1「切り替えコスト」を体験してみよう
「切り替えコスト」とは何か?切り替えコストとは、ある仕事を行っているときに、別の仕事に着手する際に発生するストレスであり、浪費した時間やムダです。
仕事の切り替えを繰り返すことで、脳が疲弊し、集中力が落ちるため、仕事がはかどらなくなります。
夕方に「あっ、もうこんな時間になっていた……」「仕事に集中していたつもりなのに、時間の割には進んでいなかった……」「疲れた……。でも、まだやることがある……」。
このような経験は誰にでもあると思います。
休む間もなく次から次へと降ってきた仕事にそのまま取りかかった結果です。これが、あなたが払った「切り替えコスト」です。
しかし、私たちは普段どれくらいの切り替えコストを払っているかに気づいていません。
時間を有効に活用していくためには、私たちが思っている以上に切り替えコストを払っている事実を無視することはできないのです。
作業の切り替え回数が増えると、あなたが払う切り替えコストも増えます。実際に切り替えコストを払う体験をしてみましょう。
切り替えが1回の場合と多発する場合のそれぞれで時間を測って、切り替えコストを比較してみてください。
切り替えをすると、ムダな動きや手間が増え、時間がかかり、面倒だと感じるはずです。
▼実験1:切り替えが1回の場合次のように2つの枠を用意し、上の枠に、ひらがなで「あ」から「ん」までの46文字を五十音順で書いてから、下の枠に、「1」から「46」までの数字を順番に書いてください。
▼実験2:切り替えが多発する場合上の枠に、ひらがなを1文字書いてから、下の枠に数字をひとつ書きます。
次に上の枠に戻り、五十音順の次の文字を書いてから、下枠に次の数字を書きます。このやり方で最後の数字の46まで書いてください。
どうでしょうか?私たちは、ちょっとしたことにも、切り替えコストを払っていることが体感できたのではないでしょうか?不必要な切り替えほど大きな害はない
2「切り替えコスト」の払いっぱなしはありえない
それでは、仕事中に切り替えコストをいくらぐらい払っているかを考えてみましょう。集中しているときに突然割り込みが入り、仕事を中断することがありますよね。
上司から進捗を聞かれたり、同僚から質問を受けたり、あるいはお客様から電話がかかってきたりして。
その対応が終わり、集中していた仕事に戻ろうとすると、「あれ、何だったっけ?」とそれまでやっていたことを忘れてしまい、メールや資料を読み直すことがあります。
仮に1時間に1回のペースで人に話しかけられ、仕事を中断すると、どれくらい時間をロスしたか考えてみましょう。
仕事を中断してから、やっていた仕事に再度集中できるまでに5分かかるとします。
1日8時間労働だとして、仕事が毎時間中断すると、1日に40分、1週間で3時間20分もロスしたことになるのです。
他人からの割り込みだけではなく、複数のソフトウェアを同時に立ち上げて使用したり、複数のタブを使ってネットサーフィンをしたり、複数の作業を瞬時に切り替えながら実行するマルチタスクなどを考慮すれば、「1週間のうち1日分の仕事の時間をムダにしている」と言っても過言ではありません。
1時間に何回も仕事を中断するような環境で働いていたら、とんでもない時間を失ってしまうのです。
ハーバードビジネスレビューやBBCなどの海外の研究結果や調査でも、仕事に割り込みが入ると、生産性やIQが下がるという報告がされています。
私たちは、これらの課題に真摯に向き合う必要があります。
いくら手帳やToDoリストの使い方がうまくなったところで、「成果を上げて、働く時間を減らす」という根本的な課題を解決できなければ意味がありません。
仕事の効率を上げるには、切り替えコストとムダを減らすことが重要です。
他の仕事に気をとられると、膨大な時間を浪費する
3気分が良くなる「マルチタスク」は弊害をもたらす
あなたは、「マルチタスク」と聞くとどんなイメージがありますか?「複数のタスクを同時に処理している」「マルチタスクをやっている人は、多くのことを達成している」そんなイメージではないでしょうか?しかし個人レベルで考えれば、これは私たちの思い込みです。
マルチタスクとは、取り組むタスクを瞬時に切り替えていることです。
表向きには、同時に処理しているように見えますが、実際には、複数のタスク間をせわしなく行き来している状態です。
つまり、切り替えコストが発生しているのです。そのため、切り替える頻度が高くなると脳が疲れ、集中力が落ちます。
企画書や提案書を作っている最中に、お客様からの電話に対応すると、資料作成への集中力が途切れてしまいます。
電話で話しながら、今までやっていた作業を継続しようとしても、うまくいきません。資料の読み直しや書き直しが発生し、電話で話している内容にも集中できません。聞き逃したり、聞いたばかりの話を忘れてしまい、再度聞き直すことになります。
米国スタンフォード大学のある調査では、タスクの切り替えを過剰に繰り返すとストレスがかかり、脳細胞の破壊につながるという報告もされています。
