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第4章OKRで組織力が高まる

第4章OKR仕組みで組織力が高まる

OKR=目的(O)+重要な結果指標(KR)OKRという呼び名は、「ObjectivesandKeyResults」の頭文字からきています。その構成は非常にシンプルで、1つの「目的(O:Objectives)」と、2~5個の「重要な結果指標(KR:KeyResults)」でできています。定性的な「目的(O)」と、数値などで表される「重要な結果指標(KR)」の両方を併せ持つというのがポイントです。目的を常に意識できるMBO(ManagementbyObjectives)に代表される一般的な目標管理手法は、目標として指標や評価項目を管理していきますが、目的については管理しません。そのため、目標を追いかけていく中で、ついつい目的を見失ってしまうことがあります。先に述べましたが、目的こそが「わくわく」の源泉ですので、これを忘れてしまっては「もやもや」だけが残されることになりかねません。先述のレンガ積み職人の話のとおり、目的の理解、共感は、働く意欲や生産性を高めます。一方OKRは、定量的な「重要な結果指標」に加え、定性的な「目的」を掲げることで、目的を常に意識させるような仕組みとなっています。目的への到達度を定量化できるOKRには、どのような状態になれば「目的」を達成できたと言えるかを、数値で計測する「重要な結果指標」が含まれています。なぜ、「目的」だけではだめなのでしょうか?レンガ積み職人の話を例にあげると「後世に残る大聖堂を造る」という目的を共有し、そこに向かって仕事を続けていくこと自体は非常に重要なことですが、目標となる指標がないままに「後世に残る大聖堂を造っているんだから、とにかく一生懸命レンガを積んで」と言われたとしても、「わくわく」は続かないでしょう。最初のうちはがんばれるかもしれませんが、「いったいどこまで積めばよいのだろうか?」といった疑問や、「いつまでがんばればいいんだ!」といった不平不満が噴き出してくるはずです。達成度合いを測ることができれば、何をどこまでやればいいのかが明確になります。だからこそ、「重要な結果指標」によって「目的」の到達度を共有し、チームでその認識をすり合わせていくのです。「目的」は、「何を達成したいのか?」「どこに向かおうとしているのか?」を指し示すものです。これに対して「重要な結果指標」は、「どのように『目的』を達成するのか?」「目標に近づいていることをどう把握するか?」に答えるものなのです。「目的」に向かうマイルストーンが「重要な結果指標」であり、どの程度達成できているかを指標で計測することで、ペースの見直しができるようになります。また、「目的」の達成基準を明確にするためにも、「重要な結果指標」は計測可能な指標であることが求められます。

COLUMNObjectivesは目標ではなく目的OKRのO(Objectives)は、一般的には「目標」と訳されることが多いようです。しかしながら、私は、意識的にObjectivesの訳語として「目的」という言葉を使うようにしています。英和辞典を調べると、Objectivesの意味は、「目的」、「目標」の両方が記載されています。「目標」と「目的」は似たような言葉ですが、日本語において両者はどのような意味を持つのでしょうか?「目標」は「目的」達成の過程、すなわち、「目的」へと至るステップであると言えます。また「目標」が具体的であるのに対して、「目的」は抽象的です。たとえば、目指す数字を「目標数字」と言うことはありますが、「目的数字」とは言いません。さらに、仕事における「目的」は、その仕事に取り組む理由、意義といった意味も含まれて使われることがあります。繰り返しお伝えしているとおり、メンバー全員が「共通の目的」を目指すことは、組織として成果を上げていくうえでたいへん重要です。しかしながら、そのようなときにメンバー全員が「共通の目標」を目指すわけではありません。このように両者の違いを考えると、定性的で「何を達成したいのか?」を表すObjectivesは、「目的」と訳して使うことで正しく理解できるのです。実は、KeyResultsのほうこそ「目標」を意味するものと捉えることができるのですが、これを「目標」と訳すとOとKRとを混同してしまうことになりかねないため、KRを「目標」と訳してはいません。KeyResultsのほうは、「重要な結果」「主要な結果」などと訳されることが多いようですが、「指標」という二字を付け加えたほうが本来の意味を正しく理解できると考えて「重要な結果指標」と訳しています。

