第6章OKRの運用
運用の基本はフィードバックミッション・ビジョン・バリュー・戦略に基づきOKRを設定できれば、いよいよ運用がスタートします。OKRを運用する段階では、設定したOKRの進捗を管理していくことになります。しかし、ただ進捗を管理するだけでは、目標の達成も、成長もなかなか見込めません。進捗管理だけではなく、メンバーを「巻き込み」ながら、しっかり「振り返り」をすることで組織は成長していきます。成長し、成果を残すために不可欠な仕組みが、フィードバックです。進捗確認をする際、結果が良い悪いといった状況の確認だけに終わってはいないでしょうか?また、結果を見ても、あとは自分で考えるようにと任せきりにしていることはないでしょうか?フィードバックで求められるのは、結果を見たうえで次の行動をどうするかを決めて、立て直すことです。そして、立て直しでつくられる次の行動が、行動指標に落とし込まれるなどして、その検証が迷いなくできるようにしておくことも重要です。フィードバックはできるだけ早くフィードバックを「適切」に行うためには、「情報通知」と「立て直し」という2つの「機能」を果たすことのほかに、「タイミング」も重要です。「情報通知」は、タイミングを逃すと効果を発揮しません。まず、通知される情報が過去のものになっていては、役に立ちません。また、受け入れる側の感情的にも、タイミングはできるだけ早いほうがよいでしょう。時間が経ってから情報通知をされた場合「何を今さら……」「そのときに言ってほしい……」と、素直に情報を受け取れなくなります。「立て直し」についても同様です。タイミングが遅くなればなるほど状況は悪化します。できるだけ早く「立て直し」にとりかかれるように、タイミングを逃さないようにしましょう。フィードバックはオフィシャルに内容、タイミングともに重要なフィードバックですが、著者の会社の調べによると、上司から週1回以上フィードバックを受けている部下は25%しかいません。そればかりか、フィードバックをまったく受けていないという人が35・9%も存在します。フィードバックがあまり行われていない背景には、日常業務の多忙さがあります。メンバーへのフィードバックはその都度している、と答えるリーダーもいますが、多くの場合メンバーはそれをフィードバックだとは受け止めていません。リーダーは気づいたときに都度フィードバックをしているつもりでも、メンバーはリーダーが思いつきで話しているだけのように受け取ってしまうのです。フィードバックを仕組み化することでこのようなすれ違いを防ぐことができます。つまり、フィードバックは公式に時間を決めて実施することが望ましいのです。
週初めのミーティング(チェックイン)OKRの運用は、1週間単位(2週間も可)で行うのが基本です。何よりも、定期的に着実にフィードバックの仕組みが回ることが大切です。ここでは1週間単位で行われることを想定して、週次の運用サイクルを紹介します。週の初めに今週何をすべきかを確認し、チームのエンジンをかけます。これをチェックインと呼びます。議題はできるだけシンプルにし、議論は少なめで確認を中心として、短時間で終わらせることを心掛けてください。OKRの進捗状況と今後の見込みまずは、現在のOKRの進捗を共有することから始めます。主目的は進捗状況の確認ですが、チームの「目的」を繰り返し伝えることで方向性をまとめる役割も果たします。OKRの進捗を実績数値で確認することで、メンバー全員の認識が統一されます。そのうえで、高く掲げた「重要な結果指標」の達成見込みを共有しましょう。確実に達成できる場合や達成が難しい場合は、何らかの見直しが必要になります。達成への自信度を〇%などと明記するようにしても良いでしょう。今週のタスクの確認次に、今週のタスクの確認です。今週のタスクを逐一共有するのではなく、OKRに直結するタスクを確認することが大切です。重要度や優先度にかかわらずタスクを設定すると日常業務に忙殺されてしまいかねません。そうならないように、OKRに直結する優先タスクを確認していきましょう。最優先業務(今週、絶対しなければならないタスク)と優先業務(今週すべきタスク)の2種類を設定して、担当者に確認のうえ、優先度を決定しましょう。判断の基準は、OKRの達成を目指せるタスクになっているかどうかです。挑戦的なOKRを達成するには、業務の水準を上げなければなりません。その前提に立ったタスクになっているかを、リーダーは確認します。そして、週の終わりにできたかできなかったかを正しく判断できるようにしておくことも大切です。