メモは深掘りするとさらに効果的
メモによっては、1ページに書いた4〜6行それぞれをタイトルとして、さらに4〜6ページのメモを書くと考えが非常に深まり、整理される。内容が一段も二段も濃くなって、いっそうすっきりする。
たとえば、「なぜ部長は私に話しかけてくれないのか?」という、メモ10を書いたとする。

この場合、メモ本文である、「先日の会議での発言が気にいらなかったのではないか?」「他の課長とのもめ事を気にしているのではないか?」「奥さんといつもけんかしているようだし、単に機嫌が悪いだけではないか?」「忙しくて、単に話しかける時間がないだけではないのか?」というそれぞれをタイトルにしてメモを書いていく。
まずは、1行目の「先日の会議での発言が気にいらなかったのではないか?」であれば、メモ11となる。

これにより、「部長が発言を気に入らなかったのではないか」というふと頭に浮かんだフレーズが先日の会議で部長の提案に対して反論しすぎたか?内容は問題ないはずなので言い方が悪かったのか?部長の気にいる発言っていったいできるのか?もう少し部長の発言の趣旨を踏まえて発言してみようというふうに深まり、問題点の分析ができ、反省にまでなっている。
2行目以降も同様だ。
メモ12では、他の課長とのもめ事を部長がどのくらい気にしているのか、気になっていることを書き出してみて、結局あまり気にしなくてもよさそうだ、という判断になっている。
こうやって書くと、気が重くなったまま引きずってしまうことが解決する。余計なことに気を取られなくてもよいことがわかる。

3行目はメモ13のようなメモになる。
部長が単に機嫌が悪いだけなら気にすることもないか、ということで、余計に気を回さなくてもよいという結論に落ち着く。これだけで心の負担はだいぶ減る。
最後の4行目はメモ14だ。

これを書くことで、部長が単に機嫌が悪いというよりも、忙しいだけかもしれない、自分の心配は思い過ごしかもしれないということがはっきりと見えてくる。
「そんなの思い過ごしだよ」と同僚に言われても「そうかなあ。そうでもないけどなあ」と気分はなかなか晴れないが、こうやって書くと、余計な懸念はしなくてよいということになる。
つまり、これらの4ページを書くことで、ぱっと頭に浮かんだ最初のメモの深掘りができ、部長の気持ちと自分の置かれた立場について、はるかに正しく理解することができる。気分は楽になり、仕事がもっとうまく進む。
また、「どうすれば挫折せず今年こそ英語を話せるようになるか?」というメモを書いたとすると、メモ15のようになる。

英語の勉強がなかなか進まないイライラが出ているが、どうやって改善すべきかは3、4行目に少し出ている程度だ。
そこで本文1行目に関して新たにメモ16のように書いてみる。

長続きしない理由がだいぶ見えてきている。
他のことに気を取られるとか、結果が見えないのでやる気がなくなってくるとか、勉強の仕方が単調なのかもしれないとか、視点を変えてどういうことだと長続きしたのかを考えるとか、できない理由だけではなく、どうすればできそうかのヒントが追加のメモによって見え始めている。
メモ15の2行目をタイトルにしたのがメモ17だ。

「成果」という一言に対して、本当にそれが出ていないのか、見えていないだけなのか、どうやって体感すべきなのか?というところに踏み込めている。
さらに、「成果が見えやすい勉強の仕方」に発想を変えるとか、「成果が見えなくてもやる気を失わない方法はないか」というふうに、かなりクリエイティブに視点を変えることができている。
3行目をタイトルにしたものがメモ18だ。

「誰かやる気の高い、一緒に勉強のできる人を見つければいいのでは?」という解決策指向の一文に対し、「やる気の高い人、くじけない人と一緒に勉強できるといい」とか「ライバルがいいのか、ついていける人がいいのか?」などさらに突っ込んだ答え、あるいは答えを示唆する文章が浮かんでいる。
4行目に関してはメモ19となる。

