はじめに ~不機嫌な職場を変えよう 退職者が多い会社、組織には独特の空気があります。
誰もが不機嫌な顔をして、不機嫌な言動をしているのです。
どうして人が辞めていくのかというと、それは、その場がつくる不機嫌な空気が原因です。
人が集まる場所には楽しい場所もあれば、重苦しい場所もあります。
それをつくり上げているのは、そこにいる 1人ひとりの表情や言動です。
それが、いつの間にか空気として定着していきます。
もしそれが不機嫌な空気だとしたら、不機嫌病という恐ろしい病気がまん延して、どんどん人が辞めていくのです。
どうしてそのようなことが起こるのかというと、不機嫌を表に出している人がいるからです。
不機嫌な人が 1人でもいると、その職場は不機嫌な職場になるのです。
逆に明るく元気のよい人がその職場にいると、その職場は明るく元気な職場になります。
悪いほうのイメージリーダーとよいほうのイメージリーダーの存在が、その職場をつくり上げています。
それは職場の役職上のリーダーでないケースもあります。
上司であったとしても、言うことを聞いてくれない不機嫌な部下がいると会社に行くのが嫌になるのです。
会社に行きたくないと思う原因を突き詰めて考えると、そこにあるのはたった 1人の不機嫌な人の存在だったりします。
「あの人がいるから行きたくない」、「あの人のそばに行きたくない」、それが会社に行きたくない人の心の中にある答えなのです。
退職者の問題、パワーハラスメントの問題など、中小企業は悩んでいます。
会社の存続の危機になっている会社もあります。
それを解決するには、不機嫌な職場を上機嫌に変えるチームビルディング研修を継続して、職場の空気を入れ替えることです。
毒ガスがまん延しているような職場の窓を大きく開けて、新鮮な空気に入れ替えるのです。
誰もが上機嫌になれるチームビルディング研修を実施すると、よどんだ空気が入れ替わって退職者が大激減します。
チーム力が高まって業績も向上するのです。
相手も自分も上機嫌になる方法は何でしょうか。
相手を機嫌よくするには相手をおだてること、相手にこびへつらうこと、ゴマをすること、思ってもいない褒め言葉を言うことと勘違いしている人がいます。
それは逆に相手を不機嫌にします。
自分も不機嫌になります。
自分も相手も機嫌よくなることが上機嫌なチームになるコツです。
それは、一例をあげると、なにげない朝のあいさつや呼ばれたときの返事、そして、接するときの優しい笑顔とアイコンタクト、話を聞くときの、うなずきやあいづちなのです。
だから、職場をご機嫌な環境にすることは、そんなに難しいことでなく、本当はとても簡単なことなのです。
しかし、職場でも家庭でもおろそかにされているのがこのような、なにげない行動なのです。
″人を大切にする〟というアンテナを立てたら、どうしたら相手が嬉しいかという心の声が聞こえてきます。
それをチームビルディング研修で学び、職場で実践すると、退職者が激減するのです。
職場の空気をよりよく改善するには、現状のチームワークを改善するだけでなく、 1人ひとりの変革と成長が必要となります。
つまり、不機嫌な表情や言動をする人を普通の人にすること。
そして、普通の人を元気な人にすること。
それがチームビルディング研修の目的です。
ある実験をしたことがあります。
無色透明なペットボトルの水の中に、一滴の墨を入れました。
すると、その透明な水は真っ黒になりました。
これが人の心を表しています。
不機嫌な人がそばにいると、自分の心も真っ黒になってしまうのです。
不機嫌な人の影響力は職場を真っ暗にするくらい強力なのです。
私はこれまで 30年間の企業研修で延べ 15万人に教えてきました。
訪問した会社は延べで 1000社以上になります。
経営者から退職者を減らす企業研修を実施して欲しいという要望に応えてきました。
企業研修の目的は社員を辞めさせないチームビルディング研修を実施して、退職者を減らし業績を向上させることです。
チームビルディング研修の実施で、新卒採用者が 1年間で 4割以上退職する会社が、退職者が皆無になったこともあります。
また、業績が毎年増収増益の会社もあります。
ちょっとしたコツを学んで実践すると、職場の風土の改善はさほど難しいことではありません。
不機嫌な人を機嫌よくすればよいのです。
たとえば、不機嫌な人は、本当に不機嫌なのかというと、そうでないケースがあります。
長年しみ込んだ習慣で笑顔ができていない人がいます。
いつも険しい表情のその人といると、周囲に不機嫌が移ってしまいます。
心は誠実な人だけれど、一緒にいて楽しくない人です。
しかし、本人は笑顔ができていると思っているのです。
そのような人の表情を笑顔にする楽しい実習を繰り返しています。
研修の最後には素敵な笑顔に変わっています。
そのときだけでなく、その笑顔を習慣にすることができたら、周りの人に不機嫌が移ることはありません。
