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第3章脳の「集中力」を最大化する——脳がエネルギーを出せる環境をつくる

神話▼マルチタスクは、有能であることの証明だ。

現実▼シングルタスクは、自律心と集中力があることの証明だ。

思考を明晰にし、シンプルにするには、相当の努力をしなければならない。

だがそれだけの価値はある。

そうなれば山をも動かせるのだから。

——スティーブ・ジョブズこれまで説明してきたように、一点集中術とは、周囲の環境と自分の思考をコントロールすることを意味する。

シングルタスクとは、たんなる行為を指すわけではない。

自制心を発達させることでもある。

初対面の人と会い、名乗ってもらったにもかかわらず、すぐにその名前を忘れてしまったことはないだろうか?その場合、相手が「ピーターです」と名乗ったときに、あなたは十中八九、まったくほかのことを考えていたのだ。

紹介されたばかりの相手や、会話を続けている相手の話に完全に集中できないのであれば、それは小脳がコントロール力を失っている証拠である。

私はこうした症状を「脳散漫症候群」と名づけた。

脳が散漫になる理由の1つは、人には1つの思考にじっくりと向きあうのを避けたがる性向があるということだ。

あなたは自分の「思考」「認知」「反応」を、つねに意識してコントロールしているだろうか?それとも外部の何かが変化すれば、自分の人生はどれほどよくなるだろうと漠然と想像し、脳を無駄づかいしているだろうか?スムーズかつ優美に日々を送れるよう、注意を向ける対象を慎重に選んでいるだろうか?それとも無数の思考が同時に頭のなかを駆けめぐっていても、その状態を放置してしまっているだろうか?シングルタスクを実践すれば、あなたは手綱を締めなおし、最優先の課題を明確にすることができる。

「他人の要求」より自分を優先するいっぽうマルチタスクの誘惑に負けてしまうのは、たいてい、他者の期待や要求に応じねばならないという義務感に駆られているときだ。

すると本来、自分が優先したいと思っていたことを後回しにしてしまう。

そんなとき、あなたのなかにはたいてい「相手に高く評価されたい」という欲望があり、それが不安感を引き起こしている。

外部からの刺激に抵抗するのがむずかしいことは、本書も含め、さまざまなメディアでとりあげられている。

なにしろ、多様なデバイスが「シングルタスクの原則」を破らせようと私たちを誘惑しているのだから。

本書では、こうした「邪魔物」の管理法を紹介していくが、いずれにしろ、メディア、スマートフォン、タブレットへの反応を、自分で意識してコントロールしなければならない。

外部からの刺激を処理する責任は、あなたにある。

ところが大半の人はそれを環境のせいにして、自分自身を見つめようとしない。

自分の内面を厳しく見つめるより、外部からの刺激に身をまかせてしまうほうがラクに決まっているからだ。

人気コメディアンのルイ・C・Kはそうした事態について、「人間は1秒たりとも孤独になりたくないからと、命を落としたり人生を破滅させたりするほどの危険を冒している。

それほど、孤独と向きあうのはつらいものだ」と述べている。

あなたは現実の人生の難題に、真正面から取り組んでいるだろうか?それとも、そうした難題を見て見ぬふりをして生きているだろうか?あなたは人間として成長するための時間を、週に何時間、設けているだろう?その反対に、オンラインで漫然とすごしているのは週に何時間だろう?自分のデバイスをコントロールする以前に、あなたは自分の意志をコントロールしなければならない。