「目的:Objectives」が満たすべき3条件組織は、ビジョン、ミッション、バリューなどという形で、共通の目的を持っているものです。これらは、組織の根幹として大切なものである反面、長期的な将来像を言語化したものであるため、現場リーダーやメンバーにとって、達成した状態や、どのようにして到達していけるかをイメージできないという問題があります。また、解釈があいまいになりやすく、認識のズレが生じやすいものでもあります。たとえば「ITを通じて、笑顔と創造性にあふれる働き方を生み出す」というビジョンを持ったB2B向けIT企業があるとします。このビジョンのもと、ある人は「とにかく多くの会社に早く製品を提供したい」と思い、他のある人は「創造性を徹底追求したアプリをじっくり開発したい」と思い、またある人は「他とは違ったユニークなデザインで働く人を笑顔にしたい」と思うかもしれません。長期的な共通の目的の大切さは言わずもがなですが、現時点でまず「何を目指すのか?」「どうなりたいのか?」について共通の認識を持つ必要があります。それが、OKRで設定する「目的」となります。これは、3か月程度の短い期間で「何を達成したいのか?」を、定性的なメッセージとして表現したものです。「目的」を設定する際のポイントを見ていきましょう。挑戦的であること変化の激しい状況下で成果を上げ続け、個人としても組織としても成長していくためには、現在の延長線上を目指すのではなく、理想から逆算したより高い場所を目指すことが必要です。すなわち「目的」は、「達成できたらすごい!」と思える挑戦的なレベルで設定することが求められます。「達成できそう」「達成できるだろう」というような保守的、現実的なレベルで設定してはいけません。現状では難しいと思われるような挑戦的な高い場所を目指すからこそ、枠にとらわれない発想や行動が生まれることになります。現在の延長線上にあるものは、単なる予測であり、目的とは呼べないとも言えます。魅力的であること「目的」は、魅力的でなければいけません。魅力的だからこそ、メンバーが目的達成に向けてわくわくして奮い立ち、全力で向かうことになります。メンバーのモチベーションいかんで、成果は大きく変わってきます。現場リーダーに求められるのは、「この『目的』が達成できれば最高だ!」「この『目的』に向かってみんなでがんばりたい!」と思えるような目的を分かりやすく提示することです。プロ野球では、キャンプインのときに各球団が毎年スローガンのようなメッセージを発表します。なかには、難しい言葉や横文字だらけのチームもあります。しかしながら、それでは選手に(ファンにも)本当の意味は伝わらず、「達成したい」とは思われないでしょう。「目的」を提示する際には、平易で分かりやすい表現を心掛けることも必要となります。一貫性を持つこと「目的」は、全社的な目的、部署の目的、チームの目的、個人の目的など、さまざまな範囲に対して設定することができます。その際、「目的」は一貫性を持っていることが求められます。全社の目的と合致しない「目的」を設定する部署があったり、部署同士で相反する「目的」が設定されることがあってはなりません。全社の目的が「中小企業向け市場でトップを取る」であるにも関わらず、営業部門が「営業効率を上げるために、単価の高い大企業を攻略しよう」という目的を設定した場合、上下の一貫性はないと言えるでしょう。同じケースで、広報部門が「一般消費者向けの認知を高める」といった目的を設定したとしたら、今度は、営業部門と広報部門の間という横の一貫性が保てていないことになります。このような例は極端に感じられるかもしれませんが、多くの企業では「目的」を明文化していないため、組織の各階層の「目的」の間にズレ・モレが多々発生しています。「目的」の間に一貫性を持たせることで、より上位の「目的」の実現にむけてムダ・ムラなく組織の力を集中して発揮できるようになります。

