多くの人は、時間を「使うもの」だと考えています。しかし、私は時間を使うことで、「時間を創り出す」と考えています。
「時間消費型の仕事術」を続けている限り、「忙しい」「時間がない」という毎日から解放されることはありません。
本章では、投資のように時間を創り出す仕事のやり方や考え方、時間を創り出す仕事のコツをまとめた「時間創出仕事術」についてお伝えします。
最高の仕事その1「フォーユー」仕事術相手を想えば自分に返ってくる
「忙しい、忙しい」と時間に追われている人ほど、約束の時間に遅刻してくるものです。「前の打ち合わせが長引いてしまって、すいません」ということをよく聞きます。
忙しい人は、「自分の時間」を大切にしますが、「他人の時間」をないがしろにします。そういう人は、「他人の時間」を奪っていると同時に、「自分の信頼」を失っていることに気づくべきです。
この世の中で最も大切なのは、「はじめに」でも述べたように「時間」です。
ですから、「自分の時間」を大切にするのは当然として、「他人の時間」も大切にし、尊重すべきなのです。
結果として、相手もあなたの時間を尊重してくれることで、仕事がスピードアップして、時間が創り出されます。そうした時間の投資が、「信頼」となって返ってくるのです。
「相手のため(FORYOU)」の精神で仕事をすることで、結局、それが何倍にもなって自分に帰ってくる。それが、これから紹介していく「フォーユー仕事術」です。
「フォーユー」仕事術1ASAP仕事術
緊急度の高い仕事は優先的にこなす。
これは、ビジネスの基本だと思いますが、「緊急度」を正しく評価するのは、なかなか難しいことです。
私の場合は、「人を待たせている仕事」「人を待機させている仕事」は最優先に処理します。つまり、ASAPで処理するように意識しています。
ASAPというのは、assoonaspossibleの略で、「可及的速やかに」という意味です。アメリカでは、日常的に使われている言葉です。
私がシカゴに留学しているときに、ランチから戻ると机の上に、「ASAP今すぐに教授室に」というメモがあってドキッとしたことがあります。
ASAPとは、「大至急」「最優先」というニュアンスです。「人を待たせている状態」では、仕事の「返し」が遅くなるほど、相手に迷惑をかけます。1時間遅れると、自分の1時間と相手の1時間とで、合計2時間のロスが生じます。
わかりやすい例が、原稿の締め切りです。原稿の締め切りの場合、締め切りから1日遅れると相手の時間を1日奪っているのと同じことになります。
相手は1日分の遅れを挽回するのに、忙しく仕事をしなくてはいけません。自分の「怠惰」「ルーズ」「いいかげんさ」のつけを、相手に回すことになるのです。
従来の時間術では優先度を、A、B、Cに分類し、さらにAの中でも優先度をA1、A2、A3……と分類して、優先度の高い順に仕事をこなす、というやり方があります。
私の場合は、A1のさらに上に「ASAP」を設定して、他人を待たせている仕事を最優先でこなすようにしています。
「締め切りを守る人」「締め切りを守る会社」という印象が定着すると、相手からの信頼度が大きくアップします。
次の仕事をもらえる確率も飛躍的に高まるでしょう。お客さんやクラインアントのリピート率が高まり、結果として収入アップに結びつくのです。ASAP仕事術をしっかり行うことで、「信頼」と「お金」の両方を得られます。
「フォーユー」仕事術230分前行動
遅刻をしないというのは社会人として当たり前のルールに思えますが、スマホが普及してから、「遅刻する人」が間違いなく増えています。
スマホで、「10分遅れます」とメッセージを送信すれば、「遅刻が許される」という風潮は、とても残念なことです。
私は、3時に待ち合わせの場合は、30分前には約束の場所に着くようにします。
どうしても電車が遅れたり、電車の接続が悪かったりして時間がかかる場合もありますが、そんなときでも30分前を目標に行動していれば、約束の時間に遅れることは、まずありません。
30分前に着くと、30分の時間を失っているように思いますが、この30分があると、ノートパソコンを広げて一仕事こなすことができます。
30分とは、集中時間「15分」が2単位なので、正確には「2仕事」こなすことができます。
さらに、「30分で相手が来る」という時間制限がつくので、「ケツカッチン仕事術」になり、集中力も高まります。
