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第1章 基本―プロジェクトマネジメントとは何か

担当になったら知っておきたい「プロジェクトマネジメント」実践講座伊藤大輔日本実業出版社本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信したり、ホームページ上に転載することを禁止します。

また、本作品の内容を無断で改変、改ざん等を行なうことも禁止します。

本作品購入時にご承諾いただいた規約により、有償・無償にかかわらず本作品を第三者に譲渡することはできません。

本作品を横組み表示にてご覧いただくことを推奨しております。

はじめに プロジェクトとは、新しい独自の目標を設定して、期限を設けてそれを達成させる一連の活動です。

日本で「プロジェクト」と聞くと、 IT業界や大規模インフラ事業を想像される人が多いですが、目標を設定し、それを期限内に達成させる活動はどの業種、業態、案件にもあります。

そして、皆さんのプライベートの活動にもあります。

皆さんの身近にプロジェクトはあるのです。

プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトを「やりくり」することです。

なぜ「やりくり」が必要なのか。

それはプロジェクトの目標は未来にあり、常に不確実性が存在するからです。

この不確実性を取り除き目標達成の成功率を高めるために「やりくり」が必要なのです。

今、プロジェクトマネジメントの知識や技術が企業や組織で求められています。

なぜでしょうか。

残念ながら現代の日本は、かつての日本とは異なり、モノを作ったら売れるという時代、大量生産・大量消費の時代ではなくなりました。

さらに、ビジネスの外部環境の変化が速く、変化に対応するために企業や組織は、自らの内部環境を変化させ適応させる必要があります。

常に外部環境に適応できるよう、 ①売上を上げる、 ②費用を下げる、 ③利益を生み出し未来への投資をする、という企業や組織の基本となる 3つの活動に対して常に新たな「目標」を設定し、その目標を「期限」までに達成させなければなりません。

そこで注目されているのが、企業や組織の課題に対して自ら能動的に課題解決の「目標」を設定し、それを実現させるための「計画」を行い、「実行」に移せるスキルです。

これこそまさにプロジェクトマネジメントのスキルです。

本書は「実践」をテーマにしています。

私が経営する日本プロジェクトソリューションズ株式会社では、日々多数のプロジェクトマネジメント関連の教育研修やプロジェクト現場の実行支援を行っています。

その中で、多くの経営者またはプロジェクト現場の皆様から「実践的」なプロジェクトマネジメントのノウハウを求められ鍛えられてきました。

これらの「実践」のノウハウを本書に込めました。

プロジェクトマネジメントの知識や技術は多様に存在します。

本書はその中でも、目標を達成させる上で最低限押さえるべき知識と技術にフォーカスしています。

そしてその内容を今日からでも使えるように努めて書いています。

さらに本書ではケーススタディがついています。

学んだことをプロジェクトのストーリーをもとに疑似体感できる内容になっています。

本書でプロジェクトマネジメントを学び、プロジェクトの実践を通じて、より高度なプロジェクトマネジメントを学んでください。

また、資格を取得するなどのきっかけとなり、皆様のキャリアパスの入口としていただければ幸いです。

本書はプロジェクトマネジメントの国際規格である「 ISO 21500: 2012」に準拠した内容で書かれています。

ISO 21500: 2012は「プロジェクトマネジメントの手引」です。

この国際規格の用語、コンセプト、プロセスに準拠し、その中でも最低限押さえておきたい内容に特化し、実践的に説明しています。

ISO 21500: 2012は誰でも購入可能です。

より深く ISO 21500: 2012を理解されたい人は本書と合わせて読むことで理解が深まります。

さらに、私が大学院の MBAプログラムの講師である経験を活かし、 MBAのビジネスノウハウのエッセンスを加え、ビジネスや経営におけるプロジェクトマネジメントの重要性についても述べています。

本書では、プロジェクトマネジメントの基本をよりわかりやすく説明するために、次の図のような構成で書かれています。

まず、プロジェクトマネジメントとは何かの【基本】を解説します。

次に、プロジェクトでの【目標設定】【計画】【実行】の知識や技術を、 ISO 21500: 2012のプロセスと実際のプロジェクト現場の対応順序に近い形で実践的にお伝えします。

その後、プロジェクトで重要なプロジェクトマネジメントの【思考】を解説します。

プロジェクトマネジメントの知識と技術、思考の基本を押さえた後に、《ケーススタディ》で学んだ知識や技術、思考を実際に活用し、プロジェクトマネジメントの疑似体験ができるようになっています。