「重要な結果指標」が満たすべき4つのポイント「重要な結果指標」は、「どのように『目的』を達成するのか?」「目標に近づいていることをどう把握するか?」を表すものでした。何を指標にするかというのは、ときに企業の明暗を分けるほどのインパクトを持ちます。インテルは追いかける指標を「活用しやすさ」にしたのです。一方で、日本企業を含めた他社は、MPUの「処理速度」を追いかけていました。インテルが台湾企業にマザーボードのライセンスを与え、世界中で安価にマザーボードが普及するようになったことで、各社のシェア争いは完全にインテルの勝利となってしまったのです。『「超」入門失敗の本質』鈴木博毅著ダイヤモンド社現在のインテルの圧倒的なシェアは、指標選択によるものだったと言うのです。これはまさに、選択する指標を何にするかによって、組織の盛衰に大きな影響が出た実例と言えるでしょう。同書は、指標について次のようにまとめています。勝利につながる「指標」をいかに選ぶかが戦略である。性能面や価格で一時的に勝利しても、より有利な指標が現れれば最終的な勝利にはつながらない。この、「勝利につながる」という部分は「目的達成につながる」と言い換えることができるでしょう。すると、OKRについては次のように言えます。「目的」達成につながる「重要な結果指標」をいかに選ぶかが戦略である。このように、指標を選ぶことは非常に重要なことです。OKRで「重要な結果指標」を決める際には、外してはいけない大切なポイントがあります。目的と結びついていること「重要な結果指標」は「目的」達成につながるものでなければなりません。当たり前のように思えるかもしれませんが、案外できていないものです。いわゆる目標管理では、そもそもの指標選択がその場しのぎになっていることがよくあります。クラウド上で目標管理のサービスを提供する株式会社HRBrainによると、なんと、約8割の会社員が、面談や目標管理シート提出締め切りの直前に、その場しのぎの目標設定をしたことがあると答えています(https://www.hrbrain.jp/news/press/research201810)。また、一度決めた指標をずっと追いかけ続けているというのもよくあることです。市場、競争環境が激しく変化しているにもかかわらず、以前と同じ指標を追い続けているのです。今現在の「目的」と結びついているかをしっかり確認したうえで「重要な結果指標」を選んでいきましょう。計測可能であることメンバーから「今回のイベントはうまくいきました!」と報告を受けた現場リーダーが「いや失敗だろう。いったい何を考えているのだ……」と嘆いている姿を見たことはないでしょうか?このようなことは、成功したかどうかの判断基準が人によって違うことによって引き起こされます。これを防ぐためには、判断基準の明確な指標を用意しておくことが必要です。つまり、「目的」の達成度合いを測る「重要な結果指標」は、組織内の誰であっても認識がずれない、明確で具体的な判断基準であることが求められます。主観的、感覚的な基準では人によって異なる判断になるため、事実ベースでの把握が不可欠です。「重要な結果指標」は、計測可能で定量的な指標であることが必要であり、指標を求めるための計算式と判断基準が明確でなければなりません。容易ではないが、達成可能な水準を目指すこと指標を選ぶことが戦略である以上、何を指標とするかと合わせて、どの程度を目指すのかを決めなければなりません。「目的」が満たすべき条件に、「挑戦的であること」「魅力的であること」がありました。「重要な結果指標」はこの達成度合いを測るものなので、高い数値目標である必要があります。しかしながら、高すぎて到底達成できない数値目標を設定してしまうと、魅力的を通り越してやる気を失わせることになります。ストレッチゾーンにある容易には達成できないが、まったく無理とも思えないところに「重要な結果指標」を設定することが求められます。重要なものに集中人は多くのことを常に意識する、記憶することはできないと言われています。目標設定シートに多くの目標が書かれていても、普段仕事をしている中ではほとんどの目標を意識することなくすごし、上司との面談の前に思い出して慌てて記入するといった経験がある人も多いのではないでしょうか?指標が多すぎると、それが具体的な内容であったとしても忘れられてしまいます。メンバーの力を集中させなければ高い「目的」は達成できません。「重要な結果指標」は3個程度(多くても5個まで)に絞り込みましょう。

