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第5章 「パワハラゼロ」の職場を実現するために

第5章「パワハラゼロ」の職場を実現するために本章でお伝えしたいこと●企業がすべきパワハラ対策の概要●対応のコツは「放置せず」「うのみにせず」●何より重要なのは再発防止

企業が必ずやらねばならない「対策」とは?◆就業規則等の変更が必要になる「パワハラ防止法」の施行により、企業にパワハラ対策が義務づけられることになったのは、ここまで述べてきたとおりです。では、具体的にどのような対策を取ればいいのか。パワハラやセクハラのない職場をどのように実現していけばいいのか。本章ではその方法について考えていきたいと思います。事業主が講ずべきパワハラ防止対策等については、厚生労働省の「大臣指針」によって定められています。具体的には「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」となります。まず求められるのが、「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」です。簡単に言えば、就業規則等に「パワハラをしてはいけませんよ」という方針を明記するとともに、それに違反した人に対する懲戒処分規定を設けること。そして、その内容を社内に周知するとともに、研修や講習などを行うことです。ざっくり言えば、「就業規則にパワハラをしてはいけないこと、もしパワハラをしたら罰せられることを明記しなさい。そして、何がパワハラになるかの基準を明確にして、それを社員にちゃんと伝えなさい」ということです。ちなみに就業規則とは、使用者がその職場で働く労働者の労働条件や服務規則、懲戒処分などについて定めたものです。いわば「職場の憲法」とも言える重要なものです。そんなものは見たことがない、という人もいるかもしれませんが、常時10人以上の労働者が働いている職場については、就業規則の作成と届け出が義務づけられていますから、どこかに必ずあるはずです。◆相談窓口を設け、「その後の対応方法」も決めておくもう一つ必要になるのが「相談窓口の設置」です。パワハラが発生した際、あるいは「これはパワハラではないか」という疑いがある場合、どこに相談するかをあらかじめ社内で明確にしておき、周知させておくのです。単に担当者を決めるだけではなく、実際に相談が持ちかけられた際、どのように対処するのかといった流れも決めておく必要があります。大事なのは、社員が安心して相談できる体制を作ることです。当然のことですが、パワハラ窓口が当のパワハラ上司だった、などは論外ですし、社内に周知する文章に「相談内容の秘密は守る」といった条項を入れておくことも不可欠でしょう。

また、これらすべての過程において、パワハラに関する相談を行ったこと等を理由とする不利益な取り扱いが禁止されるとともに、相談者に十分な配慮をすることが求められています。パワハラを訴えたら降格になった、あるいは相談したことを直属の上司にバラされた、というようなことは絶対にあってはなりません。また、実際にパワハラがあったと認定された場合、どのような懲戒処分や配置転換を行うのか、さらには再発防止をどうするかまで決めておく必要があります。◆実はそれほど大変な作業ではない?一見、大変そうではありますが、今回の法改正は、「セクハラやマタハラと同じことを、パワハラに関してもしなさいよ」と企業に義務づけるものです。企業の中にはすでに、セクハラ防止・対応の措置が設けられているところもあるはずです。その場合、そこにパワハラも加えればいいのであり、まったくゼロから作る、というわけではないのです。指針でも、「セクシュアルハラスメント等の相談窓口と一体的に、職場におけるパワーハラスメントの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましい」とされています。確かに、パワハラなのかセクハラなのか区別がつきにくいケースや、セクハラとパワハラが同時に行われているような事例もあるはずです。窓口は一体化したほうが合理的だと言えます。そう考えれば、作業上の負担はそこまで大きくない、と考えることもできるのではないでしょうか。これらの対策を講じるのは、基本的には経営者層や人事・総務担当者の仕事となります。ただ、パワハラが起こらない職場は全社員で一体となって作っていくべきものでもあります。一般社員の方もぜひ、知っておいてほしいと思います。

