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第1章ゴールまでの道のりを描こう

はじめに

「仕事に追われて毎日が過ぎ去っていく」「あれこれ考えて目の前の仕事に集中できない」「頑張っても良い評価がもらえない」

私は、ケンブリッジ大学の大学院で心理学を学んだ後、グローバルリーダー育成のジーエルアカデミアという会社を立ち上げ、会社を経営しながら、講演や講義を年100本ほどこなし、通訳や翻訳、企業や大学のコンサルティング、本の執筆などもこなしており、仕事の内容は多岐にわたっています。

同時にたくさんの仕事を進行させないといけないので、自分のすべきこととそうでないことを整理し、任せる仕事はスタッフやビジネスパートナー、海外在住のフリーランスに依頼しながら進めていきます。

こんな風に言えば、なんだかかっこいい感じに聞こえてしまうかもしれませんが、かつての私は高校1年生の時には偏差値30台と勉強嫌いなだけでなく、事件を起こして警察や裁判所にお世話になったことがあるほどで、テキパキ、キラキラとした人生とは無縁でした。

今でも、本質はナマケモノな私が、どのようにしてたくさんの仕事をこなし、しっかりと成果を上げているのかを皆さんにシェアしたいと思い筆をとりました。

まず、朝のお母さんのお弁当作りを思い浮かべてみてください。

今日の晩御飯や明日のお弁当のイメージをしながら、足りない食材をスーパーで調達。

そして朝になると、炊飯器のスイッチを押して、電子レンジで前日のおかずの残りを温め、その間にソーセージをフライパンへ。

ソーセージが焼けるまでの間に野菜の準備をして、レンジが終わったタイミングを見計らって、冷凍食品の唐揚げを温める。

子どもたちが起きてきたら、朝食も同時に仕上げてしまう。全てが起きた時点での思いつきではうまくはいかないのです。

先を予測して、先に先に準備をしておくから、お弁当に、洗濯に、掃除にと忙しい朝をテキパキとリズミカルに進めることができるのです。

いかに無駄なく、時間を効率的に使いながら、事前に描いた完成図に到達するか。これが段取りです。

もうここまでで、「段取り」に必要な要素が全て出てきました。ゴールを明確にすること。

ゴールまでのプロセスにおいて必要なタスクを明確にして、自分がすべきことと、そうでないことをはっきり分けること。

足りないものは調達すること。そして他人に任せることは的確に指示を出し、自分がやるべきことに集中すること。

段取りとは、自分の強みを最大限に発揮するための仕事術なのです。これにより、限られた時間で最大の成果を生むことができます。会社よりも人に信用が集まる時代になってきています。

人と人とのつながりの中で仕事が生まれていく時代においては、信用が全てです。

良い段取りをすることで、相手の期待を上回るパフォーマンスを示すことができれば、あなたは信用を集めることができますが、段取りが悪くバタバタとしている割には良い仕事ができていないとなると、信用は下がってしまいます。

段取り力を高めることで、「あなたにお願いしてよかった」と周りから高い評価をされるようにテキパキと仕事が進んで、自分に自信が持てるように時間的な余裕ができ、仕事以外の時間を楽しむことができるようになっていくことでしょう。

たった1分間の工夫で段取りが劇的に変わる方法をご紹介すること、それが本書のテーマです。なぜなら、ちょっとしたことが大きな差を生んでいることがたくさんあるからです。

そして、すぐに実践していただけるように、私のこれまでの経験と心理学の知見を交えて、その方法について詳しく解説いたします。

いつでも振り返ることができるバイブルとなるよう、どこから読んでも効果を感じてもらえるような構成にしました。

「お、これは今すぐ試してみよう」そう感じられるところからどんどん行動に移してみていただけると嬉しいです。

では、段取り力を劇的に向上させる方法についてのお話を始めましょう。

2019年4月塚本亮

第1章ゴールまでの道のりを描こう

目次

01ゴールの向こう側の景色をイメージする

段取りとはゴールを決めて、現在地からどのようなプロセスをたどれば、目的地まで確実にたどり着けるかを考えることです。ですから、まずはゴールが決まらないと始まらないのです。