それなので、普段家でする場合の1・5倍くらいの仕事量をこなすことができるのです。つまり、30分早く行動することによって、10~15分の時間を創り出しているのです。また、30分前行動をしていれば、非常に融通が利くようになります。
相手が10分早く来れば、打ち合わせも10分早く終わりますし、相手が10分遅刻しても、デスクワークの時間が延長されるだけなので、別に時間の損失はありません。
デスクワークの集中状態に入っていれば、相手がどれだけ遅刻しようが関係なくなってきます。イライラすることもありません。
そして、約束の時間よりも早く来ていると、間違いなく相手に喜ばれますし、「こんなに早く来ていただいて」と感謝されます。たった30分早く行動するだけで、集中力が高まり、自分の仕事もはかどる。
時間も創出された上に、クライアントやビジネスパートナーの信頼を獲得できるのですから、こんなに効率的な「時間投資」はないでしょう。
「フォーユー」仕事術3時間厳守
私はセミナーをするときは、必ず時間通りにはじめるようにしています。「午後6時30分開始」の予定であれば、「午後6時30分」ちょうどにはじめます。1分、1秒も遅れることなく、「午後6時30分」にはじめます。
これは当たり前のように思えますが、時間通りにはじまるセミナーというのは意外と少ないものです。ほとんどのセミナーは、数分遅れではじまります。
参加者100人で、3分遅れでスタートすると、100人×3分=300分、つまり5時間もの時間が、そこで失われているのです。
さらに、講師が話す時間も3分減りますから、参加者は「話が短縮された」ことで、大損をしているのです。
セミナーでよくあるのが、「まだ来ていない人が多いので、開始を10分遅らせていただきます」というパターンです。
主催者は、「気遣い」のつもりかもしれませんが、私は「最低のセミナー主催者」と考えます。なぜ、遅刻している人のために、「時間通り来ている人」が待たされないといけないのでしょうか。
100人×10分=1000分、つまり16時間半もの時間が失われ、講師の話が10分も短縮される。そんなバカな話があっていいのでしょうか。これは会社の会議でも、よくあることだと思います。
3時スタートの会議であれば、3時ちょうどにスタートすべきなのです。いつも、「3時5分」にスタートするから、「どうせ3時にははじまらないだろう」と、参加者は少し遅れてくるようになる。結果、悪循環に陥ります。
社長が毎回、3時ちょうどには着席していて、1分、1秒も遅れることなく定時にスタートしていれば、ほかの人も必ず、3時までには着席して待つようになります。
他人を待つことではなく、時間を決めて、時間通りはじめることが、最も「他人の時間を尊重する」ことにつながります。
個人対個人において時間の約束を守るというのは当然のことですが、集団やグループ、数十人、数百人に対してであれば、それは一層、厳格に守らなければいけないはずです。
そうした時間に対するルーズさが、信頼を大きく喪失することにつながっているのです。ビジネスというのは、信頼なしには成立しません。「時間厳守」は、本当に大切なことです。
「フォーユー」仕事術の究極のメリット
このように、「時間を守る人」というイメージが定着すると、間違いなく信頼度がアップします。それは、やってみれば歴然とわかります。
逆に「時間にルーズな人」は、ものすごく信頼を失って、仕事のチャンスやビジネスのチャンスを失っているのですが、それに気づいている人はほとんどいません。
「忙しい」という感覚が、「相手に迷惑をかけている」という感覚すら奪っているからです。常に「フォーユー」仕事術を徹底していると、相手の行動が変わってきます。
待ち合わせのずっと前からカフェに来ていることを相手が知ると、相手は必ず約束の時間よりも早く来るようになります。遅刻するようなことは決してなくなります。
私のセミナーが、「完全に定時にスタートする」と知っているセミナー参加者は、必ず「開始時間」よりも前に来て、スタート時間には着席して待っています。
結果として、「開始時間」には、ほとんどの参加者が来場し、着席している状態になります。これは、時間を創り出しているのと同じです。時間に対する緊張感が、セミナーの緊張感、イコール集中力を高めます。
結果として、参加者の学びの効率がアップして、参加者の満足度がアップし、さらにリピートしてくれるようになります。
「フォーユー」、つまり「相手の時間を大切にする」ことを意識すると、それが自分の時間になって跳ね返ってくるのです。
