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創意を凝らすこと ―昨日よりは今日、今日よりは明日、 明日よりは明後日と改良改善する

完璧

最後の一%の努力を怠ったがために、 すべてが無に帰してしまうことがあります。 自分自身の努力を実りあるものとするためにも、 常にパーフェクトを求めなければなりません。

目次

パーフェクトを求める姿勢が自信をつくる

私は、若い頃から「完全主義を貫く」ことをモツトーにしてきました。 「完全主義を貫く」というのは、私自身の性格から来るものであると同時に、研究開 発という創造的な仕事に従事した経験から言い始めたことです。 人が全くやったことのない研究開発テーマにチャレンジする場合、試験データなど 他に較べるものがないわけですから、自分の手で触り、足で確かめ、すべてのことを 自分で証明しながら進んでいかなければなりません。つまり、自分自身というものを コンパスにして進む方向を定めなければならないわけです。 そのときに最も大事なものは、自分自身に対する自信です。人間として、また技術的 にも、自分自身に対して確信が持てる。そういう確かなものを持つていなければなり ません。自分自身にパーフェクトであるという自信のない人が、中途半端な心構えで 取り組み、その結果にも自信が持てない。それでは、創造的なことは絶対にできません。

セラミックスを例にとれば、たとえば何種類かの原料を混ぜる場合、原料を一種類 でも入れ間違えば、また、入れる分量を間違っても、混ぜ方が悪くても、望む特性を 持ったものはできません。 実際、私が実験をしていたときに、このようなことがありました。 実験室で原料の粉末を混ぜるときは、メノウでできた乳鉢と乳棒を使っていました。 「こういうセラミックスを合成しよう」と考えて、計算した分量の原料を入れ、乳鉢 で混ぜるわけです。混ぜていく時間が長ければ長いほど、原料は完全に混ざりますが、 どれだけ時間をかければ混ざるのかという問題があります。 セラミックスをつくるには、酸化マグネシウム、酸化カルシウムといった原料の粉 末を混ぜます。メリケン粉などを想像してもらうとわかりやすいと思いますが、たと えば色の違ったメリケン粉を混ぜるとしましょう。最初、まだら状に見えていたもの が、 一生懸命に混ぜていくうちに、均一になってきます。液体の場合だとこれで均一 に混ざったことになるのですが、団体ですから、いつたいどういう状態になれば完全 に混ざったと言えるのかわからないわけです。 粒がもつと小さくなつて、直径千分の一ミリほどになっても、ミクロで見ればやつ

ばり完全に混ざってはいません。ですから、よく混ぜてものをつくろうと思っても、 どこまで混ぜればいいのかということが問題になってくるわけです。 乳鉢で混ぜても、「ポットミル」という、回転させてなかのものを混合粉砕する器 具で混ぜても、完全に混ざつたというのは、どの時点を言うのか、判断に困るわけです。 ですから私は、乳鉢で原料を混ぜながら、「混合という工程一つとっても、たいへ ん難しいことだ。しかし、すべてのプロセスが完全に行われなければ、自分の理想と するセラミックスはつくれない。完璧なものづくりをするためには、どうすればいい のか」ということを常に考えていました。 仮に、ある工程でちょっとした不注意で失敗してしまえば、それまでにつぎ込んだ 材料代から加工賃、電気代、あらゆるものがすべて無駄になるわけです。 それは、会社に損害が出るだけではなく、そのために納期が遅れてお客様にまでた いへんな迷惑をかけることにもなります。 京セラがまだ小さかった頃は、ほとんどお客様からの受注生産でした。営業がお客 様のところに行って打ち合わせをして、「こういうセラミック部品をつくって、いつ

いつまでに納入してくれ」と言われ、「必ず間に合わせます」と答えて引き受けてき ます。お客様は約束した納期に合わせて、その部品を組み込んだ機器の生産予定を立 てますから、必ずその期日までにつくつて納めなければなりません。 しかしそのようなときに限つて、もうギリギリのところでちょっとしたミスをして 不良となってしまう。その製品が原料を混ぜてから完成するまでに延べ十五日間かか るものであれば、最終出荷の手前で失敗すると、さらにあと十五日かかるわけです。 お客様にも「あと十五日間待ってください」と言わなければなりません。 するとお客様から、「おまえのところみたいなボロ会社に頼んだばっかりに、生産 計画に狂いが生じてしまうではないか」「三度と取引はしない」と営業がこつぴどく 叱られ、半ベソをかきながら帰ってきます。それをもう一度お客様を訪ね、誠心誠意 説明し、何とか許してもらつて、できるだけ早く納品する。そういう辛酸をなめてき たからこそ、わずかなミスでもたいへんなことになることを身にしみて知っているの です。そのために京セラは完全主義をポリシーとして今日まで貫いてきました。 つまり、製造から納品までの全工程において、たとえわずかコンマ何パーセントと いうミスであっても、それまでの努力がすべて水泡に帰してしまうわけですから、 一瞬の気の休まる間もないくらいの完全主義を貫き、パーフェクトを狙っていかなけれ ばならない。これがものづくりの世界です。 人生や仕事でも、最後の一%の努力を怠ったがために、すべてが無に帰してしまう ことがあります。自分自身の努力を実りあるものとするためにも、常にパーフェクト を求めなければなりません。