なぜ、OKRだとうまくいくのか?ここまで見てきたように、OKRは、「目的」と「重要な結果指標」の2つの要素からなるシンプルな仕組みです。このシンプルな仕組みが、グーグルをはじめとした多くの成長企業で導入され、成果をあげているわけですが、なぜOKRはうまく機能するのでしょうか?「共通の目的」に向かうようベクトルが揃うメンバーが向いている方向性、すなわちベクトルを揃えることが、強い組織づくりには欠かせません。そのためにビジョン教育などを行う企業も多いのですが、OKRにも、ベクトルの向きを揃える力が備わっています。明確な数値目標を設定していても、「目的」が共有されていないと、ベクトルはどうしてもばらついてしまいます。OKRは、数値で示される「重要な結果指標」だけでなく、組織が目指す方向性、「目的」を示すObjectivesが設定されること、そして、そのObjectivesが全社、部門、チーム、個人でつながりを持って設計されることから、設定段階ですでにベクトル合わせが徹底されています。また、詳細は後述しますが、運用段階においても高頻度で「目的」と「重要な結果指標」の両方をフィードバックすることで「目的」が忘れ去られ形骸化することなく、ベクトルを合わせ続けることができます。目的・目標・進捗が共有されるメンバーが不安を感じていたり、他のメンバーのことを信頼していない場合、組織の力を生み出す相乗効果の部分が、大きくマイナスに傾いてしまいます。そもそも、不安や、他のメンバーに対する不信感は、どのようなときに生まれるのでしょうか?先が見通せない夜道を歩くとき、不安を感じ、すれ違う人のことを警戒してしまうものです。同じように、組織内で何が起きているのか見えていなかったり、すぐ側にいる人が何を考えているのかが分からないとき、不安や不信が芽生えてきます。反対に、組織の様子がはっきりと見通せて、考えていることをお互いに知り合うことができれば、不信や不安は解消されていきます。京セラの創業者である稲森和夫氏も次のように言っています。従業員との信頼関係を構築するためには、受注がどれほどあり、それが計画からどれくらい遅れているのか、また利益がどれくらい出て、それがどのように使われているのかなど、会社の置かれている現況について、幹部だけではなく末端の社員にも、よく見えるような「ガラス張りの経営」でなければなりません。経営の透明性を高め、現場リーダーとメンバーの間はもちろんのこと、メンバー同士もお互いの状況を分かり合えるような状態を作ることができれば、組織内の無用な不安や不信は解消され、信頼関係が生まれていきます。ここでも、もっと分かり合うようにしましょうと意識改革を訴えるのではなく、仕組みとして実現することが近道なのですが、OKRには、その運用において透明性を実現するような仕掛けが含まれています。OKRの運用においては、各階層(全社、部門、チーム、個人)の「目的」と「重要な結果指標」、そしてその進捗状況のすべてが、常に、全社員に対して公開されるのです。自分の仕事をただの作業と感じるか、組織全体にとって重要な仕事と感じるかの間には大きな違いがあります。組織の歯車として、機械の一部品のように働きたいと考える人は少ないはずです。社会や組織にとって重要な存在であり、その目指しているものに貢献できているという実感ができれば、仕事に充実感ややりがいを感じることになります。D・カーネギーの名著『人を動かす』の中で、「人を動かす三原則」の一つとして、「相手に重要感を持たせる」ことがあげられています。しかしながら、組織の中にいると、組織の中で自分が重要な存在であると認識できる機会は、そう多くないものです。だからこそ、全社から部門、チーム、そして個人に至るまでのOKRを公開し、つながりを常に確認できるようにすることは、すべての人に自分が全社に対して貢献している存在であると認識できる機会を与えることになります。