効率化ファイリングの実践例
1株式会社のぎす様2株式会社環境管理センター様3学校法人済美幼稚園様4平安伸銅工業株式会社様5整理収納アドバイザー長谷川つぐみさん6職場片づけコンサルタント家村かおりさん7整理収納アドバイザーもんのえつこさん職場を片づけて叱られた若手社員おわりに●カバー・本文デザイン、DTP藤塚尚子(etokumi)●図版製作神林美生
株式会社のぎす様栗本薫社長のご感想最初に受講したのはホームファイリングのセミナーだったのですが、これは会社にも必須だと思いました。そこで、ボックスファイルを数箱、個別フォルダもその数だけ準備し、しばらくは一部の書類だけを運用していました。外出時に必要な営業のパンフレットや書類なども、バーチカル形式で持ち出すようになりました。ただ、他の書類は相変わらず探しにくいし、自己流は崩れてくる。そこで、思い切ってファイリングシステムの導入を依頼。とにかく見た目がきれいで、完成の最後の作業の時はどんどんテンション上がっていきました。もちろん、どんな書類がどこにあるか、一目でわかるようになりました。当社は、介護予防・リハビリ・療育・レクリエーションなどに適した商品を企画・開発・販売する会社です。ボイストレーニングのご依頼から福祉の相談者の方まで、いろいろな方が事務所にいらっしゃるのですが、その時に急な話の流れになっても、「そのお話でしたら、詳細な資料がありますよ」など、パンフレットや資料を取り出せるのが助かっています。ファイル分類の際は非常に悩みました。分類作業にあたって、自分がすべき仕事や、自分がこれから発信していくべき仕事が何かが見えてきたのが驚きでした。ファイリングシステムで業務改善が図れるというのも納得です。そこから4年たった今、新型コロナウイルス対応で、金融機関、市役所、商工会議所等に提出する書類で大忙しですが、各機関から「必要」と言われる書類は、すべて2秒で取り出せました。大事な局面で「アレ、どこやった?」「ここに入れたはずの書類は?」など迷いは一切ありませんでした。スピード重視で進めないといけない、ここぞという状況に、「書類がそろうのが早い」というのは、最高の武器だと思いました。
株式会社環境管理センター様小林秀樹社長のご感想新事務所建築のタイミング(2つの事務所を統合)で、導入を決定しました。3カ月間、自分の仕事の書類の整理を行なっていく過程で、最初に書類の要不要を実施、ファイルを資産として管理するための分類とデータベース化作業を行なっていきました。最初の段階で、すでにメリットは感じ始めていました。特に、データベース化作業。この作業を通じて、要不要とは違う角度から書類と向き合うことになりました。時代・市場の変化を乗り越えてきた歴史が刻まれている書類に対し、私が戦ってきたこれまでの葛藤と、それをこれから経験する承継者の息子への想いもありました。重荷であったファイルを整理することで、息子に何を引き継いでいくべきかということが明確になり、得体の知れない重圧や不安から解放されたことも大きなメリットでした。メイン作業であると聞いていたファイル基準表の作成はマストの作業でした。全書類が共有前提で、書類を個人で管理するのはおかしい、という意識が根づいたことで、会社は「公器」だと気づかされ、社員にファイリングの動機付けをすることもできました。職場では、私のファイリングをモデルとして示していきました。昔からの社員と昔話を交えながら、好意的に取り組むことができました。当社は40年以上の歴史を持つ環境コンサルティング会社で、キャビネットに置いてある古い書類の入ったファイルたちを見ると、難航が予想されました。しかし「ファイル1冊でも資産」という、長野さんの言葉に押され、作業をスタート。古い書類の扱いは苦労しましたが、シンプルなファイリングの実践方法で、よそ見をせず、最短で目的地へたどり着くことができました。これからのテレワーク時代には、仕事も書類も個人に帰属しないファイリングのしくみ作りが、事業継続力強化の上でも役立つと痛感しています。
学校法人済美幼稚園様宮崎こずえ園長のご感想モノの片づけができていない環境で、幼児教育に取り組むことが問題だと常に気になっていました。最初は部屋の整理整頓を行ないましたが、書類が多く整理ができていなかったので、ファイリングの実施が必要でした。導入前は簿冊が一番と思っていましたが、バーチカル導入後は、一目でわかる掲示の仕方になって書類を探す時間が短くなったり、必要のない書類が見えてきたりしました。書類棚の必要台数が減り、部屋にあきスペースができたのも大きな成果です。さらに、自分が1人で把握してきた書類を、職員たちとともに作業することで、必要か必要ではないかの判断が、とてもしやすかったです。一緒に作業をすることで引き継ぎ業務も兼ねることができ、書類のストレスから解放されました。