1 入社日は結婚記念日入社当日が大切
~パート・アルバイトが初日で辞める理由とは ~
「入社当日」は、言ってみれば結婚記念日。「これから、一緒に、頑張りましょうね」と、お互いが気持ちを確かめ合い、約束をする節目の日です。
相思相愛マネジメントにおいても、入社当日はとても大切です。入社当日の過ごし方次第で、採用したパート・アルバイトの定着や成長が決まると言っても過言ではありません。
採用の通知を受けた応募者は、うれしさと同時に、これから始まる新たな仕事や人間関係に、不安を抱いているのも確かです。
「不安な気持ち」を解消させつつ、「採用されてうれしい」「これから新たな職場で頑張るぞ」という前向きな気持ちを、より大きくふくらませ、持続させる。これが、パート・アルバイトを戦力化する入社時点でのポイントです。
ところが、パート・アルバイトの採用担当者と話していると「せっかく採用したアルバイトが、初日だけで来なくなっちゃったんだよね」というケースが少なくないようです。
一週間で辞めてしまった、などという話もよく聞きます。その理由の多くは、パート・アルバイトが「辞めない」面接方法でも触れたように、「思っていた職場や仕事と違ったから」です。もちろん「違った」内容はいろいろです。
例えば「思ったよりきつい仕事だった」「職場の雰囲気が自分に合わなかった」「仕事をきちんと教えてくれなかった」「自分の居場所がなかった」「なんとなく怪しげな雰囲気だった」「雇用契約を結ばない」「まだ仕事が終わっていないのに、タイムカードを打刻させられた」といった具合です。
要するに、「うれしい気持ち」と「不安な気持ち」の両方を携えて入社したものの、入ってみたら「不安な気持ち」が増幅される結果になった、ということです。
【事例】初日の対応で辞めようと思ったわけ ~事務パートの場合 ~
「事務職で採用になったパート先を、一週間で辞めたことがあるんです」 三〇代前半の女性が、大変な剣幕で話し始めました。彼女が入社したのは広告会社。
時給や通勤時間などの条件に多少の不満はあったものの、あこがれの業種であり、「ここで頑張ろう!」と思ったといいます。それなのにたった一週間で辞めてしまったのは、新人を受け入れる体制があまりにもひどかったからです。
例えば入社当日、総務事務として入社したにもかかわらず、彼女の机は用意されていませんでした。総務の仕事は、机なくしてはできません。
「私は仲間に歓迎されていないのかしら」。彼女の心は、不安でいっぱいになったといいます。結局彼女の机が入ったのは、勤務開始後四日目でした。
しかも引き出しを開けてみると、最低限の事務用品もそろっていないどころか、以前の持ち主の私物がいろいろ出てくる始末。彼女は、「こんな失礼なことはない」「これでは先が思いやられる」と、あっさり辞めてしまいました。
入社前の準備
パート・アルバイトとはいえ、採用に至るまでには会社側に、お金や時間や労力など多くのコストがかかっています。苦労してようやく採用した人に、初日あるいは一週間で辞められてしまっては、会社としては大変な持ちだしです。
そんな結果にならないよう、また、入社当日を今後の戦力化に向けた第一歩にするためには、事前の準備が大切です。当日になって不備や不手際が多く起こるようでは、先ほどの例のようにパート・アルバイト本人が、不安になったり軽んじられた気持ちになってしまいます。
これでは、モチベーションも下がって当然です。難しいことをする必要はありません。大事なのは「ウェルカム」の気持ちが伝わること。
例えばロッカーなどに、新人パート・アルバイトの名前を記入しておくだけで、「歓迎」の気持ちは伝わります。とはいえ、店長や正社員など、新人パート・アルバイトを迎える側は、日々、日常業務に忙殺されているのが現状でしょう。
「ユニフォームが届かず、初日なのに仕事に入ってもらえない」といったうっかりミスは、多発しがちなのが現実です。そこで入社前の準備として、具体的にすべきこと、したほうがよいことを、チェックリスト化してみました。
いちいち「何をすればいいんだっけ?」とか「あれはやったっけ?」など一から考えるのは、時間の無駄でしかありません。リストは、さまざまな業種を想定し、網羅的に作成しています。
これをもとに、自社に不必要なものを削ったり、必要な項目をさらに加えて、オリジナル・チェックリストに、カスタマイズしてください(以降のチェックリストについても同様です)。
●「うっかりミス」を防ぐ入社前準備チェックリスト
- □労働条件通知書(雇用契約書)の用意
- □給与振込先申告書の用意
- □通勤交通費申告書の用意