さらには、そうすることで自分以外の人の重要性にも気づくことができるようになります。このように、運用においてOKRを常時公開することになるので、組織に透明性を持たせ、お互いのことを分かり合おうとする意識を仕組みとして根付かせていくことができるのです。外部環境の変化にすばやく対応できる多くの企業で採用されている目標管理のスピードを見ていきましょう。多くの企業が、1~3か月程度の期間をかけて、前年度末に翌期1年間の目標(と予算)を設定します。そして、その目標どおりに進捗したかどうかを1年かけて確かめていくわけですが、途中のフィードバックは四半期、あるいは半期に1度など年に数回となっています。市場や競合他社など外部環境の変化のスピードが緩やかな時代であれば、勝ちパターンがある程度の期間通用することが見込めるため、勝ちパターンを模索し、戦略、目標を立てることが非常に有効でした。しかしながら、VUCA(Volatility[変動性・不安定さ]、Uncertainty[不確実性・不確定さ]、Complexity[複雑性]、Ambiguity[曖昧性・不明確さ])と呼ばれる先の読めない現在の環境において、同じ勝ちパターンが長期間継続することはありえなくなりました。もはや、期初に設定された計画を慎重に黙々と実行していても生き残ることはできません。進捗や環境の変化をすばやく捉え、迅速に計画をブラッシュアップすることが求められます。OKRは、その運用において、3か月ごとに「目的」を設定し直し、週1回の1on1など、高頻度でのフィードバックの実行が求められます。これにより、個人個人の学習スピードが加速し、組織のスピードが上がります。さらに、進捗管理が高頻度で行われることで目標が形骸化せず、常に組織内で

意識されることになります。組織のスピードが加速すると、失敗や想定外の事態が起こってもすぐに修正できるようになるため、新しい取り組みにもチャレンジしやすくなります。重要なことに集中できる目的達成のために、指標を設定することは非常に有効なのですが、指標が多すぎるとまったく機能しなくなります。カルビーは以前、3000にもおよぶKPI(重要業績評価指標)を設定し、あらゆるデータが週1回更新され、全社員が見られるようになっていたそうです。しかし、確認に4日かかると言われるほどの膨大なデータは、有効利用できていなかったとのことです。カルビーに限らず、指標を重要視するあまり、管理しきれないほどの膨大な指標を設定し、結果として活用できず業績の向上に役立たないといった事例は多々あります。カルビーでは、指標を16~20ほどにまで絞り、新たな指標を導入しようというときには、他の指標を削るように方針を変えることで、低迷していた業績が向上したとのことです。また、アップルの創始者である故スティーブ・ジョブズ氏も次のように言っています。方向を間違えたり、やりすぎたりしないようにするには、まず本当は重要でもなんでもない1000のことにノーと言う必要がある。優先すべき本当に重要なことに集中することで、強い組織となります。戦略とは捨てること、何をやらないかを決めることと言われることもあります。OKRには、1つの「目的」と3~5個の「重要な結果指標」に絞り込むことで、集中すべきことを明確にする効果があります。高い目標を掲げることができる第二次世界大戦後、アメリカとソビエト連邦がさまざまな分野で競い合いました。宇宙開発競争もその中の一つ。先に有人月面着陸を成功させたのはアメリカでした。アメリカの有人月面着陸成功の最大要因が何だったか、ご存じでしょうか?それは、1961年5月に、ジョン・F・ケネディ大統領が次のような目標を設定し、宣言したことにあると言われています。10年以内に月面に人類を着陸させ無事に地球に帰還させるアポロ計画と言われるこの計画は、当時の常識、技術レベルからすると、あまりにかけ離れた壮大で困難なものでした。しかし、実際には、この宣言をした8年後に、目標は達成されました。このことから、将来の理想に基づき、斬新で実現は容易ではない課題に挑戦することを「ムーンショット」と呼ぶようになりました。OKRでは、挑戦的で魅力的な「目的」を設定することが求められます。これはまさに、ムーンショットを目指すということです。