挑戦

新しいことを成し遂げるには、 「何があってもこれをやり遂げるのだ」 という、闘争心が必要です。 どんな障害に遭遇しようとも、 それを乗り越えて努力を続けていく というタイプの人でないかぎり、 チャレンジをしてはならないのです。

決してあきらめない不屈の闘争心を持つ

チャレンジという言葉は勇ましく非常にこころよい響きを持つ言葉ですが、新しい ことを成し遂げるには、「何があってもこれをやり遂げるのだ」という、闘争心が必 要です。さもなくば、チヤレンジという言葉を口にしたところで、ただうつろに響く だけです。どんな障害に遭過しようとも、それを乗り越えて努力を続けていくという タイプの人でないかぎり、チヤレンジをしてはならないと私は思います。 さまざまなかたちの困難や圧力が襲いかかるとき、私たちはえてして、ひるんでし まったり、当初抱いていた信念を曲げてしまうような妥協をしがちです。こうした困 難や圧力をはねのけていくエネルギーのもとは、その人の持つ不屈の闘争心です。 「絶対に負けない、必ずやり遂げてみせる」という激しい闘志を燃やさなければなり ません。私は京セラの社内でよく、「もう、駄目だというときが仕事の始まり」ということ を言ってきました。それは、私自身の若いときの経験から言い出したことです。 私は京セラを創業して間もない頃から、明日の食い扶持を確保するために、新規客 先の開拓を目指し、飛び込み営業を続けていました。しかし、知名度も信用も実績もな い当時の京セラでは、売り込みに行っても、すげなく断られることがほとんどでした。 一番悔しかったのは、ある大手電機メlヵlを訪問したときのことです。その頃は 本当に何も知らず、真空管を製造している部門の技術者に会わせていただきたいと、 いきなり訪問し、守衛さんにお願いしたのですが、「急に来られても駄日です」と門 前払いの扱いを受けました。 それでもあきらめずに、何度目かの訪間で、ようやく技術者に会わせていただきま した。しかし、その技術者の方が言うには、「あなたはうちの会社をよく理解しておら れません。当社はある財閥系の企業です。だから、セラミック製品は、同じ系列の企 業から買っています。京セラのような、系列でもない、実績もない無名の会社の人に 突然来られても、そこから買うことは絶対にありません」と、けんもほろろに断られ ました。そういう系列取引を含め、眼前に立ちはだかる障害を突破するにはどうすればいい か、当時の私にもわかりません。同行した若い営業マンも落胆していましたが、私は リーダーとして、うなだれているわけにはいきませんから、「断られたときが仕事の 始まりだ。困難な状況をどうやって打開するのかを考えることこそが仕事なんだ」と、 挫けそうになる若い営業マンを奮い立たせながら、自分自身にもそう言い聞かせてい ました。 そうして、どんなに難しく困難な状況に襲われようとも、決してあきらめることな く、粘り強く、お客様を訪問し続け、受注活動に努めていきました。その努力を警え るなら、水滴が大きな岩をうがつようなものでした。つまり、たった一滴の水では岩 をくりぬくことはできませんが、それを果てしなく続けることで、やがて水滴といえ ども、岩をもうがつことができるのです。 そんな強い意志で挑戦し続ければ、血路は必ず開きます。実際に、京セラはその後、 系列でもなく、信用も実績も何もなく、取引は不可能だと思われたその会社から、セ ラミック製品を受注することができました。それは、その他の大手エレクトロニクス 企業も同様でした。

京セラとは、そのようにして、強い意志を持って困難に挑戦し、不可能だと思われ た受注を獲得し、さらにはそのいただいた注文がいかに難しいものであっても、何と しても約束通りにお客様に納入をさせていただくように努め、新しい顧客を次々に開 拓し、業績を拡大してきた会社です。 その際、大切なことは、可能性を信じ、解決の道を探り続けるということです。私はどのような困難な局面でも、「今までの手法では駄目だが、他に方法はないか。必 ず血路を開く手立てがあるはずだ」と、懸命に打開策を考え続けました。いかに厳し く困難な状況であっても、あらゆる条件を考え尽くし、困難な状況を克服するための、 具体的な方法を考えていくのです。 チャレンジを成功に導くということは、そのような創意工夫、つまり課題解決に向 けて具体的な方法を考えることと不即不離です。チャレンジとは、ただ単に強く勇ましく、粘り強いということだけではありません。また、可能性を信じるだけでもありません。どうすれば困難な局面を打開できるのかという具体的な方策を徹底的に考え尽くすということがなければなりません。いかなる困難があろうと、可能性を信じ、決してあきらめることなく、粘り強く考 え続け、あらゆる創意工夫を重ね、「これでもか、これでもか」と、誰にも負けない 努力を重ねることでこそ、困難に思えた局面も打開し、チヤレンジも成就していきま す。

