はじめに
「これからは、もっと早く帰るように!」あなたの職場でも、そう言われることが増えていませんか?一方で、現場は、ますます忙しくなるばかり。
仕事をほったらかして早く帰るわけにもいきません。「言うのは簡単だけど、やるのは難しい!もっと、人を増やしてよ!」と言いたくもなります。
でも、そう簡単に人を増やせないのも会社の事情。そうなると、本当にどうすれば良いのか、と思ってしまいます。実は、答えが1つだけあります。
その答えは「段取り力」を高めることです。
今、私は、企業で「短時間で成果を出す営業手法、チーム作り」等をテーマとした研修を提供しています。
研修先で気付くのは、「段取り」=「さばく速度を速くする」と考えている人が多いということです。
段取りとは、速くメールを打つ、速く入力をする、といったことではありません。動作を速くするといったレベルのことではないのです。
では、段取りとは、何なのか?そんなことから、しっかりと解説したのがこの本です。
気を付けたことがあります。あいまいな表現や、学術的な理屈の解説は省きました。この本の目的を「実践していただくノウハウの仕入れ」とおいているためです。
その代わり、これほど具体的な解説はない、というくらいに解説したつもりです。
ゆえに、ご自身だけではなく、段取りに課題を持つ部下や後輩がいるならば、ぜひ、この本を使っていただければと思います。
全部をする必要はありません。1つでも2つでも結構です。それだけでも、大きく変わると自負しております。では、さっそく参りましょう!段取り力アップの世界へ!(株)らしさラボ伊庭正康
第1章頑張っているのに、いつもバタバタ、ギリギリ……
1残業ゼロで結果を出す人はここが違う!やるべきことが絞れているので、ムダがない
◆作業スピードが速い?使う道具が違う?
職場にスーパーマンのような人っていませんか?尋常じゃない業務量を抱え、さらにプラスアルファの仕事が降りかかってきても動じず、その上、自らがそれ以外の仕事を創り出す、そんな人。
どんな魔法があるのかと思ってしまいます。でも、よく観察すると、すぐにわかることがあるのです。多忙でも余裕を見せるそんな人たちに共通しているのは、ただ1つ。
「段取り」が良い、ということ。でも、思いません?そもそも、「段取り」って、どういうことって。
辞書を見ると、実にわかりやすく書かれています。
段取りとは、「事を運ぶための順序。事がうまく運ぶように、前もって手順をととのえること」(大辞林)なのだと。
なるほど、段取りが良いというのは、決して手帳にキレイな付箋を使ったり、便利なアプリを探すことではないことがわかります。ましてや、ひたすら業務のスピードを速くすることでもなさそうです。
つまり、段取りとは、「先を読んだ行動ができる」ことを指すのです。
では、段取りの良い人と段取りの悪い人を比較してみましょう。
会社の忘年会を企画する幹事に任命されたシーン。段取りの悪い人は、図の右のような感じ。すぐに動いているので、速いといえば速いのですが、結果はイマイチです。次に、左側の段取りの良い人を見てみるとどうでしょう。手順の違いに着目してみてください。
いかがでしょう。最初の一歩から違いますよね。どんな状況でも、彼らが動く時の第一歩は、「何を目的とおくか」です。
この忘年会は、目標の達成を労うためなのか、みんなでバカ騒ぎをするためなのか、それとも会話を重視するのか。
ここをハズすと、「やり直し」になることを彼らは知っているのです。だから、彼らは上司に「狙い」を確認するわけです。
もし、「たくさんの人と会話をする」ことが上司の「狙い」だとしたら、立食形式のほうが良いかもしれないし、中華の円卓かもしれない。
少なくとも席が固定されるコース料理ではないことはわかります。

