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プロローグ段取りは「気持ち」の問題でもある

「段取り」とは、仕事を手早く進める力だ────────

まえがき

段取りができない人が増えている。いや、「段取り」という言葉の意味すら知らない人が増えていると言ってもいいだろう。段取りができなくて、仕事と時間に振り回されている人。

目の前の仕事に一生懸命で、“次”に何をやればいいかが見通せていない人。いまひとつ“手順”が悪い人。──私は、そんな人のためにこの本を書こうと思った。

私は決してエリートビジネスマンだったわけではない。ただ、いろいろな仕事をしていく過程で、「手早く、正確に」作業を進めることを覚えていった。先輩の仕事を見て覚えたこともあるし、直接指導されたこともある。

そうやって、私の「段取り力」は鍛えられていった。その結果、とくに際だった技術はなくても、仕事をきちんと進められるようになっていったのだ。

私は多くの企業の業態改革から人材開発、新規事業の推進サポート、市場調査や商品開発のサポートまで、さまざまな仕事をしている。

いわば「ビジネス・プランナー」である。ただ、最初からこういうコンサルティングの仕事をしていたわけではない。もともと私は、雑誌などのアートディレクションをしていた。

今のようにパソコンのない時代だ。紙、ペン、定規……そういった小道具を駆使しながら、手作業で仕事を進めてきた。それぞれの記事のデザイン、レイアウト、文章……それらが次々と仕上がってくる。

私はそれをまとめて整理する立場だった。予想通り仕上がってくれば、私の仕事もスムーズに進む。しかし仕事にトラブルはつきものだ。

そんなときどうすれば臨機応変に対処できるかを、私は現場で覚えていった。そういう細かい作業は、手順を間違うと最初からやり直し、ということもよくあった。

パソコンなら簡単に手直しができるが、手作業の時代は訂正も大変だ。だから、ミスのないように、しかも手早く仕事を進める技術を自然と覚えていった。それが今の私の「段取り力」につながっている。

* いい仕事ができる人には、必ずと言っていいほど「段取り力」がある。

私は、仕事の基本は「早い、安い、うまい」だと思っている。

要するに、スピーディーに、コストを最小限に抑えて、完成度の高い仕事をする──ということだ。

いくら手早くやっても、ミスが多かったり出来上がりがいまひとつだったりすると、それは“いい仕事”とは言えない。評価も低いだろう。

さらに、いい仕事は“仕上がり、出来上がり”をイメージしていないとできない。つまり、今自分がやっている仕事の先に、どんなゴールがあるかが見えていないと、今の仕事の意味もわからない。

行き当たりばったりでは、ミスを増やすだけだ。完成度も低い。段取り力がある人は、常にゴールをイメージできている。

だから何かのトラブルや思いがけないことが起こっても、「このときは、こう対処する」というように、素早い行動が起こせる。

たとえゴールまでの最短距離を進むのがむずかしい場合でも、すぐに別のルートを探し出すことができる。

また、仕事は一人ではできない。いろいろなスタッフの協力があって初めて、スムーズに仕事が運ぶ。

部下や上司だけでなく、他部門、外注スタッフ……そういう人たちが力を最大限に発揮したとき、素晴らしい仕事が出来上がる。

いわば段取り力は、ビジネスマンが仕事を進める上で、周囲と自分をマネジメントするときの必須の力でもあるのだ。

*「段取りぐらい、きちんと立てろ」 と先輩や上司に言われて、何のことやらわからない人も多いだろう。

では、段取りという言葉には、そもそもどんな意味があるのだろう。もともと、この言葉は、歌舞伎などの役者が舞台で演目を行なうときに用いた。

○だんどり【段取り】

芝居などで、筋の展開や組み立ての仕方。ものごとを行なう順序や手順。また、その準備。「式の─をつける」 事を運ぶための順序。事がうまく運ぶように、前もって手順を整えること。手はず。心構えをすること。(「広辞苑」などより)