「TOEICを受けることでめりはりがつく」「英語の勉強とTOEICの点は対応するのか?」「TOEIC以外だと何をやるべきか」など、一歩先の解決策に踏み込んでいる。
このように、メモを1ページ書き、本文の4〜6行をタイトルとして芋づる式にメモを書いていくと、考えが一気に深まっていく。
紙はたくさん使うが、書くたびに頭が整理されていくのでお勧めだ。驚くほど頭が速く回転し出すことに気づかれるだろう。深掘りしている間に新しいことを次々に思いついていく。
こうなると、紙を無駄にしている気持ちはどこかに飛んでいく。いろいろなことが見え、新たな発見が相次ぎ、何もかも楽しくなっていく。
深掘りによって書いたメモ(最後の例でいえば「TOEICをもっと活用すべきか」のメモ)の本文をさらに深掘りしてもよい。
その場合、本文それぞれをタイトルにして、「TOEICをすることでめりはりがつく」「TOEICを毎回受けるようにしてはどうか」「英語の勉強とTOEICの点は対応するのか?」「TOEIC以外だと何をすべきか?」というメモを書くことになる。
こういうふうに1ページのメモをもとにさらに4〜6ページ書いていくやり方だと、メモのタイトルを一つ思いついたら悩まず次々に書くことができる。
一つのタイトル(=テーマ)を深掘りすると、あっと言う間にむずかしい問題が小分けにされ、分解して整理でき、同時に全体像が頭に入るという大きなメリットが期待できるのだ。
一つのテーマを多面的に書く
深掘りに加え、一つの重要テーマに対しては、1ページだけではなくいろいろな角度から多くのページを書くと、視野が大きく広がるのでお勧めしている。頭がよりよく整理され、感情的な内容もかなり冷静になって判断できるようになる。
たとえば、「私はどうしてすぐやる気がなくなってしまうのだろうか」いつもこうしようと決めてもすぐ挫折してしまう10代の頃はこういうことはなかったのに、いつから変わってしまったのか本はいつも読めるし、挫折したことがないそろそろ、決めたことは継続できるようにならないと。
このままではまずいというメモを書いたとすると、その後、次のようなタイトルのメモをどんどん書くやり方だ。
- 私はどういう時、やる気が続くのか?
- どういう時、特にやる気が続かないのか?
- どういうことであれば、やる気が続くのか?
- いつもやる気がある人はどうやって維持しているのか?
- やる気のある人はどうやってネガティブな気分に対処しているのか?
- そういう人は挫折することがないのだろうか?
- やる気がある人のやり方をまねできないか?
- やる気って、そもそもなんなのか?我慢することなのか?
- 楽しいこと、やりがいを感じることだけやるのではだめなのか?
そうすると、それらのメモを書き終える10分ほど後には、頭がかなりすっきりする。
自分がどういう時にはやる気があり、継続できるのか、どういう時、挫折しがちなのか、自分の心の動きが少し見えてくる。
また、たとえば、「彼はどうして仕事上の重要な情報共有をしてくれないのか!?」彼は情報共有がそもそも嫌いなのか?前も似たようなことが時々あった情報共有しないのは、面倒くさいからなのか?非常にものぐさだし私のことをよく思っていないから私だけに情報共有をしないのか?それとも、単にやる気の問題なのか?やる気がある時は結構連絡してくれるというメモを書いたとすると、その後、同じように次のようなタイトルのメモをどんどん書く。
- 彼はどういう時、情報共有をしてくれるのか?
- 彼は誰に対しては情報共有をするのか?
- 彼は、仕事上何が重要かわかっているのか?
- 彼は情報共有をしていない時、どう感じているのか?
- 誰に対しても情報共有をきちんとする人は誰か?どうしてそれができるのか?
- 逆に、自分はちゃんと情報共有をしているのか?
- 彼は自分のことを同じように情報共有をしてくれない、と思っていないか?