◆「先を読んだ行動」ができるかどうか
そして、次のステップです。彼らは、どんな時でも、「複数の選択肢」を挙げた上で、「最適な案」を選びます。
上司からの「他になかったの?」「本当にそれがベスト?」の疑問にも対応できるのは、このためです。実際に、彼らが上司に提案する時は、こんな感じです。
「交流を図ることを優先し、〈立食形式〉で考えてみました。実は、3つの案を考えました。1つ目は円卓を囲む中華、2つ目は居酒屋、3つ目はこの立食です。立食だと席に固定されず、日ごろ交流のない人との偶然の出会いもアレンジしやすいと考えました。いかが思われますか?」と。
こう提案されると上司も納得です。もう、わかりましたよね。
段取りの良い人というのは、速いスピードで手際良く作業を処理する人ではありません。
段取りが良いとは、このように、目的を考え、確実な達成に導くため、「先読み」をした手順を踏むことを指すのです。
2スケジュールを埋めるほど余裕が生まれる不思議 いつもバタバタしている人ほど手帳が真っ白
◆「ここが空いている」とわかるとラクになる
わざわざスケジュールを立てなくても、今までは何とかやってこられたけれど、気が付けば残業が多くなってしまったり、さらには相手を待たせてしまっている……。
そんなことが増えてきていませんか。
忙しい日常においても、時間に振り回されない人になるためには、逆に「先々のスケジュールを決める」ことです。
でも、わざわざ計画を立てるなんて面倒くさい。今まで通り、なんとかなるだろうと思っている人もいるかもしれません。この気持ち、わかります。
白状しますと、私も新人の頃は、全く予定を決めませんでした。自分を忙しくするのが嫌だったからです。でも、気付いたのです。
先々までしっかりと予定を組まないから、時間に忙殺され、その結果として有給休暇も消化できず、相手を待たせてしまっていたのだ、と。自分の自由を確保するためには、絶対に先々の予定まで決めることです。
たとえば「ここで有休をとって旅行に行こう」「ここはコンサート」など、数カ月先まで予定を決めてしまえば、それが自由を確保することと直結しますし、時間に追われることはなくなります。
このように、段取りの良い人は、忙しいからこそ、先々の予定を決めることで、自分の時間を確保しているのです。
早めに予定を決めて、前もって伝えておけば、周りの人にも迷惑はかかりません。逆に、「今は忙しいから休める状態になったら考えよう……」と思っていたりすると、結局いつまでたっても旅行に行けないという状況になってしまいます。
そして、もう1つ。次のメールのような〈やりとり〉も段取りの良い人の特徴です。
この例は、実際の雑誌記事でのやりとりですが、このように今後のステップを明確にすることで、自分だけではなく、相手も段取りを組みやすくなります。
もし、今後のステップを明確にしていないと、相手はストレスを感じてしまっているかもしれませんので、すぐに改善されることをオススメします。

3目の前の仕事にすぐ飛びつかない 着手する前に、ひと呼吸!5時間後の自分を想像する
◆「入ってきた順番」と優先順位はイコールではない
最終局面になってから、バタバタすることはないですか。それって、実は「目の前のタスクにすぐに飛びついてしまう」ことが原因かもしれません。
段取り上手な人は、すぐに飛びつきません。あえて、ひと呼吸します。なぜだと思いますか?「業務があふれる」ことを危惧しているからです。
後先を考えずに飛びつくと、必ず「タスク」があふれ出します。彼らはここをしっかりとイメージしているのです。もし着手しそうになったら、彼らのように〈ひと呼吸〉してみてください。
そして、着手する前に、それをやることで時間オーバーにならないかをじっくりと考えてほしいのです。