このように段取りという言葉は、総じて事前の準備のことに使われる。たとえば大工などの職人さんたちが作業の工程を立てるときに、段取りという言葉は使われる。

ビジネスマンでも、スキルやシステムなどといったカタカナ用語だけではなく、「段取り」という日本語の意味を理解し、いい仕事をするための技術を身につけてもらいたい。

要するに段取り力とは、計画性でもあり、仕事を整理していく力でもあるのだ。

* 人の感情や体調には波がある。いいときも、そうでないときもある。自分に対しても周囲に対しても、その波を見ながら仕事を進めていく工夫がいる。

元気なときは何でもないことが、疲れているときにはうまくいかないということがある。たとえ楽しいことをしても、いまひとつ調子が出ないことさえあるのだ。

私の経験から言うと、そういったときには必ずと言っていいほどミスをしでかす。健康で冷静なときは無意識に身体が反応して、何かが起こる前に手を打つことができるだろう。

しかし、イライラしているときや体調の悪いときは、判断力も鈍る。プロローグ、第 1章でも触れるが、段取り力と決断力は、切っても切れない関係にある。

ともあれ、そんな“波”や気分に左右されないためにも、段取りはある。何かを始める前に、自分や周囲の調子まで想定して、事前の準備をしよう。これが、あとで効いてくる。しかし、段取りをむずかしく考える必要はない。

たとえば、買い物をするときの買い物リストをつくる──というふうに捉える。買い物に行って、何を買えばいいかわからなくならないように、行く店と買うものを決める。これも立派な段取りだ。旅行の計画と捉えてもいい。

どんな旅行に何人で行くか、予定は、コースは、どこに泊まるか、目標・スケジュールは……というように、旅行に行く前に、その旅行を計画する。

これも段取りだ。ところが、仕事になると何か特別な段取りがあるかのように思ってしまう。もっと気楽に考えてほしい。

なお、この本はボールペンやマーカー、付箋を持って読んでほしい。

「おっ! これは使える」 という箇所はアンダーラインを引いたり、付箋を貼って、すぐに見返すことで、情報を自分の中に取り込んでほしい。ノートやメモ帳に抜き書きするとさらに効果があるだろう。

私もそうやって、いろいろなものを自分の身体の中へ染み込ませていった。

この本が、アンダーラインや付箋だらけになるよう、私なりに、段取りのノウハウを目いっぱい書き込んだ。

本書が、段取りの基本を身につけるための手助けになることを願っている。

二〇〇九年一〇月坂戸健司

プロローグ

目次

段取りは「気持ち」の問題でもある

いい仕事をするためには、スムーズに仕事を進める必要がある。段取りよく進めばトラブルも減る。心地よく仕事ができるのである。

1 楽しく仕事をするために段取りがある

■気持ちよく楽しく仕事をするために段取りをする

段取り力は表面的なテクニックではない。仕事を進めるためのルールである。仕事を走らせるために道筋を整備する、という捉え方でもいい。

仕事の進め方には、ルールがあったほうがラクだ。だから段取りを立てておくと、頭の中もすっきりする。ここから先にやるべきことが、しっかり見えてくるからだ。あなたは仕事をするとき、どんなことを考えるだろうか。

  • □焦ったり慌てたりしないで、落ち着いて仕事をしたい
  • □効率的に仕事をしたい
  • □できればラクに仕事をしたい
  • □仕事で達成感を味わいたい

このことからもわかるように、人間は気持ちの動物だ。気持ちが乗らないと、いい仕事はできない。

「段取りは気持ちの問題だ」──というと、何か身も蓋もないようだが、モチベーションとかやる気、と言い換えてもいい。

たとえば仕事に追われていると気持ちは焦る。逆に仕事の手順をあらかじめ立てて、それに沿って仕事を進めていけば、気持ちがぶれることも少ない。順調なスピードで仕事が進むと気分も爽快。

一日の始まりも、「よし、これをまずやって、次は協力会社との打ち合わせ。夕方は、明日の資料を用意しよう……」 という具合に先が見えていれば、気持ちは前へ向かうことができる。