正しい道を進むのは簡単なことではない。

まず、ささやかな努力から始めていこう。

「シンプルに考える」ための時間をつくる「シンプルに考える」こともまたむずかしいと感じている人が多い。

シンプルに考えたいのなら、1日のあいだに「ひとりでじっくりと考え事をする時間」を決めるのがいい。

たとえば私の場合、毎日10〜15分ほどの時間をかけ、日記をつけることにしている。

すると頭のなかを整理し、自分の考えを客観的に見られるようになる。

なかには、散歩をすると頭のなかがすっきりする人もいるだろう。

ほんの数分瞑想するだけで、1日がはるかにスムーズに進むという人もいるだろう。

あなたの生来の傾向にあわせたやり方を選ぶといい。

自分が楽しめるものを利用し、頭のなかを整理し、すっきりさせる方法を工夫しよう。

1日にたった5分間をそうした時間にあてるだけでも、十分価値はある。

もうひとつ、意識を集中させるためのシンプルな方法がある。

いまの状況において、自分にとって「もっとも大切なこと」を決め、責任をもってやりとげるのだ。

「複数の要求」に直面すると脳機能が落ちる本書をきちんと読めば、脳に関する驚くような科学的知見を得られる。

たとえば、次のような知見だ。

競い合うように押し寄せる多数の刺激に身をさらしていると、脳が縮む。

前頭前野は過剰なストレスにつねにさらされていると、縮んでしまう。

扁桃体も萎縮し、恐怖、攻撃、不安といったネガティブな感情が脳に氾濫する。

すると脳の灰白質が縮み、認知機能がうまく働かなくなる。

多くの成果をあげようと頑張りすぎると、明晰な思考ができなくなるのだ。

度を越した多忙な生活を続けていると、思考と感情をつかさどる脳組織の萎縮を招く。

MRI(磁気共鳴画像)を見ると、競い合うタスクのあいだで脳がもがいているようすがよくわかる。

優先順位をつけることができない複数の要求にさらされると、脳は圧倒され、うまく機能しなくなる。

というのも、マルチタスクを試みると、情報処理能力を低下させるコルチゾール(別名ストレスホルモン)が分泌されるからだ。

するとストレスが生じ、脳のニューロン(神経細胞)が萎縮し、問題を解決したり、感情を調整したり、逆境に負けず立ちあがったり、衝動をコントロールしたりする能力が低下する。

では、どうすればいいのか?たくさんのことを同時にやろうとしてカリカリせず、定期的に休憩をとることを心がけよう。

「フロー」に入ると、シングルタスクになる「没頭する」とは、目の前の作業に完全に集中することを意味する。

ある作業に完全に集中すると、私たちは「フロー」の状態に入る。

「フロー」とは心理学者のミハイ・チクセントミハイが著書『フロー体験喜びの現象学』(今村浩明訳、世界思想社)で紹介した考え方だ。

1つの作業に没頭すると「フロー」の状態が生まれる。

すると、その行為に完全に集中し、ふだんよりずっと高い能力を発揮できるようになる。

どんなときに没頭しやすいかは、その人の関心事や行動スタイルによって変わってくる。

絵画や写真などのビジュアルアート、スポーツ、音楽、ダンス、料

理、読書、ハイキング、手工芸、ボランティア活動、ゲームといった勝負事など、人によってフロー状態に入りやすい活動は異なる。

たとえば、切手収集をしているときに、もっともフロー体験ができるという人もいるかもしれない。

だが、タスク・スイッチングをしていると、「フロー体験」をできる可能性がゼロになる。

マルチタスクは「モンキーマインド」を体現する。

「モンキーマインド」という言葉は仏教の教えに由来し、落ち着きがなく、せわしなく、気まぐれでむらがあり、混乱していて、自制のきかない精神状態を指す。

そうした精神状態は「フロー」や「没頭」した状態の正反対だ。

このことからも、フロー体験をするためにはシングルタスクを実践しなければならないことがわかる。

1つの作業に没頭すると、創造性が高まり、自信をもてるようになり、すばらしい成果をあげられるようになる。

1つのタスクに専心すれば、次のような結果が生じる。

・エネルギーが増し、幸福になり、安心感を覚える・積極的になり、良質なユーモアを発揮できる・充実感、達成感を味わえるまた、一度に1つの作業に没頭していると、次のものを撃退できる。

