フレーム11つに絞るKPIの原則とはKPI(KeyPerformanceIndicator)という言葉をご存知でしょうか?本書の「はじめに」でも述べましたが、私は11年間リクルートで本書のベースになっている「数字の読み方・考え方」という講座の他、「KPIの基礎講座」の講師も担当していました。
KPIを活用する際に最も重要なメッセージは、管理する数字を最も重要な「1つに絞る」ことです。
KPIは、事業のゴールに向けて現在の事業活動の状態を表す数字です。
イメージや役割でいうと、自動車が交差点に進入した際に交差点に入ってよいかどうかを判断する「信号」です。
信号は、青は「進め」、黄は「注意」、赤は「停まれ」です。
KPIの数値は、現在の事業活動をそのまま「進む」のか、「注意」するのか、「停まる」のかを判断する信号の役目なのです。
なぜKPIは1つに絞るのか?これは、自動車の例で考えると分かりやすいでしょう。
交差点に信号が複数あるとドライバーが迷うからです。
1つの信号が「青」でもう1つの信号が「赤」を示していたらどうでしょうか?ドライバーは迷ってしまいます。
また、信号の位置はどうでしょうか?当然ですが、信号は、交差点に車が進入する前になければ意味がありません。
また、ドライバーが交差点に進入する前に信号の色を判別できなければ意味がありません。
つまり、KPIは事業目標の結果が出る前に分かる「先行指標」でなければなりません。
これらから、事業における「信号」であるKPIは「1つに絞る」ことが重要なのです。
詳しく知りたい方は、拙著『最高の結果を出すKPIマネジメント』をお読みください。
1つ事例を紹介しましょう。
先日、来年度からKPIの導入を検討している一部上場企業から相談を受けました。
私の著書を読んで、ヒントがあると感じてくださったようです。
この企業は、従来は結果指標である売上を中心に追いかけていました。
結果指標だけを見ていると、早期に方向修正ができないので、先行指標をマネジメントするKPIの導入を検討していました。
ところがこの企業は、多数の商品、多数の顧客業界、多数のエリア(地域)に展開をしています。
商品×業界×エリアの3軸で整理すると立方体のようになり、かなり複雑です。
私が著書で書いた、「1つに絞る」のは無理ではないかと感じ、私とミーティングをしたいと連絡があったのです。
事前に同社のホームページを読むと、トップの戦略が書かれていました。
注力業界、ソリューションテーマを決めて3カ年事業計画を推進するとあります。
ということは、注力業界への徹底度合い、もしくはソリューションテーマへの徹底度合いをKPIとして見ていくことが良いのではないかと仮説が立てられます。
ところが実際にお会いして話をすると、顧客企業のニーズに合わせて、様々な商品を提供することは変えないそうです。
つまり注力業界は決める。
ソリューションテーマも決める。
しかし、これさえ守れば、どのような商品・サービスを提供しても良いということです。
しかも、注力顧客、テーマへの注力はきちんとできる営業組織だと言います。
もともとは、商品×業界×エリアの3軸で整理すると立方体のようになり、かなり複雑だという前提でした。
ところが、すでに注力業界を決めていますので、複雑性はかなり下がっています。
また、業界が決まっているとエリアの軸もシンプルです。
残りは商品を絞るのかどうか。
詳細を伺うと、商品は絞らず、顧客のニーズに合わせて適切な商品を提供すると言います。
であれば、図40のようなCSF(CriticalSuccessFactor:重要成功要因)を見つけるために、どの営業ステップが重要なのかを話しました。
その際には、私の営業時代の経験が役立ちました。
私はリクルート時代、企業の採用支援を行う部門の営業マンでした。
この会社と同じく、企業のニーズに合わせて、どのような商品を提供してもよかった時代があり、その時のKPI設定が役に立ちました。
営業プロセスのプレゼンテーションに注力し、そのプレゼンテーション額をKPIにしました。
ただ、単純なプレゼンテーション額では、現場が架空のプレゼンテーション額を申告する可能性があります。
そのような疑心暗鬼は意味がありません。