経験的に、いろいろなことを一度に行ったり、考えたりして頭を使いすぎると、頭が疲れるだけではなく、頭が重くなったり、頭痛が起きたりするので、なんとなくわかるのではないでしょうか?とは言え、マルチタスクは中毒のようなものです。
簡単には止められません。経験上、マルチタスクをすると気分が良くなることがあります。多くのことを達成した気分になり、快感も伴うためです。
しかし、過剰なマルチタスクは作業効率を下げ、思っている以上に成果が出なくなります。個人レベルではマルチタスクをやりすぎないように注意が必要です。
マルチタスクをやめると集中力や効率が上がり、ミスやストレスが減る
4「ToDoリストで管理」という思い込みを捨てる
あなたのやるべきことを一覧にした「ToDoリスト」は、「やりたいけど、やれていないリスト」になっていませんか?ToDoリストは、やるべきことが一目で確認できる便利なリストです。
しかし、ToDoリストにあるタスクがすべてなくなることはないと諦めている人は多いです。
ToDo管理サービスサイト「idonethis.com」によると、「ToDoリストにある項目の41%は永遠に終わらない」そうです。
では、なぜToDoリストを使っても、タスクが終わらないのでしょうか?その主な理由は、ToDoリストの特徴、特に予定を立てる観点で見たときのデメリットを考慮していないからです。
▼ToDoリストが教えてくれない予定
- いつからはじめるべきか
- どれくらい時間がかかるか
- いつまでに終えるべきか
また、ToDoリストには、2、3分で終わるような簡単なタスクや1時間以上かかるタスクが混在しています。
そのため、「次に何をすべきか」をその都度考えてしまうのです。
▼ToDoリストに依存すると、ついついやってしまうこと
- すぐに片づくタスクに取りかかってしまう
- 重要なタスクより、直接、頼まれたばかりのタスクに着手してしまう
- なくならないタスクの多さを見て、やる気がなくなったり、ストレスを感じてしまう
ToDoリストを使うと、優先度の高い仕事を後回しにしてしまうリスクがあります。スケジュールされていない仕事は終わりません。
つまり、「何をいつやるか」を決めておけば、優先度の高い仕事はどんどん終わっていくのです。やるべきことはすべて予定表やカレンダーに入れましょう。
作業を洗い出す上で、ToDoリストを作ること自体は悪いことではありません。ただし、問題は「いつはじめ、いつ終わる」のか具体的な計画がないことです。
予定表に書かないと、ToDoリストに書かれた作業をやらなければならない時間帯なのに、空いている時間と錯覚し、自ら別の予定を入れたり、他の人に予定を入れられたりすることがあります。
その結果、ToDoリストに載っている「やるべきこと」をやる時間が確保できなくなり、残業したり、締め切りに遅れたりするのです。
ToDoリストに書く仕事はスケジュールに落とし込む
5「探しもの」をする時間はムダ
「あの書類、どこにしまったかな」「前回の打ち合わせでメモしたの、どこにいったかな」「あのファイル、どこに保存したかな」このように、私たちは1日に何回も「探しもの」をしています。
仮に1時間に数回、資料やデータを探し、1回探すのに30秒かかるとすると、1週間で約1時間も探しものに時間を使ったことになります。
何も付加価値を生まない行為に1時間も浪費しているのです。
物理的に離れた所に資料を取りに行ったり、ソフトウェアを起動させてから情報を見るまでの時間を想像すれば、さらに時間を費やしていることがわかります。
この探す行動は、自分が思っているよりも多い。その理由は、作業をするのに必要な資料や情報がバラバラに保管・管理されているからです。また、どこに何があるかも把握していないからです。
例えば、
- 仕事の資料やフォルダをどこの棚や引き出しにしまったか覚えていない
- デスクの上や引き出しの中がごちゃごちゃしていて必要な書類やメモが見つからない
- パソコンに保存したファイルや特定のメールがなかなか見つからない
などです。
限られた時間の中で成果を出さなければいけないのに、資料やデータを探すためだけに相当の時間と労力をムダにしています。
ムダな探しものを減らすため、ものや情報はできるだけまとめて保管し、探す行為を減らすことが重要です。
また、検索自体に時間をかけないような工夫やスキルアップが必要です(詳しくは第6章を参照)。
自分の時間が失われている事実を認識する
6「仕事の時間割」を作れば集中力も高まる
仕事の邪魔をされない日はありますか?オフィスには、あなたの集中を妨げるもので溢れています。
突然の電話、上司からの呼び出し、後輩からの質問や相談、ミーティング、アポなしの来客、周りの笑い声や話し声、メール受信の通知、メッセンジャーなど、仕事の邪魔をする外的要因は多いです。
これに加え、ほんの息抜きのつもりのラインやツイッターなどのSNSやネット検索で、自分が集中していた仕事から簡単に脱線してしまいます。
また、愚痴やため息を頻繁につく人が周りにいれば、負のオーラが伝染し、不快を覚え、イライラし、やる気をそがれます。