・ストレス、プレッシャー・自己不信、不安・倦怠感、注意散漫何かに没頭すると、自然にシングルタスクをすることになる。

私の同僚は、尊敬している人物が隣の席に座り、こちらの仕事ぶりに目を光らせているところを想像し、気を引きしめているという。

本書では、シングルタスクに取り組む能力を高め、「フロー」状態に入る方法をほかにも紹介していく。

会議を効率化する「パーキングロット」一点集中術を実践したいからといって、目の前の作業とは直接関係のないことをぜったいに考えてはならないわけではない。

もし、進行中の作業とは関係のないなにかが頭に浮かんだら、その考えをひとまずわきに置き、あとで時間ができたら対処する習慣を身につけよう。

職場でよく会議やミーティングに出席している読者は「パーキングロット」(駐車場)という手法をご存じかもしれない。

会議やミーティングでは、話題があちこちに飛んでしまい、結局、たいした成果をあげられないということがよくある。

たとえば、新たな報告システムについて話しあうために会議をしたにもかかわらず、だれかが途中で「半年ごとの勤務評定が必要じゃないか」と言いだしたとしよう。

その指摘自体は考慮する価値があるとしても、本来の議題とは無関係だ。

ところが、その後も議題とはあまり関係のない話題が次々と挙げられ、議事進行が妨げられると、ついには全員が身動きできなくなってしまう。

室内には、時計のカチカチという音が不気味に響きわたるばかり。

そんなとき、この「パーキングロット」という方法が力を発揮する。

会議の進行役がホワイトボードに、話題に挙がった、本来の議事とは無関係なテーマを、あとで話しあうために記録しておくのだ。

こうしておけば、内容が一目瞭然となる。

メモすることで「集中」が可能になるこのテクニックは、ひとりで働いているときにも応用できる。

1つの作業に集中している最中に、ほかのことについてのアイデアがひらめいたら、あとで考えられるようにそれを書き留めておくのだ。

なんらかの作業に取りかかる前に、決められた場所に自分専用の「パーキングロット」を用意しておくのがいいだろう。

それはスマホの「メモ」機能でもいいし、紙のメモ帳でもいい。

ただし付箋やレシートの裏側、ダイレクトメールの封筒などに書き留めるのはやめておこう。

私自身、こうした手近の紙に走り書きをして、結局、その行方がわからなくなったという経験を何度もしてきた。

アイデアがひらめいたり、なにか重要なことを思いだしたりしても、それが現在の作業と無関係なら、そちらに注意をそらしてはならない。

ひとまずそれを書き留め、すぐに本来の作業にもどろう。

あとで思いだせる自信があるなら、メモを残す必要などない?いや、それは通用しない。

なぜなら……メモ帳とちがって、あなたの頭は100パーセント正確に記録を残すことができないからだ。

ちょっと作業の手をとめ、メモをとるだけなら、シングルタスクの集中力が弱まることはない。

たとえば、あなたが自然光の下で働いているとしよう。

夕方になり、陽が翳りはじめ、室内は暗くなってきた。

それでもあなたは断固として座ったまま、「いまはこの作業に集中しているから、ぜったいにライトをつけるような真似はしない」と思うだろうか。

それとも、ちょっと立ちあがり、ライトのスイッチを入れ、作業にもどるだろうか。

懸命に目をこらして作業を続けるより、灯りをつけるほうがいいに決まっている。

暗がりのなかでひたすら作業を続けるのが馬鹿げているように、周囲の環境をととのえてスムーズに作業を進められるようにする努力や、頭に浮かんだアイデアをメモに残して本来の作業に専念する努力は「一点集中」のために欠かせない。

とんでもない名案がひらめいたら、それを逃したくないからこそ、私はすぐに紙に書き留める——あとで徹底的に考え、可能性を広げるために。

反対に、書き留めるというただそれだけの行為を怠れば、私はすぐにその名案を忘れてしまうだろう。

あるいは、頭の中心にそのアイデアを据えておこうとするだろう。

すると結局、本来の作業に集中できなくなる。

一言、二言を書き留めるだけで、頭のなかがすっきりするし、気も散らなくなる。

メモをとらなかったばかりに「アイデアを忘れてしまった」「命じられた仕事をするのを忘れてしまった」「締切りを守れなかった」「提出物をだすのを忘れた」といった体験談を、これまで大勢の人から聞いてきた。

脳はものごとを完全に記憶できるわけではない。

人によって記憶力のよしあしがあろうと、そんなものとは関係なく、各自が自分の思考プロセスを管理するシステムをつくらねばならない。

スマートフォンを「分離」する私たちは、多機能デバイスの世界に暮らしている。

とくにスマートフォン——いわば現代版のスイス製アーミーナイフ——には機能が満載されている。

1台の電話が、カメラ、目覚まし時計、地図、おまけに懐中電灯の役割まではたすようになると、20年前にだれが想像しただろう?複数の道具がはたす機能が、たった1つのデバイスに集約されているのだ。