本書は、個人の皆様のスキルアップ、キャリアアップに活用できるだけではなく、企業または組織の教育研修の担当者におかれましては、実践的なプロジェクトマネジメントの教育研修の教材としても利用いただける内容です。

座学研修として基本、目標設定、計画、実行、思考を学び、ケーススタディを活用しグループワークを実施することが可能です。

本書を通じて、皆様の未来のプロジェクトが成功することを心より祈念いたしております。

また、本書の出版に際し、多大なるご協力いただいた個人または組織・団体の皆様に心より御礼申し上げます。

読者特典として、本書で紹介した基本的なプロジェクトマネジメントツールの一部を無料でダウンロードできます(※)。

「 JPSブックス」で検索、または「 http:// www. japan-project-solutions. com/ jps-books」にアクセスし、ツールをダウンロードしてください。

《ケーススタディ》と合わせてツールを利用するとさらに実践的に学べて効果的です。

また、プロジェクトマネジメントツールが無い企業や組織では、実際の実務でも活用いただけます。

(※)本サービスは予告なく終了することがあります。

2017年1月 伊藤大輔目 次はじめに第 1章【基本】プロジェクトマネジメントとは何か基本 01 PROJECT(プロジェクト)の意味とは?基本 02 プロジェクトをやったことがない人はいない?基本 03 プロジェクトとルーティンワークの決定的違いとは?基本 04 企業や組織でのプロジェクトの位置付けとは?基本 05 プロジェクトマネジメントとは?基本 06 プロジェクトマネジメントの3つの視点─「目標設定」「計画」「実行」─基本 07 プロジェクトマネージャとは?基本 08 プロジェクトマネージャとして重要な要素 ①─知識・技術、経験、人間性─基本 09 プロジェクトマネージャとして重要な要素 ②─目的・目標達成にこだわる思考─基本 10 プロジェクトに立ちはだかる3つの壁基本 11 プロジェクトのステークホルダーとは?基本 12 プロジェクトを支える様々な役割基本 13 プロジェクトの環境─プログラム? ポートフォリオ?─基本 14 目的と目標の違いを理解しよう基本 15 「なぜ、なぜ」で目的を探す基本 16 【基本】のまとめ

基本 01 PROJECT(プロジェクト)の意味とは? PROJECTの日本語訳は何でしょうか? 多くの人が「プロジェクト」とそのまま日本語訳するでしょう。

実はこの PROJECTという単語自体に意味が込められています。

皆さんも学校などの英語の授業で習ったかもしれませんが、英単語は Prefix、 Suffix、 Rootsなどのパーツの組み合わせで構成されていることが多く、それぞれのパーツに意味が込められています。

例えば PROJECTの PROは「前に、前方に」、 JECTは「投じる、投げる」意味が込められています。

仕事で言えば、まさに前にある未来の目標に向かってアクションを投じていく姿そのものが PROJECTの単語に込められています。

プロジェクトとは「プロジェクトの目的を達成するために実施される、開始日と終了日を持つ調整されかつコントロールされたアクティビティで構成されるプロセスの独自の集合」( ISO 21500: 2012)です。

もう少し単純化して説明すると、プロジェクトとは「独自の目的・目標を設定し、それを期限までに達成させる一連の活動」です。

ここで重要な要素が「独自の目的・目標」と「期限」です。

「独自の目的・目標」とは「過去に1つでも経験したことのない要素が含まれている目的や目標」です。

「期限」とは「開始日と終了日」が明確になっていることです。

この 2つの要素がある活動や仕事は、基本的にプロジェクトと位置付けられます。

たとえ、仕事や活動の名称に「 ○ ○プロジェクト」と「プロジェクト」の単語が入っていなかったとしても、「独自の目的・目標」と「期限」という要素が入っていれば、それはプロジェクトであり、本書で紹介する様々な知識と技術を利用できます。