これは、旅行で考えるとわかりやすいですね。「フランス旅行に行きたい」となったときに、なんとなく行く人はいないはず。

世界遺産モンサンミッシェルを見てみたい!と思ったら、それがその旅の一つのゴールになります。しかし、そこにたどり着くにはたくさんのルートがありますよね。

日本からパリまで飛行機で飛ぶのか、それともせっかくだからロンドンまで行ってロンドン観光をしてからユーロスターでパリまで移動するのか。

それが決まったら、パリからモンサンミッシェルまでは電車とバスで行くのか、それともバスだけで行くのかも考えなければいけません。

電車を使ったほうが早いけれどもお金がかかる。バスのほうが時間はかかるけども費用は安い。

などのこまごまとしたことや、何泊するのか、いつ行くのか、他には何をしたいのかも決めなければなりません。

フランスでは度々ストライキがあるので、1日しか確保していなかったら、もしかしたら交通機関に影響が出て行けないかもしれない。

どうしてもモンサンミッシェルは外せないのなら、余裕を持った計画を立てたほうがいいかもしれませんね。

しかし、何を差し置いてもゴールがあるからこそ、そこまでのルートやプランを考えることになります。

「とりあえずなんとかなるでしょ」と考えているだけだと、せっかく憧れのレストランに行ったのに定休日だった……みたいなことになってしまう可能性があります。

段取りというのはゴールまでのプランを逆算思考で立てていくことですから、ゴールが明確でないと始まらないのです。

しかし、モンサンミッシェルに物理的にたどり着くことがゴールなのでしょうか。たどり着くことはゴールではなくて、「見たい景色を見ている自分」を実現させることが本当のゴールなのではないでしょうか。

テレビやガイドブックでモンサンミッシェルを見て、「行きたい!」と強く思って、そこにいる自分をイメージするからワクワクしたのでしょう。

仕事も同じです。

その仕事やプロジェクトを成し遂げた先にはどんな景色が広がっているのかを明確にイメージしましょう。私が本を執筆するときにイメージしていることは、本を完成させた自分ではありません。

本を手に取った人が、本を読み、「これは試してみよう」というものを見つけ、それを実践に移し、その結果、仕事やプライベートが充実するシーンをイメージしています。

これが私にとってのゴールです。

そこから逆算をして、どんな内容で、どんな言葉を使って、どんな例を挙げたらそうなるだろうかを、徹底して考えるのです。

ですから、その仕事やプロジェクトをやり遂げた一歩先にはどんな世界が広がっているのかを、イメージしてみましょう。全てはそこから始まるのです。

洋服屋さんでジーンズを買うときも、単純にジーンズを買うことにワクワクしているのではなく、「今度のデートにはいて行くシーン」を思い浮かべてワクワクしているものですよね。

あなたが提供したサービスを受けてお客様が満面の笑みを浮かべているシーンや、誰がどう考えても間に合わないと思っていた仕事を間に合わせて「いやぁ、やっぱり君は仕事が早いな」と上司が思わず言ってしまいそうになるシーンをイメージしてみましょう。

ゴールとはいつも景色なのです。その仕事をやり遂げたときにどんな景色がそこにはあるかを想像してみましょう。すると、全てが「あなたにお願いしてよかった」につながっていくはずです。

Imagine想像してみよう

02「そもそも」でブレない軸を作る

段取りを考える上で、「そもそも」を考えることは大切です。これまでに染みついた思考習慣によって、「なんとなく」や「とりあえず」でやっていることが多くあります。

それによって、いくらゴールが定まっていても、私たちは考える途中で本質から離れていくことがあるからです。そういった場合には、「そもそも」を問い直すことでズレをなくすことができます。

身近な例から挙げてみましょう。

多くの人は12時になれば昼食を食べたいというスイッチが入りますが、私は12時から1時の間にランチをとることはできるだけ避けています。

「そもそも12時に食べなきゃいけないのか」を考えてみたところ、「とりあえず」になっていることに気づいたからです。

しかし、わざわざ人が多い時間帯にコンビニに並んだり、定食屋さんに並んだりするのは時間の無駄ですよね。

そもそもその時間でないといけない、ということはありません。どうしてもその時間にしかランチをとれないのならば、朝買っていく。それも1日の段取りの中で考えて動けることですよね。そのようにして、時間の効果的な使い方を考えることも段取りではないでしょうか。

例えば、資料作りが目的になってしまっている人がいます。無駄なアニメーションや装飾で時間を過剰にかけて作る資料は、生産性も低く、本当にダメなものが多いです。

なぜなら、「どう伝えるか」にこだわりすぎるあまり、「なにを伝えるか」がないがしろにされてしまっているのです。「そもそもなんのためにその資料を作っているのか」を考えれば、そこからずれなくてすみます。

アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾス氏は、「アマゾン社内ではパワーポイントは使わない」ことを指導しているそうですが、特に社内プレゼンにおいてはビジュアルにこだわるよりも中身にこだわることが圧倒的に重要ですよね。

「なんとなく」、「とりあえず」で進めてしまっていては、無駄が増えて、本質から外れてしまうのです。会議もそうですね。

「そもそも集まらないとできないのか」を考えないから、全員が集合できるときを探そうとしてしまいます。

今はzoomやskypeを使って遠隔でも会議はできますし、会議のために社内に留まらないといけないということもありません。得意先を訪問しながら、合間の時間でも会議に参加できてしまいます。