「トップの宣言」が不可欠!◆たった一人の「パワハラ上司」の放置が、組織を崩壊させる取り組みを始めるに当たって真っ先にすべきことがあります。それは「職場のハラスメントはなくすべきである」ことを、経営トップが宣言することです。これがあって初めて、職場の一人ひとりがパワハラ防止の意識を持つことができますし、社内全体でパワハラ・セクハラについて話し合う機運が生まれます。パワハラでしばしば問題になるのが、被害者が会社にパワハラを訴えたのに途中で「もみ消される」こと。こういうことがあると、パワハラ防止の機運は一気に萎えてしまいます。だからこそまず、トップがパワハラ防止を宣言するのです。そして、万一のときは自分に直接訴え出てほしいと伝える。これで社員はより安心できるとともに、トップの「本気」を感じ取ることができます。逆に言えば、トップが「隗より始めよ」でなくてはなりません。トップがパワハラまがいのことをしている企業は論外ですが、成果を上げている、あるいは長年面倒を見てきた子飼いの人間だからといった理由で、パワハラを行っているマネジャーを放置するようなことがあれば、社内の士気は一気に低下します。たった一人でも例外を作ってはいけないのです。◆データでも示されている「宣言の重要性」これについて、興味深いデータがあります。パワハラ防止の取り組み内容で会社がどう変わったかを調査したもので、それによれば、「トップの宣言」「各種研修」「周知活動」の3つのパワハラ防止活動のうち、研修や周知活動だけを行った場合に比べ、トップが宣言したうえで研修と周知活動を行った結果、改善が見られたという企業が圧倒的に多かったのです(厚生労働省、平成28年度「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」)。宣言が必要なのは、経営者だけではありません。あなたが部門のマネジャーだとしたら、ぜひどこかのタイミングで「ハラスメントの撲滅を目指す」という姿勢を、言葉として伝えるべきでしょう。パワハラ防止法が施行されるタイミングは、その絶好の機会かもしれません。ただし、これはトップにも言えることですが、「法律ができたから仕方なくやりますよ」感が言葉の端々に出てしまっては逆効果。法律はあくまできっかけであり、パワハラは企業にとって大きなリスクになり、早急な対策が必要であることを、ぜひ、自身の言葉で語ってください。

アンケートを行うことで、実態を把握する◆本人はもちろん「隣のパワハラ」についても聞くパワハラ対策に当たって、社員へのアンケートは非常に効果的です。言うまでもありませんが、回答内容は関係者以外には厳秘であり、特に直属の上司にその情報が洩れるようなことがあってはなりませんし、それを疑わせるようなことすらNGです。たとえば、いつでも提出できる回答用ボックスを社内に設けるのは有効な手段ですが、それが目立つ場所にあると、「あいつ、上司に不満があるのだな」などと、いらない憶測を招く恐れがあります。これは、問題がある人もない人も全員回答にすることで防ぐことができますし、メール等による回答のほうがプライバシーは守られやすいかもしれません。アンケートでは自分自身のことだけではなく、「周囲でパワハラやセクハラまがいのことが起きていないか」について聞くことも重要です。本人が言い出せない場合もあるでしょうし、自分がきつく当たられるのは自分が悪いからだと自責の念に駆られ、本人がパワハラであると認識していない場合もあるからです。当人同士はパワハラやセクハラだと思っていなくても、周りの人がそのやり取りを不快に思っている可能性もあります。たとえば、ある上司が部下に対して「馬鹿じゃないか」「やる気あるのか」などの厳しい言葉を繰り返しているのに対し、その部下は「愛のムチ」として納得していたとしても、周りの人がそれを聞いて不快感を覚え、就業環境が害されるなら、パワハラになる可能性があります。◆すぐに対応しつつ、すぐに対応しない!?では、集まったアンケートにパワハラの訴えや相談があったらどうするか。ここで大事なのは、「放置しない」ことと「うのみにしない」ことです。一見、真逆に見えますが、どちらも大切なことです。まず、パワハラやセクハラが疑われる訴えがあったら、すぐにそれを「受け取った」ことと、「しかるべき対処をする」ことを、訴えた本人に連絡することが大事です。その際、「絶対に相手には情報を洩らさない」ことを再度伝えるのもいいでしょう。ここで、「まずは事実確認を」と時間を置いてしまうと、当の社員が疑心暗鬼に陥ってしまうからです。告発は勇気のいる行為です。それだけに、「本当に届いたのだろうか」「上のほうで大問題になっているんじゃないか」などと不安になるもの。まずは、本人に安心してもらうことが重要です。一方で、パワハラかどうかの事実確認は、慎重に行わなくてはなりません。書いてあることをうのみにし、告発された人をすぐに糾弾するようなことがあってはなりません。話が事実よりも誇張されている可能性もあれば、単に折り合いが悪いだけの可能性もあるか