現在の延長線上ではなくさらにその上を目指すことの重要性について、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は、次のように述べています。最高にうまくいったら、全部大成功したらどうなるかというのをまず考える。人が力が出るのは、大成功したときですよ。大成功して全部うまくいって、すべての人がハッピーになった姿をまずイメージしないといけないと思う。https://style.nikkei.com/article/DGXMZO98503150W6A310C1000000?channel=DF180320167090また、営業組織などでしばしば見られる光景に、締め日の数日前に予算を達成してしまい、来月や次年度の予算を意識して残りの数日は手を抜く、というものがあります。高い目標を掲げているからこそ、もっと上へ、さらに上へと努力を重ね、それがやがて圧倒的な差を生むことになります。楽天の三木谷会長兼社長は著書の中でこう述べています。誰もが努力をしているのが、競争社会の前提だ。限界まで頑張ることは、誰にでもできる。限界まで頑張ったその上に、さらに0・5%努力を重ねられるかどうか。限界の上に積んだ0・5%は、決定的に大きな差になる。なぜなら、その僅かの差を敏感に感じ取ってしまうのが、人間の感性というものの性質だからだ。『成功の法則92ヶ条』三木谷浩史著幻冬舎COLUMNムーンショットを掲げないほうがいいケース業績のマイナスが続いて苦戦している組織では、ムーンショット発想での目標設定は危険です。苦境に立たされているときに高すぎる目標に直面すると、一発逆転狙いになり、組織をさらなる苦境に立たせる事態になりかねません。また、メンバーは目標未達成が続き自信を失っています。そのため、壮大な目標を掲げても前向きにはなりにくく、どうせまた未達成に終わるに決まっていると諦めムードになってしまいます。そのようなときは、ムーンショットではなく、スモールゴールで小さな成功を目指し、それを達成することで、組織に自信と勢いをつけることを優先させましょう。

現場リーダーにとってのOKRのメリットOKRが組織を強化するのに役立つ理由は先述のとおりですが、現場でメンバーを率いるリーダーにとってはどんなメリットがあるのでしょうか?多くの場合、プレーヤーとしての実績、能力の高い人がリーダーに抜擢されます。そのため、組織を率いるためのリーダーシップ、マネジメントの能力、経験は十分ではないことがほとんどです。OKRには強い組織づくりに必要な要素が仕組みとして組み込まれているため、経験の少ない現場リーダーにとっても、強力な味方となってくれます。戦略の立案と整理ができるリーダーはチームをどこにどう導くか、という戦略を立てなければいけません。しかしながら、戦略を立てることはリーダーにとって困難な仕事の一つです。リーダーがチームのOKRを設定するプロセスは、戦略を明確に整理するプロセスとも言えます。「何を達成したいのか?」「どのように目的を達成するのか?」、この2つの問いに答えることがOKRだと、本章のはじめに述べました。現在地から目的地に到達するための手段を戦略と呼ぶならば、OKRにおいては、「目的(O)」達成につながる「重要な結果指標(KR)」をいかに選ぶかが戦略である、と言うことができます。リーダーは自社、競合、市場の現状分析や将来予測から戦略を立てることになりますが、メンバーが理解し、実行できる戦略でなければ意味がありません。立てた戦略をOKRに変換できない場合は、戦略が十分に練られていない、絞り込まれていない、具体性に欠けている、などの問題があります。つまり、「目的」と「重要な結果指標」を設定することで、戦略の完成度を認識することができるのです。リーダーシップを発揮しやすくなる「チームをどこに導くか?」、つまり、組織の共通の目的を示すことが、リーダーシップの第一歩です。方向性を示すためには、コミュニケーション能力や人間力が必要だと言われますが、経験の浅いリーダーにこれらの能力が問題なく携わっていることは稀です。しかも、これらの能力は抽象的であると同時に、メンバー構成や外部環境によって効力が変わる状況依存的なものです。