私は積極的にクラウドソーシングを活用しています。

例えば、英語で文書を作成してもらいたい場合、社内にも外国人がいますが、そもそもその人たちにお願いする必要があるのでしょうか?的確な指示さえできれば、社外の、海外に住んでいる人でもいいのです。

そして、社内の人材には、ここにいないとできない仕事に専念してもらうのです。さらに、海外在住のフリーランスに仕事を依頼することによって、圧倒的にコストカットができるのです。

日本在住の外国人の給料は高いですから……。英語を母国語として話す人であればこなせる仕事内容なら、子育ての隙間時間に仕事をしたいという人でも、なんら問題ありません。

まさに「そもそも」を考えてみたからこそたどり着いたものです。打ち合わせをしているときは前提の確認も大切です。前提のズレによって意見が食い違うことは少なくありません。

互いにとっての当たり前が、業界が違えば当たり前でないことはよくある話です。「そもそも」で方向性をしっかりと定めましょう。

そもそも、自分がやらなければいけないことなのか。そもそも、私は今なにをすべきなのだろうか。そもそも、それは事実なのか。そもそも、長期か短期か。そもそも、今議論すべきことはなんだろうか。

「そもそも」を考えることは、段取りを考える上で、無駄を省くことにつながり、本質からのずれを防ぐことにもつながっていくのです。

manofprinciple軸を持つ

0310倍思考でブレイクスルーを探る

リニア中央新幹線が開業に向けて動き出しています。

現在、東海道新幹線「のぞみ」の品川~名古屋間における最短所要時間は約1時間30分ですが、リニアだと40分に短縮できると言われています。

約3分の1になるというのは、大きなブレイクスルーですよね。

新幹線を含む従来の鉄道は、レールの上を車輪で走行するため、いくら改善を加えても、速度向上には限界があります。

それがリニアでは磁石の力を使い、車体を浮かせて走行することで時速500キロのスピードを実現できるそうです。

1964年に日本で初めての新幹線が登場し、当時の最高時速は210キロでしたが、2020年には360キロに挑戦すると発表されています。

誕生から50年以上にわたりたくさんの改善、改良を加え続けた成果ではありますが、時速500キロのリニアの速さには到底及びませんね。

確かに、微差の積み重ねが、長期的に考えたときには大きな差を生み出すことが多くあります。

しかし、頑張って今の新幹線を速くする方法だけを考え続けていたら、リニアを作ろうという発想は生まれていたでしょうか。

これは仕事のやり方にも同じことが言えると思います。

あなたの会社や所属する部署にも、これまで培ってきたやり方というものがあることと思います。「もっと良くするにはどうすればいいか」と、従来のやり方に改善を加え続けることも確かに重要です。

ただその多くが従来の延長線上の発想に捉われてしまっていて、成果を20%高めるためにはどうすればいいかということにばかり目が向いていないでしょうか。

上司に言われた通りのやり方に沿って仕事をこなしていくことも大事かもしれませんが、ときにはルールを破るということも考えたいものです。

10倍成果を出すにはどうすればいいだろうか10倍仕事のスピードを速めるにはどうすればいいだろうか10倍お客様からYESを引き出すにはどうすればいいだろうかこのように「10倍」をキーフレーズに物事を考えると、既存の前提や固定観念を破ることができるようになります。

「2倍にしよう」、「3倍にしよう」では従来の発想の延長線上になってしまいますが、さすがに「10倍」は発想をゼロから疑う必要が出てくるのです。

段取りを考えるときも、そこに従来のやり方があったら、それをときには疑ってみる。

「本当にこのやり方がベストなのかな?10倍スピードを速めるための方法がないかな?」私は本の原稿を執筆するとき、音声入力を活用しています。

執筆するというよりは、パソコンに向かって講演しているイメージでしょうか。このスタイルを導入するようになってから、執筆のスピードは圧倒的に速くなりました。

その理由は、パソコンに向かってタイピングするスピードよりも話すほうが断然速いということだけではありません。

タイピングしていると文章を目で追いながら文章を落とし込んでいきますから、「あ、これよりも、あっちがいいかな」などといろいろなことを考えてしまい、書き換えたりして、スピードが落ちてしまいます。

話しているときは、伝えたいことに集中して文章の細かい部分に意識を向けなくなるので、スピードが上がるのです。

そうして60%くらいの完成度の原稿を、まず作ってみる。そして、出来上がったものに、今度は見直しをしながら手を加えて整えていきます。

これまで日本国内であちこちの業者をあたり、少しでも安く、と交渉しながら調達していたものは、もしかすると海外から調達したら一気に大幅なコストカットができるかもしれません。