らです。もし当事者以外からのアンケートで「あれはパワハラだ」という報告があれば、信憑性はより高くなるでしょう。周囲の人からのヒアリングも含め、慎重に事実関係を探っていきます。

パワハラを「埋もれさせない」ために◆研修やポスターはやっぱり効くパワハラをさせない、あるいは「埋もれさせない」ためには、常に社内に周知し続ける必要があります。そのための最も一般的な対応は「研修」でしょう。管理監督者に対してパワハラ防止の重要性について説くとともに、「これはパワハラになる」というケースを具体的に伝えるような研修が効果的です。さらに、同様の研修を一般社員向けに行ってもいいでしょう。ちなみに研修で重要なのは「やりっぱなしにしないこと」です。研修を受けた直後は「注意しなければ」と思っていても、時がたつにつれて忘れてしまうもの。1年に1回など定期的に研修の機会を設けたほうがいいでしょう。ポスターを貼り出すことで常に意識させることも、古典的ですが意外と効果があります。◆問題が一気に噴出!でも、驚かないように相談窓口に「気軽に相談できる」という印象を持ってもらうことも重要です。窓口を人事部とするのもいいのですが、かくいう人事部でパワハラが起きていないとも限りません。相談窓口をあえて新設し、そこに誰でも相談しやすいよう複数部門の人を配置することで、会社の覚悟を示すという効果も期待できるでしょう。異性には相談しにくいこともあるかもしれないので、相談窓口には男女双方を置くことが理想です。言うまでもありませんが、口が堅いことが絶対条件。労働組合のある会社なら、企業と協力して、あるいは企業とは別個に相談窓口を設けるという方法もあります。会社には言いにくいことも、労働組合になら言いやすい、というケースはあるものです。その他、産業カウンセラーやメンタルヘルス相談の専門機関や弁護士事務所との連携を検討してもいいでしょう。ちなみに、パワハラ対策窓口を設けた企業でよく聞かれるのが、「窓口を設けた瞬間に予想以上の相談が寄せられて社内が混乱する」ということです。「社内にこんなに問題が山積していたのか」と驚かれるかもしれませんが、これはパワハラ防止に関する意識が高まっている表れと捉えればいいのではないでしょうか。少なくともここで「数が多すぎる。ちょっとでも減らさなくては」などと思わないことです。「パワハラ隠し」につながりかねません。

「トラブル発生!」そのとき、どうする?◆事前に「どう対処するか」を決めておくでは、実際にパワハラが疑われる案件が出てきたら、どうするか。その前にまず、いざ問題が発覚した場合、どういう体制や手順で解決を図るかを決めておく必要があります。どのように事実認定を行うのか。もし事実だと判明した場合、どのようにその対応を話し合うのか、といったことです。この際、パワハラ相談窓口とは別に、責任者も含めた「パワハラ対策委員会」を設置し、問題の解決を図るのが一般的です。事実確認や懲戒処分、解決策の作成などに関して、公平性と一貫性を確保するためです。一連の流れの例を図式したので、参考にしてください。パワハラに限らず、各種ハラスメント全般についてこうした対応をすべきでしょう。◆相談窓口が「パワハラ隠し」に加担しないように対応時のポイントはいくつかあります。まずは先ほどアンケートのところで述べたように「放置しない」ことが大事。そして、実際に相談者と対面して話を聞く際には、「相談者の話をじっくり、ゆっくり聞く」ことが挙げられます。相談の中には、「それって本当にパワハラなの?」というようなケースもあるでしょう。それでもまずは、最後まで相手の話をじっくりと聞くべき。ヒアリングも複数回行うほうがいいでしょう。相談者が「話を十分に聞いてもらった」と感じることで、相談担当者(カウンセラー)との間に信頼関係が生まれ、結果として相談対応がうまくいくからです。