基本 02プロジェクトをやったことがない人はいない? お仕事や組織の活動で「私はプロジェクトを経験したことがないから自信がない」などといわれる人がいます。

しかし、実は多くの人はプロジェクトをすでに経験しています。

「独自の目的・目標」と「期限」がある活動や仕事は「プロジェクト」です。

仕事以外のプライベート活動でもプロジェクトは多く存在しています。

例えば、就職活動もプロジェクトと考えられます。

今まで就職活動をやったことのない場合、「就職」は「独自の目的・目標」になりますし、就職という目的・目標の達成期限も決まっています。

学校での試験や受験もプロジェクトと考えられます。

試験や受験はその時々で内容や状況、環境も異なりますし、自身が達成したい点数や結果も考えると「独自の目的・目標」です。

さらに試験や受験には試験日や受験日などの「期限」が明確に設定されています。

その他、引越やパーティー、結婚式、登山、旅行など皆さんの周りにはプロジェクトの活動が多く存在しています。

組織での活動や仕事でのプロジェクトでは未来の目的・目標を期限までに達成させる責任やプレッシャーがあるかもしれません。

しかし、多くの皆さんは、大なり小なり何かしらのプロジェクト活動を経験しています。

自信を持って未来の目的・目標達成のために活動しましょう。

基本 03プロジェクトとルーティンワークの決定的違いとは? 企業や組織が事業を運営するために重要な活動は 2つあります。

ひとつは「プロジェクト」もうひとつは「定常・継続業務」です。

プロジェクトとは「独自の目的・目標」と「期限」がある活動であるとお伝えしました。

つまり、プロジェクトとは独自の目的・目標を期限までに達成することで新しい価値を生み出す活動です。

一方で定常・継続業務は定められた活動内容を安定的に継続し価値を生み出す活動です。

プロジェクトが one-time work( 1度きりの仕事)なのに対し、定常・継続業務は routine work(ルーティンワーク:繰り返し・反復の仕事)ともいわれます。

企業や組織は、プロジェクトと定常・継続業務の 2つの活動で価値を生み出し、世の中にその価値を提供しています。

このように、プロジェクトと定常・継続業務は活動の性質が異なります。

したがって、プロジェクトと定常・継続業務はマネジメントの手法が異なります。

独自の目的・目標を期限までに達成させる活動に特化したマネジメント手法が、後にお伝えする「プロジェクトマネジメント」です。

次の図の Qで、どの活動が「プロジェクト」で、どの活動が「定常・継続業務」か考えてみましょう。

基本 04企業や組織でのプロジェクトの位置付けとは? 企業や組織でのプロジェクトの位置付けを見ていきましょう。

一般的な企業や組織では、企業や組織全体の戦略や計画を立てて運営しています。

これらの戦略を「企業戦略」といいます。

この内容をまとめたものが経営計画や経営戦略企画書、経営方針書などの骨子になります。

この企業戦略が企業や組織内の事業部門などに展開され、各事業部門はそれぞれの事業部門に特化した戦略や計画を立てて事業を運営します。

これらの戦略を事業戦略または競争戦略といいます。

この内容をまとめたものが事業計画や事業戦略企画書などと呼ばれています。

この事業計画の中に、独自の目標を期限までに達成させる活動も含まれます。

これがプロジェクト化されプロジェクトの活動となります(企業計画から直接プロジェクト化されるものもあります)。

例えば新規事業開発、新製品開発、既存定常・継続業務のカイゼン、新規・既存のお客様に対する新たな製品・サービス提供などです。

プロジェクトで生み出された新しい製品・サービス等の価値は、定常・継続業務に引き継がれ、定常・継続業務にて安定的かつ継続的に運営され価値を生み出し続けていきます。

この流れが、企業や組織の中で戦略を実行に移す単純化した流れです。

企業や組織は常に外部環境の変化(市場の変化や競争相手の変化)に対応していなければなりません。

外部環境の変化に合わせ、内部環境(企業内部の体制・管理手法・製品・サービスなど)を変化させなければなりません。

その戦略を実現させる活動こそプロジェクトの活動なのです。

基本 05プロジェクトマネジメントとは? 「プロジェクトマネジメント」とは、「方法、ツール、手法及びコンピテンシーを、あるプロジェクトに適用すること」( ISO 21500: 2012)です。

もう少々かみ砕いて説明すると、独自の目的・目標を期限までに達成させるため「やりくり」する手法です。

一般的に「マネジメント」を「管理」と訳してしまうことが多いですが、マネジメントは「管理」よりも幅広い意味を含んでいます。

例えば、独自の目的・目標を期限までに達成させるためにどのような方法を用いるのか、どの技術を使うのか、ツールはどうするのか、体制はどうするのか、必要な能力をどう用いるのか、など幅広いエリアをカバーします。