「今週は先週よりもがんばります」のような設定では判断できません。「〇件実施します」「〇日までに完了させます」など、行動指標を示したり、期限を設定することが重要です。実務上の障壁の洗い出し最後に、タスクを遂行していくうえでの障壁がないかを確認します。たとえば、他部署からの急な依頼があり最優先業務に取り組めない状況であるとか、健康状態が良くないため業務に支障をきたす可能性があるなど、チームの障壁となっていること、もしくは今後なりそうなことを率直に報告し合いましょう。そのうえで、改めて優先度を付け直したり、抜本的な対策はこの場ではできないとして別途対策を打つなどを決めましょう。週の始まりなので、今週もがんばっていきたいと思える状況を作り出すことがリーダーの役割です。ポジティブな言葉で会議を締めるようにしてください。高い目的に向かうためには前向きな気持ちが大切です。スポーツの試合前に円陣を組んで気合を入れるようなつもりで、リーダーはチームの前向きスイッチを押してください。
週終わりのミーティング(ウィンセッション)週の終わりに今週はどんな結果だったのかを確認し、立て直し策を具体的に決めるまで行うことを主目的にミーティングを行います。これを、ウィンセッションと呼びます。ここで大切なことは、結果にかかわらず、各メンバーが高い目標に挑んだことを承認・賞賛することです。週終わりのミーティングは、週初めと同じ組織単位で行ってもよいのですが、より大きな組織単位で行うというのも効果的です。そうすることで自チームだけでなく、他のチームの状況を共有することができます。ただし、人数が多すぎると当事者意識が薄まるため、最大で20名程度までにしましょう。OKRの確認まずは、OKRの進捗を共有することから始めましょう。より大きな組織単位で行う場合は、上位のOKRから順に見ていきます。より上位のOKRが共有されることで、メンバーは組織の一員として全体の役に立っていることを認識できます。この際、「目的」を全員が意識できるように、OKRを読み上げるなどの工夫をしましょう。定期的に「目的」に立ち返る機会をつくることは、仕事の目的、意義を再認識させることになります。その後、週初めのミーティングで設定したタスクや実務上の障壁について共有していきます。立て直しここまで、OKRの進捗やタスクの状況を共有してきましたが、最後に必要になるのが立て直しです。進捗の中で想定よりうまくいかないことは必ず出てきます。立て直しを図るうえで重要なことは、できていないことの責任を追及するのではなく、どのようにしてできていない問題を解決できるかを考えることです。役割を果たすべき人の責任は明確になっているべきですが、その人を責めても問題は解決しません。また、担当者だけの責任ということは少なく、仕組みの問題や他の業務との兼ね合いの問題であることがほとんどです。そのため、立て直しはチームで図ろうとすることが重要です。具体的な解決策が出てきたら、翌週以降の業務にすぐに反映させましょう。もともとの想定と異なることが起きているのですから、空振りも含めて多くの行動を起こしながら学習し、目標達成を目指していかなければなりません。承認・賞賛OKRを運用していくミーティングの中で一番大切なことは、これを承認・賞賛の場にすることです。ムーンショットで挑戦的なチャレンジをしているのですから、当然ながら達成率は低くなりがちです。達成率が低い場合「できなかった」ことに着目してしまいがちですが、そうなるとどうしても否定や叱責が多くなります。いくら「目的」に共感していても、否定や叱責はされたくないものです。否定や叱責を恐れるようになると、「できなかった」ことを減らそうと、高い目標を掲げることなく、低い目標を立てて達成率を上げるようになってしまいます。そうならないためにも、まずは「できた」ことに着目し、承認・賞賛することが大切です。そのうえで、さらに「できた」ことを増やすためにはどのようにすればよいかを考えていける雰囲気づくりがリーダーには求められます。本ミーティングでのフィードバックの流れは「ポジティブ→ネガティブ→ポジティブ」を意識するとよいでしょう。まずは、ポジティブに「できたこと」を承認・賞賛、次に「ネガティブ」な「できなかったこと」を確認し、次の行動変化を決定します。そして、会議の最後はポジティブに終われるように、一週間のがんばりを称え、拍手と笑顔で終わるのです。軽食や飲料を用意してカジュアルな場を設定する例もあります。組織文化に合った場づくりを心掛けてください。
