MENU

第20章 パプリシティの法則

実態は、マスコミに現われる姿とは逆である場合が多い。

IBMが成功を収めていた時、同社はほとんど何も発言しなかった。いまではひっ
きりなしに記者会見を行なっている。
万事が順調であるとき、会社はパブリシティを必要としない。パブツシティを必要
とするのは、たいてい困った時である。
若く、未経験な記者や編集者は、自分で集めた情報よりもほかの出版物で読んだ情
報に影響を受けがちである。いったんパブソシティがスタートすると、それはたいて
い延々と続く。
ソフトドソンクの中でニューコークほどパブリシティにさらされた商品はないだろ
う。ある推計によれば、 ニューコークは、 一〇億ドル相当の無料パブツシティを得た
と言われる。この金額にブランド開発に投じられた莫大な費用を加算すれば、 ニュー
コークは、世界で一番成功した商品となってもよさそうなものであった。ところが、
そうはならなかった。
このブランドが発売されて三カ月と経たないうちに、 コカコーラは、オリジナルな
製法に立ち返らぎるをえなくなった。これが現在コカコーラ・クラシックと呼ばれて

いるものである。いまやクラシックは、 ニューコークの約一五倍の売上げを記録して いる。 新聞の中では、「USAトゥデイ」ほどパブリシティを浴びた新聞はなかった。 一 九八二年の同紙の発刊には、合衆国大統領、下院議長、与党の上院院内総務らが立ち 会った。こうした当初のパブリシティの残像がいまなお大きく残っているため、今日 でもまだ大半の人は「USAトゥデイ」が落ち目であることを信じられないでいる。 コンピュータの中で一番パブリシティの対象になったのは、ネクスト社のコンピュ ータであった。記者会見に出席したいとの要望があまりに多かったので、社長のステ ィーブ。ジョブスは、会見場に数千人の収容能力があったにもかかわらず、事前にテ ィケットを印刷しておかなくてはならないほどであった。席は満席となった。 スティープ。ジョブスは、多くの有力雑誌の表紙を飾るだけでなく、テレビニュー スにも登場する。IBM、 ロス・ペロー、キヤノンなどがネクスト社に一億三〇〇〇 万ドルを投資した。 ネクスト社は成功するだろうか。もちろんできっこない。いったいどこに割り込め

る市場があるというのか。新しいカテゴリーの先駆者だというが、そもそもどういう カテゴリーなのか。 歴史は、 マスコミでは成功しながらマーケティングでは失敗した事例で満ち満ちて いる。 ハイテク車タッカー四八型、USフットボール・リーグ、ビデオテクスト、オ ートメーションエ場、パーソナルヘソコプター、組立住宅、テレビ電話、ポリエステ ル製スーツなどなど。これらのパブリシティの要点は新製品が成功しそうだというと ころにはなく、既存の商品がそれによって廃れそうだというところにあった。 ポリエステルはウールを廃れさせるだろう。情報を電話回線などを通じて加入者の 端末に流すビデオテクストは新聞を廃れさせるだろう。パーソナルヘソコプターは、 道路やハイウェイを時代遅れにするだろう。巨大なヘッドライトを付けたタッカー四 八型は、デトロイトの自動車製造工程に革命をもたらすだろう(実をいうといままぞ に、わずか五一台しか作られていない)。 期待が高い「未来オフィス」では、なにもかも一個のコンピュータに統合されると されている。しかしこれまで見たかぎり、タイプライター(いまではパーソナルコン

ピュータと呼ばれている)、セパレート型レーザープリンター、セパレート型ファッ クスマシーン、セパレート型コピー機、セパレート型郵便料金メーターなどセパレー ト型のオンパレードである。未来オフィスとはよく言ったものだ。永遠に未来にある というコンセプトなのであろう。 このような未来予測は、予測不能の法則に反している。だれ一人として、たとえ 「ウオール・ストリート●ジャーナル」の有能な記者であろうと、未来を予測すること はできないのである。あなたが予測できる唯一の革命は、すでに始まっている革命だ けである。 共産主義とソ連の崩壊をだれが予測しただろうか。実をいえば、だれも予測してい ない。マスコミが「崩壊する共産主義帝国」という話に飛びついたのは、その流れが 起こったあとのことであった。 初のタッカー車と、カソフォルニアに上陸した初のトヨペットとを対比してみよう。 「ロサンゼルス・タイムズ」は、日本車が自動車産業を揺るがすことになりそうだと いう記事を載せただろうか。 一行も載せてはいない。 ニュースになった話はといえば、