- 人はどういう時、情報共有を進んでやってくれるのか?
そうすると、彼がなぜ情報共有をしないのか、どういう時にはするのか、かなり見えてくる。
「彼がどうして仕事上の重要な情報共有をしてくれないのか!?」という一方的な不満だったものが、情報共有を十分にできない理由を理解することで、かなり解消する。
少なくとも、問題解決に向かって一歩も二歩も前進する。人はみな自分の観点で善悪、好き嫌いを判断している。
それが偏っているかどうかは、当然ながら本人にはあまりわからない。その結果、人とぶつかったり、他の人の行動が理解できなかったりして、大きなストレスの原因になる。
多面的にメモを書くと、相手の立場で物を考えることができるので、相手の見方、行動の理由が書く前に比べて理解しやすくなる。相手のことが理解できるようになると、当然、腹が立たなくなる。
一方的に気分が悪くなることがなくなっていく。別の例を挙げよう。
たとえば、「だめだと思っていることをなぜ自分はずばっと言い切れないのか?」というタイトルのメモを書いたとする。
その場合は、最初のメモに加えて、
- 自分はどういう時、ずばっと言い切れないのか?
- ずばっと言い切らないと何がまずいのか?
- ずばっと言われると相手はどう思うのか?
- ずばっと言わない自分を相手はどう思うのか?
- ずばっと言わないのは、具体的に何を指摘すべきかわからないからでは?
- さんにずばっと言うべきことは?(4〜5人に対して具体的に)
- ずばっと言い切るのがいい時とまずい時は?
などをメモに書くと、自分の気持ちの動きや行動を束縛していた真因がこれまでになくわかってくる。
重要だと思うこと、自分が感情的になっていること、消化し切れていないことに関しては、こうやって多面的に書くことで、
- 今まで見えなかった側面がはっきり見える
- 十分考えていなかったことをしっかり考えることができる
- 理解不能と思っていた相手の行動、絶対いやだと思っていた相手
- 自分の行動に対し、理解が深まる。別の見方ができる
- 全体としてもやもやが整理でき、新しい自分としての取り組みができる
という大きなメリットがあるのだ。
納得するまで15〜20ページ以上書く
メモは深掘りにせよ、多面的な書き方にせよ、調子が出た時は、1日10ページに制限することなく、どんどん書き続けるのがよい。
特に、嫌なことがあった時、どうしても理解できない時、理不尽な思いに腹が煮えくりかえる時、意気消沈している時には、深掘りにしろ、多面的な書き方にしろ、20分くらいメモにはき出していくと、とてもすっきりする。納得するまで書き続ければよい。
議論の余地なく相手が理不尽だと思っても、メモを書いていくうちに、もう少し冷静に考えることができるようになる。相手の立場、相手の行動の理由が少しでも見えてくるかもしれない。
相手への期待が高く、それを裏切られて憤慨している場合も、なぜ期待が高かったのか、相手はそれに応えようとしたのか、応えようとしてできなかったのかが見えてくると、少し違う立場から考えられるようになる。
頭の中がもやもやして、うまく言えないがために気分が悪い時も、そのもやもやを全部はき出し、正体が見えると、気分がずいぶん変わってくる。
正体がわからないと、悪いほうへ悪いほうへ考えがちだ。
ところが正体がわかることで、最悪でもこのくらいでおさまりそうだとか、いや、なんとかなるかもしれないぞ、と前向きに考えることができるようになる。当然、気持ちもおさまっていく。
1ページ1分で書けるようになっていると、ここまでせいぜい15〜20分しかかからない。
メモの発展型
これまで、メモはA4横置きで、4〜6行書くスタイルをご紹介してきた。
基本はこの型であるが、メモ書きに習熟後の発展型としては、次のように左右に分けてサブタイトルを書く方法もお勧めしている。
メモ20の例では、「これまでの取り組み」と「今後」で分けている。

