○そのひと言ですべてが始まる
本章では、挨拶をする相手ごとに、挨拶をする意味と、それによってもたらされる結果を紹介していきます。
いきなり、すべての人に心を込めて挨拶をするのは難しいかもしれません。まずは、できる相手から挨拶を始めてみましょう。どなたを相手に始めていただいても結構です。
お好きなところからお読みください。
私自身もそうだったように、ご挨拶は人生を変えてくれます。特に、心のこもった挨拶は、周囲の人の気持ちを動かし、まわりまわって自分のところに戻ってきます。ご挨拶はすべてのことに連動していくのです。
○親へのご挨拶で始まること
皆さんは、自分を生み、育ててくれたお父様、お母様に、きちんとご挨拶をしているでしょうか。
「今さら、親に挨拶するなんて、気恥ずかしい」と思う方もいるでしょうが、挨拶をすれば、きっとご両親は喜んでくださると思います。同居している方なら、少なくとも、朝、晩に「おはよう」「おやすみなさい」と言うだけでもいいでしょう。
また、遠くに離れている方なら、ときどき電話をかけるのも挨拶です。メールを利用しているなら、メールでもかまいません。今の時代、一番感激されるのは、おそらく直筆の手紙だろうと思います。
お父様、お母様の誕生日あるいは父の日、母の日などに、直筆の手紙を書いてみてはどうでしょうか。誕生日に何かをプレゼントし、その中に直筆のメッセージカードを添えたりすると、喜んでくださると思います。
子供のことを最後まで守ろうとしてくれるのは、やはりご両親です。最大の味方になってくれる人との関係をよくしておくことは、自分の中に安心感、安定感をもたらしてくれます。
○家族へのご挨拶で始まること
お父様、お母様以外の家族も自分の人生における最大の味方です。ご家族がいるから一生懸命に働けるという人もいるでしょう。ご家族との関係をよくすることは、人生においても、仕事においてもとても重要なことです。
おそらくご家族に対して何らかの挨拶はしているだろうと思いますが、問題はそこに心がこもっているかどうかです。奥様あるいは旦那様に対して、心を込めた挨拶を始めてみましょう。
例えば、奥様や旦那様の誕生日、あるいは結婚記念日などにプレゼントを贈り、その中に日ごろの感謝の気持ちを込めた自筆のメッセージカードを入れてみてはいかがでしょうか。
口では言いにくいことでも、カードに書けば伝えやすいはずです。お互いの信頼関係もさらに強くなると思います。
リッツ・カールトンでは、パートナーのお誕生日にホテルをご利用されるお客様が少なからずいらっしゃいました。
言葉に表した挨拶ではありませんが、誕生日や記念日にそうしたホテルに宿泊されるというのも、感謝の気持ちを表した挨拶の一つと言っていいのではないかと思います。
ちなみに、リッツでは、そのようなことをご予約時にお伝えくだされば、演出を考えてお手伝いさせていただくこともありました。
おそらくハイクラスのホテルであれば、どのホテルでも、ご予約時に記念日であることを伝えれば、何らかの演出の相談にのってくれると思います。レストランにご招待してもいいでしょう。
やはり一流のレストランであれば、誕生日であることを告げておけば、演出を考えてくれます。
言葉で「ありがとう」と言うことが恥ずかしいという方は、行為で「ありがとう」の気持ちを伝えてみてはどうでしょうか。高級ホテルや高級レストランを利用すれば、スタッフがそのようなお手伝いをしてくれます。
奥様に対してだけではなく、お子様に対してきちんと挨拶をすることも大切です。これは、お子様に対する教育にもなるでしょう。
また、「おはよう」と声をかけたときに、お子様の反応が鈍ければ、「どこか調子が悪いのかもしれない」「学校で何かあったのかもしれない」といろいろな気づきも出てくるかもしれません。
お子様の状態を知るためにも、少なくとも朝晩に必ず挨拶をして声をかけることは重要ではないでしょうか。子供が健やかに育ち、また、家族が互いに支え合う関係であれば、どんな困難も乗り越えられます。家族の支えは、人生の支えになるのです。
○ご先祖へのご挨拶で始まること