どうしたらそのようなことが可能なのか知りたい人のために、本書では、実際の研修で使っているチームビルディングの方法や研修のコツを書いています。
本書が皆様の職場風土の改善に役立ったとしたら、こんなにうれしいことはありません。
本を読んで、このチームで働いていて幸せだ、あの人がいるから職場が楽しいと言われるような上機嫌な職場風土になるきっかけとなることを願っています。
2020年3月藤咲 徳朗
中小企業の退職者撲滅法!!不機嫌な職場を上機嫌な職場に変える! 楽習チームビルディング 目次はじめに ~不機嫌な職場を変えよう第 1章 なぜ楽習チームビルディングが必要か 1 対話のない職場の現状・あいさつと対話のない職場・不機嫌病が広がっている 2 パワーハラスメントを防ぎ、離職者を減らすコツ・パワーハラスメントの現状・どんな職場でパワーハラスメントが多いのか・対策を間違えないこと・研修をするとパワハラが増える・インターナル・マーケティングの必要性 3 人は何のために働くか・マズローの欲求五段階説・衛生要因動機づけ要因・どんな企業研修をするべきか・ホーソン実験・社員を愛すること 4 楽習チームビルディング研修の成功事例・楽習チームビルディング研修がなぜ必要か・楽習チームビルディングインストラクターの心がまえ・業績が前年比アップのレストランのエピソード・社員の離職率が 5年前の 3分の 1になったサービス業・保育士さんが明るく元気に働く保育園
第 1章 なぜ楽習チームビルディングが必要か
1 対話のない職場の現状 ●あいさつと対話のない職場 ある会社の 1シーンです。
朝はバラバラに出社してきます。
先にパソコンに向かって仕事をしている人がいます。
後から来た人は静かに自分の椅子に座ると仕事を始めます。
その間、一切の会話はありません。
あいさつもありません。
お昼休みもバラバラに取ります。
帰りもバラバラになります。
1日の中で「おはようございます」のあいさつも、「お先に失礼します」のあいさつも交わすことはありません。
このようなあいさつのない会社が増えています。
会社の中で何も話をしないで過ごす社員が増えています。
あいさつをきっかけに雑談をするケースがあります。
しかし、あいさつがないので雑談をするきっかけがありません。
そして、個々の社員は自分から相手に声をかけることはありません。
人に関心を持つ習慣がないからです。
人と関わることに慣れていないのかもしれません。
できるだけ、自分だけの世界で過ごしたいと思っているのです。
だから、同じ会社の同じ部署で働いていても、会話をするケースがなくなっています。
同じ部署に 1年間いて、年末の忘年会の時に初めて同じ部署の人と話をしたというケースもあるのです。
そして、自分の部下や上司、そして、会社の活動について興味がありません。
自分の会社の他部署の活動にも興味がないので知りません。
社長の方針や会社の年度目標も興味ありません。
他人の仕事ぶりや仕事の悩みにも無関心です。
自分の目標達成のみに関心があります。
そんな社員が増えています。
上司と部下との会社での会話が指示命令とホウレンソウだけになっています。
その会話もパソコンメールを通じての会話です。
対話、肉声の会話がほとんどありません。
感情がわかる対面での会話をしていないので、上司と部下の意思疎通がうまくいっていません。
そして、プライベートに干渉されることを嫌います。
結婚していることを同僚に隠す人がいます。
プライベートについては他の人に話さないようにしています。
このような職場が増えています。
●不機嫌病が広がっている 職場では不機嫌を振りまいている人が増えています。
相手の話をうなずきやあいづちを打ちながら話を聞いている人がほとんどいません。
そして、相手に思いやりや感謝の気持ちを持って話を聞いている人もいません。
それが無意識の言動に出ています。
表情で″早く話を終わればいいのに〟と言っています。
相手はそのことに気づいています。
表情のはしばしにそれが出ているからです。
そして、二度とこの人に話をするのはやめようと思っています。
しかし、本人は相手がそんなことを思っていることに気づいていません。
気づかないので、いつの間にか、ほとんどの人たちが相手をしなくなっていったとしても、相手が悪いと思っているのです。
そのような不機嫌を振りまく人が増えています。
この不機嫌病は伝染していきます。
たとえば、新入社員で明るく元気な人を採用しても、不機嫌な部署、不機嫌なチームに配属すると、不機嫌を振りまく人になります。
いつもしかめっ面をして、否定的な話をする人になります。
空気をつくる力のほうが個人の力よりも強力なのです。
2 パワーハラスメントを防ぎ、離職者を減らすコツ ●パワーハラスメントの現状 不機嫌な職場でのパワーハラスメントの問題は避けては通れません。
不機嫌な職場には、パワーハラスメントの言動をしている上司や同僚、そして、部下がいるからです。
図表 1は、「平成 30年度個別労働紛争解決制度施行状況」のデータです。