事務職濱島友里様のご感想以前は、探したい書類がどこにあるか不明で、書類の保管スペースが多い上、どんどん増えていく状態。担当者しか書類を探すことができず、同じ分類の書類が他のファイルに混在していることも多々ありました。実際、最初の整理の作業の段階で、原本とコピーが何枚も入っていたりして、その分、ファイルが重たくなっていました。特に苦戦したのは、ファイル基準表を作り上げる分類です。どう分類していいかわからず、作業が止まってしまうこともありました。しかし、書類の破棄、フォルダ化、分類と各工程の中で、頭の中が徐々に整理・分類されていき、後半にかけてどんどんスピードが上がりました。今、ファイリングシステムが完成し、書類をすぐ見つけることができるようになりました。これなら、新人でも見つけられると期待しています。使った書類は棚に戻っていくので、業務後も散らかることがありません。書類を保管するスペースも最小限となり、色別で整理できているので、見た目もきれいです。
平安伸銅工業株式会社様竹内香予子社長のご感想大阪にある突っ張り棒の老舗メーカーです。導入のきっかけは「社屋の引越しのタイミングで書類にルールを作りたい」という考えからでした。明確な処分基準ができたことで、書類の廃棄作業は社員一丸となって一気に進めることができました。書類が減ったため、荷物を運ぶ回数も減り、引越し作業も負担が少なくすみました。よかった点は、とにかく書類がすっきりしたこと。そして、誰がどんな仕事(書類)を持っているのかも、非常にわかりやすくなりました。予想外のメリットだったのは、自分が管理していた書類について体系的に分類していくことで、「これは総務、これは人事、これはシステムの仕事」とわかってきたこと。「部署にひもづいている書類で、これは自分(社長)だけの仕事ではない」ということが明確になったことでした。見た目が雑然としたオフィスでは、企業のブランディングもままなりません。書類管理の効率化は最重要事項だと思っています。社員のみなさまのご感想•戻す位置があるって、素晴らしいです。以前は「どこに戻していいかわからない」ということがよくあり、書類がたまっていく原因のひとつでした。今は「やりかけ書類はここ」などと迷わず戻せるので、書類があちこちいかず、出しっぱなしになりません。•業務上、よく他の部署の書類が必要になります。以前はその書類の場所がわからなかった(担当者が個人的に持っていた)ので「今、忙しいかな?」とタイミングを見計らって、「〇〇の書類を貸していただけますか?」と声をかけていました。今では、全書類が共有という位置づけに変わり、必ず決まった場所に置いてあるので、勝手に見ることができるようになり、仕事が早くなっていると思います。
整理収納アドバイザー長谷川つぐみさん長谷川つぐみさんのご感想平日は会社員、休日に整理収納アドバイザーとして活動しています。勤務先でテレワークが導入されました。職場の書類を持ち帰るようになり、その管理方法に戸惑ったタイミングでホームファイリングの実践の学びをスタート。自己流管理の家庭の書類も含めて、使いやすく、見た目にも美しいバーチカルファイリングに変身することを夢見て始めました。レッスンでは、ファイリングの細かなルールや考え方に触れ、地道な作業を繰り返します。どれも大切なエッセンスばかりなので、理解するまで先には進めません。でも、常に目の前の書類と向き合いながら実践式で取り組むので、習得していく感覚がありました。今まで目を背けてあいまいにしてきた問題が次々と解決、プロから学ぶことの大切さを実感しました。特に、ファイル管理表の作成は、独学で作ることは困難です。乳幼児と小学生の4人の子育て中なので、作業時間の捻出には苦労しましたが、今まで書類に振り回されていた時間を、これからは有意義に使えると思うと頑張れました。完成したホームファイリングは家族にもわかりやすいと大好評です。一生困らないファイリングシステムが手に入るなら、作業にかける時間など些細なものです。忙しい方にこそお勧めしたいと思っています。家庭の書類が快適に管理できるようになると、次は職場の書類管理も改善したい気持ちが湧いてきました。家庭と職場、両方で正しいファイリングが実現できれば、その相乗効果は計り知れません。会社の書類管理に携わる方には、家庭で再現してほしいと思います。私自身はここで学んだことを活かして、そんな書類で悩む方の力になることを夢見ています。