祖父母やご両親がもし他界されているなら、お墓参りやご先祖に対するお祈りをすることも大切な挨拶です。これは、一人の人間として欠かしてはいけないことだと思います。
宗教にもよりますので一概には言えませんが、お正月やお盆にお墓参りをし、また、自分が結婚したり、会社で昇進をしたりしたときにも、感謝の気持ちを伝えに行くことはとてもよいことだと思います。
子供が産まれたり、入学したり、就職したりしたときにも、ご先祖様に感謝の気持ちを捧げるとよいでしょう。
お墓参りをするときには、故人の好きだった食べ物や花などを持っていったり、子供や孫の写真を見せたりすることもよいと思います。
ご先祖様のお墓参りをすることは、自分が生まれてきたことに対する感謝の気持ちを捧げることでもあります。この世に生まれてきたのは、ご先祖様のおかげです。
お墓で、ご先祖様に挨拶をすれば、自分が今生きていること、生かされていることに、深い感謝の気持ちを持てるのではないかと思います。
お墓参りをきっかけに、生かされていることへの感謝の気持ちを思い起こさせてもらい、その感謝の気持ちを抱いて日々の生活を送れば、さまざまなことが好転していくはずです。
○友人へのご挨拶で始まること
友人に対しては、フォーマルな挨拶をする必要はないと思います。しかし、心のこもった言葉をかけることは、友人関係においても重要です。
「よぉ、 ○ ○、久しぶり。調子はどう?」 「○ ○ちゃん、こんにちは。元気だったぁ?」 など、日常の言葉遣いでかまいませんので、必ず名前を呼び、体調などを尋ねたりして、相手を気遣うひと言を入れるとよいでしょう。
人生において、友達の存在もとても重要だと思います。会社の友人も大切ですが、社内では多少のライバル関係にあるかもしれません。仕事のことと関係なく、話ができる友達がいれば、気持ちも安らぎ、楽しい時間を過ごすこともできます。
思いやりのあるフレンドリーな挨拶を続けていき、友達との関係がますますよくなっていけば、人生はもっと楽しくなっていくはずです。
○上司へのご挨拶で始まること
上司に対して挨拶をするのは、社会人として当然のマナーです。
しかし、上司に対して「感謝の気持ちを持って心を込めて挨拶をしていますか」と問われれば、多くの人は、「していません」と答えるのではないでしょうか。
他の人と差がつくのは、その部分です。感謝の気持ちを持って、挨拶をしていくと、何かが変わってくるはずです。
例えば、チャンスを与えられる機会が他の人よりも増えるかもしれません。どんなに能力のある人でも、チャンスを与えられなければ、能力を発揮することはできません。
自分の能力を高めることも大切ですが、チャンスを得やすくすることはさらに重要ではないかと思われます。
直属の上司からはチャンスを得られなくても、あなたのことをどこかで見ていた別の部署の上司から、チャンスを与えられることがあるかもしれません。
自分の実利ばかりを求めたり、過剰な期待をしたりすることは禁物ですが、結果としてより多くのチャンスが与えられるはずです。
「このような仕事をさせてもらえるだけでありがたい」「苦労はあるけど、いい仕事を与えてもらっている」「おかげさまで、いろいろなことを勉強させてもらっている」「この仕事のおかげで、多くの出会いをもらった」「私のことをいつも気にかけてもらっているようだ」 心の中でこのようなことをつぶやいて挨拶をしてみると、上司に対して感謝の心が伝わります。
○同僚へのご挨拶で始まること
会社の中で一番忘れられがちなのが、同僚に対する感謝の気持ちです。上司に対しては、皆さん何らかの形で感謝の念を抱いているものです。
しかし、同僚に対しては、感謝の心が足りないことがしばしばです。リッツ・カールトンでは、同僚に対して感謝をすることを徹底的に教育されました。
仕事は自分一人でできるものではなく、よい仕事をしようとすればするほど、同僚の協力が必要になるからです。あるとき、こんなことがありました。
営業担当者からホテルのレストランに大口の予約が入りました。ところが、当日、一人もお客様がいらっしゃらなかったのです。
レストランのマネージャーは激怒して、営業セクションに怒鳴り込みました。明らかに営業担当者のミスでした。少し前にキャンセルの連絡が入っていたことを伝えるのを忘れていたのです。
