着させることができれば、当然、その習慣は普段の業務においても効果をもたらすことにつながる、つまり成果がついてくることになります。

組織的に基本レベルを上げていくためには、「考えたことや学んだことをその都度明確にする」→「それを実行する」→「実行したことを体感する」→「体感したことを共有する」、このサイクルをくり返す必要があります。

ところが、得てして組織はこの当たり前のサイクルを回せていません。特に難しいのが「体感したことを共有する」ステップです。

そもそも、実際の業務に必要なコミュニケーションすら満足に取れていない中で、5S活動で体感したことを共有するコミュニケーションにまで手が回らないということになりがち、というのは容易に予想できることでしょう。

しかし、その共有の場が持たれないと、その前の「実行したことを体感する」ステップにおいて自分自身と向き合うことさえも疎かになり、結果として単に「実行する」ステップでとどまることになってしまいます。これでは、基本レベルの向上は望めません。

基本レベル向上を図るには、「体感したことを共有する」ステップを踏むこと以外に方法はありませんが、決して難しいことではありません。単純に時間をつくるだけの話です。

○……本気度は言葉に表れる

特に意識してもらいたいのは、この「体感したことを共有する」をくり返すことで培われる“言葉へのこだわり”にこそ、大きな価値があるということです。

人は、本気でやろうと思ったり、本気で伝えようと思うと、必ず言葉にこだわるようになります。

たとえば、「ウチの会社は営業力が弱いから営業を強化しよう」などと言っている間は、恐らく本気で営業強化しようとは考えていません。

仮に本気ですなどと口で言っていても、具体的な打ち手が見えてこない限り、本気のレベルに達していないということです。

本気の人間は、「営業力が弱い」とは具体的にどういうことなのかをとことん突き詰め、強い状態に変化させるための打ち手を見出します。

つまり、言葉へのこだわりが、質の高い行動につながるということであり、だからこそ基本レベル向上につながるというわけです。

○……それぞれのSについて自分たちなりに考えよう

5Sを言葉にすると“整理”“整頓”“清掃”“清潔”“躾”と誰にでも意味のわかる普通の言葉です。

大切なのは、自分たちが取り組むべき5S活動として、基本レベル向上サイクルを回しながら、それぞれの言葉に、自分たちなりの意味を込めていくことなのです。

たとえば、“整理”1つ取ってみても、「私たちは“整理”を○○と定義します。だから、あるべき状態は○○な状態であり、それを実現するために○○な活動をしていきます」といったことを、日々のコミュニケーションを通じてつくっていくということです。

よって、とことん言葉にこだわること、言葉の意味を考え抜くこと、ここに時間をかけることが5S活動の成功に不可欠なのです。

たとえばトップアスリートとして君臨している(きた)プレイヤーは言葉を大切にしていると思いませんか。

現役大リーガーのイチロー選手は、TVでインタビューに答えているときも慎重に言葉を選んでいる様子が伝わってきますね。

『夢をつかむイチロー262のメッセージ』(『夢をつかむイチロー262のメッセージ』編集委員会著、ぴあ、2005年)を読んだときにも感じましたが、トップアスリートならではの数多くのメッセージがあります。

つまり、言葉へのこだわりを持っているということです。

イチロー選手のコメントの中でも、とりわけ私の記憶に残っているのは、「目標に向かって準備するだけです」や「もう準備はしてきたのでどんな結果を残せるのかが楽しみです」に出てくる“準備”という言葉です。

イチロー選手の“準備”には、「もうこれ以上すべきことは何一つない、不安に思う要素も見当たらないぐらいやり抜くこと」という意味が込められていると思うのです。

だから、イチロー選手が口にする“準備”の意味は重いですし、込めた意味の通りに徹底した“準備”を行なっていることが想像できます。

○……言葉の意味を考え抜き、行動に移すことをくり返す

サッカー日本代表の本田選手も、言葉にこだわる選手ですね。

2013年6月のオーストラリア戦で日本代表はワールドカップ出場を決めましたが、その直前、ブルガリアとの親善試合では0‐2で敗れていました。

本田選手は所属するクラブチームの都合で試合に出場しませんでしたが、ロシア現地で会見を開いてこんなコメントを残しています。

「気は緩んでない、と思っていても、あるいは口に出しても、気が緩んでしまうのが人間。だから、本当に気が緩んでいないのかを自分に問いかけ続けるしかない。やり残していることはないか、もっとできることがあるんじゃないか。自分と向き合い、自分に問いかけ続けるしかない」

やはり、自分がどう行動するかを決める上で、言葉の持つ意味を徹底的に考えており、それを確実に行動に移すことを自らに課しているわけです。

言葉の意味を考え抜くからこそ、どう行動すべきかが見えてくる、恐らくそんな主張を持っていることが伝わってきます。

イチロー選手にしても本田選手にしても、仮に結果を出せなかったときに、口が裂けても「準備不足だった」とか「気が緩んでいた」とかいうコメントをするような自分ではいたくない、という強い思いを確実に持っていますね。

いきなりここまで高い意識を持つことは難しいかもしれませんが、組織で5S活動に取り組むのであれば、コミュニケーションをくり返しながら、質の高い行動のために言葉にこだわることを

習慣化してもらいたいと思います。そのサイクル定着は、確実に基本レベル向上につながるものです。この章では、5S活動の“中間目的”についてお伝えしてきました。

「5Sを徹底できる会社はすべからく儲かる」というイメージは理解できるけれども、実際にやってみると継続が難しい、と思っている方々には、ぜひともこの“中間目的”達成を意識することで、5Sを力強く推進してもらいたいと思っています。

第4章「5Sの中間目的で5Sを完遂」のポイント

  • 5Sと儲かることのイメージが遠いからこそ、5つの中間目的が必要。しかも、この中間目的こそが、5S=儲かることの真髄でもある
  • 判断基準が共有されれば、自分の頭で考え、行動できるようになる
  • 5Sはしがらみが一切ない関係で行なうからこそ、コミュニケーションの機会が生まれる
  • 円滑なコミュニケーションは本音を言いやすい環境をつくり、組織が変わる
  • 「ありがとう」「ForYou」の心が、常に一定のパフォーマンスができるフロー状態をつくる
  • 挨拶1つでも部下のパフォーマンスが変わる。パフォーマンスは自分たちの力で変えられるものだからこそ、小さなことにも気を配ろう
  • 「実行→体感→体感の共有」のくり返しで、基本のレベルは上がっていく
  • 言葉にこだわることで行動の質も変わる。1つひとつの言葉の意味をじっくり考えよう
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