段取りは、余裕のある心をつくり出せるのである。仕事に追われている人は、ほとんどと言っていいほど段取りができていない。

私もかつてはそうだったからよくわかる。

段取りは、仕事に取りかかる前にさまざまなことを予測し、予定を決め、何をいつまでにどうするか、時系列でスケジュールに落とし込んでいく作業だ。

しかし、単にスケジュール通り仕事をやる、計画通りに仕事を進めるということが段取りではない。

段取りを立てる上でまず大切なことは、仕事に関わるすべての人の気持ち、相手の都合も考えるということだ。

いい段取りは、一人ではできない。スタッフの気持ちや都合を考え、「報・連・相」を仕事の中に組み込んでいくことが大切になる。

会社は軍隊ではない。仕事の進め方が自分に合わなければ、その会社から去っていくのも自由だ。上司とそりが合わないと去っていくのも、当然の権利と言える。

だからこそ仕事に関わる人の気持ちを大切に思い、参加するメンバーの力を統括することも重要になる。それは新入社員であろうと中堅であろうと、同じである。

たとえば確認事項はリストをつくり、定例会議、朝礼のあとや週の始めに確認をするといいだろう。考えてみてほしい。突然、上司から“今日中”の仕事を頼まれたら、あなたはどんな気持ちになるだろうか。

そういう上司には、段取り力が欠けている。会社は団体戦である。仕事に関わるすべての人の気持ちを束ねることで、組織としての力は高まる。

人の力を結束するためにも、モチベーションを高め、無駄のないスケジュールのもとで仕事をしてもらう。これこそが、今の時代に最も必要なことかもしれない。

仕事をスムーズに成し遂げるためには、まず周囲のモチベーションを上げるということが大切なのだ。

■段取りには、継続する心と平常心が必要だ

段取りを立てると、不思議と気持ちが落ち着いて安心することができる。さらに、段取りよく仕事を進められると、簡単にできそうなラクな気分になる。同時に、やる気も湧いてくる。これがモチベーションだ。

たとえ「根拠のない自信」でもかまわない。

まだできてもいないことが、「これならできるかも……」となり、「いや、大丈夫、できるよ!」と、自分にも言い聞かせられるようになる。

これが実は、段取りを立てることの最大の効果かもしれない。では、段取り力はどうすれば身につくのだろうか。この本では、そのためのヒントをいくつか提示する。

だが忘れないでほしいのは、一朝一夕に身につくものではない、ということだ。一見、無駄とも思えることをやってこそ、段取り力は身についていく。そう、体験が段取り力を育てるのだ。

まずは一年、そして三年、次に五年、と一歩ずつ確実に段取り力を身につけていく気持ちを持つことが大切になる。

段取り力を身につければサクサクと仕事をこなせるようになるが、それまでの道のりは一歩ずつ階段を昇るようなものである。一足飛びに一〇段も二〇段も昇っていくようなことはできない。

仮にできたとしても、それはその場限りのものであって、身についた段取り力ではない。

段取りは、作業を分解するということでもある。

焦らずに段取り力を身につける気持ちがあれば、その分解の方法が次第に見えてくる。

気持ちが焦ると段取りも狂ってくる。いちばん厄介なのが、自分の気持ちが平常でないときに立てた段取りだ。

気持ちが焦っているのだから、段取りもいつもと比べると、どこか微妙にずれが生じている。建物でたとえれば、設計段階でミスをすることと同じである。

設計にミスがあるのだからその通りに建てれば、その建物は不具合のある建物になる。段取りを立てるときに最も注意すべきなのは、平常心を保つことだ。そこで、平常心になれる方法を紹介したい。

まず、呼吸を整える。

スポーツや武道を経験した人は理解できると思うが、しっかりと呼吸をし、酸素を体の中に取り入れることで、気持ちは次第に落ち着いていく。おなかを膨らませて行なう腹式呼吸を身につけよう。

■気持ちの整理も「段取り力」だ

気持ちの整理をするために、私は今の自分の中にある思いや、やりたいこと、気になることなどをすべて箇条書きで書き出すようにしている。

白い紙に書き出したことを見返すと、気持ちは落ち着いてくるはずだ。あとは書き出したものへの対策や、それを実現するために準備すべきこと、やるべきことを書き出す。

焦ったときにはこの方法で、気持ちの整理をするといい。

2 ガント・チャートで時間と頭を整理する

■頭の中の整理をする

「ガント・チャート」というものがある。仕事やスケジュール管理のための帯状グラフのことだ。横軸に時間、縦軸に作業内容を配したものである。

このガント・チャートを段取りに活用すると、頭の中を整理するのに便利だ。ガント・チャートに納期や工程などのメモをしておく。

その一覧表を常に見て“今”の状態と“これから”のことをどうするか考える。このチャートに書かれていることをいかに進めるかを決める(考える)ことが、段取りと言ってもいいだろう。