右肩下がりな業界でもヒットを飛ばし続ける人は、従来のフレームワークの外に目が向いているのだろうと思います。

従来のフレームワークで踏ん張ることばかりに目が向いていませんか?ぜひ10倍思考を使って、常識から飛び出すことも考えてみてください。

Overcometheobstacles限界を突破

04期限は自分で決める

段取り力が高い人に共通するのが、仕事の期限は自分で決めるという姿勢です。

締め切りまで「あと何日かしかない」という状況のときと、「まだ何日もある」というときとでは、どちらがやる気が起きるでしょうか。

私は小学生のとき、クラスで一番のデブで、その上勉強も全然できず、塾を転々とする日々を送っていましたが、それでも成績が上がることはありませんでした。

夏休みの宿題はいつもギリギリ。いや、間に合わなかったことも何度もありました。そんな私ですが、今はたくさんの仕事を日々こなしています。

こうして本の原稿を書くことも私の仕事の一部であり、全てではありません。では私は根本的に変わったのでしょうか。到底そうとは思えません。

私は自分がいかに怠け者かを知っています。「ラクをしたい」といつも思っています。

そんな私が、こうして本を通して皆さんに段取りがうまくなる方法をお伝えさせていただいているのは、時間を利用して自分を動かすことがうまくなったからだと思っています。

まずは大前提として、私たちの脳は、一定の緊張感があるときのほうが集中できると言われています。

試験でもたっぷりと時間があると中だるみしてしまいますが、時間が足りないかもしれないと思えば、集中せざるを得ない状況に追い込まれますよね。

永遠に休みの日々が続く気分になる夏休みのように、時間の制約もなく、いつやってもいいという状況だと、なかなか自分にスイッチが入らないのは自然なことなのです。

ですから、私は仕事を引き受けたら、締め切りや納品の希望を相手から聞き出した上で、自分で締め切りを決めるようにしています。そうすることで主体性が生まれるからです。

つまり、誰かに与えられた仕事は、最初はまだ「自分ごと」ではなく「他人ごと」なわけですね。ですから、私のように意志力が弱い人にとって効果的なのが人との約束です。「推進力」を生んでくれます。

相手と約束することで、目の前にある仕事が、相手と自分にとって、「私たちの」仕事に変わります。

例えば、「納期は1週間後でいいよ」と言われれば、4日で仕上げることをイメージします。そして、その完成までのプロセスを明確にしたら、「4日後に一度仕上げます」と宣言しておく。

宣言することで、4日後に仕上げるための具体的な段取りを考えるスイッチがオンになります。

長期のプロジェクトであれば特に中だるみしやすいので、あとで詳しく説明しますが、1週間単位の具体的で小さなゴールを作っていって、それを相手に伝えてしまいます。

もちろん無理をしてはいけません。

どう考えても無理なのに、「やります!」と宣言して、結局その約束を守れなかったら、「なんだアイツは口だけだな」と思われてしまいます。

ですからなんでもかんでも宣言してしまえばいい、ということではない点は理解してください。

もちろん突発的な出来事などによって自分が設定した締め切りをどうしても超えてしまうことがあれば相手に伝えますが、それでも相手の希望よりは早く仕上げることができます。

時間がありすぎるから、時間はなくなってしまうのです。締め切りを意識して仕事をする場合と、それを感じずに仕事をする場合では意識の強さが変わります。

限られた時間しかないとなった場合は、私たちはそのなかでできることを真剣に取捨選択するようになります。

200ページを超えるような本を執筆することは、1日では終わりません。50項目からなる本書の場合は、1週間で10項目書くと決めて、5週間で仕上げることを目指します。

そう決めることで、時間がないならば無駄を削って取り組めるようになるのです。ぜひ、自分が動かざるを得ない時間の使い方をしましょう。

observethedeadline締め切りを守る

05サティスファイサーを目指す

私はいつも本の原稿を書くときには、「まずは私が70点、80点くらいだと思う原稿をお渡しします。それに忌憚のないご意見をください」と伝えてから執筆にかかります。

なぜならば、自分が思う100点と、出版社の編集者さんが思う100点は違うからです。ましてやその先にいる読者にとっての100点はまた違うものかもしれません。気をつけたいのが、一つひとつ最初から100点で仕上げようとしてしまうことです。