そして、それこそがスマートフォンの利点であることは、世間に広く認められている。

そこには欠点などなにひとつないように見える。

だがこんな光景を思い浮かべてもらいたい。

多忙をきわめた1日がようやく終わろうとしている。

あなたは就寝の準備をととのえている。

目を閉じる寸前、あなたは翌朝にそなえ、アラーム時刻をセットしていなかったことを思いだし、スマホを手にとる。

すると、思わぬことに3通もメールがたまっていたことがわかる。

このちょっとした行為が、不眠を招く。

世界各国の睡眠の専門家は、就寝前には平穏で静かな時間を設け、気持ちよく睡眠へと移行できるようにすべきだと提言している。

読者のみなさんもこれまでに、本を読んでいたら自然と眠くなり、まどろんでしまった経験がおありだろう。

ところがルールを設けることなく、むやみにデバイスを使いつづけていると、心は穏やかになるどころか、どんどんささくれだっていく。

私は以前、目覚まし時計を使っていた。

それも、複数の目覚まし時計を使わなければ、目が覚めなかった。

だが、ある時期から、スマホのアラーム機能を使うようになった。

なによりありがたかったのは、出張の荷物が減ったことだ!だが、それと同時に、私の1日は「ツイート」「メッセージ」「メール」の猛攻撃で始まるようになった。

深夜だって油断はできない。

うっかり真夜中にスマホのほうをちらりと見てしまい、つい、ストレス満載のメッセージを読んでしまったら?ふたたび至福の眠りに落ちるのはまず無理だ。

ネットがつねに「欲求」を生みつづけるまた一時期、スーパーにでかける際、買い物リストをスマホの「メモ」機能に書き留めていたこともある。

そうすれば、いつでも買うべきモノを書き足せるし、メモを忘れてスーパーにでかけることもない。

スマホなら肌身離さずもち歩いているからだ。

ところが、やはりここにも落とし穴があった。

スーパーでカートを押しながら歩いている最中にも、クライアントからの電話やメールに気づいたり、インスタグラムを見たりするようになったのだ。

おまけに、小さな画面に目をこらし、うつむきながら歩くようになってしまった。

もちろん、コンピュータには心から感謝している。

コンピュータのおかげで、ワープロ時代より格段に編集作業が楽になった。

だがその一方で、インターネットが「もっと見たい」という欲求をひっきりなしにかきたててくる。

以前、「ニューヨーカー」誌にこんな風刺漫画が掲載されていたことがある。

ひとりの男がパソコンを眺めている。

ポップアップ画面には「インターネットはあなたの能力を低下させることを望んでいます。

どうしますか?」と書いてある。

クリックするオプションは一つしかない——「つねに許可する」。

スマホの代わりに「ストップウォッチ」を使う私は、自分がプレゼンをおこなっているあいだは「お手元のデバイスをサイレントモードにしてください」と頼むことにしている。

どうしてもメールなどを打たなければならない場合は、いったん退席し、室外で用事をすませてもらう。

そうすれば出席者全員と共有する空間を邪魔されずにすむからだ。

事前にこう頼めば、出席者はたいていスマホをしまってくれる。

すると、ときには数百人もの出席者が、同席者とそこでかわされている会話に集中しはじめる。

そうした光景を見るのは、じつに気持ちがいいものだ。

そのいっぽうで、私はプレゼンの内容に工夫をこらし、出席者がなんらかのかたちで活動に参加できるようにしている。

そうした場で時間配分が必要な場合、スマホのタイマー機能を使うのが便利だ。

だがこれでは利害の対立が生じてしまう!スマホのタイマー機能を使うことで、スマホのほかの機能ともつながってしまうからだ。

そして、そうした機能の大半は、目の前のプレゼンとは無関係である。

幸い、この問題は簡単に解決できた。

昔ながらのストップウォッチをさがしだし、首から紐でぶらさげることにしたのだ。

これが案外、オシャレだった。

読者のみなさんも、スマホの代わりにストップウォッチや目覚まし時計を使ってみてはいかがだろう?いまではすっきりしたデザインのものも多く、出張用の薄型の目覚ましなどもある。