さらに、相手の信頼も手に入れることができる。「フォーユー」仕事術は、一石二鳥のすごい仕事術といえるのです。
最高の仕事その2「今でしょ」仕事術
「今でしょ!」という言葉はもうだいぶ古くなりましたが、この言葉が流行る10年以上前から、私は「今を生きる」を座右の銘にしてきました。仕事を後回しにせず、「今」にコミットして、次々と仕事をこなしていく。
これが、「今を生きる」ということであり、「今でしょ」仕事術ということになります。
「今でしょ」仕事術12分判断術
すぐに終わる仕事は、後回しにしないで今すぐ、終わらせたほうがいい。そういう話をすると、「すぐに終わる仕事というのは、何分以内に終わる仕事ですか?」という、いやらしい質問をする人がいます。
あるいは、「すぐに終わる」の定義をきちんと決めていないと、「この仕事は5分で終わるけど、今やったほうがいいかな?それとも、後にしたほうがいいかな?」と迷う人もいるかもしれません。
「どうしよう?」と迷っていると、それだけで時間はすぎていきます。そのためにも、「すぐに終わる仕事」の基準を決めておかなくてはいけません。「すぐに終わる仕事」とは、ずばり「2分以内で終わる仕事」のことです。
これは、デビッド・アレンの『ストレスフリーの仕事術仕事と人生をコントロールする52の法則』(二見書房)に書かれています。
それでは、2分の根拠というのは何でしょうか。3分ではなく、1分30秒ではなく、2分という基準は……、特にありません。ただ目安として「2分」とイメージしておく。
「この仕事、すぐに終わるかな?」よりも「この仕事、2分で終わるかな?」のほうが、「終わる」「終わらない」の決断を瞬間的に行うことができるので、より合理的であると考えられます。「2分で終わる仕事」とは、典型的なのがメールの返信でしょう。
「今、返信しないで、後で暇なときに返信しよう」と思ったら、後でもう一度メーラーを立ち上げて、そのメールを探して、そのメールを開いて、もう一度読み直して……、なんてことをやっていたら、それだけで30秒か1分ぐらい経ってしまいます。
今、返信すれば、1~2分で終わるのに、後に回すことで、余計にもう1分の時間がかかってしまう。
なんという時間の無駄でしょう。ということで、「2分で終わる仕事」は、後に回さず、今すぐ終わらせたほうがよいのです。
「今でしょ」仕事術230秒決断術
「迷っている」というのは、時間の無駄です。
「今、決断しない」ということは、「後からあらためて時間をとって、じっくりと考え直す」ということを意味しますが、これまた時間の無駄の連鎖を生みます。
あなたが経営者や管理職の場合、あなたが決断するまで他の人が動けません。つまり、決断が遅くなることで、部下の時間を奪っているわけです。
あるいは、会社全体の仕事の進捗にブレーキをかけることになるのです。多くの人は、「大事な決断は、時間をかけたほうがいい」と思っているかもしれませんが、それは誤りです。
「ファーストチェス理論」という考え方があります。
チェスの名人に、チェスの盤面を見せて、次の一手を言ってもらうのですが、まず「30秒」で最初に浮かんだ一手を言ってもらいます。
次に、さらに1時間、じっくりと考えてもらって、次の手を言ってもらいます。結果、「30秒」の最初の手と「60分」熟考した手が90%も一致したのです。
つまり、「ひらめき」や「直感」というのはかなり正しいのです。あるいは、長く考えても最初に思いついた判断とほとんど変わらないということです。
30秒考えるのと、60分考えるのとで、同じ結論が出るのであれば、30秒考えれば十分といえるでしょう。長く考えたからといって、よりよい判断ができるとはかぎらないのです。
ですから、日々の決断は、30秒で即断即決していく。これが、時間を大きく節約するコツです。
「今でしょ」仕事術3「未決」を決断する
そうは言っても、「本当に重要な決断」の場合、30秒で決められないこともあります。
あるいは、返事や情報がないと、最終的な判断ができないという場合もあるでしょう。
その場合、「今は決めない。5月30日の12時に決める」と決断します。つまり、未決を決断するというわけです。
あるいは、意識的に「保留」を決断するのです。そうすると、それまでの間、その案件を何度も考えないですむようになります。
締め切り時間になり、情報がそろったら、改めて判断・決断すればいいのです。