これ以外のサブタイトルの組としては、
- 「現状の問題点」と「対策」
- 「現象、症状」と「本質的な問題点」
- 「競合他社のアプローチ」と「当社の取り組み」
- 「強み」と「弱み」・「第1案」と「第2案」
- 「本社の取り組み」と「事業部の取り組み」
- 「上司の役割」と「部下の役割」
など、タイトルに合わせて最適のものを考える。メモ書きを数百ページもこなすと、このように左右に分けるやり方もできるようになる。
もちろん、左右に分けて書く場合には、1ページ書くのに2分程度は必要になる。
メモとロジックツリーの関係
言葉の関連をツリー上に整理したものを「ロジックツリー」と呼ぶ。それと深掘りをしたメモは実は同じものだ。
ロジックツリーで、Aの子どもにA1、A2、A3、A4があり、A1の子どもにA11、A12、A13、A14があるという場合、次の図のようになる。

深掘りしたメモの場合は、最初のAがタイトル、A1、A2、A3、A4が本文であり、2ページ目のタイトルがA1、本文がA11、A12、A13、A14となる。
図を見ればわかるように、上下の階層がきれいに対応している。
両者の違いは、メモの場合は、構造等をまったく考えず、思いついたものをひたすら書くことができ、後から並べてみると、自然とロジックツリーのように整理されたものになることだ。
まっさらな状態で考えをツリー状に整理することは簡単ではないし、時間を取られることが多い。
ストレスが大きいし、慣れないうちは全体像が見えにくい。メモであれば、そういう心配がまったくない。1ページ1分でただ書いていれば自然に構造が見えてくる。
メモから企画書をまとめる
企画書の作成はやっかいだ。あれも書こう、これも書こうと、書きたいことがいろいろ浮かんでは消え、浮かんでは消えして、まとまらない。
書けるだけの材料がないことも多いし、アイデアそのものに自信のないことも多い。
どうやったら書く材料を集められるのか、どうやったらある程度自信のあるアイデアを出せるのか、誰も教えてくれない。
もし自分の回りに教えてくれる人がいたらラッキーだが、ポイントを突いた助言を得られることは希だ。
みな見よう見まねで工夫しているだけのことが多いのは残念なことだと思う。企画書を書くためのヒントを書いた本は多数ある。
ただ、参考にしてもなかなかよい企画書を書けるようにはならない。すいすい書ける人は希で、大半の人はうんうんうなって何ページかひねり出す。
時間がかかる割に自信もなく、せっかく書いた企画書に対して、上司にあれこれけちをつけられることが普通だろう。
ところが、この本でお勧めしているメモ書きに慣れてくると、企画書の骨子が30分程でできる。
さらさらっと書けて、ストレスもなく企画書のイメージができあがってしまう。いったん企画書の骨子、イメージができると、肉付けは比較的容易だ。
難物だった企画書、プラン作りが従来に比べてはるかに容易にできる。これからその方法をステップごとにお話したい。