労働相談は、 10年連続 100万件を超えています。
その中では「いじめ・嫌がらせ」が 6年連続トップになっています。
都道府県労働局に寄せられる企業と労働者の紛争に関する相談で、「いじめ・嫌がらせ」に関するものは、平成 14年度には約 6, 600件(全体の 5・ 8%)であったものが、平成 30年度には 82, 797件(全体の 25%)と急増し、「解雇」を抜いて相談件数のトップとなり引き続き増加しています。
「いじめ・嫌がらせ」などのパワーハラスメントの対策をしなければ企業運営ができない時代になっています。
●どんな職場でパワーハラスメントが多いのか
平成 24年度の厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」の資料によると、その原因を見ることができます。
・パワーハラスメントに関する相談がある職場に共通する特徴(企業調査 ~アンケートの件数が多い順) ①上司と部下のコミュニケーションが少ない職場 ②正社員や正社員以外など様々な立場の従業員が一緒に働いている職場 ③残業が多い/休みが取り難い職場 ④失敗が許されない/失敗の許容度が低い職場 ⑤他部署や外部との交流が少ない職場 ⑥様々な年代の従業員がいる職場 パワーハラスメントの相談のある職場では、上司と部下のコミュニケーションが少ないという特徴があります。
同じ会社にいながらあいさつをしない、雑談もしない、お互いに無関心な職場でパワーハラスメントの相談が発生しやすいというアンケート結果です。
そして、正社員や正社員以外(契約社員、派遣社員、短時間勤務社員、アルバイトなど)の従業員が働いている職場では、パワーハラスメントが発生しやすいのです。
雇用条件が違っているのでお互いにカベがあり、意思の疎通がままならないことが想像できます。
残業が多く休みが取りづらい職場では、自分の仕事のことだけで精いっぱいで周りに気を遣うことができません。
心の余裕がないので、周りに対して暴言・無関心の言動を示すケースも多くなるのです。
失敗が許されない/失敗の許容度が低い職場だと、成果だけを上げることが目標となるので、上司と部下の信頼関係を築くのが難しく、相手に対する言動も厳しくなるでしょう。
他部署や外部との交流が少ない職場では、会社全体の動きがわかりません。
同じ会社に所属しながら隣の部署の社員とは言葉を交わすこともないさつばつとした関係になっています。
様々な年代の従業員がいる職場では、世代ギャップがあるので会話が通じません。
それぞれが不機嫌な表情のまま黙って仕事をしているのです。
このような環境がパワーハラスメントを生み出していると言えるでしょう。
そして、ここにパワーハラスメントを防ぐヒントがあるのです。
パワーハラスメントが発生する職場の共通の課題は、コミュニケーションのとりかたです。
そもそもコミュニケーションをとっていません。
お互いが心から明るく元気になれるコミュニケーションをとる方策を打てば、パワーハラスメント対策になるのです。
●対策を間違えないこと ある経営コンサルタントが中小企業で会社の問題点を合宿であぶりだす研修をしました。
全社員、全部門が集まりました。
他部門の批判、会社や上司の批判が続出しました。
結局、その会社は″雨降って地固まる〟どころか″雨降って大洪水〟でした。
つまり、雨を降らす必要もないのに、むりやり雨を降らせて大洪水を引き起こしたのです。
人心の乱れはそこから始まり、疑心暗鬼、他責の会社になりました。
よい人が辞めていき、 10年後に倒産しました。
不機嫌となる原因を皆で論じ合うと、その影響を受けてさらに不機嫌になっていくのです。
●研修をするとパワハラが増える ある社会保険労務士が、企業の経営者から依頼されて、パワーハラスメントの研修を企業で実施したら、逆にパワーハラスメントが増えたそうです。
セミナーの後に、「私はパワハラを受けている」と会社に不満を訴える人が出てきました。
その社会保険労務士は社長から、どんな研修をしたのかと怒られたそうです。
何を間違っていたのかというと、研修目的を間違っていたのです。
社長はパワーハラスメントのない会社をつくって欲しくて研修の依頼をしてくるのです。
パワハラの判例や定義を詳しく教えて欲しいワケではありません。
たとえば、パワハラの 6類型の1つに過大な要求があります。
これを従業員に説明すると、「そうだ! 私は上司から過大な仕事を指示されている! これはパワハラだ」と思うのです。
また、 6類型に精神的な攻撃があります。
これを説明すると、「そうだ! 私は上司から怒られて精神的につらい。
これはパワハラだ!」と思うのです。
パワーハラスメント研修だけをすると、社内がギスギスしてくるケースがあるのです。
だから、パワーハラスメント研修をするならば、それに合わせてチームビルディング研修を実施しなければ逆効果になります。