何か特定のものを身につければうまくいくというものではなく、経験を積んでいく中で磨かれていくものなのです。だからといって、経験が浅いのだから仕方ないというわけにはいきません。現場リーダーは、それでもリーダーシップを発揮しなくてはなりません。OKRは「目的」を明確に示すことで、リーダーシップの第一歩を、仕組みとしてサポートしてくれます。OKRで設定した「目的」を発信し続けることで、メンバーは方向性を見失わなくなります。また、「目的」に向かって進んでいることを常に意識させることにもなり、メンバーに充実感ややりがいを認識する機会を与えます。さらには、OKRという共通言語を持つことでメンバーとの認識のずれを防ぐことにもなり、チームを共通の目的へと向かわせる、すなわち、リーダーシップを発揮することへとつながります。ほどよい緊張感を保つことができるチームメンバーは、望もうが望むまいがリーダーからさまざまな管理、指示、ときには注意を受けます。一方、リーダーになると裁量が大きくなり、自分で決めて動けるようになります。その反面、自分を甘やかしていても注意を受けることはあまりありません。そのような状況下で、弱い気持ちが出てくることもあるはずです。OKRは常に公開されるものであり、組織に透明性を持たせる仕組みです。リーダーはチームの進捗状況をメンバーだけでなく、他の多くの人に見られることになります。そのため、意識を高めて弱い気持ちを抑えるのではなく、仕組みとして緊張感を保つことができます。マネジメントを仕組み化できるどのようにしてメンバーに目標を達成させるかについて、プレーヤー時代に実体験として学ぶことは難しく、また、研修などですぐ身につけられるスキルというわけでもありません。OKRは、メンバーのマネジメントについて、仕組みとリズムを与えてくれます。そのため、マネジメント経験の浅いリーダーにとって非常に強力なツールになります。詳しくはOKRの運用のところで紹介しますが、「目的」や「重要な結果指標」を設定する手順やフィードバックの方法がある程度定型化されていることから、経験の多寡によらずうまくマネジメントしていける仕組みとなっています。マネジメントにおいてコミュニケーションが大切であることは誰もが知るところですが、残念ながら難しいことも事実です。OKRという共通言語を持つこと、そしてその共通言語をリーダーが率先して使うことで、チームにとって重要度の高い目的、目標、戦略が、認識のずれなく伝わり、メンバーに正しい理解を生むことになります。メンバーの創造性を引き出せる戦略は実行にこそ価値がありますが、リーダーの考えたとおりに実行するのではなく、多様なメンバーの意見や発想を引き出し、よりよいものにブラッシュアップしていくことでより価値が高まります。OKRはこの過程でもリーダーを強力にサポートしてくれます。OKRを導入しているメルカリのプロダクトオーナーは、「ゴールが大粒なので、打ち手に対する発想も大胆になれることが多い。」(https://careerhack.enjapan.com/report/detail/755)とOKRのメリットを語っています。「目的」は定性的なメッセージとして表現されるため、定量的な数値目標に比べて粒度が粗く、解釈に幅が出てきます。人によって解釈の幅がでることはネガティブなことのように見えるかもしれませんが、提示した方向に向かっている限り、解釈の幅はプラスに働きます。

たとえば、「この『重要な結果指標』ではなく、こちらの『重要な結果指標』のほうが良いのでは?」といった目標そのものの改善提案や、「この『重要な結果指標』を目指すのであれば、こんな打ち手もあるのでは?」といった新しいアプローチの提案が可能となります。メンバー自身で考える余地が残されていることで、それぞれが主体的に目標に向かうことができます。つまり、部下の持っている能力、意欲、創造性を最大限発揮させるエンパワーメントを促進してくれる効果があるのです。経営者の感覚に近づくことができるリーダー、すなわち、経営幹部や管理職になっている人は、当然ながら組織から高い評価を得ています。しかしながら、多くの経営者はリーダーに対して「経営者感覚を持っていない」「経営者の立場で考えられていない」といった不満を抱いています。なぜなのでしょうか?