自分にとっての100点が相手にとっての100点ではないかもしれないということに加え、100点にすることにこだわりすぎるとスピードが落ちてしまいます。

日本では間違ってはいけないという正解主義が教育の一つの価値観として植えつけられているので、100点を取ることを目指してしまう気持ちはわかりますが……。

私の場合、和文英訳、つまり翻訳の依頼をいただくことが少なくありません。

ご存知の通り、日本語の文には主語が明記されていない場合がありますが、英語の文では、ほぼ必ず主語を明確にする必要があります。

そのときには文脈から考えて、推測で主語を入れておいて、赤字などでコメントを書いておきます。

他にも文化的な違いからニュアンスが全く異なる場合もありますから、ニュアンスをある程度推測して翻訳することもあります。

言葉ですからいろいろな表現の仕方があって、それこそ正解が一つではないケースが少なくありません。

ですから、「こういう風に考えてこう翻訳しています」と書いておいて、相手の希望の納期よりも早く相手に送ります。

私が推測で翻訳した部分が相手の意図するものになっているかを確認して、ズレがあるならば修正すればいいですよね。

アメリカの心理学者バリー・シュワルツ博士によれば、私たち人間は、自分にとって最高の選択を望む「マキシマイザー」と、まずまずのところでも満足する「サティスファイサー」の2種類に分けられるそうです。

マキシマイザーは満点を目指すタイプなので、一つひとつのことについてあれこれ迷ったり、悩んだりします。

ようやくなにかを選択しても「もっと他にいいものがあったのでは」と、なかなか満足することができません。それどころか、「もっとできたはずだ」と、後悔することも多いのです。

なにより大きな問題は、迷ったり悩んだりする時間が長く、行動までに長い時間を費やしてしまうか、場合によっては、行動できずじまいにすらなってしまうことです。

「いきなり100点を目指す必要はない。まずは70点でいいから早く形にして、確認しよう」と考えるだけでも、圧倒的に仕事のスピードは上がりますし、確実に進めることができます。

そもそも、70点や80点で十分だという仕事だってあります。

そもそも100点が求められていないのに100点を目指したところで、スピードがその分遅くなってしまったら、評価を下げる結果につながることだってあります。

例えば、会議の議事録を作るといっても、一語一句聞き漏らさない100点の議事録を作るのか、要点をまとめた80点のものを作るのか、どちらが必要なのかを、まずは明確にしなければならないのです。

一語一句、忠実に作成した議事録は一見100点に見えるかもしれませんが、逆に要点が摑みづらく、完成までに時間もかかってしまい、評価としては40点かもしれません。

むしろ80点くらいのもののほうが、読み手には100点かもしれないのです。ですから、上司や取引先などがスピード重視なのか正確性重視なのかなどを、まず確認する。

正確性重視であれば、70点を目指してひとまず仕上げて細部を確認しながら詰めていく。このようなプロセスを最初から想定して段取りを組みましょう。

仕事だけでなく、資格や英語の勉強などをしている人にも同じことが言えます。

伸びる人はまずとにかく雑にでも、取りかかります。そして改善に改善を重ねながら、合格点をクリアするものに仕上げていきます。

それはペンキを塗るような感覚で、一度で綺麗に塗るのではなく、何度も何度も重ね塗りをしてムラをなくしていくようなものです。

Whatisthestandard?合格点を見極める

06意思決定にも期限を設ける

私は移動が多いので、台風が多い時期は、より一層の段取り力が試されます。

去年も、東京へ出張しているとき、翌日の朝に大事な仕事があったため当日中に京都へ戻る計画でいたところ、まさかの台風直撃。

早朝の新幹線で戻っても間に合わないので、なにがなんでも戻らなければならないという状況でした。

台風の影響で新幹線がストップ。通過したら、ひょっとすると運転再開となるかもという状況。となると、その可能性を信じたくなります。

「新幹線の運転が再開したら、すぐに予約をしないと満席になってしまう!」と思って、じりじりと再開を待っている状態が続きますよね。

その間、21時台の最終便の時間まで、台風の行方やJRからの発信が気になって何も手につきません。

しかし、私は18時の段階で意思決定をすると決めていました。18時まではその行方を見る。だけど、18時の段階でダメだったら、ホテルを予約して、明日の仕事の予定を調整することにしました。

18時の段階であれば、まだ明日の仕事の担当者に連絡がつく可能性が高いですが、19時まで待っていたら難しくなるかもしれません。

同じ状況の人がたくさんいるわけなので、ホテルも早く予約しないと埋まってしまう可能性もあります。こうして意思決定したら、次の行動が明確になりますし、何もできない生産性の低い時間が減ります。

だから、この意思決定をする時間を決めるという行為は、結構重要なんですよね。意思決定がずるずると遅くなる要因として挙げられるのは、正しいかどうかがわからないということです。

台風のときの話だと、もしかしたら19時に運転再開となっていたかもしれません。

しかしこれは結果論でしかなく、その時点では誰にもわからなかったことなので、これを悔やんでも仕方がありません。

それよりもギリギリまで粘って最終的に判断し、クライアントにギリギリになってそれを伝えることで迷惑をかけるかもしれませんし、自分自身も動けないのでそちらのほうがよほどデメリットが大きいのです。