私たちの脳は、簡単に脱線したり、横道にそれていったりする。

だから、買い物にでかける前には、買うべきモノのリストを紙に書き留めておこう。

あるいは、プリントアウトしてもいい。

また、パソコンで細かい作業をするときには、ネットとの接続を遮断し、目の前の作業に集中しよう。

モノではなく「自分」がコントロールする私がシングルタスクの本を執筆していると知った同僚が、こんな話をしてくれた。

いま、多くの現代人がデバイスの利用をうまく自制できずにいる。

これは、しつけができていない子犬と同じ状態かもしれない。

子犬はありあまるエネルギーとその愛くるしさで人の心をとらえる。

子犬はまた可能性のかたまりでもある。

とはいえ、子犬にはしつけ、すなわちトレーニングが必要だ。

これはスマホにもあてはまる!世間には、だんだんお行儀がよくなり、愛すべき家族の一員になる子犬(もしくは電子機器)がいるいっぽうで、こちらの正気を失わせ、行く先々でカオスを生みだす子犬(もしくは電子機器)もいる。

その違いはどこにあるのか。

答えは明快。

トレーニングの有無、すなわちしつけができているか、できていないかの差だ。

そろそろ、あなたのスマホにもしつけをするべき頃合いだ。

「静かに」「おすわり」「テーブルに乗るな」など、厳しいトレーニングを始めよう。

悪いのはスマホではない。

スマホを甘やかし、つねにスマホに触れている、あなたの指が悪いのだ。

この問題から目をそむけつづけていると、「状況をコントロールする責任はつねに自分にある」という基本的な考え方を忘れてしまう。

そして問題の原因をメディアのせいにしたり(「しょっちゅう情報が更新されるんだよ」)、仕事のせいにしたり(「資料が山積みなんだよ」)、他人のせいにしたり(「しつこく話しかけてくるんだよ」)する。

だが、こんな非難こそ無益というものだ。

邪魔物を防ぐ「フェンス」を設ける日常生活には「集中力を奪う邪魔物」があふれ、私たちを襲いつづけている。

その猛攻撃を無視するには超人的な強さが必要だと思えるかもしれない。

だが私にも、そんな強さはない。

目の前に、揚げたてあつあつのチーズソースがけフライドポテトを置かれたら、一つ残らず食べてしまうだろう。

とはいえ、それが魔法のように目の前に出現しないかぎり、べつにフライドポテトなど食べなくても1日をすごすことはできる。

フライドポテトを食べなくても、なんの問題もない。

同様に、「誘惑」と距離を置けば置くほど、私たちは意志の力を保つことができる。

問題の原因はテクノロジーにあるわけではない。

問題の根幹は、あなたがテクノロジーを扱うやり方にある。

たとえば、こんな光景を想像してもらいたい。

あなたは自分のデスクに座り、クライアントと電話で話している。

椅子の背にもたれて会話を続けていると、目の前のノートパソコンのスクリーンに、メッセージがぱっと表示される。

近所のタイ料理店にランチを買いにでかけている同僚からのメッセージだ。

「なにか買っていこうか?」お気に入りのタイ料理店のテイクアウトを食べるチャンスを逃したくない。

そう思ったあなたは、欲しい料理の名をすばやく打ち込む。

そのとき、クライアントの声が耳に届く。

「では、このプランにご賛同いただけるということで、よろしいでしょうか?」だが、クライアントがそう質問する前になんと言っていたのか、あなたはまったく聞いていなかった……。