従来の、人事評価を主目的とした目標管理では、高い目標を掲げることは査定を不利にしてしまいます。そのため、おのずと保守的な目標設定をすることになります。そのため、従来の制度のもとで評価が高い人というのは、高い目標を自ら掲げることが不得意なのです。また、経営者が目的を考え、落とし込み、絞り込んだ目標の達成を使命としてきたため、自ら目的を考える必要も、重要度に応じた取捨選択も必要ありませんでした。皮肉なことに、経営者がリーダーに求めるのはまさにこの点、自ら目的を考え、高い目標を掲げることなのです。OKRを導入すると、「目的」を掲げ、絞り込まれた高い目標(重要な結果指標)を設定することになります。言うなれば、自チームを経営するミニ経営者になります。もちろん、経営者や上層部からすべての権限が委譲されるわけではないので経営者とは立場が違いますが、経営者の感覚に近づく経験を得ることには変わりません。COLUMNOKRとMBOMBO(ManagementbyObjectives)も、OKRと同様に組織の目標と個人の目標をリンクさせることで、組織と個人の成長を目指す制度として提唱されたものです。そして、現在の日本企業の多くで、人事評価、査定のツールとして使われています。目標管理の仕組みとして広く使われているMBOの実態と、OKRとの違いを見てみましょう。目標管理の目的MBOとOKRの一番の違いはその目的にあると言えます。MBOを使用する主目的は人事評価、査定になっていることが一般的です。一方、OKRの主目的は組織の成長であり、組織の高い目的を達成することです。そのため、OKRの運用にあたっては、「重要な結果指標」の達成度と人事評価、査定とは切り離すことが求められます。目標の設定頻度MBOの運用における目標の設定頻度は、1年に1回が一般的です。年度の開始時期に目標を定め、年度末に評価をして、翌期の設定を行うというサイクルです。一方、OKRは通常3か月に1回のサイクルで設定を行います。環境変化の激しい世の中では、それに合わせて計画や目標も変化するべきであり、その修正、変更を仕組みとして織り込んでおくという思想に基づいています。進捗管理の頻度MBOでは、上期、下期にそれぞれ1回程度、上司から部下にフィードバックが行われることが一般的です。そこでよくあるのが、上司も部下もそのときになって年初に作成した目標管理シートを見直して思い出すこと。つまり、目標が忘れ去られ、形骸化してしまっています。これに対してOKRは、週に1回など高頻度のフィードバックが求められます。1on1を行ったり、毎週決まった曜日にチームで振り返りを行うなど、具体的なやり方は導入企業によってさまざまありますが、高頻度のフィードバックで常にOKRを意識し、目標に集中して取り組めるようにします。目標と進捗の公開範囲MBOの主目的は人事評価であり、目標とその進捗は上司と部下の間でのみ共有されています。周りの人、他のチーム、会社全体の目標や進捗状況が分からないため、部分最適に陥る危険性があります。一方OKRでは、常時、社員全員に情報が公開されます。透明性が高く、周囲の状況を把握することができることから、健全な競争や協力が起こりやすくなります。また、自分の仕事が会社全体の目標にどうつながっているのかを理解できるため、仕事に対する重要感、やりがいも高まりやすくなります。目標達成の基準MBOでは、当初の目標を上回るかどうかが評価の分かれ目になります。高い目標を立てて高い成果をあげたとしても、達成率が100%未満の場合、低い評価がつけられてしまいます。また、100%を超える場合には、前期の達成度が翌期の目標の基準値となることから、あまり大きく超えないようにセーブしようという考えの人も現れます。OKRは、大きな成功をベースに、非常に挑戦的な目標を立てることが求められます。そのため、目標を達成できないことがよくあります。実際の運用においては、「重要な結果指標」の60~70%に達していれば合格、という判断をするのが一般的です。逆に、達成率がいつも100%を超えるという場合は、「目的」や「重要な結果指標」の設定が挑戦的ではなかったことを意味します。

 

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