職場片づけコンサルタント家村かおりさん家村かおりさんのご感想長野さんと一緒に、済美幼稚園様(本章3項)のファイリングシステムの導入作業に取り組んでいた時に、世界中に新型コロナウイルスが広がりを見せました。そんな中、作業現場で感じたのは、リモートワークが増える時代に備え、職場だけでなく、プライベートと仕事の書類が混在する自宅にも、書類の整理が必須だということです。また、これまでも企業に2Sコンサルティングをする中で、大量の書類に苦しむ様子を見てきました。モノだけでなく、書類の指導ができれば、どれだけ役に立てるだろうかと感じ、まずは自分自身も自宅のファイリングにも取り組むため、ホームファイリングを学ぼうと思いました。自宅で仕事をする人にとっても、家全体に散らばっている書類が1カ所で管理でき、欲しい書類を秒単位で出し入れできるしくみは、場所も時間も心にもゆとりをもたらすと実感しました。また、家庭でファイリングのしくみを扱うことができれば、企業導入前のトレーニングになります。実際に3カ月間、自分の書類で実践したところ、オフィスの書類でも使える技術でした。私は普段、企業の2Sコンサルをしていますが、まずは基礎を学び、実践するホームファイリングのメソッドは、家庭にとどまらず、企業の個人スペース、例えば机周りなどであれば、十分使える深い内容です。モノや書類はただ整理整頓するだけでなく、「崩れないしくみ」を導入することが、長期継続に重要ポイントだと思います。ファイリングメソッドで必要最低限の書類がしくみ化されることが、今後のリモートワーク時代やデータ化が進む時代に、大きな支えとなると確信しました。
整理収納アドバイザーもんのえつこさんもんのえつこさんのご感想ファイリングに関しては全く知識がない状態で、長野さんのホームファイリング講座を受講し、個別フォルダに書類をまとめてみました。それだけでも十分便利になったのですが、片づけのプロとして活動をしていく中で、たくさんのご家庭が書類に悩んでいることを知り、もっと深く勉強したいと思い、3カ月間の実践講座を受講しました。自分の家の書類をもう一度最初からすべて見直し、家族みんなで共有できるための、バーチカルファイリングを完成させました。自分流で作成した時に比べ、個別フォルダの分類や順番がきっちり決まっているので、書類を探す時間が減り、出し入れに迷うことがなくなったので、時間的、精神的効果をすごく実感しています。それと、もうひとつ、ファイリングを学んでよかったことは、全く整理収納に興味がなかった夫が、自分から書類整理のセミナーに参加するといって、夫婦で長野さんのファイリング講座に参加したことです。個別フォルダの使い方を学び、会社の自分の書類を個別フォルダにまとめたところ、実際に仕事の効率が上がり、書類をすぐに取り出せるようになったとすごく喜んでいました。家とオフィス、すべての書類に共通することは、書類が整うと頭の中が整理され、気持ちまですっきりし、相乗効果が表れることだと思います。今回、改めて書類と向き合うことの大切さを実感することができたので、これから整理収納アドバイザーとしてお客様のサポートをする際にも、ぜひ役立てていきたいなと思っています。
COLUMN8職場を片づけて叱られた若手社員ある企業で研修を行なった後、若手社員がチームを組んで、職場の改善活動を始められました。どんどん片づき、スペースも広くなり、周囲の方の効率もアップして大変喜ばれていたそうです。緊急業務が発生した時も、そこに書類をおいて一気に取りかかれたとのこと。しかし、作業中に1つトラブルがありました。整理の作業途中に処分してしまった段ボールの中に、古い社内システムの設計書が混じっていたらしく、それが数年ぶりに突然必要だという話になった際に「あの書類がない」「○○さんたちが処分してしまった」と非難されたのだそうです。彼らは「最終処分は上司の了承を得てから」という、研修の内容をきちんと実行されていた中で、このようなことがあったと教えてくれました。上司の判断のもと、彼らが非難されるのはおかしいのは当然ですが、努力したメンバーのおかげで、日々片づいたことのメリットを周囲も享受しているにもかかわらず、1つの失敗を責めてしまう部署の空気が気になりました。何より、ファイリングコンサルタントの視点から見れば、そんなに大事な書類を「捨ててもいいですか」と言われてしまうような状態で置いていたことの方が、組織としてよほど問題です。彼らに非はなく、応援している旨を伝えたところ、業務改善運動として社内で発表もなさったそうで、「あの研修とアドバイスのおかげです」と事後、うれしそうに報告をいただきました。私のところへは「職場をなんとか片づけたい」と個人的に相談に来る社員さんも多いですが、彼らに共通することは、効率よく仕事をしたいのは自分のためだけではなく、周囲のため、会社のためだということ。自分の仕事時間を削ってでも、みんなのためになればと考え、作業している人たちです。こうした目に見えない人たちの努力が、もっと評価にされる社会にしていきたい。そのためにファイリングでできることを、模索していきたいと考えています。