個人フィードバックチームでのフィードバックも重要ですが、個人へのフィードバックも忘れてはいけません。こちらも基本は週次で、週の終わりに行うのが効果的です。フィードバックのためには、その前段階として、メンバーが自分の状況をリーダーに報告する必要があります。個人フィードバックの前に、何を報告してもらうかを予め連絡しておきましょう。そして、リーダーは、報告内容に沿って1on1のミーティングを行っていきましょう。個人フィードバックでも、基本の流れはチームミーティングと同じです。まずは個人のOKR進捗状況の確認です。「目的」を再確認した後、「重要な結果指標」と実績を合わせて確認し、同時に、今週の業務が計画通りできたのかできなかったのかを把握します。できたかできなかったかをメンバー自身が正しく認識することは、成長にもつながります。そのためにも、計画を行動指標に落とし込み、認識しやすくしておくことが重要です。次に、OKRに直結する今週の最重要業務、重要業務の取り組み状況と所感などを報告してもらい、次週以降の行動を考えてもらいます。リーダーはメンバーの報告の分からなかった点を確認して、チームミーティング同様にできた点を承認・賞賛していきましょう。ただし、承認・賞賛だけでは個人の成長は図れません。メンバー自身が「できていない」ことを正しく把握できているかをしっかりと確認していきましょう。「できていない」ことについて、リーダーとメンバーが共通認識を持っていなければ、改善にはつながりません。そのうえで、次週以降の行動内容を確認し、問題なければそのままメンバーの意見を受け入れます。問題があれば、問題点とその理由(原因分析に問題があるのか、行動の内容や行動量に問題があるのかなど)を伝えたのち、自身で再度考え直すように促しましょう。メンバーの力量によりますが、行動を自分で決めていくことが成長を促し、モチベーションを高めます。COLUMN長期的な成長支援のための1on1ミーティング1on1ミーティングとは、リーダーとメンバーとが対面でコミュニケーションをするミーティングのことを言います。OKRの運用では個人フィードバックを週1回の頻度で行いますが、議題は、OKRの進捗管理やフィードバックなど、身近な業務、短期的な視点によるテーマが中心になります。メンバーとの信頼関係を深め、長期的な成長を促すためには、身近な業務だけではなく業務外の困りごと、悩みごとや能力開発、キャリア形成といったテーマについても話し合うことが重要です。そこで、週次の業務面での成長・修正を目的とする1on1ミーティングとは別の機会として、月1回程度長期的な成長支援の場を設けることをおすすめします。長期的な視点による1on1ミーティングは、メンバーの成長支援のための時間ですので、リーダーが話す場ではなく、メンバーの話を聞く場と考えましょう。リーダーは、聴く8割、話す2割を意識してください。また、このミーティングは事前に時間を決めておかなければ、日々の仕事の忙しさの中で後回しになってしまいがちです。定期的に実施できるように早めにスケジュールを立てましょう。1on1ミーティングでは、テーマに基づき、まずは現状を確認します。「現在、うまくいっていることは?」「現在、課題に感じていることは?」などの質問で、メンバーに自身の現状を話してもらうのです。そして、次に将来について確認します。「では、〇年後の理想は何ですか?」「どんな状態を目指しますか」などの質問で、こちらもメンバー自身に、将来のことを語ってもらいます。そのうえで、「次の行動」を確認しましょう。「将来に向かうために何をしますか?」「何をすれば理想の状態になれますか?」とメンバー自身がどういう行動をとるべきかを考えてもらいます。そして最後が「支援」です。「将来に向けて、リーダーに手を貸してほしいことは何ですか?」「自分だけでは行動できない障壁は何ですか?」など、リーダーとしてメンバーのためにできることを探ります。実際に始めてみても、最初の数回はなかなかメンバーが素直に口を開かないこともあります。回数を重ねる中で慣れてきますので、焦らずじっくり行いましょう。まずはメンバーの話を肯定的に受け止め、自分の考えを先に言わないことで、メンバーは話しやすくなります。事前にテーマを指定しておくと、お互いに事前に考えてくることができ、話しやすい環境をつくれます。1on1ミーティングの最後は、話をするだけではなく行動にまで落としこみましょう。そのうえで、ミーティングの内容をメモに残すなどして記録します。記録することで次回以降に再度確認することが可能になります。