この件を知ったゼネラル・マネージャーが担当者と幹部を集めました。そこで叱られたのは、営業担当者ではなく、レストランのマネージャーでした。
「あなたが、本当にお客様のことを大切にしているなら、あなたのほうから事前に営業に確認の連絡を入れたはずです。幹事さんのお名前は何とおっしゃいますか。お飲み物は何を用意したらよろしいですか。お客様の中で嫌いな食べ物のある方はいらっしゃいますか、ということを聞こうと思うはずです。もう一つ大事な点ですが、営業の人がお客様を入れてくれるのを当たり前だと思っているのではありませんか。もし営業の人に対して感謝の気持ちを持っているなら、いつもお客様を紹介してもらってありがとう、今回も大口のお客様を紹介してもらってありがとうという感謝の気持ちを持ち、挨拶を兼ねて事前に打ち合わせをしにいくのではないでしょうか」
仕事をしていると、他部署の人と利害が対立することもあって、仲間意識が薄れてしまうこともあります。
しかし、会社が成り立つためには、どの部署も必要不可欠であり、自分の部署だけで仕事が成立することはありません。だとしたら、他の部署の仲間に対する感謝の気持ちを表すことも、とても重要なことではないでしょうか。
自分の部署の同僚、そして他部署の同僚に対して、きちんとした挨拶をすることができるようになると、おそらく今よりももっと仕事がはかどるようになるのではないかと思います。
○部下へのご挨拶で始まること
リーダーの立場にいる人なら、部下に対する挨拶ほど大切なものはないと言ってもよいと思います。部下に気持ちよく働いてもらったほうが、そのチームは成果を上げやすくなります。
部下に対して、気遣いやねぎらいの言葉を伴う挨拶をすると、部下との関係もいっそう良好になっていき、部下たちは、つらい仕事でも頑張って働いてくれるのではないでしょうか。
「○ ○くん、おはよう。○ ○くんのおかげでうちの部署は本当に助かっているよ」 「○ ○くん、おはよう。○ ○くんが来てからみんな仕事がしやすいと言ってるよ」 「○ ○さん、おはよう。調子を崩してたみたいだけど、よくなった?」 「○ ○さん、どうもありがとう。この資料がなかったら、今回の企画は成功しなかったよ」
部下に対する感謝の気持ちがあれば、ねぎらいの言葉や体調を気遣う言葉も自然に出てくるのではないかと思います。また、部下との関係づくりにおいては、部下から挨拶をしてくるのを待っているのではなく、自分のほうから先に声をかけると、ねぎらいや感謝の思いが伝わりやすくなります。
いつも自分から話しかける必要はありませんが、ときには、自分のほうから先に挨拶をしてみましょう。頑張って働いてくれる部下をねぎらい、部下の仕事をサポートしていけば、部下の人たちはよい成果を上げてくれます。
○お客様へのご挨拶で始まること
お客様にご挨拶することの大切さは、改めて言うまでもありません。本書の中でも繰り返し述べてきました。
マナーを守り、お客様をあたかも自分の家族のように思って、気くばり、心くばりをしていくことは、ビジネスを成功させる非常に大きな要素です。
お客様への挨拶で、もう一つ忘れてならないことがあります。それは、「潜在的なお客様」へのご挨拶です。商品を買ってくださるお客様も大切ですが、買っていただけなかったお客様も、大切なお客様なのです。
今回はお買いあげいただけなくても、いつかは、買ってくださるかもしれません。買っていただけなかったお客様に対する挨拶もおろそかにはできません。
買っていただけなかったお客様がお店から出ていくときに、「なんだ、ただの冷やかしか」と考えて、挨拶もしないようでは、そのお客様は永遠に「買ってくださるお客様」にはなりません。
「この店は態度が悪いな」と思われるだけです。
そうではなく、買っていただけなかったお客様がお帰りになるときも、きちんとお見送りをして、挨拶をすることが大切なのです。
そうすると、お客様のほうは「なんか、申し訳なかったな。今度は何かを買おうかな」という気になるものなのです。