工夫

一日の創意工夫は わずかな一歩でも、 その積み重ねはやがて 大きな革新に至る一歩になります。

今日一日に全力を傾注し、常に創造的な仕事をする

私は、従業員が百人にも満たない頃から、「京セラは世界的視野に立って世界の京 セラヘ前進する」と言ってきました。小さな会社でありながら世界に目を向けるとい うことは、まさに高く大きい目標を持つことです。自ら大きな目標を設定すれば、そ こに向かってエネルギーを集中させることができ、想像もつかないような偉大なこと が成し遂げられるからです。 しかし実際には、その高い日標を目指すのではなく、 一日一日を一生懸命に生きる ことに努めました。 「今日一日、 一生懸命に生きれば、明日は自然に見えてくる。明日を一生懸命に生き れば、 一週間が見えてくる。 一週間を一生懸命に生きれば一カ月が見えてくる。 一カ 月を一生懸命に生きれば、 一年が見えてくる。今年一年を一生懸命に生きれば、来年 が見えてくる。その瞬間瞬間を、全力を傾注して生きることが大切だ」

そう考え、まずは日々の目標を着実に達成すべく懸命に努力を重ねていました。 はるかに高い目標を掲げながら、自分の歩みがあまりにも遅々として進まない場合、 たいていの人は目標への到達をあきらめてしまいます。ところが、私の場合には、日 の前の一日しか見ていませんでした。頑張って働くと、 一日はすぐに過ぎてしまいま す。しかし、その毎日毎日の歩みが積み重なって、かつてはとても遠かった世界一と いう目標を達成することができるのです。 あまりにも遠い道のりを歩こうと思うと飽きもするし、自分の力のなさを感じてし まい、頓挫してしまいます。遠く掲げた目標は潜在意識にしまっておいて、日の前の 一日一日を着実に歩み続ける。そうすれば、とてつもない所まで歩いていけるもので す。 そうは言うものの、地味な仕事を毎日毎日繰り返していると、だんだん張り合いが なくなつてきます。そこで私は、地味な仕事を嫌にならないコツであると同時に、地 味な努力を加速させていく方法を自分なりに考えました。それが「創意工夫をする」 ということです。創意工夫といえば一見、難しそうに聞こえますが、それは、今日よりは明日、明日 よりは明後日と、必ず改良改善を加えていくということです。同じ研究、同じ仕事を するにしても、今日はこんな方法でやってみる。明日はさらに能率のいい方法を考え ていく。私は常にそういう工夫をすることを心がけてきました。そうした創意工夫が やがては、自分でも想像できないような素晴らしい進歩発展をもたらしてくれます。 一日の創意工夫はわずかな一歩でも、その積み重ねはやがて大きな革新に至る一歩 になります。そのことは、京セラの歩みが証明してくれています。 京セラ創業当時、フアインセラミックスは寸法精度や特性を出すことが難しく、工 業用材料としては認められていませんでした。しかし、業界で最も後発で、最も弱小 であった京セラが、歴史ある先発大企業さえ尻込みした、高度なスペックの新製品や、 コストが合いそうもない難しい製品の開発に挑戦し、次々と成功させていったのです。 また、従来は想像もできなかった、新分野への応用を図り、新市場開拓にも努めまし た。 そのような京セラのチャレンジによって、今やフアインセラミックスは、人々の暮らしに欠かすことのできない工業材料として、さまざまな分野で用いられるように なっており、とりわけ最先端技術の分野で活用されています。 たとえば、世界で初めて小惑星から物質を持ち帰ることに成功した日本の小惑星探 査機「はやぶさ」のリチウムイオン電池には、強度・耐食性・耐熱性・絶縁性に優れ た京セラのファインセラミック部品が使われています。また、日本が誇るスーパーコ ンピュータ「京」の心臓部にも、京セラの「セラミックパッケージ」が使用されてい ます。 京セラが、このようにフアインセラミックス分野のパイオニアとして、産業界や科 学技術の進展に貢献することができているのも、常に創造的な仕事を心がけ、今日よ りは明日、明日よりも明後日と、限りなく創意工夫を重ねていくことで得られた成果 です。 夢の実現とは、日々の地味な努力の積み重ねによつてもたらされるものに他なりま せん。

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