では、なぜプロジェクトマネジメントを学ぶのでしょうか。

プロジェクトの独自の目的や目標は未来に設定されています。

その未来の目的や目標に向かって活動する時には常に不確実性が存在します。

その不確実性の中で目的や目標の達成確度を高めるために学ぶ必要があります。

例えば、プロジェクトの目標を設定する際に、適切な手法や方法を用いなかった場合、実現可能性の低い目標を設定してしまうかもしれません。

また適切な計画に関する手法や方法を用いなかった場合、実際に活動した時にまったく計画通りに進まないかもしれません。

適切なプロジェクト実行に関する知識や技術、方法を用いなければ円滑に活動ができずに、最終的に目標達成が困難になるかもしれません。

当然「やりくり」が最初から上手な方もいます。

しかし、全員が最初から上手とは限りません。

したがって、これらの知識や技術を学べるプロジェクトマネジメントという学問が存在するのです。

基本 06プロジェクトマネジメントの3つの視点─「目標設定」「計画」「実行」─ 次の図はプロジェクトマネジメントで必要な知識と技術をまとめたマトリックス図です。

横軸の「プロセスグループ」とは、どの業種業態でも適用可能なプロジェクトマネジメントのプロセスです。

プロジェクトの「立上げ」の活動をし、次に「計画」し、その計画を「実行」します。

しかし実行しても計画通りにいかない場合もあり、これらを「コントロール」する必要があります。

プロジェクトがうまく進むと最後はプロジェクトの「終結」となります。

プロジェクトマネジメントにはこのような流れがあります。

では、それぞれのプロセスでどのようなマネジメント知識や技術を用いなければならないのでしょうか。

それが表現されている部分が縦軸の「サブジェクトグループ」です。

サブジェクトグループには統合、ステークホルダー、スコープ、資源、タイム、コスト、リスク、品質、調達、コミュニケーションなどの知識や技術のエリアがあります。

縦軸と横軸の交差する箇所には、どのプロセスでどの知識と技術を用いるのかという知識や技術、方法が記載されています。

筆者の今までの様々な企業に対するプロジェクトマネジメント教育事業やプロジェクト実行支援事業を通じて、多くの経営者が「実践的」な内容を求めていることを体感しています。

本書では「実践的な内容」を重視しているため、これらの知識や技術の中で「数百万円のプロジェクトでも数億円のプロジェクトでも共通して最低限必要な内容」に焦点を合わせます。

これらの知識と技術をさらに単純化させまとめると「目標設定」「計画」「実行・修正」に関する知識と技術が極めて重要となります。

本書ではこの3つの視点から実践的な内容を伝えていきます。

基本 07プロジェクトマネージャとは? 「プロジェクトマネージャ」とは、あらゆるプロジェクトマネジメントの知識や技術、その遂行能力、プロジェクトマネジメント経験や人間性を通じて目的や目標を期日までに達成させ、プロジェクト完了に責任を負う役割です。

「基本 06 プロジェクトマネジメントの3つの視点」の項目で「プロジェクトマネジメントのプロセス」はどの業種業態でも適用可能とお伝えしました。

このプロセスを担うのがプロジェクトマネージャです。

一方で、プロジェクト活動で生み出される「成果物自体を生み出すプロセス」は業種業態により異なります。

例えば店舗を作るプロセスと半導体を作るプロセスや作業内容は異なります。

この成果物を生み出すプロセスを実行するのはプロジェクトチームのメンバーです。

プロジェクトマネージャは成果物を生み出すプロセスが円滑に進み、期日までに成果物が納品できるように、どの業種業態でも適用可能な「プロジェクトマネジメントのプロセス」に沿ってマネジメントすることが求められます。