「感じの悪い店だな」と思われるのと、「親切にしてくれたのに、申し訳ないな」と思われるのとでは、その後の結果に大きな違いが出てきます。
私の知っているあるブティックでは、買っていただけなかったお客様に対しても、買っていただいたお客様と同じように応対することをモットーにしています。
そのお店に来店し買っていただけるお客様は、来店者の約五パーセントだと言います。残りの九五パーセントのお客様は、何も買わずにお店を後にします。
しかし、そこでは、どのお客様に対しても、コーヒーや紅茶、キャンディーなどをお出しして、サロンのようなくつろぎを演出するのです。
そうすると、「近くまで来たから、また、ちょっと寄ってみようかしら」と気軽に立ち寄ってくださる方もいるようです。そのような方の中から、「今日は何か買わせていただくわ」というお客様が出てくるのです。
そうやって、このブティックは年々売上げを伸ばしています。
「買わずに立ち去ろうとする方」も、「潜在的なお客様」であるという気持ちで丁寧な挨拶ができるかどうかが、ビジネスの成否を決めると言ってもよいでしょう。「買っていただけなかったお客様」とはいえ、わざわざ忙しい時間を割いてお店に立ち寄ってくださったのです。
「数あるお店の中、わざわざ当店にお越しいただき本当にありがとうございました」という感謝の気持ちを持って、心を込めた挨拶をしていくと、おそらく、売上げが変わってくるのだろうと思います。
○年上の人へのご挨拶で始まること
誰でも、年上の人に対しては、何らかの形で挨拶をしていると思います。しかし、本心からその人に敬意を表して挨拶していないと、相手に見透かされてしまいます。年上の人は、人生経験も豊富で、どこかに必ず人間としての魅力を持っています。
まずは、その人のよさを見つけてみましょう。
「この人のすばらしいところは、 ○ ○だ」「この人と話していると、いつも何か学ぶところがある」「この人は、真剣にボランティア活動に取り組んでいる」「この人のように、まっすぐに生きてみたい」「この先輩は、本当に経験豊富だ」 といったように、何か長所を見いだすことができると、挨拶に心がこもってきます。
心のこもった挨拶をしていれば、好感を持ってくださることも多いだろうと思います。年上の人は、自分よりも地位が上である場合も多く、引き立ててもらえるケースもあると思います。
また、何か困ったことがあっても、経験豊富な先輩たちに相談できれば、人生やビジネス上のさまざまな問題の解決のヒントを得られることがあるでしょう。
日本には、「先生」という言葉があるくらい、先に生まれた人を敬う文化があります。外国でも、「メンター」と呼ばれて、経験豊富な先人や先輩たちに敬意が払われることがあります。
年上の人や先輩たちに敬意を払い、心のこもった挨拶をしてみると、おそらく先輩たちから「かわいがられる人間」になると思います。
人というのは往々にして同年代や同期の人たちとの付き合いが多くなりがちですが、タテの関係をうまくつくれば、人生の幅はいっそう広がるはずです。
○年下の人へのご挨拶で始まること
年下の人には挨拶しにくいかもしれませんが、年下の人に慕われることは、とてもよいことだと思います。自分にチャンスを与えてくれたり、自分を引き立ててくれたりするのは、年上の人かもしれませんが、自分を支えてくれるのは、多くの場合、年下の人たちです。
年下の人たちが協力してくれるおかげで、仕事がうまくいったり、生活が楽しくなったりするのです。自分のほうから積極的に挨拶をするようにすれば、周りに年下の人が集まってきます。年下の人に対して丁寧に挨拶をする人は少ないため、その対応が際だちます。
「あの人は、自分たちのような年下の人にも、すごく丁寧に親切に対応してくれる」という評判になれば、周りにいろいろな人が集まってくるでしょう。
仕事以外の趣味の分野や、ボランティア、地域活動などの分野でも、そうした年下の人たちとの交流は大きな意味を持ってくるのではないかと思います。
例えば、みんなで、そうした人の誕生会などを開いてみてはどうでしょうか。お店を手配し、プレゼントを贈れば、きっと喜んでくれるはずです。
