全体導入でリバウンドなしの職場を目指そう
1全体導入の大きなメリット2「オキカエ・ウツシカエ」でリバウンドなし3協力してファイル基準表を作ろう4ファイリングシステム導入時のトップとリーダーの心がまえ5まずは自分から広げていこう個人の記憶よりも組織の記録
全体導入の大きなメリット本当の「共有」が動き出す効果とはこれまで個人を中心に管理の改善方法を見てきましたが、これがもしファイリングシステムとして職場全体に導入された時には、ここには書いてこなかったような、さらに大きなメリットがたくさん発生します。まず、自分はもちろん、全員の手持ちの書類が全部共有化され、机の中も上もゼロになります。職場全体がすっきりし始め、自分以外のメンバーも探し物がなくなる。自分用のファイル管理表も、所属部署としてのファイル基準表に代わり、個人PC内に保管したフォルダのデータもなくなるでしょう。徹底的な共有は、毎日の仕事の進め方にも影響します。帰宅時、机の上に一切の書類がなくなる次の日に持ち越す「やりかけ・しかかり書類」をまとめるマチつきフォルダを作ります。明日すぐに取りかかるために、いったんまとめておくのです。フォルダ名は、自分の名前を書いておきます。日中はそれを机の上で使い、帰る時には、共有スペースへ。出勤したら一番に取り出します。「帰社時も、自分の机の上に、書類が一切ない」ということが実現します。もう1つの大きなメリットは、徹底した業務情報の共有です。「やりかけフォルダ」を全員が作り、同じ場所に置いて帰るので、チームや係のメンバー、誰がどんな仕事を〝今〟持っているか、現在進行中の業務が見える化できます。これまで、「担当者が休みなので、わかりません」としか回答してなかった業務も、担当者のやりかけフォルダを確認すれば、相手をお待たせすることなく、続きの対応ができるようにもなります。急な事情で休まざるをえない場合にも、書類の場所に関していろいろ説明しなくてすむなど、緊急時も大きな効果を発揮します。組織としての仕事の質、業務効率ももちろん上がります。
「オキカエ・ウツシカエ」でリバウンドなし年度ベースで行なうのが基本ファイリングがモノの片づけと違うのは、書類は一度片づけても必ずリバウンドすることです。業務を行なう以上、常に発生し続けるため当然です。これを解決するのが、「オキカエ・ウツシカエ」と呼ばれる、文書サイクルに合わせたファイリングシステム独自の作業。ざっくり言えば、今年使っていた書類はここ、去年の書類はここ、〇年保存の書類は今年処分……と「年度」のかたまりを基本に、玉突きで場所を移動させるのです。年度切り替え時には、今まで使っていた一番便利な場所は空にし、今年度のスペースとして確保。事務所内を常に適正量に収め、快適な業務空間を保ちます。一定規模を超える企業であれば、保管庫へ移す段階で、文書管理部門の一括管轄にした方が効率がよいため「文書の移管作業」も発生。重い大量の文書保存箱、その中に保存年限別に個別フォルダを入れます。ファイル基準表とつき合わせ作業も各部署で行ないます。これを業務多忙な年度替わりの時期に行なうのでラクではありませんが、難しい作業ではなく、ルーチン化して、時間さえ確保すれば完了する作業です。会計と同じしくみで考えるファイリングシステムにそこまで手間がかけられないなどのご相談を受けますが、会計の決算作業と同じだと説明をしています。面倒でも会社を上げて決算を締め、新年度の会計は新しくゼロからスタートします。年度で締めるから、その年の収益を出せる。これをしなければ、管理がグダグダになるのは目に見えています。書類に関して、この作業をしないから、たまる一方なのです。日々の書類管理はもちろん、「年に一度の書類の締め作業は、業務の一環である」と、企業として認識することが現状から抜け出す一歩となります。
協力してファイル基準表を作ろう「とってもきれいに使いにくくしてくれた」第5章で、自分用のファイル管理表を作りましたが、全体導入する際には、これの職場全体バージョンが必要です。ファイル基準表があれば、どこに何があるのか、自部署がどんな仕事を担っているか一目で、新人でも把握できるようになります。しかし、もし自分の管理表と同じように作っても、おそらく誰も活用してくれません。理由は場所も中身も含め、すべて「わからないから」です。例えば、フォルダの名前。パソコンの納品の説明書だと自分は覚えていて「PC」というタイトルを入れても、他の人にとっては何かわからない。「【説明書】PC」にしたら、先程よりも中身が何か推測しやすい。しかし、これも利用目的が説明書を取り出すことではなく、次回購入する時のスペック参考の手がかりのためなら、「PC導入資料(○○社:型番……)2020年9月」がベターです。最適なタイトルは常に変わります。これまで繰り返し述べてきましたが、特に共有ファイルは積極的にすり合わせをしないと「とってもきれいに、使いにくくしてくれた」と言われかねません。職場全体で議論しながら、よりよいタイトルをつけていく作業が必要です。副次的効果もこんなに!また、この作業の中で、どこにあるか、なぜ置いているか、どう分類すればみんながわかりやすいかの視点で活発に議論されるからこそ、書類管理について各々が当事者意識を持つようになります。改めて書類を一覧にすることで、他係・担当者との業務上の二重管理が発覚し、仕事の流れを変更するなど、業務改善にもつながります。全仕事情報を洗い出し、視覚的に比較分類をすることで、改めて必要なコト・不必要なコトという「コトの整理」も進みます。導入過程で組織としての結束力やチームワークを築き、働きやすい環境がハード面からもソフト面からも整うことが、理想とするファイリングシステムの効果です。