■時間の整理をする

さらに、手帳などのスケジュール表を見直す。そして、記されている無駄なことや、工夫すれば短縮できたり先延ばしできるものがないかを確認する。

これは、時間のやりくりを前倒ししてイメージするということでもある。

その上で、

□落ち着く方法

□気持ちの整理

□頭の中の整理

□時間の整理

という“標語”を机の前などの目に見えるところに貼り出しておき、まずは、平常心を持って段取りを立て、事に当たるようにするといいだろう。

3 段取りは周囲のためでもある

■周囲の協力があれば段取りよく進む

仕事は一人ではできない、ということはすでに述べた通りだ。周囲の人の協力があって初めて、いい仕事ができる。

ということは段取りも、周囲の人のことを考えながら立てなければならないだろう。そもそも段取りの要素には、以下のようなものがあげられる。

  • 事前準備
  • 仕事に対しての心構え
  • 工程づくり、スケジュール管理
  • 未来の予測とその対応策
  • 関係者への根回し
  • 周りの人との連携・報告・連絡・相談
  • アクシデント対策
  • 仕事始めと終わりのミーティングなど
  • 最後の締めくくり、片づけ、後処理

前半部分は、よく言われていることだろう。しかし、 以降は意外と見過ごされがちである。

つまり、事前準備やスケジュール管理と同じぐらい、関係者とのコミュニケーションが重要になるということだ。

周囲に気を配ることも、段取りの一部である。また、 のアクシデント対策も重要である。このとき、「最悪を想定して最善を尽くす」という心構えがポイントだ。

私はこれが、段取りの究極の心得だと思っている。そのことが、心の余裕にもつながるのである。これは決してマイナス思考なのではない。どんな不測の事態が起こっても対処できるようにしておく、ということなのだ。

■失敗の経験も段取りに活かす

段取りは、裏を返せば時間を有効に使うということだ。無駄な時間はできるだけ減らす。

そのためにも、まず事前にしっかり準備することが必要になるわけだが、そのときにあらゆることを想定しておくのである。想定するためには、日頃からの訓練が必要だ。

  • まず、今までの失敗を記録し、記憶する
  • 失敗の原因を書き出す
  • 書き出した原因のうち、いちばん大きな原因を見つけ出す
  • その失敗の原因を取り除く方法、対策を考えて書き出す
  • 次回同じようなことが起こった場合の注意点を書き出して、見えるところに貼り出す
  • その注意点や対策、戒めを口に出して覚える
  • 自分にその戒めを言い続ける

このように失敗の経験を活かすということからスタートして、段取りを立ててみる。なぜ、そういうミスや失敗をしたかを分析してみると、意外とベストの対策が見つかるものである。周囲との連携も、失敗を活かすことによってスムーズに進むようになるはずだ。

■周囲の状況を察知する力も段取り力だ

空気を読めないと言われる人は、その場にいる人の気持ちを察することができない。たとえば社内の営業マンが五、六人で会議をしているとしよう。

一時間の予定で会議を始めたが、長引いてしまっている。そのときにリーダー格の人は、話に熱中している。

他のメンバーの一人が時計などをチラッと見ている──といった状況のときに、あなたはどういうことをすればいいのだろうか。

  • □会議を改めて開くことを進言する
  • □みんなの、この後の予定を聞き出し、時間が取れるようであれば、あと一〇分 ~二〇分と時間を決めて、会議を締めくくる
  • □少し休憩して、リフレッシュのための飲み物を買ってくる(持ってくる)

これらの選択肢を思い浮かべて、リーダー格の人に話してみる。

こうした、周りの人の状況・状態を察知すること……つまり「気配り」は、段取りを立てるために必要な力だ。

一見、関係なさそうだが、仕事はみんなでやるものである以上、周囲に目を配ることも、段取りを立てる際には重要な要素になる。

周囲の状況を察知する力が持てるかどうか──。察知力と言っても漠然としているが、要はコミュニケーション力である。良好なコミュニケーションを保つには、さまざまなアプローチがある。そのすべてをここで紹介はできない。