このような職場環境に慣れてしまうと、周りの人の集中を妨げている意識が弱くなり、自分自身も知らず知らずのうちに、周りの人に迷惑をかけてしまうこともあります。
伝染病かのように感染し、連鎖的に邪魔する人、邪魔される人の数が増えていきます。
この現実を踏まえ、仕事に集中できる仕組みや環境を具体的に作っていくことが重要です。
自分のリズムで仕事に集中できる環境や仕組みを作ることにこだわることは、成果を出す上で非常に重要です。
そのためには、まず何に邪魔されているのかをリスト化して、見える化しましょう。次に、それぞれどれくらいの頻度で仕事を中断しているのかを考えましょう。
そして、やっていることから脱線し、元の仕事に戻るまでに時間がかかる事柄を確認しましょう。これらの事実を認識することで、具体的な対策を考えやすくなります。
簡単にできることとして、メールやメッセージの通知のポップアップ機能をオフにする、会議室などの邪魔されない場所に移動して仕事をするなどの方法があります。
さらに実践的な手段としては、仕事の時間割を作ること、つまりスケジュールを組むことです。スケジュールを組むことで、自分のリズムで「やるべき仕事」に集中できます。
あなたの仕事を中断させる要因は何ですか?明日以降にでも話し合えばいいミーティングに突然参加させられたり、相手だけの都合で話しかけられたり、優先度の低い案件について急遽時間を割いたりしていませんか?予定を自分から立てていくことで、このような突発的な用件による仕事の中断を減らすことができます。
単純に「ノー」と断るわけではありません。
例えば、「優先度の高い〇〇の仕事を今日の午後3時までに終わらせなければいけないので、それ以降なら大丈夫です」と自分の都合のいい時間帯を提案するのです。
自分の予定を共有し、空いている時間を周りの人に知ってもらうことで他からのジャマが減ります。
提案しにくい職場であれば、普段からまとまった空き時間を予定しておくとスケジュール調整がしやすくなります。
この時間帯は休憩時間というわけではなく、自由に仕事内容を選べることにしておけば、ミーティングに参加したり、できなかった仕事をやったりと、柔軟に対応することができます。
大事なことは、相手から言われて反応するのではなく、自ら予定をコントロールすることです。そうすることで、集中力が増し、仕事の効率や生産性を上げることができます。頭の切り替えを減らし、ムダや疲労感も減らせます。
効果が体感できれば、さらに時間を有効に利用するために自分のスケジュールをコントロールしたいという気持ちになり、好循環が生まれます。
仕事がしやすい環境を自ら作っていく
7「1日は480分しかない」と考える
仕事の予定を見てください。多くの予定が1時間で設定されていませんか?多くの人が何も考えずに1時間単位で予定を立てています。
私は、これを「1時間病」と名づけています。1時間病の人は、総じて結果への意識が低いです。本来、成果ややり遂げるべきことを踏まえて、何をいつまでに達成すべきかを考えなければなりません。
しかし、ミーティングや仕事の予定を立てるとき、そこで決めるべきことや、やらなければいけないことよりも、ついつい、とりあえず時間を確保しようと、1時間を設定してしまいます。
時間は限られています。
1日の就業時間が8時間だとすれば、何も考えずに設定されたミーティングや予定が4つあるだけで、1日の半分が奪われてしまいます。
このどんぶり勘定的な時間のとられ方を変えていく必要があります。
シンプルな対策は「1時間」という言葉の使用を禁止し、分単位でスケジュールを考えてみることです。
すると、1日の終業時間は480分しかないことに気づかされます。
さらに予定を入れはじめると、480分もあった時間が、すごい勢いで0に近づいていきます。今までの大雑把な時間感覚ではマズい、貴重な時間が失われていると感じるはずです。
要するに、時間は「天引き」で考えると、重みが変わってきます。さらに、時間感覚をさらに鋭くするために、60秒で何ができるか考えてみてください。
例えば、お礼の返信メールをしたり、簡単な問い合わせメールを返したり、SNSやメッセンジャーを確認したり、名刺交換した人の情報を登録したり、アイデアを考えたり、いろいろなことができます。
この60秒の可能性をぜひ体験してください。今まで以上に、仕事における体感速度を高めることができます。
時間の単位を分や秒で捉える
第2章まとめ
- 想像以上に切り替えコストを払い、時間を浪費している事実を無視しない
- 切り替えコストとムダを減らすことが仕事の時間管理の成功要因
- 自分の仕事の特性を理解し、注意散漫になるマルチタスクと向き合う
- 付加価値を生み出さない「探しもの」を減らす
- 仕事に集中できる仕組みや外部環境を作ることにこだわる
- 仕事のスケジュールを組むことで、目の前の仕事に集中できる
- 「時間は有限だ」と自覚した瞬間から、あなたは変われる
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