日本からきた小型自動車が、アメリカの過酷な道路に耐えられなくて壊れてしまった といった話ばかりであった(トヨペットはいうまでもなく、車を変え、車名をトヨタ に変えたあと、大勝利を収めるに至ったのである)。 MCIがシカゴーセントルイス間でマイクロウエーブ・サービスを開始したとき、 「AT&T要注意、強敵現わる?」と報じたマスコミがあったろうか。否、 マスコミ はちっぽけなMCIをまったく無視したのであった。サン・マイクロシステムズが初 のワークステーションを世に出した時、この動きの意義に注目し、いつの日かワーク ステーションがI B M やD E C を揺るがすことになるだろうと伝えたマスコミがあっ たろうか。否、 マスコミはサンを無視したのであった。 新聞の第一面は無視してもいい。もしあなたが未来への手がかりを模索しているな ら、あとのほうに載っている月並みなベタ記事に目を通すことだ。 パーソナルコンピュータもファクシミリの機械も、 ロケットのように勢い良く世に 飛び出したわけではなかった。パーソナルコンピュータが導入されたのは一九七四年 だったが、IBMがPCによってこれに反撃するまでに六年かかっている。そのPC

さえ、それから一年半後ロータスーー213型がヒットするまでブームを呼ばなかっ た。 大衆の想像力を提えることと市場に革命を引き起こすこととは同じではない。いま では、「ビデオフォーン」と呼ばれているテレビ電話を取り上げてみよう。 一九六四 年のニューヨーク・ヮールド・フェアで紹介されて以来、テレビ電話は、たいてい第 一面にニュースとして取り上げられてきた。最新の事例は、「ウオール・ストリート● ジャーナル」の第一面に載つた「ビデオフォーン時代迫る、大変革到来へ」という特 集である。 これはAT&Tにとって三度目の挑戦である。七〇年代に同社は、月額料金一〇〇 ドルのテレビ電話で失敗した。八〇年代には、時間当たリコスト二三〇〇ドルのテレ ビ電話会議サービスで再度失敗した。九〇年代に入って、AT&Tは一五〇〇ドルも する「ビデオフォーン」の開発に躍起である。 「ビデオフォーン」が、なぜさしたる前進をとげなかったか、その理由は簡単である。 電話をかける度に、だれがいったい身なりを整えたがるだろうか。

わからないのは、「ビデオフォーン」がなぜこれほどまでにパブリシテイ種になっ たかという理由である。その手がかりは、「旅行の代替品」というジャーナル誌の記 事の小見出しに見られる。アメリカン・エアラインズ、 ユナイテッド、デルタなどの 航空会社は要注意。諸君の会社の寿命は旦夕に迫りつつある、という記事だ。これは 「ビデオフォーン」にはまるで関係がなく、旅行産業の来たるべき革命に触れた内容 であった。 これまでのパブツシティの中で最も大々的だったのは、アメリカの産業界全体、と いうよりもむしろアメリカ経済にとって最も重要な産業を、単独で変えてしまいそう な動きを伝えるそれだった。第二次世界大戦後のヘリコプターに関するパブリシティ をご記憶だろうか。ガレージというガレージにヘソコプターが格納され、道路、橋、 自動車産業全体が一夜にして廃物と化してしまう、というのであった。では、ドナル ド・トランプはヘソコプターを手に入れただろうか。そしてあなた自身はどうだろ う? (ドナルドは実際、自家用ヘソコプターを所有していたが、銀行に取り上げられ てしまった)

次は組立て住宅騒ぎである。家庭で購入する最も高額な単一商品が、組立ラインの 上で作られ、建築業界に革命をもたらすと報じられたのであった。 時として実質本位の食品が新聞の見出しになることがある。報道によれば、この動 き次第では、パッケージ製品業界に革命が起きるだろうという。ブランド商品はもう 終わりだ。人々はラベルを読み、ブランドの広告予算の多寡ではなく商品メリットに よって商品を買うようになるだろう。以上はまったく的外れの観測であった。 最近の行き過ぎたパブソシティの事例にペン入カコンピュータに関する報道がある。 ペン入カコンピュータは、パーソナルコンピュータの分野を大きく変革し、 コンピュ ータに触れられる人も触れられない人もアクセスできるようにするというのである。 これまた根も葉もない話だ。 誇張されたパブリシティ種にはどれにも一片の真実すらない、というわけではない。 五八万ドルに加えて税金を払えば、だれでも小型の五人乗リベル社製ヘソコプターを 購入できる。ペン入カコンピュータにしても、市場の限られた一部の層、とりわけ巡 回販売員の一群には魅力的な商品であろう。「ビデオフォーン」は、テレフォンセッ

クス産業に変革をもたらす可能性があるし、組立ラインの上で作られる移動住宅やソ クリエーション用車両にも、かなりの規模の市場が存在している。 しかし結局のところ、パブリシティはパブリシティであるに過ぎない。本当の革命 は、バンドの音高らかに真っ昼間にやって来るわけではないし、夕方六時のニュース とともに訪れるものでもない。本当の革命は深夜、予告なく、あなたのもとにいわば 忍び寄るのである。

 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次