おわりに本書執筆にあたって、大きな迷いがありました。それは、「まずは自分から」という本書のファイリングテーマが、「文書の私物化を排除して、文書の共有化を図る」というファイリングシステムの大前提に矛盾するからです。「組織として情報資産の管理活用が重要」と訴える自分自身の考えにも反していますし、これまでファイリングシステムを研究し普及してこられた先人の方々に、申し訳ない気持ちもありました。しかし今回、ファイリングシステムの大家、三沢仁先生の著書を何度も読み返したところ、日本に参考文献もない時代から苦労しながら研究され、多くの方に役立つよう願われていらっしゃる、その先生に賛同して多くの関係者が協力されているご様子から、まず身近なところから広めることも必要だと思えました。そして、もうひとつは、これまで私に相談してくださったクライアントさんや受講生の方々からの声です。「書類・データをどうすべきか困り果てていて、助かりました」「ファイリング最高です。日本中に広めてください」、こんな感想をいただくと、同じようにお困りの人たちのお役に立てるのではと考えました。受講生の中には、自発的に改善を進め、徐々に周囲を巻き込み、結果、会社全体の環境改善を成功させ表彰された方がいらっしゃいます。これまでトップダウンの指示でのみ可能だと思っていた全体改善を、個別アドバイスから成し遂げられたことに驚くとともに、ボトムアップだからこそ広がる可能性を目の当たりにしました。こんな風に環境改善していけるのだと、その希望が背中を押してくれました。もし、ファイリングシステムに興味を持たれたら、内閣府が公開している「公文書管理法」「行政文書の管理に関するガイドライン」をご覧ください。情報は国民共有の知的資源であるという位置付けにおいて定められた管理方法で、ガイドラインをよく読むと、前提が簿冊式ではないこともわかります。何といっても、ファイリングは公文書・行政文書が基本であり王道なので、間違いありませんし、その意義や実務上の留意点等は、文書管理規定を作成するなど、自社のファイリングシステム運用の参考になります。さらに、地震・台風等の災害記録など過去の歴史からの教訓を学ぶこと、WHOが「100年に1度の衛生上の危機」と称したコロナ禍の状況を、未来へ伝える重要性などにまで想いを馳せると、またファイリングの意義が広がり始めるでしょう。「職場はぐちゃぐちゃ。自分の書類は、何とか集めてやりすごしている。みんなが探している非効率は気になるけど、もうこれでいい」こんな、あきらめとも取れる、自分さえ我慢すればいいという言葉を耳にします。この方自身、つらい立場ではあるのですが、厳しく言えば、次の担当者や次世代の人たちに課題・負担を押しつけて、現状の問題に加担していることにもなってしまいます。「やらないよりはやった方がいい。嘆くくらいなら、まずは自分から行動しよう」これは、あらゆる社会問題と同じです。行動する一人ひとりの存在が大切なのです。途方もないけれど、ファイリングの分野ならば、結果が出るように私がサポートしていきたい。そんな気持ちで活動をしています。本書執筆中、医療従事者のみなさまをはじめ、エッセンシャルワーカーの方々、家族、友人、みんなが必死で働いている中、漠然とした不安を抱えながら何もできない自分が情けなく、呆然と過ごしていた時期もありました。そんな中、過酷な状況にある保健所に勤める友人や、看護師の友人が「休憩も取れず働く中、書類が出てこず、みんなが書類を探している。ファイリングをやっておけばよかった」と嘆いているのを聞き、すぐでも手伝いに行きたい思いになりました。その人にしかできない仕事に集中してもらいたいと思う中で、働く人たちの環境を整えることが自分の使命であり、多くの方にファイリングを知ってもらうチャンスだと本書への想いもますます強くなりました。今回、「次の書類に悩む方のお役に立つなら」と事例紹介にご快諾くださったみなさま方に、心よりお礼申し上げます。また、ファイリングに可能性を見出し、最後までとことん寄り添い応援してくださった同文舘出版の戸井田さん、かたく難しい印象を抱かれがちなファイリングをわかりやすく表現してくださった藤塚さん、神林さん、本当にありがとうございました。どうか本書がお役に立ちますように。日々懸命に仕事をされているみなさんに、敬意と感謝を込めて。長野ゆか
【参考文献】『五訂ファイリングシステム』三沢仁(一般社団法人日本経営協会)『Q&A実践新公文書管理─AKFの理論と実務─』廣田傳一郎(ぎょうせい)『基礎から学ぶトータル・ファイリングシステム「ファイリングデザイナー2級テキスト」』(一般社団法人日本経営協会)『公文書管理検定テキスト(実務編)』(一般社団法人日本経営協会)『整理収納アドバイザー公式テキスト一番わかりやすい整理入門』澤一良・著、一般社団法人ハウスキーピング協会・監修(ハウジングエージェンシー)
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