何も拙速な意思決定をする必要はありませんが、意思決定をダラダラと延ばすと、もっと多くのロスが生じてしまいます。

このタイミングならば、ムダとロスを最小限に抑えられるというラインを考えて、そんなタイミングで意思決定をするスケジュールを組みます。

「あと5分だけ待ってからにしよう」の積み重ねが大きなロスにつながります。意思決定の期限が来たらあれこれ考えず、決断、実行することが重要です。

投資で勝つ人はほぼ間違いなく損切り上手な人であると言われます。損切りというのは、例えば上昇すると思って買った株の値段が下落してしまったけれど、それ以上損失が膨らまないように損失を確定させることを言います。

多くの勝てない投資家は「もう少ししたら回復するかもしれない」とそのまま保有し続け、さらに株価が下落して損失額が膨らみロスを大きくしてしまいます。

段取り上手な人は、何をいつやるかといった段取りもうまいですが、意思決定の期限が明確です。そもそも「正解」の意思決定はありません。

段取りにも正解がないと言ってもいいかもしれません。段取りを組むとき、相手のレスポンスや周りの動きを見て考えなければいけないこともありますが、まずは時間できっぱりと切ってしまいましょう。

Deadlinefordecisionmaking意思決定にも期限を

07断る勇気で、クオリティを高める

取引先や上司から急に仕事を振られることは少なくありません。そのような突発的な仕事のせいで減らないタスク。

やろうと計画していたことも翌日に回して……、という悪循環が止まらなくなってしまうことがあるかもしれません。

毎日それに追われてばかりでは、重要度の高い仕事をしっかりとやり遂げることができません。タスクが溜まりすぎてパンクしてしまっている人も少なくないでしょう。

頼まれごとだからなんとか作業時間を確保して頑張ろうと思っても、どうしても負担がかかりすぎてしまう場合やその恐れがある場合は、断ってしまってもいいのです。

評価されたい、「仕事ができる人だと思われたい」と思ってなんでもかんでも引き受けていたら、重要な仕事に割く時間が圧迫されてしまって、結果的に質が下がってしまうことだってあり得ます。

キャパシティーを超えてしまっている状態ですね。

私もかつては断ることが苦手で、仕事の依頼が来たときに「ちょっと、きついな」と感じても、「でも、今やってる仕事をもっと早くすませたら、いけるんじゃないの」と自分を納得させて引き受けてしまっていました。

しかし、実際のところは目の前の仕事でいっぱいいっぱいなのに引き受けて、心に余裕がなくなってしまって、やっつけ仕事のようになってしまうことがありました。

そうすると元々は楽しんで取り組んでいた仕事も楽しくなくなってしまいますよね。やるべきことでしっかりと成果を出すためには、やらないことを決めることも段取りにおいてはキモとなるのです。

無理をしてこなしたとしても、仕事が雑になって質が下がったり、最悪の場合、重要な仕事が納期遅延やミスにつながるケースもあります。

だから、断る勇気も必要なのです。そもそも、断ること自体には何も問題がありません。問題があるとしたらその断り方でしょう。

ただ「できません」とか「無理です」の一言で断ると、どう考えてもいい印象は与えられませんね。

一方で、今自分が置かれている状況や、集中して取り組んでいる仕事の重要性を伝えた上で断れば、角は立たないものです。

社内であれば、前もって、今自分が取り組んでいることを周知しておくことも一つの方法です。

朝礼や共有スケジュールなどで報告する習慣があるなら、その場を活用するのもいいでしょう。代替案を提示できるようであれば、伝えるようにしましょう。

例えば、「今はA社とのプロジェクトが仕上げの段階に入っているので、そのあとでしたらお手伝いできるのですが。それからでも大丈夫でしょうか」といったように伝えることもできますね。

断るにはきちんとした理由が必要ですから、それを説明できるように、自分が今取り組んでいるタスク、今日中に終わらせないといけないタスクをしっかりと見える化しておくことは、ここでも大きな意義を持ちます。

仕事を引き受けすぎてしまって段取りがめちゃくちゃになってしまう原因として、「これくらいだったら大丈夫だろう」と、タスクの量や負荷を甘く見積もってしまうということも挙げられるからです。

この現象を、心理学では計画錯誤と呼んでいます。誰だって、仕事を頼まれることは嬉しいものです。今取り組んでいる仕事のクオリティを落とさずに引き受けられるならば、喜んで引き受けましょう。

でも、無理をしてまで引き受ける必要はない、断るという選択肢が手元にはあるということも念頭に置いておきましょう。

Declinegraciouslyきちんと断る

08逆算と積み上げの両方で考えてみる

逆算思考と積み上げ思考という言葉を聞いたことがある人は少なくないはずです。この二つの考え方の違いと、どちらがいいのかということについて、少し考えてみたいと思います。