未決を決断しないと、「そういえば、◯◯の件、どうしようかな」という考えが、何度も頭に浮かんできます。
しかし、その決断は今はできないのですから、考えてもまったく無駄なのです。しかし、考えは自分でコントロールできないので、勝手に浮かんできます。
自分の中で、きちんと未決を決断し、最終決断する時間まで決めておけば、そんな無駄な考えが浮かばなくなります。
心配事や未決の案件が多いと、それが頭に浮かんできて、脳の作業スペース(ワーキングメモリ)を奪い、集中力を低下させ、仕事の効率を下げます。
ですから、未決を決断すると脳のワーキングメモリの節約となり、決断するまでの集中力を相対的に高める、つまり集中時間を創出していることになるのです。
「今でしょ」仕事術4「いつまで」ではなく「いつやるか」
〝「未決」を決断する〟で重要なのは、「5月30日の12時に決める」という点です。
ほとんどの人は、物事を先延ばしにする場合、「5月30日の12時〝まで〟に決める」のように、「期限」を決めるはずです。
しかし、期限を決めても、「あっ、まだ決められない」とさらに先送りするのが関の山です。
今、できない仕事があった場合、「5月25日までに終わらせる」というように先送りするのが普通ですが、これがダメなパターンです。
「5月25日の15~16時に終わらせる」と、作業時間まで指定します。その時間は、別な予定が入らないように、必ず確保します。
そうすると、その仕事を確実に「5月25日」までに終わらせることができるのです。「期間」というのは、時間を二次元的に「線」でみるという発想です。
「今でしょ」仕事術は、時間を「今」という「点」として考えます。ですから、仕事を先延ばしする場合も、未来の「点」のような限られた時間をイメージして、そこにスケジュールを入れていきます。
一瞬、一瞬を大切にする「点」のように小さな時間にフォーカスして、仕事を一気に片づけていく、「今でしょ」仕事術の発想法です。
「今でしょ」仕事術5「今、アポ」仕事術
交流会などで人と会って、意気投合して、「その話、今度、直接会って聞かせてください」という流れになることがよくあります。しかし、その後に非常に残念な一言が続きます。
「日程に関しては、あらためてご連絡させていただきます」と。
「あらためてご連絡させていただきます」という人に限って、あらためて連絡してこない人が多いのです。
つまり、その交流会で10分、15分、その人と話した時間が水泡のように消えてなくなるということです。
仮に後日連絡してきたとしても、メールやメッセージで数往復しないと、お互いに都合のよい時間と場所は決まりません。そんなことなら、今、次に会う日時を決めればいいのです。
私の場合は、本当に会って詳しく話を聞きたいと思ったなら、「では、いつにしますか?」とスケジュール帳を出して、その場でアポイントを入れます。
互いにスケジュール帳を取り出し、日時を決めるまでに1分もかかりません。「あらためてご連絡させていただきます」という人は、「今」にコミットしない人です。
あなたに対して興味がないし、本当は会いたくもないのに社交儀礼的に、「直接会って聞かせてください」と調子のいいことを言っているだけなのです。
「では、いつにしますか?」と言ったときに、「最近、仕事が立て込んでおりまして」と、アポを入れることを躊躇する相手も同じです。
本当にあなたに会いたければ、他の仕事をキャンセルしてでも、あなたとのアポイントを入れるはずです。
この「今、アポ」仕事術を実践すると、自分に対する関心度が瞬間的にわかります。相手が本気なのか、自分に関心を持っているのかが、一瞬で判断できます。ある意味、相手の本気度を知る、究極の心理テクニックです。
「今でしょ」仕事術6「今」にコミットする人と仕事をする
「後日連絡します」という人が、全員、悪い人というわけではありません。非常に慎重な人、注意深く物事を進行しようとする人もいるでしょう。
しかし、私はそういう人とは仕事をしません。時間がもったいないのです。
世の中には、二種類の人間しかいません。「今」にコミットしている人と、そうでない人です。
「結果にコミットする」はライザップのキャッチコピーですが、私の座右の銘は「今にコミットする」です。「今」にコミットしている人とは、この「今でしょ」仕事術を実践している人です。
「やる、やらない」「参加する、しない」などの決断が速く、アポイントも瞬間的に入れる人です。
そういう人と一緒に仕事をすると、スピード感のある仕事ができます。