思いついたアイデアを片っ端から書き殴る
まずは、こんなアイデアはどうか、あんなアイデアはどうかと頭に浮かぶアイデアを1件1ページで片っ端から書いていく。
1件1ページというのは、1つのテーマ(=タイトル)ごとに別の紙に書くことだ。
タイトルを書き、考えが閃いたら4〜6行書いてもよいし、タイトルだけを書いておいてもよい。
こういう場合、1ページに1分はかからない。十秒〜数十秒で書ける。
たとえば、「従来の海外ツアーに飽き足りない人に向けた新しいツアー企画」を来週までに考えなければならないとすると、次のようなタイトルになるだろうか。
- ・お仕着せではなく、行きたいところを集めた企画
- ・現地で柔軟に変更できる企画
- ・行きたいところに行くというよりも、行きたい人と行く企画
- ・観光ではなく、グルメツアーに特化した企画
- ・観光ではなく、現地のB級グルメ食のツアーに特化した企画
- ・現地の家庭料理を味わうツアー
- ・現地の同好のファンと仲良くなるツアー
- ・あこがれの映画俳優が生まれ育った地域を回るツアー
- ・ミャンマーの小学校校舎建築を男女20人ずつで手伝うツアー
- ・台湾で日本文化のルーツを探るツアー
あるいは、「誰でも英語でしゃべれるようになる新しい英語教育企画」であれば、
- ・英語のイントネーションに耳をならす
- ・リスニング競争をゲーム的に行なう
- ・英語の音の特徴を重点的に学習することで、リスニングを短期間で強化する
- ・必要な文章を50だけ徹底的に繰り返して読み上げる
- ・練習回数が自動表示され、ランキングが出る
- ・自分が関心のある分野で英語の記事を読む
- ・ネットの英語記事のうち、好きな分野のみ大きなフォントで配信する
- ・大きな声で読み上げるとすぐ採点される。結果はランキング表示される
- ・同じ文章をネット上でリアルに読み上げ競争をする
- ・英語がうまくなったと錯覚するようなイントネーション、発音の仕方を短期集中で教える
- ・スカイプ英会話は続かないので、続くような仕組み
- ・ランキング・コミュニティを提供する
- 「マンネリ化した中学校のクラス会を明るく楽しくするクラス会企画」であれば、
- ・マンネリ化するのは、いつも同じ人しか出席しないから来ない人をなんとか呼び出す
- ・中学校以来何をしているのかを事前に共有してもらい、お互いに関心を持ってもらう
- ・クラス会の出席者間で何か継続的に行なう
- ・家族も巻き込んだ楽しいイベントにする
- ・中学校の時に流行っていた音楽、ドラマ、映画等を流す
- ・中学校の時に流行っていた音楽、ドラマ、映画のYouTubeを2週間前から何度かメール送信し、思い出を呼び起こしたうえで、当日の企画につなげる
- ・中学校のすぐ近くのレストランで実施し、当時を思い出すできる限りの演出をする
- ・中学校時代を思い出せるよう、当時の写真を集め、見ずにはいられないような動画を作成する
- ・クラスのHPを作り、みな当時の写真等をアップできるようにするなどになる。
内容は思いつくままでよい。
こうやって書き出していくと、アイデアは自然にいくらでも生まれてくるようになる。書いていくうちに、だいたいこんなものかなと思えるアイデアが湧いてくる。
似たようなアイデアでも1ページ内に付け足さず、別の紙に書く。書いたら一度全部の紙を大きな机の上に並べるとよい。
それを眺め、他のアイデアが生まれたらまたそれをすぐ書く。20〜30分、数十ページも書けばだいたい出尽くした感じになる。
その中で一番よさそうな案に仮決めする。あれこれ悩まない。単なる仮決めだからだ。フィーリングで選べばよい。
「これかな?よし、これだ!」仮決めした案に対し、この企画では、誰をねらうのか(ターゲットユーザー、ターゲット顧客)、企画のねらいは何か、企画はどう実現するか、どの程度の日程でできそうか・やるべきか、費用はどのくらいかかるか、どういうチームで取り組むべきかを1件1ページで書き出していく。
10〜15ページになるだろう。ポイントは、「考えずに」書くことだ。感じるまま、頭に浮かぶまま、瞬時に書き留めていく。
構造やわかりやすさ、起承転結等いっさい気にする必要がない。そういった制約がないと、誰でも発想が何倍も豊かになる。人間が本来持つ想像力、発想力、創造力が活かされる。
「考えずに」というのは、むずかしく考えず、頭に浮かぶことをそのまますぐ書き留める、ということだ。
人は考えよう、考えようとするあまりに、素早く、深く考えることができにくくなっている。かっこいいことを言おうとして、実際は固まってしまう。
それを徹底的に取り除く。浮かんだことを次から次に、メモにはき出していく。
意識してやっていると、ある種のトランス状態というか、必ず次々にアイデアが湧く状況になる。
湧いたら、消えないうちにさっと紙に書き留める。そんな感じだ。アイデアと言ってもびっくりするようなアイデアではない。
ああ、こうしようとか、これはどうしようとか、そういったレベルのアイデアがどんどん湧いてくる。
脈絡とか、ストーリーとか、論理的とかいっさい気にしない。気にしなくても、後からいくらでもついてくる。それが最大のポイントだ。構成を考えたり、構造化しようとする努力で頭を鈍らせることを全力で避けるのだ。
カルタ取りのように並べてみる
そうやって書き終えた(はき出し終えた)数十ページのうち、使えそうな20〜30ページを机の上に並べる。
レベルが低いとか内容がないとか、気にする必要はまったくない。
思い悩みながら書くのではなく、感じたまま、思ったままを書き出し、それを並べることができさえすればそれでよい。
書いたメモを目次、企画の趣旨、ターゲットとする顧客・ユーザー、サービス・アプリ等の具体的機能、プロモーション案、オプションの比較、日程、推進体制、必要資金、収支想定等に分けて広げていく。
この時は少し大きめの机が必要だ。
写真では、左端が表紙、次が目次、その次の列は、目次に沿った各章、その次の列は各章それぞれ数ページ、という順に並べている。
並べながら、一部のページは若干書き直して整理する。