もし、時間がオーバーするようなら、潔くスパッと後回しにするわけです。ついでに、もう1つ。
1日の予定を立てずに、いきなりパソコンを立ち上げ、書類を作成することも避けたいところ。この場合も、必ず業務があふれるからです。
まず、今日は何をする日なのか、何時間かかるのかを確認した上で、順序をつけてから作業に入りましょう。
さらに、こう言い聞かせてみるのも良いかもしれません。「今の自分はそれで良いかもしれないけど、5時間後の自分に迷惑をかけるかも」と。先の自分をイメージすると、より着手に慎重になれるでしょう。

4「段取り八分」はやはり真理だった 時間は有限!パズルのように予定を組む
◆焦って手を出す前に、全体把握。結局それが最短
いったん作業を始めると、目の前のことに一生懸命になってしまうもの。
最近、こんなことはなかったでしょうか?企画書や書類を作成している時、つい没頭してしまい気が付けば時間オーバー。
その結果、明日にズレてしまったり、時には残業でカバーせざるを得なくなる、ということが。
だとするなら、「考える順序」を次のように変えることで解決できるでしょう。
- STEP1:先に全体を見る
- STEP2:タスクを分ける
- STEP3:タスクごとにかける所要時間を決める
少し説明が必要ですね。たとえば、何かをレポートするシーンで考えてみましょう。ここでは、「来週の会議までに、時短対策の案を持ってきてほしい」と上司から指示を受けたとします。
今までのあなたなら、どうしていましたか?間違えても、いきなりネットを検索してはいけません。これこそ、思った以上に時間がかかってしまう原因です。
「職場の時短」とホームページの検索窓に入力して調べたところで、なかなか思ったような情報に行きつかず、それでもキーワードを変えながら、何度も検索をかけ、なんとか近いものを情報として入手する、というハメになる可能性があります。
さらなる問題は、上司から「これだけでは足りないな……」と言われることです。翌日の予定も大きく狂い、こうなると残業の連鎖を引き起こしてしまいます。
段取りの良い人を見てみましょう。彼らは、こう考えます。
まず、「レポートには何が必要なのか」を考えます。
ここでは仮に、「成功事例を3つ」「時短を行う際の一般的な課題」「我々が導入する際の具体策」を考えることを、レポートに必要な要素として抽出したとしましょう。
そして、タスクを書き出し、各タスクにあてられる所要時間を決めます。
◆納期を死守するための方法ここで質問です。
なぜ、所要時間を決めなければならないのでしょうか?その理由は、「納期に間に合わせるため」に尽きます。
「納期」というのは、そもそも守られるべき当然のことで、クオリティよりも大事な前提条件です。
どんなに良い成果物を出しても、納期を過ぎてしまっては、その評価は半減どころかそれ以下にもなり得ます。
タスク管理の本質は「所要時間」をコントロールすることです。今抱えているタスクには何時間必要なのか。余裕を持って間に合わせられる設定になっているか。無理があるなら、1つのタスクの所要時間を短縮できないか。こうした〈検証〉が必要です。
時間は無尽蔵ではありません。そのためにも、タスクを書き出すだけではなく、「所要時間」も設定してほしいのです。
目に見える形で時間を意識することで、時間オーバーで締切に間に合わないといった事態は予防できます。
初めはなかなかうまくいかないかもしれませんが、気にしないでください。予定時間内に終えることを意識するだけでかまいません。それを繰り返すうちに、なんとなく自分の相場観がつかめてくると思います。

5自分の1時間あたりのコストを考えたことありますか? 費用対効果に見合わないことはしない
◆その作業の「見返り」を明確に説明できるか?