- □業務マニュアルの用意
- □就業規則の用意(設置場所の確認)
- □ユニフォームの準備(サイズの確認)
- □社章、名札、 IDカードなどの準備
- □机の確保と清掃
- □文具等の準備
- □パソコン等の準備( Eメールアドレスの取得)
- □ロッカーの確保と名前の記入
- □タイムカードの準備
- □職場の仲間に「明日 ◯◯さんが入社」と伝えておく
- □近い部署のスタッフに「明日新人が入社する」と伝えておく
2 「入社当日にすべきこと」と雇用契約
入社当日にはうれしさと「これからよろしく」の気持ちを表現する
入社当日、最も大切なのは、「新しい仲間である“あなた”が来てくれてうれしいですよ、あなたを歓迎していますよ」という気持ちを、新人パート・アルバイトにきちんと伝えていくことです。
こうした気持ちを表現するのにはコツがあります。第一のコツは、何といっても笑顔で応対することです。笑顔は、受容のサインです。笑顔で迎えてあげるだけで、相手は安心するものです。
第二のコツは、「歓迎」の気持ちが、採用担当者や上司だけでなく、先輩パート・アルバイトも含めた職場の全員のものであることを、伝える工夫をすることです。
例えば朝礼等で紹介する場合、新人のあいさつが終わったら、上司が率先して拍手します。それにより自然と、職場に拍手が沸き起こります。
「歓迎」のムードを、上司が自らリードして作り上げていくのです。そのほか、入社当日にすべきこともチェックリスト化しました。自社に必要なものを選び、事前準備に役立ててください。
●「入社当日にすべきこと」チェックリスト
- □労働条件通知書の交付(雇用契約の締結)
- □雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入手続(該当者のみ)
- □必要書類の提出(給与振込先申告書、通勤交通費申告書など)
- □職場案内(タイムカード、トイレ、給湯室、更衣室、コピー機等の位置など)
- □メンバー紹介(上司、仲間)
- □関連部署紹介(日ごろ顔を合わせる人たち)
- □座席の確認(本人、上司、仲間)
- □就業規則の説明
- □職場の決まりや慣習などの説明(お茶の飲み方、昼食の取り方など)
- □今後のスケジュールの説明(導入教育・研修、実際の仕事の開始など)
- □次回出社日の行動、持ち物等の連絡
確実な信頼関係を築くために
もう一つ忘れてはならないのが、労働条件通知書を交付して、雇用契約を結ぶことです。雇い雇われる、つまり「雇用関係」にあることを、パート・アルバイト本人と約束します。
「え、パート・アルバイトに雇用契約が必要なの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。もちろん、必要です。パート・アルバイトも労働者であり、当然、労働基準法が適用されます。また、雇用契約を結ぶ際には、正社員同様、労働条件通知書を交付して、労働条件を明らかにしておく必要もあります。労働条件通知書は、ハローワークなどで入手できます。
労働条件を明らかにした雇用契約が大事なのは、法律で定められていることはもちろんですが、それだけではありません。それ自体が、働く側にけじめを感じさせ、「きちんとした会社だな」との印象を与える効用をもつからです。
これがパート・アルバイト本人の「私もしっかり頑張らなくちゃ」「ちゃらんぽらんではいけないな」という意識付けにつながります。また、上司も「ちょっとぐらいいいだろう」などと甘えることなく、労働条件に則った雇用管理をすることとなります。
雇用契約の結び方と明示しなくてはならない労働条件
雇用契約は、労働条件通知書を交付することで代替できますが、その空きスペースに雇用契約欄をオリジナルで設け、パート・アルバイト本人に署名捺印してもらうなどしてもよいでしょう。
なお、雇用契約を結ぶ際会社側が、労働者側に「明示しなくてはならない労働条件」があります。これは、労働基準法及びパートタイム労働法により、定められているものです。このうちパートタイム労働法で定められているものは、パート・アルバイトに対してのみ、明示することが義務づけられています。
ちなみに、このパートタイム労働法の対象となるのは、「フルタイム正社員より短い時間働く労働者」です。社内における呼称が何であれ、関係ありません。
つまり、パートだろうが、アルバイトだろうが、契約社員や嘱託であろうとも、自社のフルタイム正社員より所定労働時間が短ければ、パートタイム労働法の適用対象者となります。