人は、何歳になっても、そのような誕生会を開いてもらうとうれしく感じるものです。しかも、自分より年上の人がその音頭をとってくれたとなれば、うれしさもいっそう大きくなるのではないでしょうか。
「日ごろ、 ○ ○くんには、お世話になっているからね。おめでとう」と言ってプレゼントを渡せば、感謝の思いは確実に伝わると思います。
○同い年の人へのご挨拶で始まること
同い年の人は、気安く話ができるため、あまり挨拶というものを意識していないかもしれません。だからこそ、ときどき心のこもった挨拶ということを意識してみると、グッと相手との距離が縮まります。
同い年の人と言っても、友人、同期、恋人、夫婦などいろいろな関係があるでしょう。そのような人に対して、普段は特に丁寧な挨拶をする必要はありません。
しかし、節目、節目で、丁寧な挨拶をすると、人間関係が深まるはずです。
例えば、同い年の友人や同期の人が結婚をしたり、出産をしたりしたような場合には、手書きのメッセージカードを贈りましょう。
祝福の気持ちを込めて贈れば、喜んでくれるはずです。
一人で書くのが恥ずかしければ、同年齢の人を募って、寄せ書きをして「おめでとう」というメッセージを贈ってもいいでしょう。その際には、できるだけ、自分が発起人となり、幹事役となってその人のために何かをしてあげましょう。
相手が一番感謝の気持ちを寄せてくれるのは、やはり主催してくれた人や幹事です。
「あいつは、何かあると音頭をとって、うれしいことをしてくれる」と思ってもらえれば、その後の関係は違ったものになるでしょう。
○顔見知りへのご挨拶で始まること
会社内でもご近所でも、顔見知りという人は、結構たくさんいるのではないでしょうか。また、一度会っただけの「友人の友人」なども顔見知りの人と言えるかもしれません。
このような人たちにも、普段からきちんとした挨拶をしておくことはとても大事だと思います。職場においては、同じビルの違うフロアの人も、他部署の人も、お互いに社員または関係者です。
何かのプロジェクトのときに、協力して仕事をしなければならないケースも出てくるかもしれません。あるいは、人事異動でその人の部署に転属することもあるかもしれません。
そのときに、相手の人から「ああ、いつも挨拶してくれるあの人か」と思われれば、すぐにうち解けることもできるでしょう。「なんだ。挨拶もしないあの人か」と思われるのとは、雲泥の差です。友人の友人にもご挨拶をしましょう。
挨拶をきちんとしていれば、相手の人は、あなたの友人に対して、「あの人は感じのいい人だね」と話すかもしれません。
そこから人脈が生まれる可能性もあります。
反対に挨拶ができていないと、「どうもあの人はあまり好感が持てない。あんな人と友達なの」と言われてしまうかもしれません。そうすると、せっかくのよき友人関係までもが、壊れてしまう恐れもあります。
友人の顔を潰さないためにも、友人の友人に対して、丁寧に挨拶をしておくことが大切です。
○知らない人へのご挨拶で始まること
知らない人であっても、ご縁のあった人には、ぜひご挨拶をしてください。
お店に行って、店員さんが「いらっしゃいませ。こんにちは」と言ったら、「こんにちは」と答えましょう。注文して何かを持ってきてくれたら、恥ずかしがらずに「ありがとう」と言ってみましょう。
食事がおいしければ、「おいしいですね」とひと言声をかけてみましょう。こうしたことをするだけで、スタッフの対応は変わってきます。
ひと言かけてくれるお客様に対しては、スタッフも好意的になり、よりよいサービスをしたいと思ってくれます。
スーパーやコンビニのレジでも、お釣りをもらったら、「ありがとう」とか「どうも」と言って会釈をしてみましょう。
無言でお釣りを受け取る人よりも、何かを言ってくれるお客様のほうがレジの人もうれしいものです。無言の人に対しては、店員さんも儀礼的に「ありがとうございました」と言っているように思えます。
年配の人がコンビニで買い物をするときなどは、ごく自然に店員さんに「どうも、ありがとう」と言っています。
そうすると、店員さんは明るい声で「ありがとうございました。また、お越しください」「ありがとうございました。お気をつけて」と答えています。