「今」にコミットして生きる
人は、メール返信も速く、締め切りを守るだけではなく、仕事の質においても厳密な人が多いです。
互いに「相手の時間」を尊重し合い、気持ちよく仕事ができるのです。
ですから、自分がビジネスパートナーを選べる立場にあるのなら、「今」にコミットする人と仕事をするべきです。
結果として、より短い時間で、より質の高い仕事をこなすことができます。まさに、それは時間を創り出しているということ、時間創出といえるでしょう。
「今でしょ」仕事術7「今」にコミットして生きる
私は、今にコミットする生き方をしています。今にコミットする、とはどういうことかというと、「今する」「すぐやる」「後回しにしない」ということで、今、この瞬間に全力でやりきることを自分と約束することです。
もし、今できなければ、今日中にやる。今日のことは今日中に片づける。仕事も遊びも1日で完結させます。
今日の仕事はできるだけ今日中に終わらせるように頑張るということです。遊びに関しても同じで、大切な誘いがあれば、絶対に断りません。
自分の本能のままに動きます。仕事が詰まっていれば、パフォーマンスを高めて、さっさと終わらせて夜は自分のために使います。
仕事も遊びも全力です。仮に、余命1日を宣告されても、後悔しない生き方、それが、「今にコミットして生きる」ということです。
これができるようになると、「後悔」ということが完全になくなります。
よく、「タイムマシーンに乗って1年前に戻れるとしたらどうしますか?」という話がありますが、私の場合には、今と同じようにしかならないと断言できます。
なぜならば、100%やりきっているからです。もう一度繰り返しても、今よりも良くなりようがないのです。これ以上は無理というレベルで、毎日、全力で生きています。あなたも今日から「今にコミットして生きる」人生に変えてしまいましょう。
最高の仕事その3並行仕事術「ながら仕事」は、やめなさい
学生時代、ラジオを聞きながら受験勉強をした人も多いと思いますが、「ながら勉強」や「ながら仕事」は効率がいいのでしょうか。
これは、脳科学的には結論が出ています。多くの論文が示すところによると、人間の脳はマルチタスクができません。一度に二つのことを処理することは、脳科学的には不可能なのです。
一見して、同時処理しているようで、脳の中で高速で二つの回路を切り替えているだけなのです。
たとえば、テレビを見ながら本を読むということはできますが、それは脳の「テレビを見る」部分と「本を読む」部分を、1秒間に何度も切り替えながら、見かけ上、同時進行しているように見せているにすぎないのです。
つまり、「ながら仕事」ははかどるどころか、仕事効率をものすごく下げているのです。
どのくらい下げているかというと、難易度の高い二つのことを同時に行った場合、それぞれ別々に行う以上の時間がかかるそうです。
つまり、「ながら仕事」をすると、1時間で終わる仕事が2時間かかるかもしれない、ということです。
「ながら仕事」ではなく「並行仕事」を意識する
「ながら仕事」は脳の効率を下げます。最もわかりやすいのは、「歩きスマホ」の例です。「歩きスマホ」によって人にぶつかったり、ホームから転落したりする事故も起きています。
つまり、歩きスマホによって、圧倒的に注意力が低下しているのです。何かを組み合わせて仕事をする、というのは基本無理だと思ってください。
ただし、「ながら仕事」の一方が、ものすごく単純な場合は、その限りではありません。たとえば、電車に乗って移動中に読書をする。
電車に乗っているのは、ただ座っているだけ、または立っているだけですから、同時に行うことは可能です。
あるいは、入浴しているときに読書をする人もいますし、入浴中に考えごとをする人もいます。入浴は、基本的には湯船につかっているだけですから、何かを同時に行うことが可能です。
むしろ、湯船につかっている状態というのは、雑念が入りにくく、集中しやすく、リラックスもしているので、アイデアが生まれやすいのです。
「アイデア創出時間」には、極上の時間ともいえます。あるいは、歩きながら考えるというのもメリットが大きいです。歩くことで脳が活性化するので、やはりアイデアが生まれやすくなります。
このように、「電車に乗っている」「入浴している」「歩いている」といった、非常に単純な動作と同時であれば、同時進行的に仕事や考えごとをこなすことができるのです。これを「ながら仕事」と区別して、「並行仕事」と呼びましょう。