誰もが明るく元気になれるカリキュラムを実施して、お互いが認め合い、褒め合い、感謝しあう会社をつくることができれば、パワーハラスメントはなくなるのです。
しかし、この風土をつくるのは簡単ではありません。
一朝一夕にはできません。
根気強く継続するしかありません。
●インターナル・マーケティングの必要性 インターナル・マーケティングとは、社内の人たちに向けたマーケティングのことです(図表 2)。
社内の人にも会社へのロイヤリティーを高めてもらうために、広報・宣伝などのマーケティング活動をしなければなりません。
それが従業員満足度を高めることになります。
会社の業績を上げるためには、従業員満足度を高める施策を打つこと、つまり、ビジョンを共有すること、社員の能力向上のためにトレーニングや教育をすること、評価と報酬を適切にすることです。
このことにより従業員満足度が高まります。
すると、顧客満足度も高まります。
それは、顧客がスキルの向上した従業員のサービスを受けることができるからです。
結果として、それが顧客のリピートや競合優位性となるので、会社の業績も向上するのです。
パワーハラスメントのない会社をつくるだけでなく、社員の定着率を上げて、業績を上げるためにもインターナル・マーケティングは欠かせません。
コラム【インターナル・マーケティング】 コトラー&ケラーは、「賢明なマーケターは社内向けのマーケティング活動も、社外向けのマーケティング活動と同等か、むしろそれ以上に重要なものだと認識している。
社内スタッフにまだ提供する準備ができていないのに優れたサービスを約束するのはナンセンスである」(「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」より引用)と指摘しています。
これは現代の企業活動において大変重要な意味をもっています。
なぜなら、顧客から見れば、企業は一体的存在であるからです。
営業も、総務も、経理も、玄関の警備員も企業の一員であり、同時に企業そのものとみなされます。
従業員全員にマーケティング戦略を浸透させることは、従業員のモチベーションや能力向上とともに企業の最重要課題と言えるでしょう。
「ディズニー7つの法則」(トム・コラネン著)においては、「競争の性質が根底から変わってしまったのです。
町内の同業者だけが競争相手だという時代は終わりました。
お客さんは文字通りすべての会社を比較します。
《中略》すべての会社が『顧客満足度』という土俵で勝負しているのです」という顧客の意識の変化が指摘されていますが、このことに加えて「社内の顧客も外部の顧客と同じものを求めています。
社内電話であっても、その対応は L. L.ビーン(アメリカの通販業者)やフェデックス(世界規模の宅配・運送業者)と比較されます」とも指摘されています。
企業は従業員に、「魅力のある仕事と職場環境」と「仕事に見合った報酬」を提供する代わりに、「労働力」を受け取ります。
これをマーケティングの観点から考えると、企業は、従業員の「必要」と「欲求」を理解する必要があります。
そうでなければ優秀な人材を確保することはできませんし、彼らから最大の能力を提供してもらうこともできないのです。
勿論、逆もまた真です。
従業員も企業の「必要」と「欲求」を理解し、最大の能力を発揮しなければ、企業も従業員もお互いに成長はできないのです。
3 人は何のために働くか ●マズローの欲求 5段階説 マズローの欲求 5段階説があります。
人間の欲求は 5段階のピラミッドのように構成されて、低階層の欲求が充たされると、より高次の階層の欲求を欲するというものです。
第 1階層の「生理的欲求」は、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、飲みたい、寝たいなど)のことです。
この欲求がある程度充たされると次の階層「安全欲求」を求めます。
第 2階層の「安全欲求」には、危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求が含まれます。
この「安全欲求」が充たされると、次の階層である「社会的欲求(帰属欲求)」(集団に属したり、仲間が欲しくなったり)を求めるようになります。
この欲求が満たされないとき、人は孤独感や社会的不安を感じやすくなります。
ここまでの欲求は、外的に充たされたいという思いから出てくる欲求といわれています。
そして、次に芽生える欲求は、第 4階層である「尊厳欲求(承認欲求)」(他者から認められたい、尊敬されたい)です。
ここからは外的なモノではなく、内的な心を充たしたいという欲求に変わります。
「尊厳欲求」が充たされると、最後に「自己実現欲求」(自分の能力を引き出し創造的活動がしたいなど)が生まれます。
晩年になり、マズローは、 5段階の欲求階層の上にさらにもう1つの段階があると発表しました(図表 3)。
それは「自己超越」という段階。