今、生産性の向上が各企業の大きなテーマとなっています。あなたの会社でも言われたことはないでしょうか?「生産性を高めましょう」と。
もちろんなんとなくは理解できているものの、よくわからないのが「生産性」です。端的に申します。これができていればOKです。
●あなたが、そのタスクをするのに、「いくらのコストがかかっているのか」をイメージできている●そのコストをかけてでも得られる「見返り」を明確に説明できる私の失敗例を紹介しましょう。
今でも思い出す苦い経験です。営業に携わっていた時のこと。上司からの質問に全く答えられなかったのです。
「君が新規開拓をする際、1件あたりの商談単価はいくらかね?そして、1件の新規獲得をするのに、いくらまでかけて良いと判断しているのかね?」これには困りました。
目標達成のことしか考えておらず、生産性の観点がスポンと抜け落ちていたからです。上司が言いたかったのは、君の移動にはムダはないのか、ということでした。つい、アポイントがとれるので、縦横無尽に移動していたのです。まさに、上司の指摘通りだった、というわけです。
◆年収400万円なら1時間あたり3000円
そこで、あなたにもやってもらいたいことがあります。
自分の1時間あたりのコストを知っておいていただきたいのです。計算式は簡単。次の通りにやってみてください。
【あなたの1時間あたりのコストの計算式】(年収÷実働日数÷時間)×1・5倍※1・5を掛けているのは、会社が支払う社会保険等の分年収が400万円だとするなら、おおむね1時間換算にすると3000円。
1時間のミーティングに参加した場合は、3000円がかかっているということ。移動時間に往復2時間をかけたとするなら、交通費とは別にコストは6000円かかっているということ。
もし、年収が800万円なら、その倍ということになります。
それを補う「見返り」を説明できれば問題ありませんが、説明ができないなら、生産性を意識できていない、ということなのです。
つまり、生産性を高めるとは、あなたの「費用対効果」を高めなさいということ。
「会議をしても良いけど、費用対効果を考えている?見合わないならダメだよ」と上司は言いたいのです。さて、まとめましょう。つい、やってしまうことにもコストが発生しているということを自覚しておく必要があります。
私の知る大手企業では、会議をする際に、ひとりあたりのコストを計算することがルールになっている会社もあるくらいです。
年収400万円の人が10人集まる会議を1時間行えば、3万円ということ。段取り向上を狙うなら、少なくとも、そのくらいのレベルで意識しないといけない時代なのです。

6早く帰りたいなら、「帰る時間」をただ決めれば良い 遅くまで仕事をすることが〈一生懸命〉の証にならない時代
◆残業するのは残業前提で働いているせい
もしあなたが、早く帰ることに不安があるなら、こういうことではないですか。「本当に早く帰って、周囲は許してくれるのか……」まず、あなたの上司を代弁しましょう。怒らないでくださいね。
「頼むから、早く帰ってくれないか……」これが、本音なんです。説明しますね。ついこの前まで、残業をすることは〈一生懸命〉の証でした。
しかし、状況は180度変わりました。大事なことは、対策です。私達は何をすべきか、です。早く仕事を仕上げて、サクッと帰る人になるために、どうすれば良いのか、ということ。
サクッと帰る人達がやっている方法を紹介しましょう。それは、「出勤時には、今日の退社時間を決めている」です。
実は、彼らが不安にならないのは、「必ず、そこで終えると決めている」からです。その後、用事を入れていることも多い彼らは、やるべきことが残っていたとしても、翌朝に回します。
もし、あなたが、残業を前提に考えていたりするようなら、ぜひここからスタートしてみてください。
この具体的な方法は、第2章で紹介します。
◆仕事帰りに予定を入れてしまおう
ここからは、余談。そういう私も、社会人2~3年目のうちは、長時間残業が当たり前の生活でした。でも、将来を考えた際、強烈な不安を感じたのです。
こんな残務に追われる日々の先に、何があるのだ、と。体も疲れ果てていました。鉛のように重い体を引きずり、通勤電車の中でも寝ることしか考えていなかったように思います。
思いきって、早く帰るようにしました。万全の状態で仕事をすることもプロの務めだと、腹を決めたのです。まずは、手帳に退社時間を記入し、無理矢理に学校に通うことにしました。
簿記の学校でした。授業は面白くなかったのですが、急に、世界が開けた気分になったことを思い出します。そして、何よりも気付いたこと。それは、空が明るいうちに帰れる気持ち良さでした。
思った以上に1日は長いことにも気付けました。思いきり仕事をして、学校から帰った後、子供を風呂に入れ、家族と食事を食べる。それでも時間は余りました。そして、強く確信したこと。
それは、職場は居場所ではない、ということ。仕事をするところだ、ということ。
振り返ると、この感覚を得られたことが、プロしての軸が固まった瞬間だったと確信します。「本当に早く帰って、周囲は許してくれるのか……」そんな不安なんて、気にしないことです。

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