そこで、プレゼンテーションして顧客が検討する額にサインもしくは印鑑をいただくフローを設計しました。
すると架空のプレゼンテーション額を申告する可能性も低減します。
また、顧客も一度サインすると、前向きに検討する度合いも高まります。
このような話をしたところ、これが有力なKPI候補となりました。
同社と同じ状況でも、商品やサービスを絞る方針である場合は、商品やサービスの提案社数をKPI候補にすることもできます。
このようにKPIは、その戦略や方針により変化するのです。
ここで最もお伝えしたいのは、KPIを1つに絞る重要性です。
つまり、Focus&Deep。
これは限られた経営資源(人、モノ、カネ)を分散させるのではなく、1か所に集中投下する重要性を表した言葉です。
特に資源が限られている中小企業にとって、Focus&Deepは、とても重要なコンセプトです。
こう書いても、すべて重要なことだらけで、絞ることもできないという話も聞こえてきそうです。
その場合は、1つずつやり終えるのがお勧めです。
実は複数の業務を掛け持ちしながら実行するのは、結果として生産性を下げるのです(※)。
つまり、重要なことが複数あったとしても、まずは1つに絞り、それを実行する。
それを繰り返すことが、結果として高い成果につながります。
※エリヤフ・ゴールドラット教授の『ザ・ゴール』などに書かれている「制約条件の理論」に詳しくあります。
読むと、掛け持ち業務の生産性の低さが理解できます。
フレーム2二兎を追う者は一兎をも得ず。
ではなくアウフヘーベン対立するテーマを共に実現させるには「二兎を追う者は一兎をも得ず」。
小学校や中学校で習ったことがあるのではないでしょうか?欲張っていろいろなことに手をつけると結局ひとつも手に入らないという慣用句です。
1つに絞ることを推奨する言葉でもあります。
一方で、多くのことに同時に手をつけて、すべてを手に入れる要領のよい人に対する「一石二鳥」という言葉もあります。
1つの石を投げて2羽の鳥を捕まえるのですから、これは生産性も高いですね。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」と「一石二鳥」のどちらを選べば良いのでしょうか?一般的には「1つに絞る方が生産性は高い(Focus&Deep)」というのは前述の通りです。
つまり一石二鳥は再現性が低く、どうしても偶然性に頼るところがある気がします。
単純に「二兎を追う者は一兎をも得ず」と「一石二鳥」を比較すると「二兎を追う者は一兎をも得ず」に軍配を上げざるを得ないのです。
前項の「1つに絞る」という考えに照らし合わせると、これが妥当解でしょう。
ところが実社会では、2つの対立するテーマを両方とも実現しないといけない、あるいは実現したいことがあるのです。
たとえば、限られた経営資源(ヒト、モノ、カネ)をどこに投入すれば良いのかという経営的な判断。
具体的には、「業績確保」と「働き方改革への対応のための労働時間削減」、あるいは「短期業績の確保」と「長期成長のための投資」などです。
前者の「業績確保」と「労働時間削減」では、今まで残業して業績を確保していたのに、労働時間を削減したら、その仕事はどうすれば良いのか?そのようなことは実現できないと考えがちです。
だから「働き方改革のための労働時間削減」をすれば、「業績の確保」はできないと考えてしまうのです。
後者の「短期業績の確保」と「長期成長のための投資」では、業績見通しが厳しいので、短期業績確保のために、長期成長のための投資である「研究開発」投資や「従業員教育」投資を削減しようと考えてしまうのです。
このような、一見、両方を同時に実現できないような矛盾している状況に陥った時に、両方を実現するキーワードが「アウフヘーベン」です。
数年前に東京都知事の小池百合子さんが使ったのを聞いたことがある方もいるかもしれません。
哲学者のヘーゲルが「弁証法」という、問題解決の方法論の中で使った用語です。
弁証法では、図41のように正反合という3つのステップを経て問題解決を行います。
正(テーゼ)とそれと対立・矛盾する反(アンチテーゼ)という概念があります。
これを1つ高い次元で統合(アウフヘーベン)するという3つのステップです。