「目的の遂行・達成『だけ』を純粋に求める」という領域で、見返りも求めずエゴもなく、自我を忘れてただ目的のみに没頭し、何かの課題や使命、職業や大切な仕事に貢献している状態だといいます。
不機嫌な職場では社会的欲求と尊厳欲求が充たされていません。
お互いが〝無関心〟だからです。
愛情の反対は何でしょうか。
憎しみ、怒りでしょうか。
どちらでもなく、〝無関心〟だと言われています。
これはマザー・テレサの言葉だそうです。
憎しみや怒りは相手の存在を認知しています。
そして、相手を人として見ています。
一方、〝無関心〟は、相手を人として見ていません。
石ころ、雑草と同じ扱いです。
その存在さえ認知されていません。
だから、これが最も愛情のない行為かもしれません。
人は寂しいと、相手に怒りをぶつけることがあります。
「もっと、私を見て、私に関心を持って」という気持ちが怒りに変わるのです。
無意識に誰かを否定することで、自分を見て欲しいという言動をしているのも不機嫌な職場の特徴の1つです。
●衛生要因動機づけ要因 フレデリック・ハーズバーグは、「動機づけ衛生理論」の中で、職務満足に関する要因には「不満足要因」と「満足要因」があるとしています(図表 4)。
「不満足要因」とは、会社方針や職場環境、給与、対人関係などのことです。
これらの要因が不十分なときに、人は不満足と感じます。
そして、十分であっても満足感をもたらすものとは言えません。
不満足要因は、「衛生要因」とも呼ばれています。
コラム【ハーズバーグの 2要因理論(動機づけ・衛生理論)とマズローの欲求 5段階説】 ハーズバーグの 2要因理論はマズローの欲求 5段階説と共通する考え方があります。
簡単に確認しておきましょう。
【動機づけ要因】 仕事の満足に関わるのは、仕事内容、達成感、承認、責任、昇進、成長の可能性などです。
これらが満たされると人は職務満足を覚えますが、欠けていたとしても職務不満足を引き起こすわけではありません。
動機づけ要因は、マズローの欲求 5段階説でいう「自己実現欲求」、「尊厳欲求」、そして「社会的欲求」の一部に当たる欲求を満たすもので、精神的満足に繋がります。
【衛生要因】 職務不満足に関わるのは、会社方針や職場環境、給与、対人関係などです。
これらが充たされないと職務不満足を引き起こします。
ただし、充たされたとしても職務満足につながるわけではありません。
単に職務不満足を解消するに留まり、積極的に職務満足を与えるわけではありません。
衛生要因は、マズローの欲求 5段階説でいうと「生理的欲求」、「安全欲求」、そして「社会的欲求」の一部の欲求を満たすもので、どちらかというと物質的満足の要素が多いようです。
●どんな企業研修をするべきか 私は人間力を高める研修とマネジメントなどの技術を高める研修の両方を企業で教えています。
人間力を高める研修を実施していると、反発して来る受講者がいました。
そんなことをしても業績は上がらないから、実践的な研修をして欲しいという反発です。
私の信念は違います。
いかに技術があろうとも、本人の心の持ち方が間違っていると業績向上をすることができません。
だから、人間力を高めておかないとならないのです。
教育とは正しい心のあり方を教えることなのです。
正しい心のあり方があるからこそ、技術が生かされるのです。
この順番を間違えてはなりません。
孔子が教えた学問には大きく2つあるそうです。
「人間学」と「事務学」です。
「人間学」は徳性を育てる学問で、これを「本学」というそうです。
人間として一番の基礎となる徳を磨く学問だから「本学」と言うそうです。
それに対して「事務学」は知識技術を習得する学問で、「末学」というそうです。
知識や技術は重要なものであるけれど、木で言えば枝葉に当たる部分だから「末学」というわけです。
企業研修のカリキュラムの中に人間力を高めるものは入っているでしょうか。
知識伝達、技術力アップだけの研修では、業績は向上しないのです。
武器をどんなに与えても、それを使う人間の心が育っていなければ正しく使いこなすことができないからです。
ある会社で本学をずっと継続して教えてきました。
毎月 1回の創業経営者の研修でした。
ところが、創業経営者が亡くなって、社員の要望で、事務学のみを教えるようになりました。
どうなったと思いますか。
その会社は倒産しました。
武器をどんなに持ったとしても、本学の土台がない事務学は使い方を間違うようになります。
そして、相手も自分も傷つける道具になるのです。
たとえば、経費削減は重要です。
事務学だけだと、人件費を問題として、どんどん人を切るようになります。
すると、よい人材が会社から去っていきます。
前述の倒産した会社がこのケースに該当しました。
本学を学んでいると、人件費よりも先に、削れる経費はないか考えます。
人件費に手を付けるのは最後です。
人件費は経費でなく売上を生み出す投資だと考えることができるようになります。