新しいアイデアが出てきたら、追加する、整理する
机の上に並べたA4メモを見ながら、新しいアイデアが湧いてきたらまた書く。構成などはまったく気にしない。
もし同じ内容が2ページに分かれている場合は、1ページにまとめ直す。書き足りないな、何か抜けているなと思えばすぐ1ページ追加する。
すべて1ページ1分以内だ。捨てる時も、どのページも1分以内で書いたものなので、まったく惜しくはない。
書こうと思えばまたすぐ書ける。何ページだって書ける。
整理する時のポイントは、この企画はターゲットユーザー・顧客に響くかどうか、心を動かしてくれるかどうか、感心してくれるかどうか、という点だ。
そのためには、最初にターゲットユーザー・顧客が誰かをきっちりと決めておく必要がある。
これが意外にむずかしい。それには理由がある。一つには、対象をだれにするかなどは自明だろうと思ってしまうことだ。
実際はそれほど自明ではなく、チームで共有されていないことが多い。大ざっぱには合っていても、具体的なレベルでは違っていることが多い。
自分の思っていることと、チームメンバーやパートナーが思っていることの間には、多くの場合ギャップがある。
ターゲットユーザー・顧客は当然これだと思って口にしないので、そのギャップにかなり後になって気づくことになる。
自分は「20代女性」を対象にして企画を作っていたつもりなのに、チームは「20代後半から中心は30代の女性。
40代女性も含む」を対象にしていた、とか、自分は「30代のおたく男性」をターゲットにしていたのに、チームは「20代後半のゲーム好きな男性」をターゲットにしていたという初歩的ミスも大いに起こりうる。
二つ目は、対象を絞り切れていないことだ。「20代女性」というだけではターゲットとしては広すぎる。
「都市圏に住む20代女性で、実家住まい」なのか、「毎月3万円以上、服・化粧品にお金を使う20代の総合職女性。一人住まい」なのかによってどういう企画が響くのか大きく異なる。
三つ目は、ターゲットユーザー・顧客をそもそもあまり考えていない、もっと言えば、考える姿勢がない、という根本的問題だ。
アイデアを出すことに一生懸命で、「誰にとって」をほとんど考えない。「なんとなく、面白そう」で止まってしまっている。
「アイデアは、構成などを気にせずにどんどん出す」ということと、「誰にとって面白い企画なのかを考えなくてよい」、ということはまったく別の話だ。
したがって、ターゲットユーザー・顧客は、だいたいこのくらいではなく、できるだけ具体的に、鮮明に決めておく。アイデアごとにターゲットがかなり違うのが普通だ。
先ほどの「誰でも英語をしゃべれるようになる新しい英語教育企画」であればターゲットユーザーは、
- 英語が特に好きで熱心に勉強している高校生
- 英語をマスターしたいと本気で考え、留学も意識して努力している大学生
- 数年以内の留学をねらっている、向上心の強い20代社会人
- アジア圏への駐在が決まり英語が急に必須となった、30代社会人・突然親会社が外資系になり、英語で上司に説明せざるを得なくなった40代社会人
- 英語教育への関心が急に高まり、スムーズな英会話の見本を見せざるを得なくなった英語教師などに分かれる。
それぞれの学習環境もニーズも、使えるお金もまったく違うので、分けて考えないと誰にとっても魅力のない、響きにくい企画になってしまう。
全体のバランスを取る
5〜10ページ書き足したら、もう一度、並べ直してみる。
並べ直しながら、この順、内容で、同僚、上司、顧客、あるいは投資家が喜んでくれそうか、感動してくれそうか考える。しっくりこなければ順番を変え、新しいメモを書き、調整していく。
上司になったつもりで、顧客になったつもりで、投資家になったつもりで何度も何度もなぞり、想像し、修正していく。
1ヶ所直せば他にも直すところが出てくる。そこを直すと、また別のところを直すことになる。
そこを直して、もう一度全体を見直すといったサイクルを何度も何度も繰り返すことで、しっくりくる流れで企画を説明することができる。メモ書きに慣れれば、ここまで30分から1時間以内にできる。
要は頭の中身を一気に外に出し、それを見ながらまた新たな気づきを書き加え、超高速で修正しながら形作っていくプロセスだ。
メモを見ながらパワーポイントで書きあげる
企画書の骨子ができたら、初めてパワーポイント(あるいはキーノート)の出番だ。机の上に並べたメモを見ながら、表紙、目次ページ、各章のページを作っていく。
ページによってはタイトルだけだったり、3〜4行だけだったりするが、まったくかまわない。メモをそのままなぞる。
この間も、考えながらというよりは、机の上に広げたメモを見ながら、パワーポイントにどんどん打ち込んでいく感じだ。ページを作り、該当ページにひたすら書きこんでいく。
パワーポイントを立ち上げてから、30分程度でメモに書いたことを全部打ち込み、全体構成を完成させるようなスピード感だ。