ファイリングシステム導入時のトップとリーダーの心構えファイリングシステム導入の推進に必要なこと全社一括導入で一番ハードルが高いのは「人」です。業務上書類を使う人が対象なので、ほぼ全社員が対象となります。もちろん反対派も含みます。作業に取り組む中で、各部署のリーダー交代のシーンもあり、共有が進まない理由が評価制度にある場合は、制度そのものを見直す必要性が出ることもあります。だからこそ、会社として取り組むべき業務であるとトップが理解し、指示を出す必要があります。また、ファイリングシステム導入リーダーは、社内全体の指揮をとるため、かなりの業務量となります。ここでも人の問題が大きく、他部署の上司との調整シーンもあります。実際、「○○部は部長が反対していて、部内が行動してくれない」「自分たちではなく、先に部長からさせてくれ」などと言われれば難航してしまいます。もちろん、導入には個別フォルダ等の消耗品費から、什器、コンサルや研修費など、費用もかかります。トップの理解なしに導入するのが難しいのは、これらが主な理由です。ファイリングシステム導入リーダーの負担導入リーダーの業務量としては、文書管理規定の作成や法定保存年限の洗い出しから、全所属への指示、担当者との調整、スケジュール管理、研修実施、現場サポート、そして年度締め作業から、導入後のPDCAまで非常に多岐にわたります。導入リーダー自身が、ファイリングシステムを体感したことがないため、最短ルートでの導入は難しく、コンサルタントがいても大変な業務量になります。できれば、社内プロジェクトの主担経験者が望ましいでしょう。まずはトップがやる気で、導入に対して理解があること。そして、周囲からの信頼が厚く、内部調整を行なえる方が導入リーダーであること。社内導入のカギもまた、「人」なのです。
まずは自分から広げていこう一人だけ張り切って強行突破は厳禁!「ファイリング、便利!みんなでやろう!」そう熱くプレゼンするほどに、周囲は嫌がるというのが、残念ながら通常の反応です。本を読んだり、研修に参加したりして、やる気になってくださるのはうれしいのですが、周囲の人たちは同じ体験をしていないので仕方ないことだと思います。ここで気をつけていただきたいのは、絶対に強行突破しないこと。「この書類、使ってないですよね?全部捨てましょう」とやり続けると、「書類の話題を出すと空気が悪くなる」「書類の話はタブー」という状況になってしまいます。解決の糸口がなれば、今よりさらにひどい状況になりかねません。何よりせっかく取り組みたいと思ったみなさんが「やらなきゃよかった」と思うような事態になるのは避けていただきたいと願っています。相手に共感されることで本当の変化が起こるファイリングが成功する企業やチームに共通するものは何かというと、まずは同じコトに同じタイミングで触れることで熱量を共有し、みんなが一斉にやる気になること。社員研修としての取り組みがこれに該当します。そして、もうひとつ、「まずは自分から」の取り組みからスタートすることです。日頃からバーチカルファイリングを個人的に実践していたAさん。新型コロナウイルスの影響でテレワークになった際、「あの書類どこですか?という連絡をしなくてすんだのは、Aさんだけです」と言われたそうです。さらに、通常1カ月かかる監査請求の書類準備を1日で整えられたなど、効果が出ている様子を近くで見ていた職場の上司や同僚が、バーチカルファイリングに興味を持ち始めたとのこと。社内で個別フォルダが広まって、アドバイスを求められるようになったそうです。一方的な「捨てよう」は相手を否定することにもつながりかねません。「まずは自分から」が、みんなが気持ちよく仕事ができる環境づくりの基本です。
COLUMN7個人の記憶よりも組織の記録ファイリングシステムとは、「組織体の維持発展のために必要な文書を、その組織体のものとして、必要に応じ即座に利用しうるように組織的に整理保管し、ついには廃棄するに至る一連の制度のことである」(『五訂ファイリングシステム』三沢仁、日本経営協会総合研究所)と定義されています。人は、日々の様々な出来事から経験を得て、日々活かしています。特に意識せずとも、必要な時に活かされるのは個人の記憶だからです。同じく、組織も1つの「組織体」として考えた時には、社員の日々の出来事を組織の経験値として積み上げ、成功も失敗も次へ活かしていくことが必要です。ファイリングシステムとは、それを叶えるため、各々の業務を文書にして記録し、誰もがいつでもすぐに利用できる状態で共有し、かつ効率的な業務環境を整えるために廃棄までに至る文書管理制度であると私は考えています。ファイリングシステムは、戦後アメリカから導入され、日本企業・日本の発展のための必須のインフラとして考えられ、三沢先生をはじめ多くの先人のご尽力で、日本企業に合うよう独自発展を遂げました。なのに、なぜ今、まだ多くの方がまだ書類に悩んでいるのでしょうか。専門性・希少性ゆえに情報が少ない、業務効率化と情報活用という両方の真の価値が伝わりきらない。アプローチ不足という点では、私自身、非常に歯がゆいのですが、今、現場で感じるのは、「ファイリングシステム導入=社内一丸となって一気に行なうプロジェクト」であり、ハードルが高いこと。「ファイリングシステム」の専門書もありますが、導入リーダー向けの解説であり、誰かがやる気になっても、なかなか行動に移せません。そう考えた時、本書は「ファイリングシステム導入時、全社員向けに説明する内容をまとめた基本」に該当する内容です。この通り管理されていれば、もし今後、導入が決定しても、ほぼ作業は発生しません。個人のファイリングを整えることは、確実な準備となり、導入時の負担を確実に減らすことができると考えています。
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