店員さんも思わず丁寧に返事をしてしまいたくなるのだろうと思います。このようなやりとりをしていると、双方ともに明るい気分になってきます。
利用する側も、「感じのいい店だな。またこの店に来よう」と思えますし、相手の店員さんも「あのお客さんにまた来てほしい」と思うでしょう。
研修先のコンビニエンスストアのある店長さんに聞いたところ、お客様の中には、レジで「ここの弁当はおいしいね」と言ってくださる人がいるそうです。
すると、その店長さんもうれしくなって、次にそのお客様が来たときには、「今度、新しいお弁当が入ったんです」と言って、お弁当のところまで案内したりすることがあるのだそうです。
このように、始めはお互い見ず知らずの人間同士ですが、ちょっとしたひと言でうち解けて、それ以降、楽しく買い物ができるようになることがあります。
挨拶をし、ひと言声をかけてみる。それが自分の人生を楽しく快適なものに変えていくのです。
○近所の人へのご挨拶で始まること
自宅の近くで道行く人に会釈をすることも、挨拶のうちです。知らない人でも会釈をしてもよいのではないかと思います。もちろん、よく知っている人であれば、ひと言、言葉を交わしたほうがさらによいでしょう。
自分は相手のことを知らなくても、相手は自分のことを知っているかもしれませんし、もしかすると、お子さんがクラスメートかもしれません。
近所ですれ違う以上、何らかの縁はあるのですから、軽く会釈しましょう。
また、同じマンション内ですれ違う人には、知らない人でも「おはようございます」「こんばんは」と言うべきではないかと思います。
昔ほどではないにせよ、何かあれば、助け合うのがご近所です。そのためにも、挨拶をしておくことはとても大切なことなのです。
ご近所の人や、家の近くを行き交う人にきちんと挨拶するようにすると、自分にとって住みやすい環境ができてくるのです。
○「ウィン・ウィン」と「ブーメラン」
挨拶をしてもたらされるものを、具体的なメリットを中心に、ご紹介してきましたが、挨拶は第一義的には、相手のためを思ってする行為です。自分の利益を求めて挨拶をすると、それは見透かされてしまいます。
究極的には、自分の得になるか損になるかという思いを捨てて、「この人を大切にしたい」という姿勢で挨拶をしなければなりません。
とはいっても、相手のためだけを思って行動するというのは、難しいものであることも事実です。
そこで、実践に当たっては、まずは、両者を調和させて、相手にも自分にも得になることをするという思いを持つようにしてみてはいかがでしょうか。
例えば、「相手の人の笑顔が見たい。そして、その笑顔を分けてもらいたい」「この人に喜んでもらいたい。そして、自分もいっしょに喜びたい」「この人をホッとさせてあげたい。そのホッとした顔を見て、自分もホッとしたい」 そのような心で、ご挨拶をしていくと、結果的に相手も自分も、ともに楽しく豊かな人生を送れるのではないかと思います。
ご挨拶でも「ウィン・ウィン( WIN︱ WIN)」が大切です。ご挨拶はブーメランです。相手に喜んでいただければ、その喜びは、必ずこちら側にも戻ってくるのです。
おわりに
最後まで、お読みいただき、まことにありがとうございました。
私がこれまでキャリアを歩むなかで気づかされた、ご挨拶の持つ力について、僭越ながら「法則化」して述べさせていただきました。
お読みになった皆様の心のうちに、ご挨拶に関するなんらかの気づきが残ればとてもうれしく思います。挨拶は、一人の人間としての品格やマナーを磨く上で、とても大切なものです。
また、伝統文化を継承していく上でも大切なものだと思います。その一方で、挨拶は、生活や人生に大きなメリットをもたらす側面も持っています。
最後のページを綴じられたら、どんな小さなことでもかまいません。ぜひ、ご自分なりに心を込めて、この法則を実践していただきたいと思います。
それによって、皆様の人生は必ず切り拓かれていくでしょう。さて、本書の執筆中に、私は、再びホテルの現場に復帰することになりました。
現在、私は、三重県にあるタラサ志摩ホテル&リゾートの会長兼総支配人を務めさせていただいております。