日本語では止揚と呼びます。
先ほど、例に挙げた「業績確保」と「労働時間削減」では、このままでは対立してどうしようもありません。
しかし、「生産性向上」を実現することができれば、この2つを同時に実現できるのです。
この「生産性向上」というアウフヘーベンで両者を同時に実現できるわけです。
少し抽象度が高い例では、この図形は「四角形」であるというテーゼに対して、これは「三角形」であるというアンチテーゼがあります。
これらは平面という二次元で両方の特徴を成立させることはできません。
しかし、1つ次元を加えて三次元であれば、ピラミッド、つまり四角錐であれば2つの概念を矛盾なく両立させることができるのです。
四角錐は、上から見ると四角形、横から見ると三角形ということです。
一見対立する概念は、それぞれの視点や視野が固定されていることが原因であることが少なくありません。
それらの視点・視野を変化させることで、アウフヘーベンできるのです。
つまり、単純に一石二鳥を狙うのではなく、次元を変えて「アウフヘーベン」する柔軟性を持つことがポイントなのです。
1つ事例を紹介しましょう。
たとえば「短期業績の確保」と「労働時間削減」の同時実現はとても難しそうです。
前述で生産性を高めると良いと書きました。
具体的にはどうすれば良いのでしょうか?いくつかアウフヘーベンする方法があります。
その中の有効な手法が、本章で取り上げたKPIマネジメントを導入することです。
KPIマネジメントは、やることを1つに絞り、従業員皆がそこに注力するのです。
当然ですが、KPIマネジメントに関連しない活動はしなくてよいわけです。
結果として労働時間を削減することができ、「労働時間削減」を実現することができます。
また、KPIマネジメントにより、成果に効果のある活動に皆が注力するので「短期業績の確保」の可能性も高まります。
つまり、「短期業績の確保」と「労働時間削減」の同時実現ができる可能性があるのです。
フレーム3「3つあります」コンサルタントの基本話法「ポイントは3つあります。
まず1つめは…」というような説明の仕方を聞いたことはないでしょうか?ビジネスコンサルタントの方々がよく使う話し方です。
この「3」は大事なのです。
人はたくさんのことを同時に処理できません。
つまり次々と違う話をされても理解できないのです。
これは、話す場合にだけ当てはまるのではありません。
身近な例では、食品売り場などでの試食などでもそうなのです。
ジャムの試食をイメージしてください。
3、4種類の味が違うジャムを試食できる場合と10種類以上のジャムを試食できる場合の2通りの販促策があるとします。
どちらが実際の購入率が高いでしょうか?実は、3、4個の試食の方が購入率は高いのです。
試食する顧客数は、10種類以上の方が多い場合もあります。
しかし、試食した顧客は迷ってしまい、結局買わないのです。
もちろん、ジャムではなくて、もっと重要な話であれば話は違います。
たとえば家を購入するなど人生の重要な決断では、同時に多くの選択肢から比較検討する人も少なくありません。
しかし、そのような決断をすることは人生でそうそうありません。
通常の場合、人が並行検討できるのは最大4から6程度の選択肢であることが経験から分かっています。
そう考えると、それ以下の数値である3というのは適切な数字です。
「ポイントは3つあります」と伝えることで、聞き手の頭の中に、3つの箱を作るわけです。
そして「1つめは…、2つめは…、3つめは…」と準備した箱に話を入れていく。
聞き手にとっても易しいわけです。
資料で箇条書きするケースでも、箇条書きがたくさん並んでいると理解しづらいことが多いでしょう。
あるコンサルタントの方にビジネス資料作成の講義をしてもらったことがあります。
その方によると、箇条書きが4つを超えると、グルーピングしてまとめる、あるいは、1マス右にずらして次元を変えられないかを検討するという話でした。
話すだけではなく、書く場合も「3」は大事な数字のようです。
また、顧客のキーパーソンから質問を受けた際に、その瞬間には、3つのポイントが思い浮かんでいなかったとしても、まず「ポイントは3つあります」と言ってから、1つめを話しながら、残りの2つのポイントを考えるというのも実際にあるとのこと。
