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善き思いに満ちていること

目次

善 き 「考 え 方 」 を 持 ち 、 「他 力 の 風 」 を 味 方 に す る

ここまで、素晴らしい人生を送るために必要な「考え方」について、「大きな志を 持つこと」「常に前向きであること」「努力を惜しまないこと」「誠実であること」「創 意を凝らすこと」「挫折にへこたれないこと」「心が純粋であること」「謙虚であるこ と」「世のため、人のために行動すること」という九つの章に分けて、お話ししてき ました。 「考え方」次第で人生が変わるなど信じられないと思われるかもしれませんが、私自 身が善き「考え方」を持つことで、人生を好転させてきたこと、また、困難を克服し てきたことは、本書を読んでいただいた皆さんには十分にご理解いただけたことと思 います。 「考え方」には私たち一人ひとりの人生を一人○度変えるほどの大きな力があります。 また同時に、 一人ひとりが意識を変え、善き「考え方」を持つことで、個人を超えて、集団そのものの運命をも変えていく力を持っています。 序章でもふれた日本航空の再生がまさにそのことを示しているように思います。 私は再建の任を終えて、二〇一三年三月に日本航空の取締役を退任しましたが、そ れまでの日々を振り返り、なぜあのような奇跡的な再生を果たすことができたのかと、 夜、床につくときにしみじみと考えることがあります。 まずは、何よりも社員たちの心が変わり、仕事の姿勢、行動が変わったことが挙げ られます。 たとえば、受付カウンターのスタッフは、チエツクインの際、杓子定規に対応をす るのではなく、常にお客様の立場になって、「お客様に今、本当に必要とされている ことは何か」「お客様が困っていることで、何か対応できることはないか」を考え、 自発的に行動してくれるようになりました。 また、お客様とフライトを共にするキャビン・アテンダントたちも、マニュアルに 書かれていないことでも、「こういうことをしたら、お客様は喜んでくれるのではな いか」と考えて、お客様の要望を先取りするように、臨機応変にサービスを提供してくれるようになりました。 さらに、それまでは通り一遍の機内アナウンスをしていた機長たちも、いつも同じ 言葉で話すのではなく、その日ご搭乗いただいたお客様に対して、心のこもった言葉 を自ら考え、アナウンスをしてくれるようになりました。 かつての日本航空は、日本を代表するナショナルフラッグキャリアという自負心か ら、傲慢さ、横柄さ、そしてプライドの高さが鼻につき、お客様をないがしろにする ようなことがまま見受けられました。そのような社員の心のあり方が日本航空を破綻 に陥れたのです。 一方、日本航空の再生において、私は全社員に、「真面目に一生懸命仕事に打ち込む」 こと、「感謝の心を持つ」こと、「常に謙虚に素直な心を持つ」ことといった、人間の 「徳」に基づいた善き「考え方」を持つことの大切さを伝え続けました。そのような「考 え方」が浸透するにつれ、官僚的な体質は少しずつなくなり、マニュアル主義といわ れていたサービスも改善され、社員一人ひとりの行動が大きく変化していきました。 それまで「自分だけよければいい」という利己的な「考え方」に染まっていた心が、 「お客様のため」、また「仲間のため」といった、他に善かれかしという「考え方」に変わつていつたことで、それぞれの持ち場、立場で、懸命に仕事に取り組んでくれる ようになったのです。 こうした日本航空の社員たちの変化によってお客様へのサービスが向上し、搭乗し てくださるお客様も次第に増えていき、それにしたがって収益も飛躍的に改善してい きました。こうして、経営破綻に至るまで悪化し続けていた日本航空の運命は好転し 始めました。 つまり、社員たちの意識と行動の変化という「自力」が、お客様からの応援という 「他力」を呼び起こすことによって、日本航空は運命を変え、世界一の収益性を誇る 航空会社に生まれ変わることができたのです。 しかし、この「自力」と「他力」だけでは、あの日本航空の奇跡的といわれる再生 を説明することはできないように思うのです。私には、もう一つの大きな「他力」が あつたように思えてなりません。それは人智を超えた自然の力という意味での「他 力」です。そうでなければ、東日本大震災が起き、大幅な旅客減少が続いていたなか で、高収益を維持しながら、わずか三年足らずで東京証券取引所に再上場を果たしていくという、誰しも想像できなかった企業再生ができるはずがありません。つまり、 善き「考え方」を持って懸命な努力を捧げている私たちの姿を見て、天が手を差し伸 べてくれたのではないでしょうか。 このことを、次のように表現することができると私は考えています。善き「考え 方」は、自助努力による「自力」や周囲の人々の助けという「他力」をも超えた、偉 大な宇宙のもう一つの「他力」を味方にすることができると――。 人生を、大海原を旅する航海にたとえるならば、我々は思い通りの人生を送るため に、まずは必死になつて自力で船を漕ぐことが必要です。また、仲間の協力や支援し てくれる人々の助けも必要ですが、それだけでは遠くにたどり着くことはできません。 船の前進を助けてくれる他力の風を受けることではじめて、はるか大海原に乗り出 し、航海することができます。 世の中に自力だけでやれることなどたかが知れています。また、周囲の人々の助け という他力を得るだけで達成できることにも限界があります。偉大なことは人智を超 えた天の力である、もう一つの他力を受けなければ成しえません。けれども、天のカという他力を受けるためには、自分自身の心を利己まみれの心ではなく、「他に善か れかし」という美しい心にすることが必要です。 「オレがオレが」という利己の心は、いわば穴だらけの帆のようなものです。よしん ば他力の風がいくら吹いても、帆に穴が開いているために船は前進する力を得ること は決してできません。対して、善き「考え方」のもとに揚げた帆は力強く他力の風を 受けることができます。 私は、善き「考え方」を持つことが、他力の風を受けるための帆を張るという行為 そのものであり、自分の心を美しい心に磨いていく営みそのものではないかと考えて います。 帆はその人の「考え方」がもたらす心の状態を表しています。利己的な欲望ではな く、他に善かれかしという美しい心で帆を張れば、この世界に吹いている神秘的な素 晴らしい力を、自然と得ることができるようになります。 ぜひ読者の皆さんも、もう一つの他力の風を満帆に受けるような善き「考え方」を 持ち、素晴らしい人生を送つていただきたいと思います。

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