この時点で、メモに書いたこと、メモに書き殴ったことは、全部パワーポイントに取り込まれる。ちなみに、元のメモは記録としてホッチキスで留めて一応保存するが、読み直す必要はもうない。
すべて頭の中に入っているし、パワーポイントになってはるかに読みやすくかつ改善されているからだ。後は、目次と各章のページを見直しつつ、ページごとに埋めていく作業になる。
いったんはメモをそのまま打ち込んだものに対して、もっとこうしようというアイデアがどんどん湧いてくる。
それをできる限り反映していく。ここまでくると、非常にはかどりやすく、ストレスなく企画書作成が進む。
全体構成をあまり気にせず、個別にアイデアを整理し、書き込んでいくことで、細部がどんどんできあがっていく。
企画書を数日間熟成させ、きめ細かな修正でレベルアップする
企画書をいったん仕上げたら、少なくとも1日はそのまま放置する。できれば数日あるとなおよい。
その間、企画書は一応仕上がっているので、「納期までに無理して仕上げないといけない、足りないページはもうない。書き終えた」という状況でいったん別のことをする。
そうすると、プレッシャーを感じず、ある程度の客観視ができるようになる。
その時に「ここはちょっとわかりづらいかな?」「あ、こうすればもっとよくなる」という気づきがいくつも生まれる。
それをちょこちょこと修正する。そしてまた放置する。この熟成期間をおくことで、企画書の質が驚くほどレベルアップする。
マッキンゼーでのやり方はもっとアグレッシブで、クライアントへのプレゼンテーションの1週間くらい前まで徹底的に考え抜き、プロジェクト報告書・提案書を完成させる。
そこで一度壊して再構成する、というようなこともやっている。クライアントに対して十分報告できるレベルに仕上げてから、いったん壊すということだ。
壊すと言っても、必要な分析、必要なアクション立案はすべて終了しているので、ほんの数時間で起承転結を結起承転に変更したり、問題点のとらえ方・見方を整理し直したりすることができる。
これは、問題解決のステップと、クライアントに対する最も効果的なコミュニケーションは必ずしも一致しないという考えに基づいている。
ほとんどの場合、この作業で、クライアントに対してはるかに効果的に訴えかけることができる報告書に生まれ変わる。
チームメンバーや家族にもメモ書きをメモを書いてもらう
メモ書きは一人で実施するだけではなく、チームメンバー全員で取り組むと、さらに大きな成果が期待できる。まず、チーム全体のスピード感が上がる。
1ページ1分以内を目指すので、あらゆる検討、分析、意思決定、実行のスピードが向上する。多くの人が陥りがちな、考えの堂々巡りが大きく減る。
責任や役割分担等での水掛け論をすることがほぼなくなる。
何より、共通言語ができるので意思疎通が素早くなり、齟齬がなくなるので非常に効率的にプロジェクトを進めることができる。
全員でメモ書きをしていると、チーム内に軋轢が生まれそうになった時も、それぞれがメモを書くので未然に防止できる。たとえ軋轢が生まれても、速やかに解決できる。
つまり、チームの自力再生機能が強化され、団結力が強まる。嬉しくまた驚いたことに、子どもにメモ書きを教えてもよいかと尋ねられたことがある。
お父さんがメモ書きを始め、小学生のお子さんと奥様に伝えて始められたとのこと。小学生でもメモ書きは十分できるし、小学生の時から鍛えられれば、将来が大変楽しみだ。
悩みを聞きながらメモを書いてあげる
これまでご説明したメモ書きはすべて自分で書くものだ。実は、人の話を聞きながらメモの形に書いてあげると「頭が整理できた」「気になっていたことがすっきりした」と喜ばれることが多い。
多くの人は気持ちの整理ができなくて困っているからだ。メモ書きを1ヶ月、300ページ続けると、ほとんど別人と言っていいほど課題整理のスキルが上がる。
相手の話もよく聞けるようになる。聞いた話をうまく整理してあげることができるようになる。
この場合は話を聞きながら要点を書き留める形なので、時間は特に急がない。混乱していたり、悩んでいたりする相手の話に耳を傾けながら、要点を一つひとつ書いてあげることになる。
メモを書いてあげることで、後ろ向きの気持ち、被害者意識などがある程度緩和され、前向きに進もうという気持ちになってもらえる。書いたメモは相手に渡す。
こういうふうにすると、メモ書きに関心を持つことがほとんどなので、ポイントを簡単に教え、できればその場で数ページ書いてもらうとよい。
気持ちが100%収まっているわけではないので、家に帰ってから10〜20ページ書くことを勧めれば、メモの効果をさらに体感してもらえるだろう。メモを勧めたあなたの株もぐんと上がる。
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