相手とのコミュニケーションの中で、結果、それが2つで終わっても4つになっても良いという話を伺いました。
まずは3つポイントがあると置いてみる。
そして3つないか考えてみる。
つまり、自分に対して3つアイデアを思いつくノルマを課す。
そして、人に伝える場合は、相手に3つの箱を作ってもらうというテクニックを持っておく。
これらも思考のスタートとして重要です。
実際は3から5程度だとざっくり理解しても問題はありません。
とはいえ、「困ったら3つポイントを言ってみる!」を実践してみてください。
フレーム44P(マーケティングミクス)ヒット率を上げる拡販戦略「4」が付くフレームワークの代表例は、図42の4Pです。
4Pは別名マーケティングミクスとも言います。
Product(製品)、Price(価格)、Promotion(プロモーション、宣伝、販促)、Place(営業チャネルや流通チャネル)というPで始まるマーケティングで重要な4つの用語の総称です。
良い製品を、適切な価格で、上手な販促を行い、適切なチャネルを活用して販売することが重要だということを教えてくれます。
4つのPのうちProduct、Price、Promotionは、イメージしやすいでしょう。
Placeは、店の棚の「場所」を指しているとイメージするとよいかもしれません。
商品に合った適切な場所で販売するということです。
それを広義にとらえて、Placeが使われています。
売れている商品は、この4Pに「整合性」があります。
高額な商品を販売する場合は、高額(Price)な商品(Product)を取り扱うメディア(Promotion)を使い、適切な販売チャネル(Place)を活用します。
これに整合性がないと売れないのです。
マーケティング関係者のあいだで有名な入浴剤の話があります。
ある大手メーカーが新しい入浴剤を作りました。
これで入浴剤市場に新規参入しようとしたのです。
製品自体はトップシェアの製品と遜色ありません。
価格もトップシェアの製品より安くできました。
これは、原価の納入先を絞り、製造方法にもパッケージにも工夫をしたからです。
コマーシャルも人気女優を使って大々的に流しました。
さて結果はどうだったのでしょう。
新製品の投入、それに伴う大々的なコマーシャルキャンペーンにもかかわらず、不思議なことに新規参入メーカーではなく、トップシェアの入浴剤の一人勝ちのままでした。
むしろトップシェア製品は、従来の売上よりも好調な結果を残したのです。
どうしてでしょうか。
それは、次のような理由でした。
コマーシャルを見て好感を持った主婦は、スーパーマーケットに、その新しい入浴剤を買いに行きました。
ところが、スーパーマーケットの棚の大半はトップシェアの入浴剤で占められていたのです。
主婦は新しい入浴剤を購入しにスーパーマーケットに来たのですが、棚を見て「やはりトップシェアの入浴剤の方が良い」と思い、買っていったのです。
つまり、トップシェアの入浴剤を扱っている会社は、コマーシャルなどを強化するのではなく、スーパーなどの流通に対して、従来よりも棚を確保し、新規参入を阻害したということです。
このマーケティングの成功と失敗を説明するのに「4P」が、とても有効です。
トップシェアの入浴剤の視点から考えてみましょう。
国内での入浴剤マーケットを作ったのは同社であり、同社のProduct(製品)が、入浴剤のデファクトスタンダード(事実上の基準)になっていました。
競合商品と比較すると、ややPrice(値段)は高いかもしれませんが、製品とのバランスでは問題ないでしょう。
つまりブランド価値があると言うことです。
また、Promotion(宣伝)に関しては、長年のコマーシャルが功を奏し「入浴剤といえば、第一想起(最初に思い浮かぶ製品)」となっていました。
最後のPlace(流通チャネル)に関しても、競合企業の新しい入浴剤に対して棚を押さえるという戦術で対抗したのです。
もちろん何らかのインセンティブ(報奨金)を流通チャネル(スーパーなど)に支払ったかもしれません。
あるいは、仕切り値を下げたのかもしれません。