本書のテーマである「段取り」とは、ゴールに向かっていかに的確に、そして効率良く進めていくかを考えることを指しています。

そして、逆算思考とは、まずゴール設定をして、そこに到達するためには今なにをして、どのように進めていくのかを決めて、そのプランに沿って行動していきますから、段取りと基本的なスタンスは一緒です。

逆算思考では、到達したいゴールがあり、そこに向かってアクションを積み重ねていくので、道筋が明確で、行動にいつも基準があります。

例えばカレーを作るならば、どんな具材が必要で、それらをどう準備して、どう調理して、どういう順番で鍋に入れていくかなどを考えますよね。

旅でも同じです。目的地を決めて、何時に家を出るか、どういう手段で、どういうルートを通ってそこまでたどり着くのかを考えます。

逆算思考をすることで、行動が具体的になります。

特にビジネスでは、なんとなく頑張れるところまで頑張りました、というものではなく、「なにを成し遂げる必要があるか」といったゴールと、その締め切りが明確に定められていることが多いので、逆算思考はとても有効でしょう。

仕事や家事において、逆算思考は多くのメリットを私たちにもたらしてくれます。

一方で、積み上げ思考は、明確な目的や目標を定めず、とりあえずやってみる、といったスタンスです。こういう風に言うと、あたかも逆算思考のほうが優れているように感じますが、必ずしもそうとは言い切れません。

皆さんもご存知のスティーブ・ジョブズは大学を中退しました。そして、カリグラフィ(西洋の書道)にハマります。

そしてその経験がMacの美しいフォントを生み出すきっかけとなったのでした。

逆算思考はゴールが設定されているから、ゴールまでたどり着くことはできても、歴史的な発明をしたりすることはあまりないかもしれません。ある程度、計算された想定の範囲のことだからです。

心理学では内的動機づけとも言いますが、「好きこそ物の上手なれ」ということわざのように、「やってみたい」「楽しい」という気持ちも大切にしたいものです。

目標設定したものだけではなく、自分の気持ちに素直に、興味を持ったものにはアクティブに取り組むことが、この変化の早い時代においてはとても大切だと思います。

こうして考えると、どちらも優劣がつけがたいですね。ですから、どちらの考え方もできるようにしておきたいものです。

とはいえ、本書のテーマは「段取り」ですから、逆算思考を上手に活用して、皆さんがしっかりと成果を上げられる方法をご紹介しています。

特に仕事や家事においては、できる限り少ない時間や労力で、できる限り大きな成果を上げるという生産性が大切なキーになってくるので、逆算思考力、段取り力を徹底して鍛えることは有効です。

段取り力を鍛えて生産性を高めることで、プライベートを楽しむ時間をしっかりと確保しましょう。

そしてプライベートではぜひ、逆算思考だけでなく、積み上げ思考で「やってみたいこと」にチャレンジしてください。

それには意味づけは必要ありません。

そこから生まれる、いつもとは違ったアイデアがきっとあるはずです。

Beflexible思考は柔軟に

09いかに努力しなくていいかを考える

生産性を高めるということは、なるべく少ない時間や労力を使って、できる限り大きな成果を上げることですね。ですから、努力を最低限にするということが、段取りの根底に必要な考え方です。

なぜなら、仕事がうまくいかないという人によく見られるのが、努力することが目的になってしまっている状態だからです。

「努力すればなんとかなる」「うまくいかなかったのは、努力が足りなかったからだ」果たして、そうなのでしょうか?いつも忙しい忙しいと言っている人の多くは、確かに頑張っていますし、懸命に仕事に取り組んでいることは間違いありません。

しかし、忙しそうに働いているように見えても、実際は仕事の効率が悪く、頑張っている割には評価されない、成果が出ないのです。その原因は、「段取りが悪い」ということです。

「なんでこんなにも頑張っているのに成果につながらないんだ」と、頑張っているのに評価されないことから、仕事に対するモチベーションが下がってしまいます。

2016年の日本の時間当たり労働生産性は、46・0ドル(4694円/購買力平価(PPP)換算)。順位はOECD加盟35カ国中20位でした。統計的に見ても、頑張り屋さんの日本人は、頑張っている割には成果を生み出せていません。

見直しが進んではいますが、長時間労働をしながら生み出している成果は少ないということなので、生産性を高めれば、間違いなく仕事外の人生を楽しむ時間を増やすことができるようになります。

努力は報われるという言葉は確かに美しい。しかし、それ以上に、努力しなくても成果が上げられないかと考えているでしょうか。

「よし気合で乗り切るぞ」と短絡的に考えるのは、思考停止状態なのです。努力は大切です。でもムダな努力を省く努力も必要なのです。

まず前提として、成果を出すために必要なことは、努力の方向性を正しい方向に向けることです。最短距離でゴールまで向かうために、その方向性は正しいのかを問い続けなければいけないのです。