四半期ごとの振り返りと再設定通常、OKRは3か月間の運用を経て振り返りと再設定を行います。OKRに限らず「導入した仕組みの効果がなかなか出ない」といった言葉をよく耳にするかと思います。仕組みの導入から運用して効果が出るまでがなかなかスムーズに進まない要因はさまざまですが、運用後に改善を繰り返すことが効果を最大化させる唯一無二の対策です。そのため、OKRの振り返りと再設定をどのようにやるかに決まった形、グランドセオリーはありません。ここで示すのは、あくまでも一例にすぎません。これを参考に改善を続け、組織文化に合う方法を見つけ出していってください。KPTを使ってチーム全員で振り返りたとえば、次のようなOKRを設定したとします。「①無料版ダウンロードが1日100件」という「重要な結果指標」に対し、結果は1日20件、達成率は20%に終わりました。他の2つの「重要な結果指標」はどちらも80%の達成率でした。このとき、「目的」である「新しいアプリの発売を大成功させる」の達成率は、3つの「重要な結果指標」の達成率の平均である60%と評価することができます。このとき、どのように振り返り、次の3か月に向けた戦略を立てることができるでしょうか?よくあるのは、①の「重要な結果指標」の達成率が悪かったことが「目的」の達成率を低下させているのだから、①の達成を来期の一番の目標にしようと考えてしまうことです。そのように考えることが妥当な場合ももちろんありますが、来期の達成も困難が予想されますし、無料版を廃止するという選択肢や、別のサービスとセットで販売していくという考えもあるでしょう。
ここでお伝えしたいのは、さまざまな可能性がある中、当初設定したOKRにとらわれすぎてはいけないということです。また、振り返りにおいては客観的な情報も大切ですが、チームメンバーの主観的な情報も重要です。多様な考え方と現場の情報を持つチームメンバー全員の意見やアイデアも振り返りに反映しなければなりません。チーム全員で振り返る方法として、「KPT」と呼ばれる方法がおすすめです。これは、Keep,Problem,Tryの頭文字を取ったものです。Keep:続けたいこと、良かったことProblem:問題点、やめたいことTry:新たに取り組みたいこと、挑戦したいことこれら3点を、チームメンバー全員で議論しながら振り返るのです。まず、テーマ責任者が事実情報を共有します。忘れられがちなのですが、事実共有がなければ感覚的な議論に陥ってしまいます。ここでは、客観的な数字など事実のみを共有し、発表者の意見や考察は挟まないようにします。次に、メンバーそれぞれがKとPを考えます。ここで大切なことは、まずは各自で考えることです。いきなり議論を始めてはいけません。また、すぐに発表するのではなく、付箋などに記入してもらうようにします。リーダーと違った意見はもちろん、他の人と違った意見やアイデアを出すのは難しいものです。各自が議論の前に付箋に書き出すことで率直な意見を言い合える心理的安全性を確保します。その後、付箋を共有します。このとき、付箋に書いてあることをただ読むのではなく、その意見の背景や理由についても発表してもらいます。若いメンバーから先に発表してもらったほうが、遠慮なく意見を表明することができます。KとPを共有できたら、いよいよTを考えていきます。大切なことは、いきなりTを考え出そうとしないことです。他の人のKとPを聞いたうえでTを考えはじめることで、自分だけでは思いつかなかった意見やアイデアが出るからです。Tも、まずは付箋に書き出してもらい、KやPと同じやり方で共有します。そして最後に、実際に実行するTを選ぶのです。メンバー全員ができるだけ等しく話す機会を作ることで、より多くの観点から洞察を得ることができ、また、快適な雰囲気を作り出すこともできます。対立する意見もかならず大歓迎してください。その結果、多くのTが出てくることになります。しかしながら、実際に取り組むことができるものは限られています。何を実行するかについてもチームで議論して結論を出すことが望ましいのですが、必ずしも全員一致で絞り込めるわけではありません。そのようなとき、単純に多数決で決めるようなことがあってはいけません。決断をすることがリーダーの責任です。多数決ですべて決めるのであれば、リーダーは不要です。たとえ賛成少数でもリーダーは決めなければなりません。そして、このときのリーダーの決断が次の戦略立案につながります。最後に、このような手順で振り返りを進めるときは、次のルールを守るようにしましょう。・記憶が鮮明なうちに、できるだけ早く振り返りを行う・問題解決に集中する。責任追及はダメ・発言が多すぎる、少なすぎるメンバーがいる場合は、同じくらいの発言になるようにリーダーが調整する