どちらにしても、トップシェアの企業は、競合企業の新規参入に対して、4Pの整合性がある戦略を実行したのです。
一方、新規参入しようとした企業は、Product、Price、Promotionには整合性があったのですが、Place(流通チャネル)への対応が弱かったようです。
つまり4Pの整合性がなかったのです。
これは入浴剤に限った話だけではありません。
我々のビジネスを実現する際にもこの考え方は有効です。
たとえば、市場に画期的な製品を投入する場合を考えてみます。
このProduct(製品)は、従来にない機能を持っている高機能商品です。
研究開発などにも多額の資金を投入しているのでPrice(価格)は高めに設定しています。
この高額製品を購入できる人は、限られていますので、高額所得者がよく利用するアプリやメディアなどでPromotion(広告・宣伝)を行います。
そして、反響があった顧客に対しては、ある程度以上の教育を実施したPlace(営業)を使用します。
この中のどれかが欠けていても、マーケティング戦略が失敗する可能性が高まるのです。
たとえば、Promotion(広告・宣伝)を一般の人が利用するメディアに変えたらどうでしょう。
ターゲットの人材には「接点」がないので、非購入者からの問合せだけが増えてしまい、販促効果は低減します。
人件費を抑えるために、Place(営業)を経験の浅い若手営業に変えるとどうでしょうか。
高額所得者への対応に不手際があり、拡販できないどころか、クレーム対応に追われるかもしれません。
この手の一部の特定顧客に高額商品を拡販する戦略を「スキムミルク(ホットミルクの表面部分、転じて上位顧客のみ)戦略」と言いますが、この顧客に拡販する際には、教育された営業チャネルや高額所得者向けの流通チャネルが不可欠なのです。
4Pは、4つのPの整合性をチェックするフレームです。
販促策などを検討する際に、ぜひ参考にしてみてください。
フレーム55F(ファイブ・フォース)生き延びるための環境分析次は5で始まるフレームです。
ここでは図43の5F(5Force)を紹介します。
これは3C(Company:自社、Customer:顧客、Competitor:競合)の拡大版という位置付けのフレームです。
簡単にポイントを説明しましょう。
5FのFは「Force:力」のFです。
企業は様々な『力』と戦う競争環境の中で事業運営をしています。
その状態を表す図なのです。
新規参入を考える市場や、自社の属している市場を整理する際に有効なフレームです。
5つの力を順に見ていきましょう。
まず1つめの力は『顧客』からの力です。
顧客はできるだけ安く商品・サービスを購入しようとします。
つまり自社から見ると値下げ圧力があり、売上を減らす要因があるのです。
この力は様々な場面で手を変え、品を変え襲ってきます。
「たくさん購入するので」「いつも購入しているので」「初めてなので」「クレームがあったので」などが代表例でしょう。
この力に打ち勝って収益を担保しなければならないのです。
2つめの力は『仕入れ先』からの力です。
仕入先はできるだけ高く原材料などを販売しようとします。
つまり自社から見ると、仕入れの値上げ圧力があり、原価や経費を高くし、利益を圧迫する要因があるのです。
この力も形を変えて様々に襲ってきます。
「他社の方が高く仕入れてくれるので」「市場価格が高くなったので」などです。
3つめの力は『競合企業』からの力です。
競合企業は、隙があれば、自社の顧客を奪おうと虎視眈々と機会を狙っています。
「安くする」「サービスを付加する」「高性能の新製品を出す」「担当者を接待する」などです。
この力にも打ち勝つ必要があるのです。
4つめの力は『新規参入者』からの力です。
新規参入者とは、現在は自社の属している市場・マーケットには参加していないが、新たな競合企業として、この市場に参加しようと考えている企業のことです。
つまり潜在的競合企業です。
以前、ニッチ市場のトップメーカーであったベンチャー企業の創業社長と『新規参入者』に関して話をしたことがあります。
社長曰く、ベンチャー企業が創り出したニッチ市場は、設立当初は市場規模も小さく、大企業は参入してきません。