書類作りをお願いすると、あれもこれも詰め込んで必要以上に長いものを作成する人がいます。確かに努力のあとは見えます。でも、それが仕事として最適なものでしょうか。

書類を作ることは仕事のゴールではありません。その書類はなにかの目的のために作るものですから、その目的を達成するためのツールですよね。

そのツールは、大きなゴールを達成するために最適化されているのでしょうか。すごいことをしようとしてはいけないのです。

気持ちが前のめりになりすぎると、変に力が入ってしまって結果うまくいかない、というのは仕事やスポーツ、恋愛などでも一緒ですね。

「本当にこの努力は必要な努力なのか?」「本当にこれは必要なことなのか?」これらは常に問い続ける必要があります。

目の前の仕事に熱中すると、「せっかくだからあれもやっておこうか」と必要性の低いものにまでつい手を伸ばしてしまうことがあるからです。

段取りの段階では予定していなかったことまで手をつけてしまって、仕事の趣旨がずれるというのも非生産的ですね。

スムーズに仕事を進め、しっかりとした成果を出すために、「努力を省くための努力」を常に念頭に置いておきましょう。

Putintherightamountofeffort正しい努力をしよう

10想定外を想定しておく

いつも段取り通りに仕事が進めばいいですが、必ずしもそうではありませんし、むしろそのほうが少ないのではないでしょうか。

そもそも、うまく段取りしても思い通りに進まないのであれば、段取りはしなくていいのではないか、と考える人もいるでしょう。

段取り通りに進めたのにうまくいかなかったとしたならば、なぜうまくいかなかったのかを考えることができます。

PDCAという言葉をご存知だと思いますが、うまくいったのはなぜか、うまくいかなかったのはなぜか、どうすれば次はうまくいくかということを考えられるのは、Planがあったからに他なりません。

去年ロンドンに行ったとき、ケンブリッジ行きの電車をホームで待っていたのですが、出発時刻に急遽運行取りやめとなり、次の電車まで30分以上駅で待たないといけない、という事態になりました。

こんなとき、ブーブー文句を言って苛立っても、何も良いことはありません。そもそもイギリスでは電車の運行取りやめや遅延は日常茶飯事。

ですからスケジュールには余裕を持たせておく、詰め込みすぎないということが大切なのです。

詰め込みすぎて余裕がないスケジュールだと、一つのアポがずれることで他のアポも全て変更しなければならなくなってしまうからです。

そうすると、その日にアポがある人全員に迷惑をかけてしまう可能性が出てきますよね。不測の事態が起こることは防ぎようがないですし、それは誰にだって起こりうることです。

しかし、不測の事態が起こったとしても、なるべくその影響が拡大しないようにすることはできると思いませんか。

仕事でも同じです。

段取りを立てる段階から余裕のあるスケジュールで考えておかないと、不測の事態が起こったときに多くのものが将棋倒しのようにうまくいかなくなってしまいます。

頑張りすぎてしまう人は、いつもギリギリのスケジュールを立ててしまいがちで、スムーズにいくときはそれでいいですが、一つの想定外な出来事で全てが折れてしまいます。

計画を立てるときには、少しバッファを持たせること。段取りがうまい人は、段取り通りに仕事が進まないことを想定しているのです。

そして、段取り通りことが運ばない原因は様々ですが、大きく次の二つに分類することができます。「自分でコントロールできること」と「自分ではコントロールできないこと」です。

突発的な出来事や他人をコントロールするのは難しいですが、自分の行動をコントロールすることは、それに比べればやりやすいはずです。

私は外国人と仕事をすることが多いのですが、必ず余裕を持ってアポの時間を押さえておきます。13:00に会いたいと思ったら12:45に約束をします。

日本人ほど時間にきっちりしている人はいないと考えておいたほうがいいからです。時間の価値観がそもそも違うので、どちらが正しいということでもありません。時間にきっちりとしていない分、他の人が遅れても寛容です。

日本人的な時間の価値観を伝えてもなかなか相手には伝わらないのならば、自分が時間をうまくコントロールすることで、ストレスを溜めずにすみます。

外国人だけでなく、初めて仕事を依頼する相手ならば、勝手がよくわかりません。ひょっとするとスケジュール通りに仕事を進めてくれないかもしれません。思い描いていたものと違うものが出来上がってくるかもしれません。

それは相手の問題なのかもしれませんが、そう言っていても仕事は進みません。こまめに進捗状況を聞いてみたり、中間でそこまでの出来を確認するなど、いくらでも打つ手はあります。

予想外のことが起こり、思い通りに進まないことのほうが多いということを想定して、自分にできることを段取りのベースと考えましょう。

Preparefortheunexpected予想外に備える

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