タラサ志摩ホテル&リゾートは、美しい伊勢の海を眼前にしながら、本場フランスと同等の設備、自然環境の中でのリラクゼーションをお楽しみいただける、スパリゾートホテルです。
実は、このご縁も、私が講演後の名刺交換の場で、代表取締役である野沢宜巳様にご挨拶させていただいたことによって始まったものでした。
やはり、すべてはご挨拶から始まるのです。
本書も完成までに、大変多くの方のご協力をいただきました。
とりわけ、株式会社セレモアつくばの辻正司様、山中サヨ子様、増倉義久様、医療法人藤本外科内科の矢野弓子様には、ご多忙のところ、貴重な示唆を賜りました。
心より御礼申し上げます。
そして、これまで私を育ててくださった皆様、私の大切なお客様、今日の私があるのは、ここではご紹介しきれない、実に多くの方たちの支えがあってこそ、です。
心より感謝申し上げます。そして、読者の皆様方に改めて感謝いたします。今後も、私の仕事を通して、このご挨拶のすばらしさがより一層広がっていくよう尽力してまいる所存です。引き続き、ご指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。最後まで、お付き合いくださり、ありがとうございました。
林田正光
【著者紹介】林田 正光(はやしだ・まさみつ)株式会社 HAYASHIDA‐ CS総研代表取締役タラサ志摩ホテル&リゾート取締役会長兼総支配人日本 CS・ホスピタリティ協会理事長 1945年、熊本県生まれ。
藤田観光株式会社太閤園販売促進支配人、関西地区顧客担当部長として 32年間勤務。
1996年、 50歳を過ぎて、開業前のザ・リッツ・カールトン大阪に入社。
営業統括支配人を務める。
2002年、同社を退社。
その後、京都全日空ホテル社長兼総支配人、彦根キャッスルホテル社長兼総支配人を歴任。
現在、株式会社 HAYASHIDA‐ CS総研代表取締役として、病院から官公庁まで、さまざまな企業の CS(顧客満足)、感動サービス、 CSフィロソフィーづくりのために、年間 350回以上の講演、研修を行うなど、全国各地を飛び回っている。
CS・ホスピタリティ総合プロデューサー。
著書は『リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと』『ホスピタリティの教科書』『図解版ホスピタリティの教科書』(あさ出版)、『サービスで小さな奇跡を起こす方法』(ダイヤモンド社)、『生涯の顧客をつくる』(宝島社)、『「 No」は言わない!』(講談社)、『エクセレント・サービス』( PHP研究所)、『おもてなし力』(サンマーク出版)、『伝説のホテルマンが語る極上のおもてなし』(中経出版)、『おもてなし力が身につく 57の習慣』(こう書房)、『心くばりで最強の人脈づくり』(たる出版)など。
株式会社 HAYASHIDA‐ CS総研 〒 530-0001大阪府大阪市北区梅田 1-3-1大阪駅前第 1ビル 3 F 300号 TEL: 06-6345-8850 FAX: 06-6345-8851 E-mail: hayashida-cs-souken@ ja 2. so-net. ne. jp
あらゆることが好転していくご挨拶の法則 2008年4月 20日 第 1刷発行 2008年5月 24日 第 3刷発行著 者 林田 正光(はやしだ・まさみつ)発行者 佐藤 和夫発行所 株式会社あさ出版 〒 171-0022東京都豊島区南池袋 2-9-9第一池袋ホワイトビル 6 F 電 話 03( 3983) 3225(販売) 03( 3983) 3227(編集) FAX 03( 3983) 3226 URL http:// www. asa 21. com/ E-mail info@ asa 21. com 振 替 00160-1-720619 Masamitsu Hayashida 2008 Printed in Japan ISBN 978-4-86063-262-5 C 2034
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