ここでやってはいけないのが、「相談担当者が説得しようとする」ことです。たとえば、上司からのパワハラじみた指導を訴えた社員に対して、「上司は君のためを思って指導しているのだから、もう少し我慢できないか」「君のほうにも改善すべき点があるのではないか」などとアドバイスするようなことです。このような対応をされると、社員は「結局、会社は上司の味方なんだ」と思ってしまうことでしょう。相談担当者はアドバイザーではありません。あくまで「聞く」ことに徹しましょう。◆当事者への確認は慎重に相談者の話は丁寧に聞いたうえで、事実確認はしっかり行う必要があります。誤解や事実誤認があるかもしれませんし、相談者が悪意を持って上司を貶めようとするケースもなくはありません。客観性を持って判断すべきですし、その際、別の部署などの第三者の意見は大いに参考にすべきです。特に直接の関係者に話を聞く際には注意が必要です。以前、ある会社で、「上司に無視され、仕事を妨害される」という相談に対し、相談担当者が相談者の了解を得ずに行為者や第三者にヒアリングを行ってしまった事例がありました。それを知った相談者はショックを受け、問題はさらにこじれてしまいました。とはいえ、もちろん行為者本人の話を聞かずに、対応の仕方を決めることはできません。パワハラ対策委員会はすべての話を総合し、客観的な判断を下すことが求められます。◆「厳しく罰すればいい」とは限らないまた、相談者が何を求めているかを聞くことも重要です。パワハラ行為をなくしてほしいのか、それだけでなく別の部署に異動したいのか、あるいは上司を懲戒処分してほしいのか。現状のままの組織体制でいいので、とにかくパワハラをなくしてほしい、というのであれば、行為者に対する指導や研修などで対応可能かもしれません。一方、相談者が「あんな上司の下では働けない」というのであれば、人事部と相談して調整する必要があります。パワハラへの対応は厳しくすればいい、とは限らないことにも注意すべきです。相談者本人が「できれば穏便にすませたい」と考えているのに、思いのほか重い処分が上司に下された場合、相談者本人がショックを受け、むしろ不満を持ってしまうようなケースもあるのです。相談者にとっても組織にとっても、上司あるいは部下を配置転換、つまり別の部署に異動させることがベストな選択肢であることが多いでしょう。直接顔を合わせないようにすることが、パワハラ防止にはとても効果的だからです。ただし、普段から配置転換があまりないような職場では、うわさがうわさを呼び、パワハラの被害者が心理的に傷ついてしまうことが考えられます。普段から配置転換を頻繁に行うような「風通しの良い職場」であることが、パワハラ対策のうえでも重要だということです。

◆より大事なのは「再発防止をどうするか」もし、本当にパワハラ行為があったと確認できたらどうするか。事前に決めたルールに従って対応することになります。悪質ならば、その行為者について懲戒処分や降格などの人事異動を検討することになります。ここで「あいつがいないと仕事が回らなくなるから」などと手心を加えるようでは、ルールを定めた意味がありません。ただし、前述したように、相談者の感情に配慮することが重要です。たとえば、パワハラが認定され、部署異動が行われることになった場合、その理由まで細かく知らせるべきか。それがパワハラへの抑止効果になるので知らせるべきという考え方もありますが、相談者本人が大ごとにしたくないというケースもあります。間違いを認めてやり直そうという上司に対し、「パワハラ上司」のレッテルを貼ることが果たしていいのかという問題もあります。ケースバイケースとしか言いようがないのですが、異動なら異動の結果だけを伝えることが多いようです。ゴールはあくまで、「より良い職場を作ること」であることを忘れないようにしてください。◆もし、上司が従わなかったらどうする?もし、問題を起こした上司が改善指示を不服として、それに従わなかったらどうするか。そもそも会社には、服務規律や企業秩序に違反した従業員に対して、就業規則の規定に基づいて制裁、すなわち懲戒処分を行う権利があります。口頭で注意する「訓告(戒告)」、業務報告書を提出させる「けん責」から、減給、出勤停止、降格、そして最も重いものとして諭旨解雇、さらに懲戒解雇となります。懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒処分の種類や内容を書いておく他、本人に弁明の機会を与える、違反行為の重大さと処分の重さのバランスを取るなどのルールがありますが、基本的には本人が拒否したからといって、懲戒処分が行われないことはありません。当事者同士を遠ざけるために上司に異動を命じる際も同様に、上司が拒否することはできません。人事異動は就業規則に基づく使用者側の権利です。原則としては従業員の同意を得ずとも、会社側が一方的に命ずることができます。もし、正当な理由なしに命令に従わなければ、懲戒解雇することができます。もっとも、これまでの労働慣行上転勤がなかった職場の社員を転勤させる場合などは、法律上、本人の同意を得ないと「人事権の濫用」として、異動が認められないようなケースもありますが、パワハラを原因とした異動ならば、そうしたこともないでしょう。人事担当者としては、こうした「理論武装」をしておくことも重要です。◆困ったら「個別労働紛争解決制度」の利用ももし、社内でのパワハラ対応の結果、問題がこじれてしまい、当事者同士ではどうにもならなくなったら、どうするか。お勧めしたいのが「個別労働紛争解決制度」の利用です。