もしも皆さんがプロジェクト成果物を実際に作る作業も行うならば、それはプロジェクトマネージャとプロジェクトチームメンバーを兼務しているものと考えられます。

例えば、あなたが WEB制作のプロジェクトマネージャとして活動していたとしましょう。

しかし、あなたはが WEBのデザインの役割も担っている場合、この WEBデザインの作業はプロジェクトチームメンバーとしての役割になります。

兼務する場合は、自分の活動のどれがプロジェクトマネージャとしての役割で、どれがチームメンバーの役割なのかをしっかり意識し活動しましょう。

基本 08プロジェクトマネージャとして重要な要素 ①─知識・技術、経験、人間性─ プロジェクトマネージャとして活躍する際、その基礎になるのが知識と技術です。

プロジェクトは未来の目的・目標を期限までに達成させる一連の活動であるため、常に不確実性があります。

その活動の知識と技術がなければプロジェクト成功の確度は低くなってしまいます。

例えば、運転免許をお持ちであれば、運転免許の取得までのプロセスを思い出していただければわかりやすいかもしれません。

何の知識も技術もない人がいきなり公道を走ったらリスクがあります。

教習所では学科で知識を学び、そして技能で実際に運転し経験を積み重ね、公道でのリスクを軽減させます。

プロジェクトマネジメントも基本的な知識を学ぶこと、そして実際にプロジェクトを経験することが重要です。

さらにプロジェクトマネージャの人間性も重要です。

いくら知識や技術、経験があっても人間性が適切でなければ、リーダーシップを発揮しプロジェクトを円滑に進めるのは困難です。

プロジェクトは多くの人とともに一致団結して目的・目標の達成を目指します。

例えば人間性が適切ではないプロジェクトマネージャにプロジェクトチームメンバーがついてくるでしょうか。

この人についていきたい、この人ならプロジェクトを任せられるという知識・技術、経験、人間性がプロジェクトマネージャには求められています。

プロジェクトマネージャとして成長するには知識・技術、経験、人間性の 3つの軸を強化し、より大きなプロジェクトにチャレンジしていくことが求められます。

基本 09プロジェクトマネージャとして重要な要素 ②─目的・目標達成にこだわる思考─ プロジェクトマネージャの責任は、単純化すれば納期までに目的や目標を達成させるために要求事項を満たす成果物を納品することです。

そのためにプロジェクトの目的・目標設定や計画に尽力しますが、実際にプロジェクトを実行してみると、計画通りにいかないことが多々あります。

また、プロジェクトにはあらゆる制約条件や前提がつきものです。

これらの障害に対処し目的や目標を達成するプロジェクト推進力が求められます。

この時に重要な思考が「目的や目標にこだわる思考」です。

常に目的や目標達成にこだわり「どうやったら目的・目標達成できるか」を考え行動に移していく必要があります。

「プロジェクトは one-time work( 1度きりの仕事)に対し、定常・継続業務は routine work(ルーティンワーク:繰り返し・反復の仕事)」と説明しました。

プロジェクトマネージャはハンター(狩人)、定常・継続業務を担うラインマネージャはファーマー(農夫・農婦)とたとえられます。

ファーマーは毎年適切な活動を通じて定期的に安定した価値を生み出します。

しかしハンターは目の前の独自の目標を仕留め価値を生み出します。

そのためには、どうやったら仕留められるか、そのために必要な道具は、体制は、仕掛けは、など目標達成に徹底的にこだわり、思考し、行動します。

プロジェクトマネージャは「 ○ ○という制約があるからできない」という思考ではなく、あらゆる障害にめげず、立ち向かい「どうやったら ○ ○という制約の中で目的・目標達成できるか」という目的・目標に徹底的にこだわる思考が求められます。

基本 10プロジェクトに立ちはだかる3つの壁 プロジェクトは未来の目的や目標を期日までに達成させる一連の活動です。

プロジェクトの目的や目標は未来にあり、現在存在しないものです。

したがって、目的や目標は「想像」しなければなりません。

そしてその「想像」を現実化させるためにプロジェクト活動を通じて、頭や体を使って「創造」していきます。

プロジェクト活動とは 0から 1を生み出す「想像から創造」の活動といえます。

筆者の様々なプロジェクト経験から、その「想像から創造」の活動の中には大きく 3つの壁が存在すると考えています。

まずひとつは、「未来の目的・目標を想像すること」に課題がある場合、次に「目的・目標を設定したが行動に移せない」という課題がある場合、最後に「実際に行動したが計画と現実が異なりすぎてあきらめてしまう」という課題がある場合です。

これらの3つの課題の壁を低くするのにプロジェクトマネジメントの知識と技術が役に立ちます。

プロジェクトマネジメントの知識と技術の中には多くの「可視化」する技術が含まれています。

不確実性の高い未来の目的・目標、計画の可視化を通じて、未来の活動をシミュレーションすることで、活動に対する物理的または心理的障害や混乱の多くをあらかじめ取り除くことが可能となります。