こうした状況にはいくらでもバリエーションが考えられる。

たしかに「同僚の誘いにすぐに返信しない」という選択をするのはむずかしい——ほんの数秒、時間を割くだけで、安くておいしいランチにありつけるのだから。

ところが、そのちょっとした行為の代償は、ランチ代などとは比べものにならないほど高くつく。

賭けてもいい。

クライアントは、自分の質問とあなたの返事のあいだにわずかな間があいたことに気づいたはずだ。

そして「申し訳ありません、もう一度繰り返していただけますか」という言葉を聞き、あなたへの評価を上げることは、まずない。

どんなメッセージがきても絶対に返信してはならないと、厳禁するつもりはない。

誘惑に打ち勝つのは、並大抵のことではない。

だから、誘惑はつぼみのうちに摘みとってしまおう。

「邪魔物」の侵入を防ぐために「フェンス」を設けるのだ。

ミーティングに集中しなければならないときに、電話がかかってきたり、重要なプロジェクトや作業のことが頭に浮かんだりすると、気が散る。

だから私は、そうした事態が生じないよう、先手を打っている。

作業空間を最適に整えるのだ。

電話やメール受信など、音が鳴りうるものはすべてミュートにする。

じつはミーティングのないときでも、私はたいていミュート設定にしている。

アラート機能やSNSの通知設定もオフにしている。

もしこうした機能をオンにしておきたいのなら、ミーティングの最中や、会社の電話を使用している最中は、スマホをどこかにしまっておく、カバーをかけておく、画面を下に向けて置くなどの工夫をしよう。

ちらっと見るのも禁止だ。

そしてなにより、デスクの上はきちんと片づけておこう——散らかった状態もまた注意散漫の原因となる。

電話に「15分」で集中して対応する私は幸運にも、窓からの眺望を楽しめるオフィスで仕事をしている。

だから電話に集中したいときは、デスクに背を向け、景色を眺めることがある(このテクニックは、実際に相手と顔をあわせているミーティングで使えば逆効果で、相手は激怒するだろうが)。

また、電話をかけてきた相手にシングルタスクで集中して対応したいものの、かかりきりになっている時間があまりないという状況もあるだろう。

その解決策はシンプルそのもの。

最初に、時間があまりないことを先方に知らせるのだ。

「お電話くださり、ありがとうございます。

あすのミーティングの打ち合わせをさせていただくのに、15分お時間を頂戴できれば幸いです」そして残り時間が5分になったら、ていねいにそう知らせよう。

そうすれば15分という短い時間、通話だけに集中することができる。

なかには、電話の相手にこちらの姿が見えないのなら、こっそりほかのことをしてもかまわないと誤解している人がいる。

だが、こうした誤解を捨てれば大きな成果をあげられるようになるし、長期的に見れば時間の節約にもなる。

心ここにあらずの状態で長時間、電話を続けるよりも、短時間、相手の話に100パーセント集中するほうがよほどいい。

相手の話に完全に集中すれば、あなたが先方の時間を尊重していることは確実に伝わる。

ウェブサイトは「毎回」閉じる同様のテクニックは、パソコンでシングルタスクをしている際にも活用できる。

さすがにパソコン画面を覆ってしまったら仕事ができないが、アラート機能をオフにすることはできる。

また、閲覧したウェブサイトは用がすんだら閉じて、できるだけオープンタブも使わないようにしよう。

同僚には、しばらくメールや電話で連絡がとれないことを事前に知らせておこう。

「この時刻までは集中して仕事をする」と決めた時刻がくるまで、電話に応答したいという衝動に負けないことだ。

最後に、自分の手持ちのデバイスの機能をよく知ろう。

シングルタスク生活を送るうえで活用できる機能やアプリは内蔵されていないだろうか?たとえば家族や特定の相手からのメッセージだけを画面に表示できる機能はないだろうか?また大半のデバイスには「おやすみモード」機能があり、オンにしておけばその時間帯は着信や通知の音が鳴らなくなる。

ポップアップ・メッセージが邪魔な場合は、ホーム画面にポップアップ・メッセージを表示しないようにする機能もあるはずだ。

こうした「フェンス」を設ければ、あなたはスムーズにシングルタスクを始められる。

邪魔物は撃退してやる!そう考え、士気を上げていこう。

Point脳が力を発揮できる「最高の環境」をつくる「相手に高く評価されたい」という欲求から中途半端に複数のことに手をださない。

「シンプルに考える」ための時間を毎日「5分以上」確保する。

マルチタスクを続けていると、「コルチゾール」が分泌され、脳機能が低下する。

煩雑な情報の中で「1つ」にフォーカスするために「パーキングロット」を使う。

「メモ」をとることで、脳に負担をかけずに記憶を管理する。

デジタル機器をアナログ機器に換えるだけで「集中力」を上げられる。

電話や打ち合わせの際は、先に「制限時間」を伝える。

 

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