●ホーソン実験 自分の会社がうまくいかないのは、組織のつくり方が間違っているからだと思って新しい組織論を取り入れている経営者がいました。
新しい組織論とはホラクラシー組織、ティール組織などです。
その会社はどうなったかというと、退職者がどんどん増えていきました。
業績も急降下しました。
何を間違っていたのか。
それは、今の組織がどうしてうまくいっていないのか原因をわかっていなかったからです。
そんなときこと、新しいものではなく、古典の中にヒントがあります。
たとえば、「人間関係論」のホーソン実験です。
アメリカ、シカゴ郊外にあるウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場は、 3万人近い従業員を擁する大工場でした。
賃金もよく、娯楽設備や医療制度も整備されていました。
しかし、従業員の間には不平不満がみなぎり、作業効率が向上しませんでした。
その原因は何なのか、経営者にはまったく理解できませんでした。
そこでハーバード大学のメイヨー教授らが調査をすることになり、原因を調べるために一連の実験を行いました。
リレー組み立て実験、バンク配線作業実験、面接調査などです。
1924年のことです。
これらの実験の結果、作業能率や生産性を向上させるカギは、作業環境や労働条件よりも、従業員の態度であり、職場の人間関係ではないかという結論に達しました。
このころの経営者や研究者は「人間は機械と同じ、生産するための道具である」といったスタンスで管理をしており、人間の感情や職場の人間関係という発想はありませんでした。
メイヨーらは実験をもとに、人間の気持ちや職場の人間関係を重視した管理が必要だと主張したのです。
ホーソン実験からわかることがあります。
たとえば、人の感情をつかまないまま、新組織を導入すると、かえって弊害になり、退職者の増加と業績の急降下を招くのです。
退職者が増加したその会社の課題点は職場の空気でした。
管理職たちの対話のときの表情は部下を見下したような表情でした。
社内では冷たい視線とディスカウントの言葉が横行していました。
不機嫌があふれる職場でした。
経営者が「できないなら辞めろ」「やる気がない奴は降格だ」と個別ミーティングで部下に伝えていました。
このような企業の風土だと、どんなによい組織論を取り入れても失敗します。
″人は論理でなく感情で動く〟このセオリーを、その経営者は知らなかったのです。
コラム【ホーソン実験の時代背景とテイラーシステム】 ホーソン実験が行われた時期は「狂乱の 20年代」と呼ばれ、アメリカは第一次世界大戦後の好景気で製造業が急速に拡大しました。
有名なテイラーシステムはそのような時代背景で誕生しています。
テイラーは、工場での 1日の作業量や作業手順をマニュアル化し、誰でも一定の作業ができるシステム構築を提唱しました。
人間性を無視したシステムだという批判もありますが、このシステムを採用したフォードでは工場の生産を維持しながら労働時間の短縮に成功するなどの長所もあり、今日でも広く活用されています。
●社員を愛すること 西洋の本を読んでいると愛が大切だと書いてあります。
聖書では″隣人を愛しなさい〟と書かれています。
本田哲郎神父の著書の「釜ヶ崎と福音」にその深い意味が書いてありました。
隣人愛とは、これは身近な人を愛しなさいということではなく、協力を必要としている人の隣人にあなたがなって、その人を大切にしなさいという意味です。
聖書の教え全体の要約といわれる行為です。
私たちがふつう愛という言葉を使うとき、イメージしているのはギリシャ語のエロスです。
家族の愛や夫婦の愛、恋人同士の愛、あるいは親が子どもを、子どもが親を愛すること、それらをすべて含むのがエロスの愛です。
それに対して、家族と同じとまではいかないけれども、友だちとして好ましく思う気持ち、信頼によって引き合うエネルギーもあります。
これをギリシャ語ではフィリアといって区別します。
好きな仲間、友情という意味があります。
聖書に出てくる愛と訳しているギリシャ語は、エロスでもなければ、フィリアでもありません。
アガペーです。
そのアガペーは何かといえば、大切にするということです。
隣人を愛しなさいというのは、自分自身が大切なように、隣人を大切にしなさいという意味なのです。
不機嫌な職場で欠けているのは、このアガペーの愛なのです。
職場でチームメンバーが、アガペーの愛で接することができるようになると、上機嫌な職場に変化します。
すると、お互いを大切にするちょっとした気配りの言動ができるようになります。
お互いに助け合い、学び合い、協力し合う空気ができあがってきます。
4 楽習チームビルディング研修の成功事例 ●楽習チームビルディング研修がなぜ必要か 戦後学校教育は「工場モデル」と言われ、画一的な単純作業を行う人を育成するプログラムが中心でした。
社員研修で主流となっている講師が一方的に話をする「工場モデル」は「真面目で、受け身的な学習で、つまらなく、競争する」ことが特徴です。