しかし一つだけポイントをあげれば、「相手の話をよく聞く」ということだろう。話を聞けば、自分の立ち位置もわかってくる。良好なコミュニケーションは、そんなところから生まれるのである。

■段取りは一人ではできない

仕事をスムーズに進めるために、コミュニケーションは最も大切な要素となる。そのことと段取り力は、厳密には分けて考えるべきかもしれない。

しかし私は、あえて「コミュニケーション力」と「段取り力」を同じものと考えるようにしている。いわば段取り力とは、仕事をスムーズに進めるための総合力でもあるのだ。

たとえば、相手の状況を見てこちらから話しかけたりする。あるいは逆に、じっくり話を聞く。これらはケース・バイ・ケースで、一概に「これだ!」とは言えない。

しかし相手も生身の人間である。笑顔で話しかけたり、きちんと挨拶するだけで、印象はずいぶんと違ってくる。一人で仕事を完結させられるのなら、コミュニケーションなど必要ないだろう。

しかし仕事は、どこかで人の力を借りなければならない。そのことを改めて肝に銘じておこう。たとえば、会社で営業や開発ミーティングをするのは、何かやるべきことを全体で決定するためだ。

そして、それをいかに組織で進めていくか、という段取りの詳細を決めるためでもあるのだ。

新商品を開発する場合、「商品名」、「いつ」「どの」「製造ライン」でつくり、「どの」営業部隊が中心になって販売していくか。

また、その「販売方法」や「キャンペーン」にはどんな方法があるか……を話し合う。そのためのベストの方法と手順を考え、相談する力──それが「段取り力」である。

4 ベストの手順と方法を考える

■仕事には必ず“期限”がある

今、段取りのポイントはコミュニケーションだと書いた。しかしコミュニケーションだけでは、いい段取りはできない。

段取りのもう一つのポイントは、「工程管理」「スケジュールの調整」だろう。

簡単に言ってしまえば、短時間で一定の効果をあげるための手順と、そのためのベストの方法を考えることである。

どんな仕事にも、「何日までに」とか「何日以内に」といった“期限”がある。この期限を過ぎてしまったら、段取りは失敗したことになる。

段取りは、常に「時間」を意識するところから始まると言ってもよいのだ。このとき大切なのが、「結果を予測する」ということである。

何かをするときに最終の形、結果をイメージすることで、すべてが終了するまでの工程も見えてくるし、スケジュールの調整をどのようにすればよいかもわかる。

結果的にその仕事は、スムーズに進むようになるだろう。仕事ができる人は、常にこの「最終形」をイメージしながら目の前の仕事を片づけていく。だから一見忙しそうでも、きちんと期限に間に合う。

  • いつ仕事を始めるのか
  • いつまでに片づける(終わらせる)のか
  • どういう順番でやるのか どういう方法でやるのか
  • コストはいくらかかるのか 誰とやるのか(人員調整)
  • どこでやるのか

仕事をスタートさせるとき、段取りのよい人はこれらの項目を瞬時に考える習慣ができている。同時に、目指すべきゴールも見据えている。

注意すべき点や、起こりそうなトラブルまで想定している。もちろん、大まかなスケジュールも組み立てられている。場合によっては、これまでにあった参考になる事例も頭に浮かんでくる。

つまり、手順を考えるということは、先を見渡せるということでもあるのだ。

いくつもの仕事を並行してやっていたり、とても間に合いそうもないスケジュールでも最終的にきっちり仕上げてくる人がいる。

私が新米デザイナーだった時代にも、そういう“先生”がいた。おそらく先生の頭の中には、手順と最終形がイメージされていたのだろう。

もっとも、世の中そういう“できる人”ばかりではない。だからこそ、先にあげた一定の手順と方法を愚直に考えることが必要になるのだ。

次の図は、これまで説明したことをまとめたもの。いわば、「段取りよく仕事を進めるための行動プラン」である。段取りがよくできない人は、このステップを一つずつ、つぶしていけばよい。

