◆仕事以外の雑談で信頼関係が深まることも本書ではしつこいぐらいに「報連相する相手とは、信頼関係が大切だ」「報連相できる人は信頼される」とお伝えしてきました。とくに、上司に動いてほしいとき、どうしても自分の提案を通したいときには、やはり相手との信頼関係が大切になってきます。あなたと相手との間に信頼関係がなければ、そもそも報連相はうまくいかないのです。まずは、心のかけ橋を築くことで、あなたに対して好意を感じてもらいます。そこで試してもらいたいことは、あなた自身の感情や経験を語る、つまり自己開示することです。たとえば、出身地、出身校、家族構成、趣味、特技、学生時代の思い出、成功体験などのプロフィールについて話します。それから、将来の夢、ビジョン、悩み、困りごとなどの心の内を開示するということでもいいでしょう。もちろん、無理のない範囲でかまいません。誰でも頻繁に連絡を取る相手や、親しい人のためには何かをしてあげたいと思うものです。それは上司や先輩も同じです。決して媚を売る必要はありませんが、仕事以外の雑談やコミュニケーションを通して信頼関係が深まる場合もあります。◆まずは毎朝のあいさつにひと言加えて自己開示以外にも、信頼関係を築く方法があります。その一つの方法が、相手に関心を持つことです。相手に対して関心を持つというだけでなく、相手が関心を持っている〈コト〉や〈モノ〉に関心を示すことも含みます。たとえば、相手がゴルフ好きであれば、ゴルフに関心を持つことで価値観を理解できたり、共通の話題もできます。もう一つの方法は、相手と似ている点や共通点を探すことです。人は自分と似ている人、共通点がある人に親近感を覚えるものです。出身地が同じ、大学の先輩後輩、同じサッカーチームが好き、同じ映画が好き、といった共通点があれば、それだけでお互いが好意を感じるものです。しかし、どうしても会話が弾まない、苦手な上司だという場合もあるかと思います。そのような場合は、無理に会話をする必要はなく、ひと言ふた言あいさつの場面を多くする程度でよいのです。話す内容や時間の長さよりも、相手とどれだけ頻繁にコミュニケーションをとるかどうかが大きなポイントです。
◆バックトラッキングやミラーリング上司に動いてほしいと思う場面では、「聞き方」もとても重要です。報連相では、相手に伝わるように話をしますが、それは単に一方通行で話をすればいいというものではありません。報連相は双方向のコミュニケーションですから、相手からの話を聞くことも大事な要素と言えます。上手に相手の話を聞く方法を身につけ、上司を動かしてください。・あいづち&うなずきあいづちを打つことで、「しっかり話を聞いています!」というサインになります。「はい」「そうですね」「わかりました」「理解しました」といったあいづちに合わせ、うなずきも入れます。・目を見て、笑顔で相手の目を見て話を聞くことは基本であり、マナーです。パソコンやスマホを見ながら話を聞くのはNGです。・バックトラッキング相手の言葉を返すことで、聞いているサインになります。相手の言葉をそのまま返したり(オウム返し)、相手の話をいくつかのポイントに要約して返すというやり方です。「ここまでのお話しをまとめると、次の3つということですね。1つ目は……」というように、くり返して確認することで、しっかりと話を聞いているという印象を与えられます。・ミラーリング&ペーシング相手が手帳を開いたら、あなたもさりげなく手帳を開くとか、動きやしぐさを鏡に写しているかのように真似する方法です。また、ペーシングは相手の話し方に合わせるやり方で、スピードやトーン、声の高低などを合わせます。ほかにも、「相手の話を途中で遮らず、最後まで聞く」「固定観念や先入観を持たず、白紙の状態で話を聞く」「評価や間違い探し、批判をしないで聞く」といったことも、とても大切になります。また、上司を役職名だけで呼ぶのではなく、「●●課長」などと名前で呼ぶことも距離を縮める有効な方法です。ぜひ試してみてください。