一方、「楽習モデル」は「明るく、笑いがあり、出会いがあり、動きがある」教育方法です。
主役は受講生です。
受講生が「気づき」、「学ぶ」ことにより、笑いを持ち、お互いの理解を深めあい、成長することができます。
(参考:ラーニングピラミッド) 体験を通して実習を繰り返すのが楽習チームビルディング研修の特徴の1つです。
このような研修のノウハウを学んで活用できると、コミュニケーションの活性化ができて、よりよき人間関係を構築することができるのです。
そして、研修だけで終わらずにチーム内での繰り返し行動を起こさせるためには、研修そのものを楽しく学び合う仕掛けが必要なのです。
人は楽しいことしか繰り返さないという習性があります。
楽習チームビルディング研修の特徴の2つ目は楽しいことなのです。
また、会社の業績を上げるためには、それぞれの部署のチームで働く従業員たちの生産性を向上させて、チームとして最大の成果を出す必要があります。
チームワークを向上させる研修のみだと、現状の個々の能力の向上はできません。
チームの生産性を上げるためには、現状を打破してチームを成長させるチームビルディング研修が欠かせないのです。
その活動の中で、個々の能力を向上させることができます。
研修を通じて、マネジメント・リーダーシップ・コミュニケーションを学びながら実践していくのが楽習チームビルディング研修なのです。
楽習チームビルディングの学びのセオリー ①人は学びたいことしか学ばない。
②積極的に参加意欲を持つと学びの質、量が飛躍的に増える。
③学ぶ意味、価値を認めると、積極的に学ぶ。
④安心して学べる環境が必要。
⑤協力して学ぶと効果は高い。
⑥振り返りとフィードバックがあるとよく学べる。
⑦互いにたたえあったり、教えあったりするとよく学べる。
●楽習チームビルディングインストラクターの心がまえ 楽習チームビルディングインストラクターの心がまえというものがあります。
「私は、相手を明るく元気にすること、夢や希望を与えることを常に考えて、受講者に接します。
具体的には、『ねぎらい、共感、好意的感嘆、笑顔、激励・応援、承認、よい点の指摘、プラスの可能性の示唆、感謝』などを活用します」。
・「受講者に接する心がまえ 10か条」 ★受講者に思いやりを持つ ★受講者に笑顔と優しいまなざしを持って接する ★受講者をかけがえのないくらいに大切に思う ★受講者を応援する ★受講者の気持ちになる ★受講者がうまくいかなったとしても頑張ったことを褒める ★受講者を明るく元気にする ★受講者の未来に希望や夢を与える ★受講者と一緒にいることを楽しむ ★受講者に感謝の気持ちを持つ この心がまえで教えていると、お互いの信頼関係ができるので、よい学びの場を築くことができます。
実際にこの心がまえを声に出して宣言するインストラクターもいます。
受講者とインストラクターとの心の距離が近くなる効果があります。
●業績が前年比アップのレストランのエピソード 私が社員研修を任されているレストラン企業があります。
店長や副店長の研修を 5年間続けています。
いつも研修の最初のカリキュラムは、お互いの関係性を高める研修を実施しています。
楽習チームビルディング研修を受講する前は、働く人どうしの不平や不満があったそうです。
ところが、今ではお互いに関心を持ち、感謝の気持ちを込めた会話ができるようになったので、不平や不満がなくなったそうです。
心からの「ありがとう」を笑顔で言い合えるレストランになりました。
たとえば、オーダーストップの時間が過ぎても、お客様からのオーダーが入ると接客担当者が厨房に連絡して OKをもらい、笑顔でお客様の注文を受けられるようになりました。
誰もが、お客様に感謝の気持ちがあるので、自然とこのような行動ができるのです。
そして、コックさんも心を込めて「ありがとう」の気持ちで調理をしているので美味しいと評判になり、テレビ中継もされて開店の 1時間前からお客様が並ぶレストランになっているそうです。
業績も急上昇して、昨年比で売上が約 15%以上伸びています。
経営者自身も働いてくれている社員に「ありがとう」を伝えています。
●社員の離職率が 5年前の 3分の 1になったサービス業 チームビルディング研修を 5年間にわたって、全社員に実施している会社があります。
そこの経営者が語ってくれました。
「研修の効果はたくさんあるけれど、何より簡単に辞めなくなった。
離職率が大幅に低下して、おそらく、 5年前の 3分の 1くらいになっているだろう。
どんなによい人材を採用しても、以前は、ザルで水をすくうように辞めていく社員が多かった。
研修の効果をまざまざと感じている。
研修にはこれからも力を入れていくつもりだ。
自分自身も感謝の心を伝えていく」 昨今の労働事情を鑑みても、中小企業は社員を辞めさせないで継続して働いてもらうことができるかが、業績を維持向上する大きなカギになるでしょう。
この会社が、ますます発展するのは間違いありません。