結果として、このような手順を踏んで行動することで、漏れやミス、コミュニケーションのトラブルを防ぐことができるのだ。

■臨機応変さも大切である

すでに述べたことだが、仕事はなかなか思い通りには進まない。あらかじめ決めた手順通り、何のトラブルもなく進むのが理想だが、仕事にトラブルはつきものだ。

かと言って、しょっちゅうトラブル処理をしているようでは、いくらトラブル処理が上手にできても本当の段取り上手とは言えない。

ミスやトラブルのないように、どう手順を決めるか。そして繰り返すが、最悪の事態を想定して慎重に仕事を進められるか──ここが大きな分岐点になる。

そのためには、ときには手順を変える臨機応変さも必要だ。ただしそれは、あくまで途中の道筋を変えただけのものであるべきだ。

つまり、方法や手順が一時的に変わっても“ゴール”は変わらない──これが原則である。だから常に、途中でチェックすることも必要になる。

もちろん、手順(仕事の順序)は変えないのが望ましい。段取りが悪い人は、「どういう方法でやるか」ばかり考えて、「何をどういう順番でやるのか」を考えない。

だから途中でメチャクチャになるのだ。いわば、頭の中にシナリオ(ストーリー)を描けているかどうか、ということである。

そしてそのストーリーは、シンプルなものであることがポイントだ。ストーリーがシンプルであれば、臨機応変に手順を変えても混乱は少ない。

ここで大切なのが「優先順位を決める」ということだが、これは第 1章(『 2優先順位をどう決めるか?』)で詳しく説明する。

ここではとりあえず、優先順位を決めることの大切さを認識してほしい。同時に、「何をやらないか」「何を捨てるか」ということも決めるようにする。

これも『 3やるべきことと、やらないことを決める』で説明したい。優先順位がつけられ、仕事の手順が見えている人は、仕事の全体像も見えている。

目先の「作業」に追われているようでも、その作業が仕事全体の中でどういう位置づけになっているかを、きちんと把握している。これが「段取り力」なのである。

5 段取りは情報収集力で決まる

■情報収集ができれば段取りは半分終わっている

段取り力とは総合力である。ということは、ビジネスにおいて重要な要素でもある「情報収集力」も段取り力の一部と言える。

スムーズに仕事を進めるには、白紙の状態でスタートしてはいけない。集めすぎてもよくないが、最低限必要な情報を収集しておかないと、手順通りものごとが進まない。

たとえば何かのプロジェクトを推進するときには、プロジェクトのテーマ、コンセプトから、納期、終了予定日、参加メンバーや協力会社、執行役員、かけていいコスト、諸経費など、社内で入手可能な情報、そのプロジェクトが成し遂げるテーマの重要性、競争相手である競合他社の情報、市場規模……などのマーケティングデータを、ざっと入手するのだ。

いわば「事前準備」である。

この段階で、漠然とでもいいから「やるべきこと」が見えてきたら、段取りは半分終わっていると言ってもよい。

情報収集で注意する点をまとめてみた。自分の憶測を捨てて確認する“うろ覚え”は駄目。「たぶん……だろう」というのもよくない。うろ覚えのものは再確認(ダブルでチェック)するという考えを持つ。

自分で情報を収集・確認する情報収集を人任せにすると、段取りの精度は上がらない。自分の感性を働かせて情報を集め、それをもとに段取りを立てる。常に最新情報を集める情報は鮮度が命。

仕事がスタートしたら、逐次現場の最新情報を仕入れて、それをもとに段取りをブラッシュアップしていく。

■テーマとコンセプトは明確にしておく

そしてこれは、とくに新しいことに挑戦したり、四 ~五人以上でプロジェクトを推進するチームに必要なことだが、テーマやコンセプトを明文化するということも大切だ。

場合によっては、このコンセプトをキャッチコピーにする。言葉にすることで、参加メンバーがゴールをイメージできるようになる。

「二月末日までに新商品のアイデアを形にする!」 ──というような感じでいいだろう。

キャッチコピーにするのがむずかしいなら、キーワードをいくつか並べたものを工程表やスケジュール表のタイトル横に表記する。

これでメンバーの“ブレ”が防げる。もちろん自分自身でも方向性を確認できる。段取りに限らず、情報の発信と受信はわかりやすくシンプルにすることがポイント。

「そうか! それでいこう」 というキャッチコピーが決まれば、チームも活気づくし、段取りもスムーズに進む。

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