さらに、可視化を通じてプロジェクトチームメンバーやその他の利害関係者(ステークホルダー)との意思疎通も円滑にいき、目的・目標達成のために一致団結してプロジェクトの活動を推進していくことが可能となります。

この3つの課題に直面している場合、本書で扱うプロジェクトマネジメントの目標設定、計画、実行・修正の3つの視点での手法をぜひ見直してみてください。

基本 11プロジェクトのステークホルダーとは? プロジェクトは多くのステークホルダーとともに活動します。

ステークホルダーとは「プロジェクトの任意の局面に利害関係をもつか、影響を及ぼすか、影響されるか、又は影響されると自覚する人、グループ又は組織」( ISO 21500: 2012)です。

一般的に日本語では「利害関係者」と呼ばれます。

次の図はステークホルダーの概要です。

皆さんの企業や組織またはプロジェクトではすべてのステークホルダーがプロジェクトに関係していないかもしれません。

しかし、プロジェクトが大きくなればなるほどステークホルダーは増えていきます。

ステークホルダーはプロジェクトに対し個別の役割があります。

またそれぞれの役割においてプロジェクトへの関心やプロジェクトに与える影響度合いも異なります。

さらにステークホルダーは個別の期待や要求事項があります。

プロジェクトマネージャは、ステークホルダーマネジメントを通じて、ステークホルダーの役割、関心・影響、期待や要求事項を調整、対応しながらプロジェクトを推進していくことが求められます。

基本 12プロジェクトを支える様々な役割 プロジェクトマネージャ以外で、プロジェクトを支える基本的かつ重要な役割を見てみましょう。

まず重要な役割は「プロジェクトスポンサー」です。

プロジェクトスポンサーはプロジェクトが企業や組織で正式な活動であることを承認するなど経営的決定をする役割です。

また、プロジェクトマネージャの権限を超える問題や課題、対立を解決する役割です。

簡単に言えばプロジェクトマネージャの上司のような存在です。

「プロジェクトチーム」は実際に成果物を生み出す活動を遂行する役割です。

「プロジェクトマネジメントオフィス( PMO = Project Management Office)」は企業や組織でのプロジェクトマネジメントに対するガバナンス(内部体制管理)、標準化、プロジェクトマネジメント教育、監視など、プロジェクトマネジメントがより円滑かつ高度になるための多彩な活動を遂行する役割です。

また、プロジェクトがお客様に対するプロジェクトであれば、「顧客」もプロジェクトの要求事項を明確にし、成果物を受け取る重要な役割です。

さらに、プロジェクトが大きくなれば、外部のサプライヤなどがプロジェクトに必要な資源を供給する重要な役割となります。

企業や組織内のプロジェクトが数多く運営されている場合、これらプロジェクトの内部統制管理を行う役割としてプロジェクト運営委員会または役員会が設置されている企業や組織もあります。

このように、プロジェクトが大きくなり複雑化するにつれて様々なステークホルダーが様々な役割でプロジェクトに関与します。

基本 13プロジェクトの環境─プログラム? ポートフォリオ?─ 皆さんが所属する企業や組織の規模、文化、戦略、技術、プロジェクトマネジメントの成熟度、運営されるプロジェクトの数によってプロジェクトを取り巻く環境は大きく異なります。

企業や組織ではプロジェクトが単体で運営され戦略の実現を目指している場合もあれば、複数のプロジェクトを運営し戦略の実現を目指している場合もあるかもしれません。

複数のプロジェクトを運営し戦略の実現を目指す場合、それらのプロジェクトを束ねる「プログラム」や「ポートフォリオ」にて効率的にマネジメントする場合があります。

「プログラム」とは一般的に戦略目標の達成を目指す複数の関連するプロジェクトや活動のグループです。

「ポートフォリオ」とは一般的に戦略目標の達成を目指す複数のプログラムやプロジェクト、活動のグループです。

これらのグループのマネジメントをそれぞれ「プログラムマネジメント」「ポートフォリオマネジメント」と呼びます。

「プログラムマネジメント」「ポートフォリオマネジメント」では戦略目標を達成するための効率的なマネジメントを目指し、プロジェクトやプログラム、その他の活動の指揮やコントロール、作業確認、優先順位付け、各種承認などを担います。