ERRCグリッドで次期の戦略を整理振り返りが終われば次期の戦略立案です。「目的」を定めたうえで、何をやり、何をやらないかを明確にします。「目的」は、前期と同じものになることも多いのですが、そのまま踏襲するのではなく、必ず再度検討し直します。「目的」を見直したうえでリーダーが戦略をまとめていくわけですが、中身を聞いたメンバーが、前期と何が違うのか分からないという反応を示すことがよくあります。そのような事態を防ぐのに役立つのが、ERRCグリッドです。もともとはイノベーションを検討するツールですが、戦略の整理にも役立ちます。変化の激しい時代、前例踏襲で成功し続けられるなどということはありません。また、前例を引き継ぎながら新たなことをどんどんと付け加えてしまうと、経営資源には限りが有ることから実行できないことが出てきます。そこで、前期の戦略と次期の戦略を比べて、Eliminate(取り除く)、Reduce(減らす)、Raise(増やす)、Create(付け加える)という観点から検証してみるのです。そうすることで、本当に重要なことに絞り込まれた戦略を練ることができます。また、このERRCグリッドで戦略を説明することは、メンバーの戦略理解にもつながります。本当にすべきことが何かを浮き彫りにして、前例踏襲ではない新たな価値を生み出していくのです。戦略を練り上げることができたら、いよいよ次期のOKR設定です。「目的」も「重要な結果指標」も、前期の項目や数値を単純に継続するのではなく、新たな戦略に基づいて見直すことが重要です。戦略は変わっているにもかかわらずOKRが変わらないままだと、現場で実行することは変わりません。もちろん、前期の戦略やOKRを踏襲することもあるはずですが、本当にそれで良いかをしっかり確認したうえでのものであれば、うまく機能するはずです。
OKRの運用は、自社に合わせて磨き上げるここまで、OKRの運用についての手順を解説してきました。ただし、ここに書いてあるとおりに運用することがゴールではありません。リモートワークの社員が多く、顔を合わせたミーティングを毎週することはできないなど、会社、組織によって状況は多種多様だからです。OKRで大切なことは「わくわく」を全員で追いかけることであり、そのためにメンバーを「巻き込み」、「振り返り」を高速で行うことです。それさえできていれば、週次の1on1はチャットツールで行い、対面で行うのは月一度にする、ウィンセッションは隔週で行うなど、具体的な運用方法は組織の状況や風土に合わせてカスタマイズしていってかまいません。自社にあった方法に磨き上げることが大切です。外してはいけないことは、まず、「わくわく」を定着させることです。そのためには、必ずObjectivesを確認すること、ミーティングは個人の責任追及ではなく、チームの問題解決の場とすることです。これができたうえで、メンバーの「巻き込み」を意識していきます。付箋を使ったKPTのように、心理的安全性に気を配りながら、全員が振り返りの結果や意見を表明できる場をつくりだしていくのです。そして最後に、「振り返り」を仕組み化することです。自分で振り返る「内省」、上司が支援する「フィードバック」、そして「チームでの振り返り」、この3つをオフィシャルにスケジュールを決めて実施するのです。この3つのポイントを自分のチームの実情に合わせてカスタマイズしていくことで、OKRは磨き上げられていきます。
OKRでコミュニケーションを活発にする組織はコミュニケーションで強くなる仕事に限らず、良い人間関係を構築するうえで、コミュニケーションは最重要の要素です。特に、家族や友人と違い、会社における人間関係は、多様なメンバーが集まれば集まるほど、「言わなくても分かる」状態からかけ離れていきます。だからこそ、会社という組織にはコミュニケーションが欠かせません。二人三脚は「右、左」と掛け声を決めることで、息を合わせて走ることができます。指揮者が指揮棒を振るうことで、オーケストラは奏者が協調し美しい音色を奏でることができます。多くのメンバーが協力し、調整することで、組織力は高まります。そのためには、組織内でのコミュニケーションが成立していなければなりません。個人のコミュニケーション力ではなく、仕組みに頼るリーダーが理解しておかなければならないことは、コミュニケーションの目的が「伝える」ことではなく「伝わる」ことであるということです。