移動中に読書をするというのは、1時間の移動時間で1時間の読書時間を捻出できていますから、それは1時間の時間を創り出したのと同じことです。
入浴時間30分で、「アイデア出し」をするというのも、「アイデア出し」の時間30分を捻出したと同時に、机に向かってアイデア出しをするよりも効率が上がる可能性があるので、実際には30分の時間投資で、40~60分の時間を創り出したのも同じことです。
このように、互いに効率を下げる「ながら仕事」ではなく、組み合わせることで飛躍的に仕事効率を高める「並行仕事」を意識することで、1日数時間の時間を作り出すことが可能になります。
私たちは、通勤や通学あるいはそれ以外の電車での移動時間に、かなりの時間をとられています。東京都内に通勤するサラリーマンの平均通勤時間は片道約1時間です。
つまり、1日2時間を移動時間にとられています。睡眠時間を除くと、1日の10%以上を「移動時間」にとられているのです。
それでは、移動時間を有意義に使うにはどうしたらいいのでしょうか。私の移動時間の使い方は、「読書」「耳学」「考えごと」のズバリ3つです。
並行仕事術1移動読書術
「読書をしましょう」というと、多くの人は「時間がありません」と言います。しかし、移動時間を使えば時間がなくても読書はできます。
私は、月に20~30冊ほどの本を読んでいますが、自宅では読まないので、すべて移動中に読みます。
つまり、やろうと思えば、移動時間だけで月に20~30冊の読書ができるということです。
そこまで読まないとしても、移動時間だけで月5冊ほどの読書をすることは、電車通勤しているサラリーマンであれば、誰でもできるのです。
移動時間で効率的に読書する。移動読書術のコツをお伝えします。
今日読む本を決める
まず、朝出かける前に、「今日は、この本を読もう」と決めて、カバンに1冊だけ本を入れます。そうすると、たいてい家に帰ってくるまでに、その本を読み終えています。
ノルマというと堅苦しいですが、きちんと「移動読書」の目標設定を行うということです。
目標設定をすることでドーパミンが分泌されますから、モチベーションが高まるとともに集中力がアップし、学習効率も高まります。
1日1冊、というのは慣れてくると、非常にいいペースです。
残り20ページで帰宅すると、翌日は2冊の本を持って家を出ないといけないので、それまた面倒くさい。
また、1日のうちで読了したほうが、内容を忘れないので考えをまとめやすくなります。本の内容を把握しやすいのです。
そうしたメリットもあるので、「とにかく、きっちり今日中に読み終えよう」という気持ちになります。
1日に1冊が無理という人は、「1週間で1冊」からスタートして「3日で1冊」「2日で1冊」とペースアップしていくといいでしょう。
いつまでに、「この本を読もう」と目標設定をしたら、必ずその目標は遵守してください。
そうすると、電車の中でゲームをしたり、メールやメッセージをチェックしたりする暇がなくなります。どうしても、メールチェックしたいのなら、本を読み終えてからやる、くらいの意識を持つことです。
そうすると、読むプレッシャー、それもほどよいプレッシャーがかかりますので、集中力が高まります。
読んだら必ずアウトプットする
本を読んだら必ずアウトプットをしてください。本の感想や気づきを書きとめるということです。アウトプットをしないと、せっかく本を読んでもすぐに内容を忘れます。読書をしても、何の意味もないのです。
しかしながら、電車で移動中にアウトプットするのは困難なので、家に帰ってから、アウトプットすることになります。
FacebookなどのSNSやブログなどに、読み終わった本の感想や気づきを書きます。
一番簡単なアウトプット法は、「3ポイント・アウトプット法」です。その本を読んで得られた気づきを3つ、それぞれ1行ずつ書く方法です。この方法なら、3分あればできます。
読書に関する詳しいアウトプット法は、拙著『読んだら忘れない読書術』に書いてありますので、そちらを併せてお読みください。
電子書籍を活用する
満員電車の中では、読書もできないという人もいるでしょう。その場合、電子書籍を活用するといいでしょう。
スマホやタブレットで読める電子書籍は、スペースをとらないですし、片手でページ送りができますので、満員電車で片手にカバンを持っていても大丈夫です。
本を読むのが速い人は、本を1冊持って家を出ても、帰ってくるまでに読み終えてしまうこともあるでしょう。