明示しなければならない労働条件は、具体的には、以下の ~ の各項目です。ちなみに、項目の下に ◎印があるものは、労働基準法上の明示事項です。
〇印があるものは、パートタイム労働法上の明示事項です。
また、 ☆印の項目は「必ず“書面で”明示しなくてはならない事項」、 ★印の項目は「必ず明示しなくてはならない事項(できる限り書面により確認すること)」、 ▲印の項目は、「制度を設ける場合に明示しなければならない事項(できる限り書面により確認すること)」となっています。
労働契約(雇用契約)の期間 ◎ ☆
就業の場所、従事すべき業務 ◎ ☆
始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を二組以上に分けて就業させる場合(交替制など)における就業時転換に関する事項 ◎ ☆
賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金、賞与その他これらに準ずる賃金を除く)の決定、計算、支払方法、賃金の締切と支払の時期 ◎ ☆
退職(解雇の事由を含む) ◎ ☆
昇給の有無 〇 ☆
昇給(有無を除く昇給時期や昇給基準等) ◎ ★
退職手当の有無 〇 ☆
退職手当(有無を除く支払い基準や支払い方法等) ◎ ▲
賞与の有無 〇 ☆
臨時に支払われる賃金、賞与(有無を除く支払い基準や支払い方法等) ◎ ▲
労働者に負担させる食費、作業用品などに関すること ◎ ▲
安全・衛生 ◎ ▲
職業訓練 ◎ ▲
表彰・制裁 ◎ ▲
災害補償・業務外の傷病扶助 ◎ ▲
休職 ◎ ▲
なお、 ☆印(必ず“書面で”明示しなくてはならない事項)のうち、労働基準法で定められている ~ の五つについては、これに違反すると三〇万円以下の罰金に処せられます。
一方、 ☆印のうち、パートタイム労働法上の明示事項である については、これに違反した場合、過料一〇万円に処せられます。なお、この三つについてはパート・アルバイトが希望した場合、ファクスや Eメールでの交付も OKです。
ちなみにこの は、二〇〇八年四月の改正法施行により、新たに「書面を交付して明示しなければならない労働条件」に定められました。
つまり、労働条件の書面での明示義務項目に関しては、パート・アルバイトは正社員以上に強化されたということです。パート・アルバイトは、フルタイム正社員に比べて働き方が多様であり、結果、労働条件も正社員に比べ不明確になりがちなことに対応しています。
雇用契約の期間をどうするか ~二種類の雇用契約 ~
さて、書面で明示しなくてはならない労働条件の最初にも「労働契約の期間」が来ていますが、この労働契約つまり雇用契約の期間について記しましょう。
雇用契約には、二種類あります。「期間の定めのない」雇用契約と、「期間の定めのある」雇用契約です。
「期間の定めのない」雇用契約とは、要するに定年までの契約のことで、一般的に正社員と呼ばれる人は、こちらの契約を結んでいます。一方「期間の定めのある」雇用契約とは、六カ月や一年など文字どおり期間を決めた雇用契約です。
いわゆる契約社員と呼ばれる人たちは、この契約のもとで働いている人たちです。パート・アルバイトの場合、雇用契約は「期間の定めのある」契約と思われがちですが、「期間の定めのない」契約を結んでもかまいません。
入社当初の契約は一カ月など短期にし、この間にパート・アルバイトの働きぶりを観て、「期待どおり」であれば契約期間を延長して更新する、といったやり方もあります。
二カ月以内の有期契約で雇用し、これを更新しなければ、所定労働時間や日数が正社員の四分の三以上だとしても、社会保険に加入する必要はありません。
これをパート・アルバイト本人に伝えることで、頑張る気持ちを後押しもできます。短期の契約であれば、もし仮に、「思ったような戦力ではなかった」「職場の雰囲気を乱し、組織で仕事を進める上で迷惑になる」といったことが生じても、契約を更新しなければよいだけです。
有期雇用契約を締結・更新するときの留意点
有期雇用契約を結んだり、更新するときには、「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」により、以下を実施しなければなりません。
有期労働契約を「締結」する場合
パート・アルバイトに対し、その契約期間が満了後、契約の更新があるかないかを明示すること
有期労働契約の締結時、「更新あり」とした場合
パート・アルバイトに対して、その契約を更新する場合またはしない場合の判断基準を明示すること
有期労働契約の締結後に、その内容や更新について変更する場合