リーダーが伝えたとしても、メンバーに伝わっていない状態ではコミュニケーションができていないことになります。同様に、メンバーが何かを伝えようとしているにもかかわらず、リーダーが関心を向けない、もしくは理解していない状態も伝わっていないと言えるでしょう。気をつけなければならないことは、簡単には伝わらないということ、そして、伝わったとしても、すぐに忘れられてしまうということです。それでは、組織は、メンバー全員のコミュニケーション能力を高めなければならないのでしょうか?もちろん、全員のコミュニケーション能力を高めていくことは、組織にとってもメンバーにとっても成長につながります。しかしながら、全員が高いコミュニケーション能力を身につけるというのは現実的ではありません。だからこそ、組織のコミュニケーションを仕組みで改善するのです。ここで大切なことは、「共通言語」と「頻度」です。組織内で重要度の高い内容については、定義を明確にし「共通言語」にすることで解釈のずれを防ぐ必要があります。また、一度に大量の情報を伝えられても、相手側は受け取ることはできません。コミュニケーションの「頻度」を増やし、少しずつ何度も伝えることで、体の中に染み入るように伝わっていくのです。成果についてロジカルに議論する仕事におけるコミュニケーションは、話しやすさ、雰囲気の良さだけではないことには気をつける必要があります。組織は、成果を出し続けることでしか継続できません。仕事におけるコミュニケーションでは「成果」を中心テーマに掲げる必要があります。もちろん、仕事以外のコミュニケーションを取ることも必要ですが、「共通の目的」を目指す組織として「成果」について話す機会を増やすことが求められます。自分が「成果」に対してどれだけ貢献しているか、周りの「成果」はどんな状態かを知り、どうやったら「成果」があがるか考え続けることで、なれ合いを生まない組織になります。そのような組織は、妥協案を探るような議論をすることなく、成果をあげるために、ときに衝突しながらも、最適な案を生み出していけるでしょう。もう一つ重要なことは、原因分析についてロジカルなコミュニケーションを行うことです。高い挑戦を行うため、未達成や失敗が必ず発生します。そのこと自体は問題ではありませんが、失敗を繰り返さないためにもロジカルに原因を分析することが求められます。成功した場合も、まぐれではなく再現性を持つ仕組みとしていくために、ロジカルな分析が必要となります。新しい発想を生むためには感覚的で自由な発想も重要となりますが、結果を分析する際にはロジカルであることが求められます。OKRを共通言語化するOKRはシンプルで理解しやすい構造と定義を持っているため、組織の中で「共通言語」として活用することができます。「OKRの達成状況はどう?」「今回のプランは今期のOKRとどういう関係?」「『重要な結果指標』の達成率を上げるための次の行動は~~です!」など、日常の会話の中でリーダーが積極的にOKRを言葉として口にすることで、OKRが共通言語化していきます。また、OKRではフィードバックを高頻度で行うことになるので、コミュニケーションの頻度を十分に確保することに役立ちます。シンプルな共通言語を用いることと、高い頻度でのコミュニケーションによって、伝わるまでのトータル所要時間は大きく削減されます。OKRは組織を強くするコミュニケーションツール目指すべき方向である「目的」を示し、導くことがリーダーシップであり、「目的」に向かうための力を最大化するための管理がマネジメントです。リーダーシップとマネジメントの両輪が回ってこそ組織は強くなります。しかしながら、一人のリーダーがこれらの能力をすべて完璧に身に着けていることは稀です。名経営者と言われる人には、多くの場合、右腕となる名番頭が存在しています。経営トップが「目的」を指し示すリーダーシップを発揮し、名番頭がリーダーの想いやねらいを組織に落とし込むマネジメントを行ってきました。大企業のトップであればこのような組み合わせが可能ですが、中小・ベンチャー企業の経営者はもちろん、現場リーダーにとってこの要素を分担する番頭を付けることは難しいでしょう。だからこそ、番頭ではなく仕組みとしてリーダーシップとマネジメントの両輪を回すことを、OKRを中心に実行するのです。OKRは、組織内のコミュニケーションを活性化させ、リーダーがリーダーシップを発揮しながらうまくマネジメントしていくためのコミュニケーションツールであるとも言えるでしょう。
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