●保育士さんが明るく元気に働く保育園 保育園の経営者からの直接の依頼で、ホメホメトランプを使ったチームビルディング研修を実施しました。
お互いを褒め言葉が書いてあるトランプで褒め合う実習をしました。
最高の笑顔になりました。
これまでで 1番笑顔の多かった研修になったそうです。
お互いを褒め合う時間がなかなか取れなかった保育士さんたちが、この研修をきっかけにお互いを褒め合うようになりました。
定着率が向上したそうです。
このホメホメトランプは小学校や中学校の授業でも使われていて、褒めるのが上手にできるようになるトランプです。
コラム【脳の安定化志向と可塑性】 私たちの脳には、「安定化志向」と「可塑性」という大きな2つの特徴があります。
よく聞く事例ですが、研修やセミナーに参加した人がまるで別人になったように周囲から見られることがあります。
大人しく物静かだった人が話好きで社交的な人に変わり、大きな声で自分の考えを堂々と主張するようになったりします。
ところが、 1週間が過ぎ、 2週間が過ぎたころには、元の大人しく物静かな人に戻ってしまった、という類の話です。
人は、それまで抑制していた自分自身、たとえば本当はたくさんの意見やアイデアをもっているのに周囲に遠慮して言い出せない、という人が研修やセミナーの場で大きな刺激を受け、抑制されてきた自分を解放する体験をしたような場合に変化します。
本人にとって、これまで抑えてきた自分を解放させることはとても気分がよく、成長したように感じます。
これまでの自分と決別して生まれ変わった自分で生きていきたい、と心から望むことでしょう。
ところが、生まれ変わった自分で生活を続けることに慣れていないのです。
時には自分に無理を強いてしまうこともあるでしょう。
そうすると、「前のままでいた方が楽だ」、「無理して変えることなんかない」という意識が働きだします。
その結果、せっかく研修で見つけだした本当の自分、過去よりも価値があると思える自分よりも、これまでと同じ、少し価値がないように思えるけれど楽なままの自分でもいいと思ってしまうのです。
これを「脳の安定化志向」と呼びます。
理屈でわかっていて、客観的に考えれば価値があるとしても、新しいことを取り入れることや、今まで経験したことがないことを避けて、これまでどおりの慣れ親しんだ生活や習慣を続けることを選ぶ志向を表します。
たとえば、お酒を飲みすぎることや、たばこを吸うことは体によくないことは誰でも知っているでしょう。
ところが、お酒を飲みすぎる人は宴会などに出席すると、やはりお酒を飲みすぎてしまうことを経験します。
たばこを吸う人で、一度は禁煙を決意したけれど挫折して、再びたばこを吸っている人はたくさんいます。
「今がよくないことはわかっているけど、変えるのは面倒だ」、「やっぱり習慣だから変えられない」と考えてしまうのです。
そして、よいことだとわかっているのに変えられないのです。
しかし、これは無理もないことです。
「脳の安定化志向」を理解していないからです。
朝は笑顔であいさつすれば、職場の皆も気持ちよく仕事ができることはわかっています。
でもうまくできない、続かないのは、それまでの自分のイメージを突然大きく変えることを「脳の安定化志向」が邪魔するからです。
一方で脳には「可塑性」があります。
「可塑性」とは「変化しやすさ」を表す言葉です。
この場合は「少しずつなら変えられる」と理解するのがいいでしょう。
脳は急激な変化には抵抗があっても、少しずつ変わることには順応性を発揮します。
研修は 1度きりでは効果が出ないと言われるのは、研修を受ける側にこうした脳の特徴が理解されていないからです。
苦虫を噛み潰したような表情に慣れた管理職や年配者は、いきなり、人には笑顔で接しましょうと教わっても実行できません。
ところが笑顔の実習を継続していくうちに、慣れてきて笑顔がでるようになります。
笑顔がふえると周囲の人の接し方も変わってきます。
そのうちに、笑顔でいることの価値がどうこうよりも、単純にその方が気持ちいいことがわかるのです。
職場に笑顔が増えてくれば、業務にもいい影響が出てきます。
安定化志向と可塑性の関係は振り子のようなものです。
一方に振れると必ず逆方向に振れます。
一方が改善したい方向で片方は現状維持の方向です。
この関係を理解し、最初は小さな振れから始めます。
振れ戻しの影響が小さなもので済むように、です。
そして徐々に大きく振りながら、改善したい方向に振れの中心そのものをずらしていくのです。
そうすれば悪い方向に振れても小さな影響で済ませることができます。
反対によい方向に振れたときのよい影響を利用して、さらに振れの中心をよい方向にずらすのです。
楽習チームビルディングは、この「脳の安定化志向と可塑性」という特徴を理解し、実習をふんだんに使って職場風土の改善を目的とします。
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