これはもともと労使間のトラブルの調停制度として設けられていたものです。担当者は各種トラブルの解決に精通していますし、制度の利用は無料です。相談の結果を受け、都道府県労働局長による助言・指導、さらには勧告が行われ、解決が図られます。それでも解決されない場合、「紛争調整委員会によるあっせん・調停」が行われます。調停とは、同委員会の調整委員が調停案を作成し、調停、受諾勧告をして、紛争の解決を図るものです。パワハラに限らず、セクハラやマタハラ、解雇や配置転換、出向、労働条件や労働契約に関するトラブルなど、あらゆるものを対象とした制度です。解決までには、ケースにもよりますが1カ月から数カ月くらい。もし民事訴訟となれば数年がかりになることを考えれば、かなり早期の解決が図れることがわかると思います。もし、職場のパワハラが原因で社員が自殺してしまったり、生涯にわたって働くことが難しくなってしまったらどうなるか。被害者側が会社と原因となった社員を「安全配慮義務不履行」を理由として訴え、勝訴した場合、会社側が支払う額は1億円程度に及ぶこともあります。これは被害者側への慰謝料だけでなく、被害者がもらうはずだった生涯賃金も含まれるからです。早期の問題解決は、誰にとっても重要なのです。◆本当に大事なのは「再発防止」起こってしまったことは仕方がありません。大事なのはどう再発を防止するかです。まずは「なぜそのパワハラが起きてしまったのか」の原因を究明し、予防策が取れないかを考えます。たとえば、上司と部下とが部屋で二人きりになることが多く、周りの目が行き届かないことがパワハラ発覚の遅れにつながったというのであれば、部門同士を近づけて目が行き届くようにするという対応が考えられるでしょう。あるいは、上司が部下を個室に呼びつけてパワハラを行っているようなケースでは、いっそ会議室をガラス張りにしてしまう手もあります。実際、最近の企業ではこうした会議室が増えているようです。仕事の効率が悪いことが原因で、部下の人格を否定するような言動を上司が繰り返していたとしたら、もちろん、一番の問題は上司です。ただ、部下の仕事が非効率なのは、会社の教育体制がなっていないせいかもしれませんし、そもそも業務の無駄が多いことが原因かもしれません。教育体制や業務体制をこの際、根本的に見直すことが必要かもしれません。さらに言えば、問題を起こした側も、会社にとっては貴重な人材です。たった一度の失敗で二度とチャンスを与えないのではなく、何が問題だったかを受け止めたうえで、再度挑戦する機会を与えることも重要です。二度、三度と同じ間違いを繰り返すような人もいると思います。ならば、そういう人には部下をつけず、一人あるいは外部と協力して進める仕事を与え、その分野で実力を発揮してもらえばいいのです。要は「適材適所」の考え方です。

パワハラやセクハラを乗り越え「より良い職場を作る」という思いで、再発防止に取り組んでほしいと思います。

本書の内容は2020年2月時点のものです。また、何がパワハラになるかならないかは、あくまで状況によるところが大きく、一概には言えません。迷ったときは各都道府県の労働局の雇用環境・均等部(室)に相談してください。また、本書は主に一般社員向けに書かれたものです。ハラスメントへの対応や労災保険給付などの人事・労務担当者向けのより詳しい内容については、参考文献にある拙著をお読みください。

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