◆過去の事例や前例を引き合いに出す上司から仕事の指示があり、その指示に沿って部下が動くといった、「上司が部下を動かす」という構図は当たり前のことです。しかし、反対に部下が上司を動かすということは、とても骨の折れることです。では、部下側が上司に動いてもらいたい、あるいは説得したいと思ったら、部下としてどのように話を展開すればよいのでしょうか。部下が上司を動かすときのポイントとして、①具体的な事例や数字を使う②感情面で訴えるの2つがあります。ビジネスは、過去の経験や実績に基づいて成り立っています。初めて取引する業者より、何年も付き合いのある業者のほうが安心して仕事を頼めるように、私たちは過去の経験や実績を信用する傾向があります。ということは、過去の事例や前例を上手に伝えることで、あなたの話を説得力のあるものに変えることができるのです。具体的な事例をさらに効果的に伝えるためには、PREP法に沿って話を展開するといいでしょう。Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)の順序で話すと説明の説得力が増します。PREP法では、まず最初に結論を話します。次にその結論に至った理由を話します。このあと具体例を話します。とくに過去の事例や前例が効果を発揮します。そして、最後にもう一度念を押すために結論を話します。◆結論をくり返す「PREP法」PREP法の特徴の一つに、結論を最初に伝えるという点があります。「結論を最初に伝える」というのはビジネスでは基本ですし、次の展開への関心を引く効果もあります。また、最後にもう一度結論を話す〈サンドイッチ法〉によって記憶にも残りやすくなります。それから、PREP法のもう一つの特徴は具体例です。理論・理屈より、具体例はわかりやすく説得力があります。ですから、理論・理屈としての理由を話したあと、その理由を裏付けるための具体例を話すことで、説得力が何倍にも増すことになります。たとえば、納入業者選定の件で提案する場面であれば、このようになります。P:結論「今回の納入業者選定の件ですが、D社でお願いします」R:理由「なぜなら、費用対効果が良く、評判もダントツだからです」E:具体例「実は、ウチの横浜支社でもD社を採用しています。横浜支社の担当者に話を聞いたところ、自信を持ってすすめられました」P:結論「ということで、今回はD社でお願いします」このように提案されれば、上司としてもOKを出す可能性が高くなります。PREP法は一見すると、4つのステップで話を展開しているように思えますが、よく見てみると、結論と理由しか話していないのです。結論→理由→具体例→結論の第2ステップで理由を話し、第3ステップでその裏付けとなる具体例を話します。つまり、形を変えて理由を2回言っているのと同じなのです。
◆共感から納得してもらう論理的で筋道が通っている話はわかりやすく、説得力があります。PREP法はその代表的な話法です。そのほかにも、数字やデータを使って説明することで、上司は「なるほど!」と言ってくれることでしょう。一方で、「人は結局のところ感情で動いている」ということも言えます。頭で理解できても、感情で納得しないと動かないということも、また事実です。ですから、報連相する場合でも上司の感情に訴えることで、あなたの話を受け入れてもらいやすくなります。もちろん、そのベースには普段からのコミュニケーションは欠かせませんが、上司の論理的な側面と感情の側面、この両方に訴えることで上司の納得感をアップさせるのです。そこで、次のDESC法を使った話の構成が役に立ちます。Describe(描写)→Empathize(共感)→Specify(提案)→Choose(選択)の順番で話す話法です。まず、客観的な事実や状況を話します。次に、あなたの意見や思いを説明し、上司の感情に訴えます。そして、解決策や何らかの提案を行います。最後に、提案を受け入れた場合と、受け入れなかった場合の結果について伝えます。たとえば、上司からの業務指示に対して、業務開始時間をずらしてほしいとお願いする場面であれば、このようになります。D:描写「大変申し訳ありません。今、ちょど●●の仕事に取りかかっています」E:共感「しかし、指示いただいた業務は必ず行いたいと思います」S:提案「●●はあと1時間ほどで終了します。そのあと取りかかろうと思っていますが、いかがでしょうか?およそ30分あれば完成できます」C:選択「それなら、15時からの会議には間に合うかと思います」「感情的に説得する」のではなく「感情を込めて納得してもらう」ことが、あなたの要望を聞いてもらえる大きなポイントです。