ところが、ある規模になってくると大企業が『新規参入者』として市場に参加してきます。
ただ、参入当初は、その市場はまだ大きくないので、大企業の中で、そのニッチ市場を担当する人材は、そう優秀ではないそうです。
ところが市場規模が大きくなり数十億から100億円規模になると、競合である大手企業のエース級の人材が投入されるそうです。
資本に勝る大企業のすさまじい攻勢が開始し、ベンチャー企業はひとたまりもなくなります。
このベンチャー企業も現在は、大企業のパワーを見せつけられ、存在していません。
さて5つめです。
これは『代替者』の力です。
これはマーケットを変えてしまう大きな可能性を秘めています。
従来の商品・サービスの代わりとなる商品サービスが出てくることです。
古くは、ポケベルに対してのPHS。
PHSに対しての携帯電話(ガラケー)、携帯電話に対してのスマホなどが代表例です。
最近ではテレビなどのマスメディアに対してのネットメディアやSNS広告などもそうかもしれません。
私が営業だった25年前、営業職はポケベルを持っていました。
初期のポケベルは音が鳴るだけでしたが、私が利用していたのは、数桁の数字がディスプレイに表示されるタイプでした。
このポケベルは、伝える情報が数字だけですが、地下であっても電車であってもお構いなしで、その伝達力はすさまじいものがありました。
そう言えば女子高生も同じようにポケベルを持ってコミュニケーションを取っていました。
ところが、ポケベルはほんの10年もたたないうちにPHSに取って代わられ、当時のポケベル専業メーカーや販売会社が次々に倒産していったのです。
つまり、『代替品』によって市場を根こそぎ奪われてしまったのです。
しかし、PHSの栄華も長くは続きませんでした。
携帯電話、特にimodeという『代替品』によって顧客を根こそぎ奪われてしまったのです。
ところが、そのimodeもスマホに市場を奪われました。
市場を3Cで整理するのも有効なのですが、代替品と新規参入者への意識が弱くなりがちです。
市場を把握したいのであれば、5Fの観点で整理する。
とても有効ですので、活用してみてください。
フレーム66Σ(シックス・シグマ)ミスゼロを目指す日本、ミスはある前提で考える諸外国6から始まるフレームワークで紹介したいのは図44の6Σ(シックス・シグマ)です。
フレームを活用しようというのではなく、この源流にある考え方を学んでほしいと考えています。
まずは、6Σの概要を説明しましょう。
6Σは、1980年代に米モトローラが開発した品質管理手法であり経営手法です。
主に製造業中心に活用されていますが、製造部門に留まらず、営業部門、企画部門などの間接部門への適用、さらにはサービス業をはじめとする非製造業への適用例も多数あります。
シックスシグマは、統計学の標準偏差を意味するσに語源があります。
「100万回の作業を実施しても不良品の発生率を3、4回に抑える」ことへのスローガンとしてシックスシグマという言葉が使われ、定着していきました。
100万回=1,000,000回と0が6つあるので6Σだ、とすると覚えやすいでしょう。
この冒頭でも書きましたが、6Σを使用しましょうというのが、ここで伝えたいことではありません。
6Σの思想を使いましょうということです。
6Σの最終目標は100万個の作業を実施しても不良品の発生率を3、4回に抑えるということです。
何をみなさんに伝えたいのか。
それは、最終的なゴールでさえ、不良品の発生率をゼロにしようとしていないということです。
日本では、不良品の発生率をゼロにしようとする話をよく聞きます。
ゼロにすべきだという話もよく耳にします。
ゼロを目指すのは何が問題なのでしょうか。
ミスや不良品はないに越したことはありません。
しかし、ゼロを目指すことの問題が3つあります。
1つは、6Σ(100万個に2、3個のミス)から不良品0にするのは多大な努力とコストが必要なのです。
当然ながらそれは製造コストに跳ね返るので、商品価格を高くし競争力を落とすか、高くしないのであれば自社の利益を削るしかありません。
2つめは、欠品ゼロを年間目標にした場合を想定してください。
たとえば定期的に欠品状況をチェックします。