契約を締結したパート・アルバイトに、変更の内容を速やかに明示すること は、例えば「自動的に更新する」「更新する場合があり得る」「契約の更新はしない」といった具合です。
また、有期雇用契約を実際に更新する場合には(契約を一回以上更新し、かつ雇い入れ日から起算して一年を超えて継続勤務している場合)、その契約の実態や、パート・アルバイト本人の希望に応じて、契約期間をできるだけ長くするように努めなくてはなりません。
なお、契約期間を定める場合、最長「三年」が限度です。ただし、後掲の四つの場合は、例外となっています。
また、一年を超える契約の場合、一年を超えた日以降労働者は、使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができます。
ダム工事等、三年以上の期間を必要とする事業 三年を超える訓練期間を要する認定職業訓練 一定の基準に該当する高度の専門的知識等を有する労働者(最長五年) 満六〇歳以上の者を雇い入れる場合(最長五年)
パート・アルバイトにも就業規則を
パート・アルバイトにも、就業規則が必要です。労働基準法により事業主は、パートを含め常時一〇人以上の労働者を使用していれば、就業規則を作成しなくてはなりません。
その際、正社員用に作成したものをそのまま適用してもかまいませんが、パート・アルバイト用のものを別途作成したほうがよいでしょう。労働条件が異なるパート・アルバイトに正社員用のものを適用すると、後々トラブルになりかねません。
というのは、雇用契約を結ぶ場合、パート・アルバイトの労働条件は、労働契約法により、“個別に合意して労働条件を決定している場合”にはその内容となりますが、“労働条件を詳細に決めていなかった場合”には就業規則の内容が、労働者の条件になるからです(就業規則が合理的な内容であり、かつ労働者に周知させていた場合に限る)。
ちなみに労働契約を変える場合、就業規則の変更による労働条件の不利益変更は、「変更後の就業規則を労働者に周知させ」かつ「就業規則の変更が合理的なものである」場合に限り、有効となります。
なお、就業規則を実際に作成したり変更する場合は、適用を受けるパート・アルバイトの過半数を代表する者の意見を聴くよう努めることとされています。
作成や変更を行った就業規則は、事業所管轄の労働基準監督署長に届け出なければなりませんが、その際はこの意見書を添付する必要があります。
外国人を雇う場合は?
日本に在留する外国人は、在留資格の範囲内で、定められた在留期間に限って、就労などの在留活動が認められています。これらの在留資格や、在留期間は、パスポートにある「上陸許可証印」や「外国人登録証明書」等で確認することができます。
留学生・就学生は、法務大臣の資格外活動許可を受けた場合、働くことができます。留学生が応募してきた場合は「資格外活動許可書」の提示を求め、確認します。許可を受けずに働けば、それは不法就労です。
また、留学生・就学生については、就労時間の上限が定められています。一方、勤務先および時間帯については、一般的に風俗営業または風俗関係でないことを条件に、特に縛りはありません。
なお、外国人であっても、日本で就労する限り、国籍を問わず、原則として労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令が適用されます。
労働基準法第三条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しており、外国人だからと低賃金にすることは違法です。雇用保険も、被保険者となる要件を満たす場合は、在留資格のいかんを問わず原則として被保険者となります。
ちなみに不法就労とは、次の二つをいいます。
不法入国者など正規の在留資格をもたない外国人が行う収入を伴う活動 正規の在留資格をもっている外国人でも、資格外活動許可を受けないで、許可の範囲を超えて行う収入を伴う就労活動 こうした不法就労の外国人を雇用した場合、入管法(出入国管理及び難民認定法)の「不法就労助長罪」により罰せられる場合があります。
具体的には「三年以下の懲役もしくは三〇〇万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められています。不法就労の外国人とは知らずに雇用した場合、処罰されることはありません。
ただし、状況からみてその可能性があるにもかかわらず確認せずにあえて雇用するような場合は処罰されます。外国人雇用に関しては、「在留資格」「在留期間」「在留期限」を、必ず確認することが大事です。
コメント