◆部下の「こうしたい!」を心待ちにしている前項で上司に提案するDESC法をご紹介しましたが、上司に提案をするというのは、少しハードルが高く感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、部下からの前向きな提案に対して、「そんなよけいなことするな!」と言う上司はいません。むしろ、「こうしたい!」という提案や、「こうしたほうがいいのでは!」といった具申をすることで、あなたに対する上司からの評価もアップするはずです。第3章でご説明したように、報告では次のステップが基本となります。「何に関する報告なのかを伝える」→「結論がどうなったのかを伝える」→「今後の展開を伝える」通常の報告であれば、ここで終わります。しかし、上司に動いてもらいたい場合では、「今後の展開」をさらに一歩進めて、「提案」まで行います。客観的な状況を事実に基づいて報告したあとに、上司に対してあなたの考えを伝えたり、提案してみるのです。提案までのステップは次のようになります。①製品開発会議の件で報告があります。②懸案だった次世代機〈Z〉の発売時期を今年12月に決定しました。③今後は次世代機〈Z〉の発売に向けて、販売促進チームの発足を予定しています。そして、このあと提案をします。「そこで、私としてはチームのメンバーは公募制で決めてみてはどうかと考えています。まずは私なりに素案をつくってみました。いかがでしょうか?課長のご意見をいただけないでしょうか?」こうして、相談という形を取りながら、提案します。もしあなたの提案を承認してもらうことができれば、あなたの思った方向に仕事を進めることができるようになります。それに、提案することで新しい仕事を創造することにもなるわけで、自立したビジネスパーソンとして、さらに一歩前進することができるのです。◆事実と憶測は混同しない報連相では、事実と憶測などを分けることも極めて重要です。事実情報と、事実かどうかわからない情報(憶測・感想・意見・想像・予測)と混同しません。そして、基本的には「事実」→「憶測・感想・意見・想像・予測」の順番で伝えます。報連相では事実情報がすべてです。その事実情報を伝えた上で、情報を補足するために、あなたの憶測や意見を伝えるようにします。「これは私見ですが……」「あくまで憶測ですが……」といった言い方で、事実と憶測とを明確に分けるようにしましょう。また、人から聞いた意見などを伝える際には、「●●●みたいですよ」「●●●らしいです」といった、あいまいな表現で報連相してはいけません。「●●●といった意見を持っている人がいました」というように、意見を持っている人がいる、という事実情報を伝えるようにします。このように、事実情報か、あなたの憶測か、第三者の憶測なのかを整理して、誤解なく情報を伝えることも、信頼されるビジネスパーソンへの近道です。
車塚元章(くるまづか・もとあき)株式会社ブレイクビジョン代表取締役。東京都出身、青山学院大学経済学部卒業、ビジネス・ブレークスルー大学大学院修了MBA。大学卒業後は新日本証券株式会社(現みずほ証券)に入社し、株式営業に従事する。26歳で経営コンサルティング会社に転職、この頃から研修・セミナーで講師を務めるようになり、30歳で経営コンサルティング会社を設立。さまざまなビジネス経験を通じて「人が変われば、会社や組織は変わる」ことを痛感する。また、ビジネスにおけるコミュニケーション力や、論理的思考力の重要性も強く感じるようになり、現在は人材育成コンサルタント、研修講師として活動している。主な研修テーマは、プレゼンテーション、ビジネスコミュニケーション、問題解決、報連相など多岐に渡り、管理職から新入社員まで幅広い層から支持されている。著書に『プレゼンできない社員はいらない』(クロスメディア・パブリッシング)、『伝え方で「成果を出す人」と「損をする人」の習慣』(明日香出版社)など多数。
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