最初のチェックで不良品が出ると、もうその年間目標達成はできないのです。
達成できない目標を残りの長期間追いかけるのはかなりつらいものです。
関与する従業員のモチベーションも維持できません。
このようなリスクのある指標を追いかけるのは意味がないと考えます。
3つめは、顧客もそんなことを求めていないのです。
不良品ゼロにできるのは素晴らしいです。
しかし、大半の企業はそれを実現できません。
結果、部品100を求められたら、不良品があるかもしれないので1つ多く納品したりします。
それが現在の一般商品に対する世界標準なのです。
もちろん、不良品ゼロを求められる業界もあります。
ロケットや飛行機などはそうかもしれません。
しかし、そのような業界の方が圧倒的に少ないのです。
6Σから学んでほしいのは、ミスは起きると考えるか、起きないと考えるかという思想です。
製造業であれば、最終的には6Σ程度に抑えたいと思っています。
非製造業であれば製造業ほど、繰り返し業務がありませんので、6Σではなく5Σや4Σ、場合によっては3Σくらいかもしれません。
私は、ミスは起きると考えています。
6Σから、ミスを「見える化」して、一定量のミスは許容するという思想を知ってください。
フレーム77つの習慣人生で大切なことにフォーカスせよ7で始まるフレームと言えば、世界的に翻訳され、日本でもベストセラーになっているスティーブン・R・コヴィー博士の「7つの習慣®」があります。
この「7つの習慣」は研修や本になっているのでご存知の方も多いと思います。
7つの重要な習慣があるのですが、その中で私が一番好きな話をここでは紹介します。
博士は言います。
図45のように「仕事を緊急度の高低と重要度の高低の2軸によって4分類しなさい。
そして緊急度が低く重要度の高い仕事から優先的にスケジュール帳に書き入れなさい」。
博士は、この緊急度が低く重要度の高い仕事を「大きな石」と呼んでいます。
「スケジュールを大きな石で埋めるのです」とアドバイスしてくれます。
一般的な感覚で言うと「重要度が高い仕事の優先順位が高いのは分かる。
しかし緊急度が高い仕事も優先順位が高いのではないか」と感じませんか?私も初めてこの考え方に触れた時にそう思いました。
つまり重要度も緊急度も高い仕事こそコヴィー博士の言う「大きな石」ではないかと思うのです。
これは、次のようなたとえ話によって理解すると良いようです。
「今後のグローバル化や中国の大発展を考えると英語や中国語を学んでおこうと思っている人は少なくないはずです。
それは今、気付いたというよりも数年前もそう感じていたのではないでしょうか?しかし、語学を学ぼうという意識はあったとしても、現在の仕事で英語も中国語も直接必要でない場合、実際に学び出した人はほとんどいないのが実情です。
結果、数年たっても使えるレベルになっていません。
そして、この習慣を続ける限り、来年も再来年もそうなのです」。
耳が痛い話です。
これがコヴィー博士の言う「重要度は高いが緊急度が低い=大きな石」なのです。
数年前に週に1回でも2回でも語学を学び始めていたとしたらどうなっていたでしょうか。
ビジネスシーンでもそうです。
今日しなければいけない仕事ではないけれど、将来に備えてやっておいた方が良い勉強、研修などがそうです。
重要顧客への自社への満足度に関するインタビューなどもそうかもしれません。
近視眼的に考えると、明日までにやる仕事をやり遂げることは極めて重要です。
しかし、本来は、明日までにやらないといけない仕事だけを日常的にしてしまっている段取りの悪さを課題解決すべきことなのだと思います。
そのために、「仕事の優先順位をつけ、優先順位の低い仕事はやらない」という習慣が重要なのです。
これは、ビジネスだけではなく、とても有効な考え方であると言えるでしょう。
私は、自分自身のスケジュールを考える際には、さらに少し工夫を加えています。
それは、具体的にスケジュールを考える際には「緊急度」のモノサシを可能な限り無視するのです。
つまり私たちは、常日ごろ、知らず知らずのうちに「緊急度」のモノサシで考えるクセが染み付いています。
勇気を持って「重要度」のモノサシだけで考えてみることを実践してみてはいかがですか?