皆さんが任されるプロジェクトの環境を確認してみてください。

プログラムやポートフォリオの中に入っている場合、プログラムマネージャやポートフォリオマネージャとの連携が重要になってきます。

基本 14目的と目標の違いを理解しよう プロジェクトとは「独自の目的・目標を設定し、それを期限までに達成させる一連の活動」と解説しました。

ここで、「目的」と「目標」の違いを理解してから、次の【目標設定】の章に進みましょう。

単純化すると、目的とは「実現を目指すあるべき状態」「未来への行動を方向付けるもの」です。

目標は「目的に達するために、目印になるもの」「目的に向かって行動するにあたって実現、達成を目指す水準」などです。

したがって、目的は概念的なものが多い一方で、目標は具体的なものが多いのです。

簡単な例を挙げてみましょう。

例えば「将来、安心して家族と暮らす」という目的があって、「 ○ ○年に家を購入する」という目標があるのです。

「健康で若々しい状態を維持する」という目的があって、「週 2回ジムに行く」「 1日 1回野菜ジュースを飲む」などの目標があるのです。

プロジェクトでは目的達成のために具体的な目標を設定していきます。

そしてその目標を達成させるための具体的な計画、さらにはその計画の実行をしていきます。

ここで重要なことは、目的を忘れないようにすることです。

プロジェクトの実行中にプロジェクトチームメンバーと頑張って活動しているとついつい「なぜこの目標達成のために頑張っているのか……」と考えてしまうことがあります。

その答えになることこそが目的になります。

マラソンで 42. 195 kmを走る目標を達成するのはとても大変ですが、この目標を達成する理由となるべき目的をしっかり理解していれば頑張れるはずです。

基本 15「なぜ、なぜ」で目的を探す プロジェクトの目的は、それぞれのプロジェクトが設定される状況により異なります。

例えば、お客様企業から具体的な目標が自組織に与えられプロジェクト化されることもあります。

この場合はお客様企業にその目標を与える目的があります。

また自組織においても、この与えられた目標を実行する目的があるはずです。

自組織の中の経営戦略、ビジネスプランで設定された目的や目標が細分化されてプロジェクト化されることもあります。

この場合、自組織内でプロジェクトを実施する目的があります。

経営戦略、ビジネスプランが上位目標だった場合、さらに経営戦略、ビジネスプランを策定した目的があります。

行きつくところでは、経営理念、ミッション、ビジョン、組織の設立目的かもしれません。

大規模プロジェクトやジョイントベンチャー、プロジェクトベースで経営が行われている場合などはプロジェクト自体で目的を設定する場合もあります。

このように、実は目的を明確にするのは簡単なことではありません。

そんな時は「なぜ、なぜ」を繰り返してみましょう。

例えば「 A新規事業を ○ ○年までに開始する」という目標があったとします。

「なぜこの新規事業を ○ ○年までに開始するの?」の答えが「この新規事業分野は ○ ○の市場の課題を解決するため」や「 ○ ○年までに開始することで競合他社に対し先行者優位性が得られる」だったとします。

さらに「なぜ先行者優位性をもって市場の課題を解決するの?」の答えが「当社は ○ ○分野のトップランナーとして社会課題を解決していきます」という組織のミッションにつながります。

目的が不明瞭な場合、このように「なぜ、なぜ」を繰り返すことで、より目的を理解しやすくなります。

基本 16【基本】のまとめ ここまで、プロジェクトマネジメントを実践するために必要な最低限の基本知識をお伝えしてきました。

特に重要なポイントとしては、プロジェクトは定常・継続業務と異なるということです。

そしてプロジェクトを取り巻く企業・組織内の環境、ステークホルダーなども定常・継続業務とは異なります。

企業や組織の中には優秀なラインマネージャをプロジェクトマネージャに任命することもあります。

しかし、その場合に注意すべき点があります。

プロジェクトと定常・継続業務がこれだけ異なるということは、いくらラインマネージャとして知識や技術、実績があり優秀だったとしても、ラインマネジメントの手法でプロジェクトをマネジメントしてしまうことでプロジェクトの成功に影響が出てしまう可能性もあります。

目標を期日までに達成させるプロジェクトに特化したマネジメント手法がプロジェクトマネジメントです。

プロジェクトマネジメントの基礎をしっかりと身に着けプロジェクトマネジメントを実践していきましょう。

次の章から実践的なプロジェクトマネジメントを学んでいきましょう。

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