そんなときは、電子書籍に「時間があるときに読みたい本」を何冊か入れておくと便利です。電子書籍ですと、簡単にアンダーラインを引くこともできます。
私は、本はマーカーで線を引きながら読む「アンダーライン読書術」をおすすめしていますが、紙の本だと満員電車の中では難しいです。
しかし、電子書籍ですと、アンダーラインも簡単に引くことができます。
並行仕事術2耳学
電車の中で、イヤホンやヘッドホンで音楽を聞いている人がたくさんいます。ただ、必ずしも音楽を聞いているわけではなく、勉強のための音声を聞いている人もいるはずです。
満員電車で、隣の人のイヤホンから英語がかすかに漏れているのが聞こえてきて、「あっ、この人英語の勉強をしているんだ」ということが時々あります。
音声ファイル、音声教材などを活用して耳から学ぶ。これを「耳学」と呼びます。電車の中、特に満員電車の中での「耳学」は、非常に効果的です。
まず、両手がフリーになりますので、カバンや荷物を持っていても関係がありません。
ぎゅうぎゅう詰めの満員電車では、本を読むことも、スマホを見ることも困難になりますが、「耳学」であれば、満員電車でも他人に迷惑をかけずに、勉強することができます。「耳学」をやっている人はわかると思いますが、ものすごく集中できます。
目をつぶって「自分の世界」に入ると、そこは家にいるのと同じくらいの「学び」のためのプライベート空間になります。
満員電車というのは乗っているだけで疲れますし、疲れた顔をしている他の乗客を見ているだけで気分がネガティブになります。
しかし、「耳学」で自分の世界に入り込むことで、そうした満員電車でのネガティブさをシャットアウトし、満員電車を疲れずに乗り切ることもできるようになるのです。
スマホとイヤホンさえあれば、誰でも「耳学」をはじめられるので、スタートするハードルも低いと思います。
耳学で聞けるものは、1.Kindleの読み上げアプリで聞く電子書籍2.語学教材、語学の音声アプリ3.動画セミナーの音声4.YouTubeの音声5.ポッドキャストなど、いろいろなものがあります。
これらは、電車を待っている間や歩いている最中、自動車に乗っている間にも聞くことができます。
耳学を上手に使えば、1日2時間以上のスキマ時間を、自分の「学び」と「自己投資」の時間に変えることができます。
さらに、朝の通勤時間を「耳学」に充てることによって、今まで無駄にしていた「脳のゴールデンタイム」も有効利用できます。
同じスマホの使い方ですが、ゲームに使うのか、「耳学」に使うのかで、10年後、まったく別の人間になるくらいの差が生まれるでしょう。
並行仕事術3考えごと
私がよくやる並行仕事術は、「考えごと」です。「考えごと」といっても、漠然とした考えごとではありません。
たとえば、朝、風呂場に入ってシャワーを浴びる前に、「今日のメルマガは何ついて書こうか?」とテーマを決めて、風呂場に入ります。
シャワーが終わって、風呂場から出るまでに、「メルマガに書くネタ」が決まっているのです。これは制限時間を決めたケツカッチン仕事術でもあります。
シャワーの時間という10分以内の間に、「メルマガに書くネタ」が確実に決まります。
これを机に向かってから、「今日のメルマガは何について書こうか?」と考えはじめると、やはり同じ時間10分という時間がとられてしまいます。
それも、朝起きたばかりの猛烈に濃い時間ですから、実際はその4倍。つまり、40分を失っているのと同じことです。
このように、シャワーを浴びながら考えごとをするだけで、シャワー時間以上の時間を創出していることになるのです。
人は、「ながら仕事」はできない、といいますがシャワーの手順は決まっていますから、何も考えなくても手は動きます。
むしろ、シャワーを浴びて、交感神経モードに身体が切り替わるので、脳が覚醒モードに入って、いいアイデアが次々と浮かぶ瞬間でもあります。
トイレに入って、出るまで。家を出て電車に乗るまで。電車に乗って駅で降りるまで。5~10分くらいのスキマ時間の活用法として、「考えごと」というのは非常におすすめです。
普通の人は、何も考えずに、シャワーを浴びて、トイレに入り、駅まで歩くわけですから、「アイデア出し」「判断」「決断」の時間として活用すると、おもしろいように仕事がはかどります。
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