おわりに2000年ごろ、本を出したいと考えていた私は、すでに本を出版されていた先輩に1冊目の本の出し方を教えていただきました。
その方曰く、「企画書を作成して、本屋に行って、あなたの名前を付けたい出版社をピックアップして、そこに企画書を送れば良い。
そして連絡を待てば良い。
簡単でしょう」。
素直な私は、先輩のアドバイスに従い、企画書を10社分コピーして出版社に送付しました。
2社から返信が来ました。
1社が結果、1冊目の本を出版してくださった東洋経済新報社でした。
そしてもう1社が、今回の本を出版してくださった「かんき出版」でした。
しかし、かんき出版からの返信は、「この企画では出版できない」というお断りの返信でした。
貰った時は、当然がっかりしましたが、残りの8社は返信がありませんでした。
ですので断りの連絡だとしても、とても誠実な出版社だというイメージを持ったのを覚えています。
ですので、今回出版の話をいただき二つ返事でOKをしました。
10年を超えて思いが伝わったわけです。
とても嬉しく思っています。
この本を出すにあたっては、リクルート時代の「メディアの学校」の資料は当然のことながら、ビジネスインサイダージャパンに寄稿している記事、日経スタイルに寄稿した記事、あるいは、私が常日ごろ参考にしている本、たとえば『イシューからはじめよ』『習慣の力』『問題解決の技法』『ザ・ゴール』などが重要なインプットになっています。
ありがとうございました。
私は30年ほど、数字に関係する仕事をしてきました。
正確に表現すると様々な職種や業種で数字を活用してビジネスをしてきました。
しかも、それはこの本で説明したように四則演算でできるレベルの算数の応用でした。
そこに様々な先人の知恵を付加して、活用してきました。
この考え方が、みなさんの仕事力アップに少しでも役に立てば望外の幸せです。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
2019年2月中尾隆一郎
【著者紹介】中尾隆一郎(なかお・りゅういちろう)──株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長。
株式会社旅工房取締役。
1964年5月15日生まれ。
大阪府摂津市出身。
1987年大阪大学工学部卒業。
89年同大学大学院修士課程修了。
同年、株式会社リクルート入社。
主に住宅、人材、IT領域を歩み、住宅領域の新規事業であるスーモカウンター推進室で室長を務めてた時は、同事業を6年間で売上を30倍、店舗数12倍、従業員数を5倍に拡大させた。
リクルートテクノロジーズで社長を務めていた時は、リクルートが掲げた「ITで勝つ」を、優秀なIT人材の大量採用、早期活躍、低離職により実現。
リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを務め、2018年3月までリクルートで29年間勤務。
──専門は、事業執行、事業開発、マーケティング、人材採用、組織創り、KPIマネジメント、中間管理職の育成、管理会計など。
リクルート時代は、約11年間、リクルートグループの社内勉強会において「KPI」「数字の読み方」の講師を担当、人気講座となる。
良い組織づくりの勉強会(TTPS勉強会)主宰。
──著書に『最高の結果を出すKPIマネジメント』(フォレスト出版)、『リクルート流仕事ができる人の原理原則』『リクルートが教える営業マン進化術(共著)』(ともに全日出版)、『転職できる営業マンには理由がある!(共著)』(東洋経済新報社)などがある。
BusinessInsiderJapanにて毎月マネジメントをテーマに寄稿している。
「数字で考える」は武器になる発行日2019年3月4日第1刷発行著者中尾隆一郎発行者齊藤龍男発行所株式会社かんき出版〒102‐0083東京都千代田区麴町4‐1‐4西脇ビル電話営業部:03(3262)8011㈹編集部:03(3262)8012㈹FAX03(3234)4421振替00100‐2‐62304http://www.kankipub.co.jp/©RyuichiroNakao2019
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